ひらがなでよめばわかる日本語 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101348513

感想・レビュー・書評

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  • 漢字伝来以前からのやまとことばについて考察した刺激的な本。同音異義語というのがあるが、そうではなくてそういうことばや似たことばは皆同じ働きをしていて仲間の言葉という。上代日本語の甲類と乙類の違いも同類のことばだと著者は考えているようだ。古代の人々が人間の生命と植物の生命を同じものとして捉えていたというのも目を開かされる思いだった。日本人のもともとの心の働きへの示唆を与えてくれる。素晴らしい本だと思う。

  • 言葉について考えます。その一文字について。
    日本語という呪術、言霊、神話に畏れ入ります。

    日本人にとって幸福とは何か。
    現代において幸福とは、哲学的な難題であるように思います。
    答えなんて出ないでしょう。言葉につまるでしょう。
    ですが、ひらがなで「さいわい」と考えれば、解ってきます。

    さいわいは「さきわい」である。「さき」は咲く。「はい」は気配や味わいなどが長く続くこと。つまり、幸いとは、花盛りが長く続き、花あふれ咲きみちることです。幸福とはかくも具体的なものであったのです!

    祝うとはなんでしょう。
    「い」は言う。「はう」は何度もする、継続すること。
    つまり祝うとは、神様に、大切にする心を何度も言うことです。
    では「願う」とはなんでしょう。
    ね=ねぎらう。そして「はう」。つまり、神様に何度もねぎらい、心おだやかにしてもらうことです。

    「ち」というひらがなは、不思議な力のあるものを言います。
    血、乳、父、力のち、いかづちのち。

    「あめ」とはなんでしょうか。
    天、雨、海。みな、濃密な水域をさします。
    空の青色を水とイメージしていたのかもしれません。天地に水がある。とても良い世界観です。

    「ひつぎ」は、霊魂=「ひ」を継ぐこと。
    「しぬ」は、しなゆ、つまり萎えることであり、植物と同じように人間が捉えられています。
    花は鼻。葉は歯。実と耳。芽と目。木と気。茎と首。
    枯るは、離れるを意味します。離は、「か」とも呼べるそうです。
    しんで、かれて、その後、植物のような日本人の魂はどこの世界に行くというと「根」の国へ行きます。「ね」は不動の処という意味です。
    そして「たね」から始まる。
    「た」はどういう意味でしょう。丹田の「た」。魂の「た」。…。
    一文字一文字が、歴史であり、音であり、動きであり、神である。
    それを教えてくれる格好の入門書です。
    日本語や言語に取り組んだりするような人は、苦労した人が多いですよね……といったエピソードが足立巻一の「やちまた」にあったように記憶していますが、この本に不思議な魅力やピンとくるものを感じる人は、やはり苦労をし、もしくは見てきた人なのでしょう。つまり、今を生きる人々すべてのピンとくる必読書ということです。

  • 様々なやまとことば ―純粋な日本語― の成り立ちを,発音や当時の人の気持ち,本質的な意味を考えて分類,類推し,日本人の価値観等を深く見つめることのできる本.日本語に対する考え方が間違いなく変わる.

  • 漢語・漢字が入ってくる前の「やまと言葉」から日本語を考察するという趣向。漢字にすれば別の言葉になる、身体と植物の同発音のパーツである「はな」「は」など。語源は同じ。読めば読むほど目からウロコです。

  • 日本語も英語も一文字に意味があると聞いたことがある。それぞれにそれぞれの国らしさが含まれているのではないかと手にした本。農耕民族で神信仰の日本では、そういった特色が個々に含まれていた。これを読み日本語がさらに好きになり、そして日本の情緒を感じ、日本という国に生まれたことを嬉しく思った一冊でした。

  • もうとにかくぎっしりと、「やまとことば」とその解釈が述べられている。

    様々な「やまとことば」が解説されている。
    「め」「みみ」「はな」から始まり・・・全部で97

    これらの「やまとことば」の解説や解釈をを通して、日本人のありようや物事にたいするとらえかたを知ることが出来ると思う。

    かなり多くの「ことば」に対する説明があるので、何度読み返してみても楽しめそうだ。

    印象に残ったものに、「恋(こひ)」は「乞ひ」なんだという解釈は面白かった。
    その『恋(こひ)』について国文学者折口信夫(おりぐちしのぶ)の解釈を引いておられる。つまり、「『恋ひ』というのは『魂乞ひ(たまごひ)』である。恋人の魂を乞うことだ。」と。そして、「日本語の『こひ』は、英語でいえば"I love you"というより、"I miss you"に近いのです。「ラブ」が互いに拘束し合うほどの愛着であるのに対し、目の前にいない相手を慕うのが「ミス」ですから。」という解説はすばらしいと思った。

    野口三千三の後年の本や、黒川伊保子さんの「日本語はなぜ美しいのか」、山口謠司「日本語の奇跡」など、コトバを解説する本は面白い!併せて読み返していきたい。

  • 日本語を再発見する楽しい一冊です。
    め、はな、みみ、さいわいなどひらがなで考えましょう。

著者プロフィール

中西 進(なかにし すすむ)
1929(昭和4)年東京生まれ。東京大学卒業、同大学院修了。文学博士。
筑波大学教授、国際日本文化研究センター教授、大阪女子大学学長、帝塚山学院学院長、京都市立芸術大学長などを歴任。全国大学国語国文学会会長、日本ペンクラブ副会長、奈良県立万葉文化館館長なども務める。
「万葉集」など古代文化の比較研究を主に、日本文化の全体像を視野におさめた研究・評論活動で知られる。読売文学賞、日本学士院賞、大佛次郎賞、和辻哲郎文化賞ほか受賞多数。
主な著書に、『万葉集全訳 注原文付』全五巻(講談社文庫)、『中西進 日本文化をよむ』全六巻(小沢書店)、『古代日本人・心の宇宙』(NHKライブラリー)、『中西進と歩く万葉の大和路』(ウェッジ)など。

「2022年 『万葉秀歌を旅する 令和改装版 CD全10巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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