黄金を抱いて翔べ (新潮文庫)

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著者 : 高村薫
  • 新潮社 (1994年1月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101347110

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黄金を抱いて翔べ (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 映画はまだ観てません。
    高村薫の作品を読むと、だいたいいつももっと早く読んでおけば良かったと思う。それくらい良い。好き。重厚かつ硬質な文章で人間の内面を抉る高村ワールドに夢中です。
    男たちのド派手な金塊泥棒を描いたハードボイルドクライムサスペンス!だと思って読むと肩すかしを喰らうと思う。たしかにそこへ向かって物語は進んでいくし、クライマックスの金塊奪取のシーンは派手でスリリングだけど、主題はもっと暗くてじめっとした別のところにある。泥棒仲間として組む六人の男たちの関係や、その中での感情の動き、それらが蒸し暑く猥雑な大阪を舞台に描かれている。とにかくすごく人間くさい。例えば国島殺害のシーンで「こういう成り行きになるとは、半日前まで考えてもいなかった。幸田の手も北川の手も、これまできれいだったのだが、半日前と今の自分らの間に何か落差が出来たということはなかった。飛躍はあっという間に起こり、ほとんど気付かないほど滑らかだった」(p,149)という心理描写もすごくリアルな人間くささがあると思う。人一人殺すのに、「飛躍」で済ましちゃうのか、との批判がありそうだけど、自分はこのあたりの幸田の気持ちにも妙に同調して悲しくなる。
    幸田とモモについては、彼らの孤独と、もう最初っから全て諦めてしまっているような虚無感がとにかく切ない。それらの諦めの所為なのか、幸田とモモはお互いに対してすごく純粋に見える。純粋で誠実だよね。初恋煩った中学生みたい。いや今時の中学生より純粋か。「世紀の大泥棒が駆ける日……」からラストまではもう涙なくしては読めませんでした。あんまり泣きすぎて一旦休憩挟んだ。
    ラストシーン、果たして幸田は死んでいるのか?と疑問に思ってちょっと調べてみたら連載当時の版では幸田は死んだと明記されていたみたいですね。文庫版の生死が曖昧な描かれ方もとても好きですが、ああやっぱり死んだのかと納得。
    こういう即物的な願望は「神の国の話がしたいと思う……心の話がしたいと思う」という二人には無意味かもしれないけど、せめて同じ場所に埋葬してあげてほしいと思わずにいられない。

  • 高村薫さんのデビュー作。やはり圧倒的な世界観でディテイルにこだわった描写がとてもリアル。舞台の肥後橋らへんで働いてたことがあるからあの辺はよく知ってるのでよりリアルだった。高村さんの作品を読んだのは「マークスの山」と「李歐」と読んで3冊目だけど、どれも主人公たちが排他的で孤独。「李歐」のときも思ったけれど、孤独な中でお互いを渇望してやまない男同士の友情というよりもっと濃密な関係が哀しいような、うらやましいような。映画化されたということで映画も観てみたいと思うけれど、はたしてこの世界観が表現しきれるのかどうか。

  • 大阪に本店がある、大手都市銀行(多分あそこ?と想像させる)の地下に眠る金塊を、厳重なセキュリティーを破り、単身で盗み出す青年の話。

    犯罪だが・・・、不可能に挑戦する青年の熱意と努力が、思いもせぬ味方を引きつけて・・・。
    最近、ドラマ化 or 映画化との話を聞いたように・・・。(汗!)

    かなり前に読んだが記憶に残るお話でした。

  • 罪が連鎖し闇は繋がる。犯罪に足を踏み入れるきっかけなんて、ほんの些細なものなのかもしれない。状況描写の細かさはさすが。破滅への疾走感が半端ない。様々な危険や思惑や想いを孕みながら進んだ先に見える光り輝く金塊。札束ではなく黄金。

    高村作品に共通するモチーフのひとつにキリスト教があるが、闇の世界を生きるしかない男たちの中に神の存在が見えることで、それが作品の一筋の光にもなっているんだと思う。

