ひらがなでよめばわかる日本語 (新潮文庫)

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著者 : 中西進
  • 新潮社 (2008年5月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101348513

ひらがなでよめばわかる日本語 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 言葉について考えます。その一文字について。
    日本語という呪術、言霊、神話に畏れ入ります。

    日本人にとって幸福とは何か。
    現代において幸福とは、哲学的な難題であるように思います。
    答えなんて出ないでしょう。言葉につまるでしょう。
    ですが、ひらがなで「さいわい」と考えれば、解ってきます。

    さいわいは「さきわい」である。「さき」は咲く。「はい」は気配や味わいなどが長く続くこと。つまり、幸いとは、花盛りが長く続き、花あふれ咲きみちることです。幸福とはかくも具体的なものであったのです!

    祝うとはなんでしょう。
    「い」は言う。「はう」は何度もする、継続すること。
    つまり祝うとは、神様に、大切にする心を何度も言うことです。
    では「願う」とはなんでしょう。
    ね=ねぎらう。そして「はう」。つまり、神様に何度もねぎらい、心おだやかにしてもらうことです。

    「ち」というひらがなは、不思議な力のあるものを言います。
    血、乳、父、力のち、いかづちのち。

    「あめ」とはなんでしょうか。
    天、雨、海。みな、濃密な水域をさします。
    空の青色を水とイメージしていたのかもしれません。天地に水がある。とても良い世界観です。

    「ひつぎ」は、霊魂=「ひ」を継ぐこと。
    「しぬ」は、しなゆ、つまり萎えることであり、植物と同じように人間が捉えられています。
    花は鼻。葉は歯。実と耳。芽と目。木と気。茎と首。
    枯るは、離れるを意味します。離は、「か」とも呼べるそうです。
    しんで、かれて、その後、植物のような日本人の魂はどこの世界に行くというと「根」の国へ行きます。「ね」は不動の処という意味です。
    そして「たね」から始まる。
    「た」はどういう意味でしょう。丹田の「た」。魂の「た」。…。
    一文字一文字が、歴史であり、音であり、動きであり、神である。
    それを教えてくれる格好の入門書です。
    日本語や言語に取り組んだりするような人は、苦労した人が多いですよね……といったエピソードが足立巻一の「やちまた」にあったように記憶していますが、この本に不思議な魅力やピンとくるものを感じる人は、やはり苦労をし、もしくは見てきた人なのでしょう。つまり、今を生きる人々すべてのピンとくる必読書ということです。

  • 新書文庫

  • ことば関する見方が変わる、興味深い書だった。漢字の違いで素性の違うことばとするのでなく、ひらがなから、実は同じことばから派生したものだと。一休さんの「このはしわたるべからず」の「はし」が「間」の意味を持つというのは面白かった。2016.7.19

  • 古代語の解釈には様々な説があり派閥がある。読んでいて心地よいが異説も多くあることを頭の隅に置いておきたい。

  • 日本語は漢字によって飛躍的に進化した。他方、漢字は日本語の持つ働きの意味を奪った。たとえば、「かく」は、漢字により、書く、描く、と様々な意味を識別できるようにした。こうした漢字への依存は、日本語の本来の意味を失わせることになる。「かく」の語源は、尖ったもので引っ掻く、表面の土や石を欠くことにより描いたことに始まる。指先で何かを記すことを「かく」と言ったのが「書く」「描く」と漢字により区別したことにより本来の「やまとことば」の意味を分かりにくくしてしまった。意味を限定して理解しようとすることは日本語を痩せさせることであると著者は言う。日本語は本来、包容力のある創造性豊かな沃野を持っていた。ひらがなで表すことにより広がる世界もある。

  • 杏の紹介した本

  • 様々なやまとことば ―純粋な日本語― の成り立ちを,発音や当時の人の気持ち,本質的な意味を考えて分類,類推し,日本人の価値観等を深く見つめることのできる本.日本語に対する考え方が間違いなく変わる.

  • 思いのほか楽しく読めた!
    始めの三部は、体の部分の名称や、自然を表す名詞など、基本的な和語を取り上げ、どういった意味があるかを解説してある。
    (ちなみに、最後の部は、音訓、漢字語の移入など、日本語の語彙の形成についての話。)

    前三部の方は、具体的な議論。
    「ほのお」の「ほ」と「火」あたりは、何となくこれまでにもつながりを感じていたのだが、「へっつい」の「へ」も「火」と同じ成分だと聞くと、びっくりしてしまう。

    私がびっくりしたことをいくつか列挙してみる。
    まず、「いろ」が、元は恋愛の情ではなく、親愛の情を表す言葉だったということ。
    「いらつめ」の「いら」も、「親愛なる」の「いろ」からきているのだとか。

    「いへ」と「やど」の違いにも驚かされた。
    本書によれば、「いへ」は英語のhomeに相当する、精神的な価値を含んだものであるのに対し、「やど」は単なる物質的な構造物だという。
    和歌などでは「やど」が頻出することから、私は逆なのだと思ってきた。

    本書の基本的な主張は、漢字を当てることで、和語の間の意味の連続性が見えにくくなるということ。
    なんとなく、田中克彦の漢字廃止論を思い出しながら読んだ。

    思い出すといえば、この間読んでいた白川静の本も思い出した。
    詩経についての本で、草を結ぶ話が出てきていた。
    白川さんの本には予祝とあったのだが、具体的なイメージがつかめずに終ってしまっていた。

    さらに思い出したのは、「もの」の話。
    単なる物体だけではなく、霊や目には見えない気のようなものも含めた言葉なのだという部分は、野晋の「もの」論と同じだと思った。
    ただ、森羅万象の全体を指す「もの」(自分なりに解釈すると、要は対象ということか?)から、個々を区別するのが「しな」(区切り)という言葉だというところは、この本で新たに知ったこと。

    さて、最後に。
    こういう、昔の語義に遡った話や、語源の話を読むのは楽しい。
    でも、どこまで信頼できるのか、どうやってその節の妥当さを判断したら言いのだろうかと思ってしまう。
    「とげ」と「とが」、「つね」と「とこ」が「なかまことば」だとされていた。
    確かに、子音は一致する。
    でも、例えば母音の違いをどこまで母音交代と考えていいのか。
    そんなことに、少しわだかまりを感じている。

  • 漢語・漢字が入ってくる前の「やまと言葉」から日本語を考察するという趣向。漢字にすれば別の言葉になる、身体と植物の同発音のパーツである「はな」「は」など。語源は同じ。読めば読むほど目からウロコです。

  • 日本語の豊かさを再確認した。この知識があれば、古典を読むこともずっと楽しく豊かな経験になるだろうと思う。高校生や受験生にぜひすすめたい。

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ひらがなでよめばわかる日本語 (新潮文庫)の作品紹介

"目・鼻・歯"も"芽・花・葉"も、"め・はな・は"。文字を"書く"のも頭を"掻く"のも"かく"。太陽も焚き火も"ひ"…日本語はひらがなで考えると俄然面白くなる。漢字の影響を外すと日本語本来の形が見えてくる。言葉がわかれば人間がわかる。日本人の心はこんなに豊かだったのかと驚く。稀代の万葉学者が語る日本人の原点。『ひらがなでよめばわかる日本語のふしぎ』改題。

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