照柿 上 (新潮文庫)

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感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (415ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101347219

感想・レビュー・書評

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  • 読んだ本 照柿(上) 髙村薫 20230109
     小説「海竜」を書いた時、読みやすい文章を心掛けたのですが、ある方からは、読み応えが足りないといったご指摘をいただきました。
     ちょうどその時読んでいたのが、「レディ・ジョーカー」で、みっちりと描きこまれた情景や心理描写に、こういったものが必要なのかなとも思ったのですが、情景のリアルさはともかく、ひとつの事象や行動の動機について、ここまで考え込むものかと、逆に僕が書く上でのリアルとは違うなというのが結論でした。行為が思考の結論って言うよりは、衝動の後に感情が付いて来るって方が日常の中ではリアルなんだと。
     とは言え、「レディ・ジョーカー」に描かれる警察内部や新聞・雑誌の編集現場の濃密な描写は、写生的な文章であるにも拘わらず、本当に読ませますね。そして、小説のリアル感が際立っていきます。そこに複数の登場人物のひつこいまでの心理描写が相俟って、息苦しいほどの密度を感じます。
     その後、「マークスの山」を読みましたが、物語としてはこちらの方が好きかなと思いつつ、「照柿」を読んだら、上巻だけなのに、これ面白いってなっちゃう。結局、どれが面白いってことじゃなくて、読む度に魅力に囚われるってことですかね。
     この息苦しいほどの濃密な描写はハード・バップが合うと思って、アート・ブレイキーのクラブ・サンジェルマンなんかを音量上げて聞きながら読みました。息が詰まる感じがたまらなかったです。

  • 読んでいて息苦しくなるような内容です。達夫の世界は、私のような凡人には見えない色でいっぱいなんだろうな…
    美しくもあり、苦しくもあり、先が気になります。
    下巻に続きます。

  • 高村薫の本は海外小説と同じで、100ページ過ぎるまでが大変。
    感想は下巻にて

  • これでもかというくらい重厚な文体。息苦しいまでの熱気。最近の小説には見かけない登場人物の圧倒的な存在感。熱処理の工程の緻密な描写。日常に違和感を抱いた暮らしから、本来の自分に戻るものの、最後には崩壊していく人たち。ミステリ小説とは呼べない、読者を選ぶ作品。レディジョーカー以降の髙村薫の作品を読みたくなった。

  • とにかく夏のうだるような湿気と暑さが身体に纏わり付いてくるかのようなじとっとした読後感。
    どろどろとした血が蠢くような溶鉱炉のような欲情の行方はどうなるんだろうか…。
    合田さんがもうなんか随分と荒んでて見てるこっちが心配になるな…。
    下巻はどうなるんだろう。
    一人の女を介することによって互いを見つめる男二人という構図が、雄一郎と達夫、また雄一郎と祐介という二つの構造が浮かび上がるんだけど、女はただ媒介するだけのもので本筋からいうと蚊帳の外なんじゃないか…と思ったりもするんだよな。
    愛憎って一言でいっても難しいなぁ。

  • 2月9日読了。図書館。

  •  さすがの描写力に圧倒。こんなに書き込んで、ちゃんと面白く進むのかと勉強になる。登場人物の心理もここまでくどくどと書くのでありなのか。ドストエフスキーは辛気くさくて読み切れなかったけど、彼女の本は読めた。問題は合田が恋に落ちるシーンが、私的にはたいした恋に思えなくて、その後の恋的行動にぴんとこなかったところ。ああ、恋だったのね、というのが後付けでわかったけど、それでは緊張感にかけてしまう。でも後半に向かって、主人公が全然寝ないまま、呆然と殺人に向かう表現は圧倒的。人殺しの心理ってこうなの、と納得しちゃうのだった。人を殺したことはないけど。
     そしてあとから青いカラスのエピソードが出できて、とってつけたようかなと思うこともなきにしもあらずだが、ちゃんと納得できる。それまでのいきさつがあったから。でももっと早めに布石を打ってもよかったような気もする。最後は殺人者を第三者的視点で徹底して描き、終章は手紙で締めくくる、そのスタイルは気持ちよく収まる。
     絵を描くことに関する描写もよいし、色の話はとても意図的に描写され続けていて、それも面白い。そういう要素が小説を作り上げているのね、と思う。

  • 感想やらなんやらは下巻にて。
    20121216読了。

  • 実家にあったので再読。あぁ、俺はもう合田雄一郎より年上なのか‥
    消せない焦燥と破滅感を彩る照柿色。救いが無い。

  • いわずと知れた合田雄一郎シリーズ。

    最初は複数の事件が同時多発するので、
    どういう筋の話なのかが、よくつかめなかった・・・

    ただ、次第に合田と野田、佐野美保子の関係性が浮かび上がり、
    合田と野田の感情が交錯していって・・・

著者プロフィール

●高村薫……1953年、大阪に生まれ。国際基督教大学を卒業。商社勤務をへて、1990年『黄金を抱いて翔べ』で第3回日本推理サスペンス大賞を受賞。93年『リヴィエラを撃て』(新潮文庫)で日本推理作家協会賞、『マークスの山』(講談社文庫)で直木賞を受賞。著書に『レディ・ジョーカー』『神の火』『照柿』(以上、新潮文庫)などがある。

「2014年 『日本人の度量 3・11で「生まれ直す」ための覚悟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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