    堕ちゆく過程で出会う束の間の安寧に心ときめくわ。

  • 何で画像がないんだー!高村さんの中では一番好き。素敵な俳優さんでドラマにして欲しい…

  • 6人の個性豊かな男達がその手に金塊をつかむまでの心の葛藤や、出来事が細かく描写されていて、読む人の心を捕らえて離さない!。
    特に主人公の心理描写は素晴らしい。
    何度読んでも、またすぐに読みたくなる。
    金塊を手に入れるための手段が、いつ本当にこの作品を真似た事件が起きてもおかしくないほどのリアルさ、緻密さ。
    とにかく、圧倒。

  • やはりモモさんは逝ってしまった。一般小説の鉄板を感じた。映画もDVDレンタルで観た。妻夫木君とチャンミン良かった。

  • 19
    難解でもあるが、ある意味中毒症状に近い感覚で読み進めてしまうのは著者の特徴か。
    テーマはありがちな金庫破りだが、登場人物はクセ多く、独特。
    とにかく一癖どころか10クセある本著だが一読の価値はある。

  • 【衝撃の芋】
    華麗なタイトルですが、実際は地面に這いつくばって黄金を狙っているイメージです。

    福岡国際大学:まなみ

  • 面白かったと思う。

    映画化されたが、見ていない。
    見たいと思っていたが、まずは原作からと思って。

    程よいボリューム。
    場所が大阪だったので少しでも土地勘があればもっと面白かったか。
    まぁモモのスーパープレイとモルヒネに助けられているような感じ。

    なんで金塊なのかの説明はあったっけ?
    あとホモのくだりはいるの?

    ★は3。

  • まぁまぁ好き。読み終わった後に爽快感とモヤっと感が共存する不思議な本。

  • 娯楽小説と思って読むと肩すかしを食らいます。計画に至るまでの経緯や心理描写が薄いために金塊強盗をするに至る説得力に欠ける、という批判を多く目にしましたが、物語のメインとされる金塊強盗はむしろ物語のスパイスであり、高村さんが主題としたところはもっと別にあるように思います。主題を重視した結果、金塊強盗に関する各々の心理描写はあえて省略されているのではないかと感じました。
    物語の主題とは、”自我の目覚め”、”魂の救済”であり、高村さんの宗教観に基づき、幸田自身と幸田を取り巻く人間関係を通して以上の二つのテーマが描かれていると考えます。

    (以下幸田と北川のことしか語ってません)
    幸田を陰から思いやり見守る北川の行動に、『トーマの心臓』のオスカーに通じる優しい人間愛を感じました。表面的には男くさくて荒っぽい印象でけっこう怖い人なんですが、優しい人だと思います。
    幸田は北川の思いなどつゆ知らず、ひたすら人間のいない土地だけを求めて自分の殻に閉じこもります。他者を寄せ付けない人間嫌いの幸田。金塊強盗に関わる抱えきれないほどのしがらみや厄介事に直面し北川は、
    「なあ、幸田よ。人間なんて、面倒なだけだな……。この次に何かやるときには、もう仲間はいらねえよ。お前は、どうせ≪人間のいない土地≫へ行くんだろ?」- 141ページ
    という言葉をぶつけます。幸田を光の中に連れ出すことが自分には決してできないんだというやるせなさや、結局どこまで行っても人は一人で、他者と解り合うことはできないのではないかという北川の抱く孤独感が噴出した静かな悲しみを表す場面だと思います。

    一方幸田は、北川のあずかり知らぬところで、金塊強盗を通してモモとの関係を深める内に、その純粋さに触れることで救われていたんだと思います。
    奪取作戦の最中、北川と幸田はこんな会話をします。
    「なあ、幸田。お前、いつからモモと出来てたんだ?」
    「最近」
    「俺はなあ、人間嫌いのお前は一生、人とどうこうすることなんかないんだろうと思ってた。人間って変わっていくんだな……」 - 336ページ

