レディ・ジョーカー〈下〉 (新潮文庫)

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著者 : 高村薫
  • 新潮社 (2010年3月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (449ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101347189

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レディ・ジョーカー〈下〉 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • [上中下巻あわせて]
    グリコ・森永事件をモチーフとした文庫本3冊の長編小説。
    最近はノンフィクションばかり読んでいたので久しぶりに小説を読んだ。
    グリコ・森永事件は自分が幼少の頃にリアルタイムに体験した事件でもあり、当時の自分の微かで断片的な記憶も思い出しながらで、大変面白く読めた。

    読み終わって幾分モヤモヤしたものが残るけれど、最近の自分は「小説は読んでいる時間そのものが面白ければいいのだ」と思う。

  • 合田とレディ・ジョーカーチームの中心、半田がいよいよ直接対決。と、その前にレディ・ジョーカーから事件の幕引き宣言。そして、チームが分裂して、別のビール会社への攻撃がはじまる。社長誘拐、同業他社へ目標変更、青酸カリ混入と、当時のグリコ・森永事件の流れを忠実に再現している。

    小説の方は新聞記者の失踪あり、株屋の活躍あり、刑事の自殺ありと、事件の解明どころか、盛りだくさんの内容で混沌は深まるばかり。が、合田のワンマンプレーでなんとなく、ぼんやりと決着する。これは合田刑事シリーズの定番だ。

    20億円も奪った犯人の追及が甘い気もするが、グリコ・森永事件も未解決なのだから、こんなものか。

    それにしても、社会で取り残された人間が大事件を犯すという設定。この小説は現在の「格差」がクローズアップされる時代にマッチしている。

  •  目的を達したレディ・ジョーカーは闇に消えたはずだった。しかし新たな脅迫状が別のビール会社に送られ、事件は犯人グループの思惑を越え新たな展開を見せ、そして終焉を迎えていく。

     ようやく読み終えた…、と読後にまず思いました。完全犯罪が達成されたというカタルシスもなければ事件が解決された、という爽快感もこの小説にはありません。読めば読むほどに登場人物たちの葛藤、疲労、閉塞感、暴力衝動は深まっていき、それに姿が見えない政治や裏社会の闇が読むほどに深くまとわりつき、それが完全に晴れることはありません。

     合田然り城山然り、マスコミ然りそして犯人グループでさえも、”レディ・ジョーカー”が生み出した闇の流れにゆっくりと飲み込まれていったかのように読んでいて思いました。

     誘拐劇に企業への恐喝、そしてそれに立ち向かう警察というミステリー的な構図でありながら、この本の終着点はミステリー的な解決ではありません。この誘拐を通して浮かび上がったのは何者にも説明できない個人の感情や衝動、そしてそれと相克せざるを得ない企業や社会の論理、それに勝てないと分かっていながらも向かっていかなければならない人々の叫びと戸惑いだったように思います。

     そしてそうした叫びや戸惑いは、現代の社会にも残り続けているのだと思います。自分もそうしたものを漠然と感じていたからこそ、この小説に嫌気がさしながらも、登場人物たちがどこにたどり着くのか知りたくてページをめくり続けたのだと思います。

     合田の加納への最後の唐突な告白はちょっと違和感があったものの、それを差し引いてもこの作品の価値というものは揺るがないと思います。ラストの青森の描写も、この作品の終着点としてこれ以上ないくらいふさわしいものだったように思います。

     人は小説にこれほどまで情念というものを載せることができるのだな、と強く思わされた小説でした。


    第52回毎日出版文化賞
    1999年版このミステリーがすごい!1位
    このミステリーがすごい!ベストオブベスト9位

  • 様々な思いが最終巻につながれます
    是非、最後まで頑張って付き合ってください
    おそらく人によって感想が幾重にもなる作品です

  • 闇が深すぎて、そして重たすぎて、読後はどんより。
    すっきりとした解決でもなんでもなく、闇は表に出ることなく闇から闇へと葬り去られる。
    未解決ということなんだろうな。
    こういう社会が今の社会でも蠢いているのだろうか?

