晴子情歌〈下〉 (新潮文庫)

  • 155人登録
  • 3.63評価
    • (3)
    • (18)
    • (12)
    • (2)
    • (0)
  • 25レビュー
著者 : 高村薫
  • 新潮社 (2013年4月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101347240

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
高村 薫
高村 薫
ピエール ルメー...
伊坂 幸太郎
宮部 みゆき
高村 薫
宮部 みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印

晴子情歌〈下〉 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • これはしんどい。
    だが読後に、激しく冷たい浜風に吹かれてしびれるような、生きている感覚を味わえる。
    これ、最初から最後まで飛ばさずに読む、という真面目な人で途中で挫折している人が多いだろうが、それは勿体ない。
    (著者に失礼なのは重々承知で)イカ釣り漁船の描写や地方政治絡みの話や晴子の手紙はささっと飛ばして、彰之と晴子に関する人間関係周辺だけ読んでもいいと思う。
    それでも読後にジンとした人はいつか全部読めばいいし、飛ばし読みでもダメだった人はたぶんもう読まなくていい。
    自分は飛ばし読みだったが、言葉でちょっと言えない(いい意味での)重さを感じられる、いい読書体験だった。このような文学体験ができる存命中の作家は、あとは丸山健二くらいだと思われる。

  •  晴子からの手紙は、晴子が福澤家への奉公を始める時期へと移っていく。そして徐々に母と息子の真実が明らかになっていく。

     疲れる読書でした(苦笑)。

     文章の密度というか、濃度というか、粘度というか、とにもかくにもこんな文章を書けるのは高村さんを置いて他にいないだろうな、という感じでした。

     政治、名門家族の相剋、過酷な漁、いずれの描写も濃い、というか濃すぎる……。なんでこんな文章を書けるんだろうな、と思ってしまいます。

     晴子と夫の淳三との関係が、個人的に一番時代を感じました。現代のように恋愛結婚をしたわけでもなく、ただ成り行きと、福澤家の思惑で籍を入れた晴子。

     その二人の関係性は愛情とか、親愛とかとはどこか違う、晴子は福澤家の血である淳三に憎しみすらもありつつも、それすらも飲み込む時代の流れ、時代のうねり、そんなものを感じました。

     余人の理解を排した文章と展開の果てに待つ最後の一文。彰之のように自分も風が吹き荒れ、波が打ち寄せる浜辺に立っているかのような、そんな荒涼とした気持ちで読み終えました。

     読み終えた時、説明のしようのない不思議な感情がこみあげてきました。ただ、もう一回読みたいか、ってなるとどうかなあ…

  • 再読。
    余人を寄せ付けないこの孤独感、静謐さはなんたることか。
    それでいて艶っぽい。
    母と子の、描写し尽くされた一挙手一投足から目が離せない。


    女の一代記のようでいて、戦前、戦後を見事に描出している昭和史でもある。

    息子にとって母は遠く、母にとっても息子は遠い。
    そして自分すらも遠い。
    絶対的な孤高の前には、あらゆる感情が吹きすさぶ陸の砂、飛び散る波濤の一粒のよう。
    絶望も。恋も。

  • 簡単なあらすじ
    遠洋漁業のため長期外洋航海中の福澤彰之。彼の元へ、東北に住む母・晴子から手紙が届く。
    数百通にも及ぶ長大な手紙には、大正から昭和へと激動の時代を生きた、彰之の知らない一人の女の姿があった。

    感想
    高村薫の印象として、物凄く密度の濃い文体を書く人というのがありましたが、
    これは今まで読んだ中で一番濃いかもしれない。
    読むのに恐ろしく体力を使う小説です。
    登場人物の感情の動きを、執拗過ぎるほど丁寧に、徹底的に語る文体。
    いつもの高村薫節ではあるんですけど、これに青森の荒々しい自然、息づくような老舗商家の風景、ドキュメンタリーを見ているような漁、果てはルソン島の敗残兵の描写まで、全てに焦点を当てた様な濃密さです。
    一行たりとも適当に読むわけにはいかないという気にさせられます。

    また今までの高村薫作品はミステリがかなり強い(というかミステリ)でしたが、
    今作は事件らしい事件が起こるでもなく、あくまで晴子という女の人生、それを受ける彰之の人生をひたすら描きます。
    昭和50年の彰之パートと、大正〜昭和の晴子パートが折り重なるような構成です。
    晴子パートは全て、彰之に宛てた旧仮名遣いの手紙となってます。

    で、内容についてですが、「そこまで息子に自分を曝け出すか?」と疑問符が付くくらいの晴子の書き込みっぷりと、登場人物の凄まじい記憶力の良さや文学的教養の深さ、東大卒だらけの福澤家などに若干突っ込みたくなったものの、結果としては文章から溢れ出す生の力に圧倒されました。
    戦前戦後の様々な事件が劇中で語られるものの、あくまでもそれはオプションであり、時代時代を生きた人々の、喜怒哀楽では区別出来ないような感情が、複雑な織物のように交差していきます。
    また背景となる自然や漁の描写の緻密さも上述したように特筆すべきものであり、特にスケトウダラ漁やニシン漁のシーンは、正直何だかよく分からなくても作者の筆力に圧倒されました。
    東北の大商家の話と聞くと、何だかドロドロの愛憎話というイメージが当初ありましたけど、家族一人一人の記述も微に入り細を穿つものであったためか、それぞれに感情移入できるところがあり、テンプレート的な印象は無かったです。
    例によって同性愛を匂わせる描写も健在でございました。

    あとこの話、『新リア王』『太陽を曳く馬』と続く三部作の第一弾であり、『新リア王』からはこれまでの高村薫作品でお馴染みの合田刑事も登場、実在の政治家も登場する虚実入り混じった話になるようです。
    この2作はまだ単行本しか出ていませんが、文庫化にあたり大幅改訂を行う高村薫のこと、気長に文庫版を待とうと思います。

    気軽に一読、というわけには到底いかない大作ですが、濃密な物語世界に浸れる一冊です。
    高村薫作品デビューには向いてないかもしれないですけど、オススメです。

  • 2016/11/11購入
    2017/5/20読了

  • 福澤彰之シリーズ1作目。合田シリーズよりミステリ度弱め文学度強め。旧仮名遣いが読みにくかったが良かった。以下に詳しい感想が有ります。http://takeshi3017.chu.jp/file6/neta6706.html

  • 130705

  • ひとの思考や感情をひたすらに研磨するように精錬された言葉一つ一つの奥底で、とぐろを巻きうねるように低く熱を発し続けており、それは語れば語るほどもはや愛とも憎しみとも判別のつかない漠とした何かになっていく。

    そして冷徹なまでに膨大な言葉を尽くして綴られた末の、簡素とさえ言えるようなあの一文!
    それを目にした時の息を詰め身震いするような収束感は、髙村薫ならではだなあ。

  • 本書を通じて、谷川雁を知った。

  • [23][130929]

全25件中 1 - 10件を表示

晴子情歌〈下〉 (新潮文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

晴子情歌〈下〉 (新潮文庫)の作品紹介

両親を失った晴子は福澤家で奉公を始める。三男二女を擁する富と権力の家――その血脈は濁っていた。やがて運命に導かれるように、末弟たる異端児淳三と結婚する。一方、母の告白により出生の秘密を知った彰之は、苛酷な漁に従事しながら、自らを東京の最高学府から凍てつく北の海にまで運んだ過去を反芻する。旅の終りに母子が観た風景とは。小説の醍醐味、その全てがここにある。

晴子情歌〈下〉 (新潮文庫)の単行本

ツイートする