    幸田は確かに変わりました。ビルから落下する直前、以下の独白があります。
    「ふと、≪自由だ≫と思った。これまで、同じようにしてビルの屋根から逃げたことは何度かあったが、自由の気分を味わったのは初めてだった。自由であり、少し孤独だった。≪人間のいない土地≫はもう、どうでもよかった。人間のいる土地で、自由だと感じるのなら。」- 347ページ
    幸田の生死は明らかにされていませんが、生きていればきっと幸田のこれからの人生はそれまでとは大きく違うものになったのではないでしょうか。

    「これは俺の想像だが、お前はもう、人間のいる土地でも何でもいいのだろう。きっとそうだと思う。こんなことを言うのは気恥ずかしいが、お前は確かに変わったぜ」 - 350ページ
    「うまく言えないが……俺はお前が、やっと訪ねてきてくれた、って気がするんだ。やっと、互いの顔が見えるところまで近付いた、って気がする。よく来てくれた。ほんとうに、よく来てくれた。俺は嬉しいぞ……!なあ、幸田よ」 - 351ページ

    幸田と北川、その思いは違ってもそれぞれに大きな魂の救済がある素晴らしいラストではないかと思います。
    読者視点では若干北川が報われてないようにも見えるんですが(北川が手を握ってあんなに熱く語ってるのに、幸田の心情描写はモモへ宛てた独白なんですよね。なかなか終始北川泣かせ)、実はそんなことは関係なくて、幸田に救いが訪れたことを北川は誰よりも喜ぶんだと思います。

    『ヨハネによる福音書3章』 -イエスは答えて言われた、「よくよくあなたに言っておく。だれでも新しく生まれなければ、神の国を見ることはできない」

    「ど... 続きを読む

  • 井筒監督で映画化された作品の原作。映画自体が良く出来ていて、面白かったので、これは原作も面白いに違いないと読み始めた。
    大阪の銀行の地下金庫に眠る金塊を盗み出すために集まった男たち。まるで“オーシャンズ11”の様な話だが、舞台が大阪だけあってスマートさよりは、蒸し暑い夏の泥臭さに溢れたクライムサスペンス。
    裏切りと罪に満ちた過去や身内を犠牲にしても後戻りできず金塊目指して突き進む男たち。
    確かに面白かった。しかし、前半の準備期間の方が面白くて、いざ盗みに入ると、展開が少しあっさり進んでしまった。
    映画の方が、原作ではあっさり終わった部分をちゃんと拾って描いていた。些細な事だが、そういう部分は大事だと思う。
    因みに映画はほぼ原作に忠実だ。原作付きの映画が面白い時は、大抵原作を改変して、少し違うものにしていて、まぁ映画ならそれもありかなって思わせる面白さのパターンが多い。原作への忠実度が増すと、忠実だけど面白くなかったり…。でも、これは原作にとても忠実でそれでいて面白さを損なわずに映画化していてびっくりした。

  • 読了後のあのなんとも言えない仄暗い気持ちが忘れられない。彼らはきっと神の国の話をしているのだ。計画に至る経緯だとか各々の心理がわからない、という声は多くの高村作品で言われることではあるが、私はこの作品にそういう描写は必要ないと思う。もっと言うならこの作品にいたっては、少なくとも幸田さんの心理は駄々漏れである。

  • 正直、読み進めるのが苦痛だった。強盗計画ながすぎ。描写がこまかすぎて、理解するのが難しかった。

  • 銀行の地下三階に眠る6トンの金塊。金額にして百億。それが彼らの目標だった。綿密に計画される強奪計画。しかし、敵は厳重な警備だけではなかった。北の工作員に左翼団体。虎視眈々と命を狙われながらも、しかし、彼らの信念もまた揺るぎなかった。三つ巴の戦いの中、果たして彼らは無事生き残ることができるのか。そして金塊強奪の行方は。アウトローに生きる者たちの戦いを描いたハードボイルドな犯罪小説。

    映像化されるということで再読。まさに高村薫の原点とも言える作品。北とか南とか左とか右とか、そういった政治の黒い部分を大胆に使いながら、状況描写のディテールにはとことんこだわる。高村さんの取材力の高さに改めて感嘆する。そしてアウトローに生きながらもどこか人間臭さを感じさせる登場人物たち。頼れるものがないからこそ、彼らの生き様もまたかっこいい。