  • 実際の事件をモチーフにしているだけあって、やはり犯人捕まらずか…

    重厚な物語の結末としては、不完全燃焼。

  • 下巻の中盤からぐっと引き寄せられたものの、まとまり方は好きじゃない。

    レディジョーカーの本当の正体はなんなのか、問われているような終わり方であった。

  • 読み終わりました。
    結局この長編は、合田の魂の再生と、物井の守りたいものの発見が救いなのかなと。
    前者は、破滅願望の半田との対決を経て加納と向き合う大切さに気づくところ、後者は最後の久保が物井の故郷を訪ねるところで、特に強く感じました。
    社会への言葉にできない怒りや不満からレディ・ジョーカーは現れ、でもそれぞれの帰結は対照的です。
    壊したい願望と守りたい願望。
    事件から先に進めた人間と、さらに破滅を求めた人間。
    相反するところが個々の中にあって、けれどそれが個々の選択に違った形で表れる。
    最後の物井の故郷は、彼の求めていた生きる意味を実感できる場所なのか、久保の詮索を拒絶するような心証描写が秀逸でした。
    まず満足できた3巻です。

  • レディー・ジョーカーによる日之出社長誘拐事件。
    犯人を追う刑事。
    スクープを狙う新聞記者。
    表面的な事件の裏で蠢くものたち。
    一つの事件が人々の運命を様々な方向に変えていく。

    緻密な描写に圧倒的な情報量。
    「すごい!」以外、私のボキャブラリーでは表現できない。

    それにしても、これほど面白いとは!
    高村薫作品は以前にも読んだことがある。
    しかし、 良いも悪いも「社会派な作家さん」ぐらいで特別な印象が残っていない。
    今やっと、私自身に高村薫を読む準備が整ったということか。

    作家との出会い(もちろん作品を通して)は、タイミングが重要なのだとつくづく感じた。
    出会いがうまくいけば、長い付き合いになる。
    新作が気にいらなくても、また次作に期待する。
    しかし最初の出会いに失敗すると、もう一度手に取るのはなかなか難しい。
    名作といわれていても、ピンとこない作品もあったりする。
    もちろん好みの問題は重要だが、読む側の精神状態や、理解力、経験値など何かたりないものがあるのかもしれない。

    ずいぶん遅くなってはしまったが、嬉しい出会いができた。

  • やっと終わった!長かった!難しかった!頭が疲れた!

    実在の「グリコ森永事件」をモチーフに……という触れ込みには納得。兜町や永田町の闇も関わり合って結局は事件としてね解決を見ないままで物語は終焉を迎える、という点も、妙にリアリティがありgood。

    グリコ事件にも、実は同じような水面下での闘いが繰り広げられていたのかも……という感慨を残してくれた。

    物井のもとでやり直した人生を生きるヨウちゃんの姿を描いたラストには、心が少し救われた。



    事件の結末には不満が残るがまとめ方には納得。
    株や競馬等の、自分には守備範囲外の世界の詳細描写や、永田町関連の複雑なしがらみが難しく読むのに疲れたが、不思議と引き込まれたまま読み続けられた。
    同性愛的な描写にやや引いてしまうも、嫌悪感までは至らないのは、作者の筆力の賜物?合田というキャラクターの魅力のせい?

    文庫化にあたり3分冊とのこと……下巻は、疾走感に欠けて★3つ。
    上下巻2冊のままだったならば、下巻は★4つだったなぁ。

    2011.12.06 了。古

  • 勢いで読めるかと思ったら、翻弄され翻弄され、かなり時間がかかってしまった。雄一郎と加納の関係については、ここに来て完全にふじょし視点でしか見れなくなりましたすみません…。親友とそっくりな双子の妹と結婚⇨離婚後も親友(義兄)がごはん作ったり掃除とか洗濯しにきてくれる状況とはいかに