    はじめて読んだときの衝撃はなかったものの、やはり名作だなあ、と。映像化向きの一冊。

  • 「はじめに金塊ありき」から始まる北川の真面目くさった宣誓が妙に好きです。
    彼らが銀行を襲うのは、金が欲しいからではないのです。(一人例外はいますが)
    「福沢諭吉だったら、やるきはない。金塊だから、やるのさ」ということです。
    でも、計画実行までの準備段階で、次々と色々なことが起こって、計画はがたがたのぼろぼろになっていきます。最終的に、6人だったチームも減ってしまったり…。そんなぼろぼろの状態で、それでもやるというところが、切ないような哀しいような。
    そんな中で、主人公の幸田は精神的にかなり成長したなあと思います。
    「人間のいない土地」へ行きたかったのが、「人間のいる土地」もいいと思えたということで。一番最後のページではうるっときてしまいました。
    あと、北川ってすごいと思う。あんなに他人の心を敏感に察知できる人ってなかなかいない。暴力的な面とのギャップも相まってかなり好きなキャラクターです。

  • あ~面白かった!これが20年以上前に書かれたなんて。。ロマン、かっこよさを感じる話だった。逆に20年前に書かれているからこういうロマンもかっこよさも感じる作品になったのかな。11月に映画公開になるけど、とっても見に行きたい!

  • 映画化されるとのことで再読。やっぱり好きだ高村作品。男性作家よりもダンディな、硬質で脂分ゼロ、抑制のきいたストイックな文体で描かれるダイナミックな金塊強奪劇。そこまで必要?と思うほど精緻な描写は読んでて脳にこたえるけれど、ラスト、分刻みで描かれる犯行場面は目の前に映像が浮かぶよう。強奪劇と並行して進む人間模様がいい。虚無感、厭世観を抱えた幸田が、モモと心を交わす中で変わり、「人間のいない土地」から人間のいるところに一歩足を踏み入れたラストにじーん。そして愛すべきキャラクター・モモ。教会のシーンはやっぱり泣けた。この人の男同士の愛の描き方、露骨な表現がないのに匂い立つような深い関係性、切ったら血が出そうな絆の描き方が好きだな。☆ひとつ分は、北や裏社会との接点が伏線としていまいち活ききっていない気がしたから。

  • 学生時代、
    尋常じゃないぐらい高村女史にはまっていた時期があります。
    単行本化していない作品が読みたくて、
    図書館の雑誌のバックナンバーを漁って、
    コピーをとりまくったぐらい。

    で、そんな高村女史の作品で、
    2番目に好きなのがこの作品です。
    初読の時ほどドキドキすることはありませんが、
    ラストが近づくにつれ、
    やっぱり「早く、早く」と声をかけたくなります。

    人、ばんばん死ぬし、
    がんがん犯罪が起こっているのに、
    ラストは一抹の清々しさが残る冒険小説ですね。

  • 最高!! ラストはちょっと哀しいというか茫洋とした気分になるけど、そこがまたこの人らしい終わり方。

  • 映画化しても面白いのでは。

  • 足の裏のうおのめ→ちょっとした京美人。人って恋するとここまで盲目になるんだなあ(笑)。
    ちなみにちょっとした京美人は男なのであしからず。

  • すばらしいデビュー作です!しかも舞台が地元だったので、かなりのめり込んでしまいました!

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黄金を抱いて翔べ (新潮文庫)の作品紹介

銀行本店の地下深く眠る6トンの金塊を奪取せよ。大阪の街でしたたかに生きる6人の男たちが企んだ、大胆不敵な金塊強奪計画。ハイテクを駆使した鉄壁の防御システムは、果して突破可能か?変電所が炎に包まれ、制御室は爆破され、世紀の奪取作戦の火蓋が切って落とされた。圧倒的な迫力と正確無比なディテイルで絶賛を浴びた著者のデビュー作。日本推理サスペンス大賞受賞。

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