  • 複数巻の長編を平行に読破しようの消化月間。「帝都物語」以外は消化の方向。

    上巻の人間ドラマ、中巻の事件の情景中心ときて、下巻では人間ドラマに戻る。城山は社長を辞し、合田は半田との対決を思い立つ。

    ここへ来てわかったのは、作者は「グリコ森永」風の事件を同行しようとしているわけではなく、「グリコ森永」をビール会社に当てはめた上で、単なる背景として描きたかったということ。

    また、犯人説もうまく取り入れて、たくさんあった犯人像のそれぞれを全て絡めているというところは好感が持てる。

    一方で、一番描きたかったのであろう、ビール会社内の力関係や総会屋との絡みについては、最後に必要だったのはともかくとして、相当な文量を割いた割にボンヤリと切れが悪かった。

    また、相変わらず「古典名作風」とでも言おうか、必要なのかどうなのかわからない変な言葉で、特定の登場人物の心情を語るでもなく語っているが、正直な所無駄だし、文章の嵩上げに使われているようにしか思えない。「男に欲情する」や「体の中の熱」という表現が何度も出てくるところがそれ。

    もっと言うなら、終章の幕切れの言葉も不満しか無い。山崎豊子にでもなりたかったのでしょうか?

    全ての登場人物が切羽詰まって、全員自殺してもいいような方向に持っていくので、下巻の中盤過ぎまで本当に読んでいて辛かったが、オチの付け方はやや意外ではあった。そこで☆1個リカバー。

  • レディ・ジョーカー事件を皮切りにビール業界が脅迫の対象になる。
    黒幕は誰か。誰かがこれに乗じて儲けている。
    日之出ビールはどう出るのか。
    警察はどう動くのか、ついに特捜が乗り出すのか。
    合田と加納は、消えた新聞記者は、レディ・ジョーカーは。一体どうなってしまうのか。


    こっからネタバレです。


    最終的にどれも結果を述べられないまま終章を迎える。
    結果が出ないことだから書かれてないのだろうけど、またそんなに簡単に出ることではないとも思うのだけれど、釈然としないラスト。
    これが現実と言われればそれまでですが、小説としての答えらしきものを期待してたので、星が少ないです。
    それでもここに至るまでの過程を十分堪能したので面白かったとはいえるのですが。

    う~ん。
    合田さん、結局加納さんとどうなりたいの。
    半田さんへの異常な執着心は何なの。
    よく恋するみたいに犯人のことを考えるって言いますけど、そういうことを指すのだとしても偏執的・・・。
    他の作品でもそうだけど、合田さんはとらえどころのない人である。
    好感の持てない根暗な人だと思う。
    でも作中では嫌われない人なんですね。なんででしょう。

    あと、加納さんが合田さんちにやってきて、おもむろに作る料理が美味そうでした。
    白井副社長の料理も上手そうでした。
    食べたい。

  • 「この国はどうなってんだよ」これがフィクションであることを願うよ。城山は束の間でも「自由」を満喫できたのだろうか。ラストのレディー・ジョーカー達が平穏に暮らしている様子は読み手としてはささやかな夢のよう。高と半田はさすがにいないか。そして…「ゆうすけ」が最期の言葉でなくて良かった。しかもこんなに素敵な合田が待っていたとは思わなんだ(歓喜)。加納とは仲直りしたのかな。

  • それぞれがそれぞれの帰結を迎えました。

  • 最後まで面白かったです。結局最後までモヤモヤしたままの展開も良かったし、容赦のない報われなさも、こういう作品ではアリだと思います。設定が細かくて、正直、裏社会の細部で理解しきれない部分もあったんだけど、それを抜きにしての人間模様とかだけでも十分に楽しめるないようでした。”李鴎”だけで敬遠しがちだったけど、高村作品、もう一度触れてみて良かったです。他の作品にも手を出してみようかな、って気になりました。やっぱ合田シリーズが良いのかな。ま、当分先の話でしょうけど。

  • 配架場所:2F文庫書架
    資料ID:C0031092

  • 「なんだただのホモじゃねーか」
    合田と加納の関係は匂わせる程度でよかったのでは…(そのほうが妄想が捗る)

    すっきりしないところが逆にいい。
    社会事件を元にした小説は好きだけど、その中でも、得るものの小ささというか、ひと一人の力の差とか、そういうやるせなさをまるっと書いた作品だと思う。

  • レディ・ジョーカー3作のうち、3作目。

    レディ・ジョーカーからの終息宣言。
    終わったかと思った誘拐事件は本人達の意思とは別に思わぬ方向へ進みます。
    そして城山社長、合田刑事、久保記者などの主要人物の心理描写が重いぐらい伝わってきます。
    喪失、失意、成長などいろいろ混じります。

    でも最後に何が残ったんだろーか。
    目に見えない当初と同じ空虚感は感じたまま終わった感じがします。
    ただし読み応え十分で、読み終わった感を感じれました。

    読書に体力を使って満足したい方にお勧めの作品です。

  • 読みはじめたら止められなかった。
    上巻では犯人グループに感情移入させられ、犯行が成功したらいいなと思いつつ、どうせみんな最後は捕まるんだろうと思っていたら、こんな結末とは驚いた。
    終わり方が過不足ないと思える素敵なもので嬉しかった。
    高村さんは終わらせ方が上手だと思う(まだ二作品しか読んでないけど)。

    城山さんのパートでは犯罪被害者の苦しさに気付かされた。
    監禁されたとはいえ特に怪我もなく無事であれば周りはよかったよかったとしか思わないだろうが、精神的な衝撃、屈辱、無力感は計り知れないものなのだろう。

    合田と加納の恋愛関係(?)は正直必要ないと言うか、描くにしてもほのめかす程度でいいんじゃないかと思っていたら最後の最後で核心をつくところまで描かれていてなんだか笑ってしまった。
    そして合田は警察を辞めるのかと思いきやなんと昇進までして本庁に戻るなんて一体どういうことなんでしょう。
    続きがあるなら凄く読みたい。

  • 高村さんの作品の中では、個人的にはこれがNO.1です。久しぶりに読み返して、やはり面白かったです。

  • 三冊の長編は読んで終わったら意外と短かった。

  • 一兆円企業を脅迫するレディジョーカー、脅される一兆円企業、事件を捜査する警察、特ダネを追う新聞社の話。
    どの組織にも隠微な思惑があり、いろんな欲を持った人間がおり、様々なしがらみに縛られている。警察の動きでさえ不条理としか思えない描写に満ちていて、勧善懲悪でスッキリ解決する物語の対局にあるのが高村さんの作る物語だ。経済、株、政治、国際情勢など私にはおよそ理解が追い付かない要素が絡まってて分かりにくいことこの上ない。どの組織も、好ましく思えない部分がしっかりと描かれ、レディジョーカーが捕まって欲しいのか、欲しくないのか、わからないまま読み進めた。
    そして、合田さんとお兄ちゃんのよく分からない関係を、ついに恋愛に持っていった高村さんに度肝抜かれつつ拍手しました!そっかー!まさかこんな…。結局、事件は最高レベルの大人の都合で流れていったみたいだけど、私の最大の関心の的であった人間関係が新しい形になったので、とてもよい、☆六個つけたい、単純な私の読後感でした。

  • 結末はちょっと期待はずれだった。
    90年代の描写が懐かしかった。

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レディ・ジョーカー〈下〉 (新潮文庫)の作品紹介

消エルコトニシタ…。レディ・ジョーカーからの手紙が新聞社に届く。しかし、平穏は訪れなかった。新たなターゲットへの攻撃が始まり、血色に染められた麦酒が再び出現する。苦悩に耐えかねた日之出ビール取締役、禁忌に触れた記者らが、我々の世界から姿を消してゆく。事件は、人びとの運命を様々な色彩に塗り替えた。激浪の果て、刑事・合田雄一郎と男たちが流れ着いた、最終地点。

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