エイジ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (463ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101349169

感想・レビュー・書評

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  • やっぱり重松清はめちゃくちゃいい。
    以前に読んだことあるはずで、
    でももう一回と思って読んだ。
    ほとんど忘れてたし。

    ツカちゃんとプチトマト&レタスのくだりがすき。

    重松清はどうしてこんなに心情描写がうまいんだろう。
    中学二年生の心の動きがとってもリアルに感じられる。
    ぜったいこの頃だったらこんな風に思ってるだろう、って思える。

    嫌な世の中になっちゃった、とか、この子達が大人になる頃はどんな世の中になるんだろう、とか書いてあったけど、当時からもう20年経っちゃってるんだよね。それもなんか信じられないけど、
    当時と今はそんなに変わっていない気もするし、大きく変わった気もするし。
    自分も歳とったなぁとは思うけど。

    キレる、は周りとの関係を断ち切りたい、というのも、納得というか、言い得て妙。
    重松清さんはすごい。
    そればっかり。

    エイジの、言葉にしにくいけれど、色々と思うことがあって、ちょっと想像力が豊かで生々しく想像してしまう場面も、きっとこういう生徒もいるんだろうなと思うし、精神優良児というのも、確かにと思って、やっぱり、いいなぁ、家族を肯定できるのも。
    私の息子もまっすぐ育ってほしいなぁ。
    やっぱ家庭の力と、友達の影響と、色々とあ?んだろうけれど。

    エイジのバスケみたいに、とことん好きになれることが一つでも見つかるといいなあ

  • 重松先生の作品に没頭した中学生の頃、一番多く読み返した作品(表紙がボロッボロになるまで何度も何度も読みました)
    私が田舎住まいだからか、「え、こんなことまでしちゃうの?」なんて思う場面もありましたが、中学生特有の答えがないモヤモヤ感や不器用な友情、恋愛感情、そして吹っ切れた時の疾走感が堪らなく好きでした
    少年犯罪問題の絡みや成長期の怪我の絡み方も良い
    やりきれない感情を無理に抑えて強がってみたり、なんとなく正しいことをしたくなかったり、そういうものを全部投げ出したくなったり…中学生の頃って感情が激しく右往左往する時期ですから、急に何かを好きになったり嫌いになったりしてしまいますよね
    だからきっとエイジのように「キレ」てしまいたくなる
    「キレ」てしまった自分を再び繋ぎ止めてみても良いんじゃないかな、と思うのは家族や先生、友達なんかの影響もあるけれど、やっぱり自分で出す答えなんだなと思えます

    10代の、特に中学生にはおすすめです

  • 同級生が通り魔だった!
    どうして通り魔になったんだろう。
    ぼくもいつかキレてしまうんだろうか。

    中学2年生のいちばん危うい時期。
    誰にでもある中学生のリアルな感情が見事に描かれている。

  • 中学時代の同級生を何人か思い出した。あの頃、心身共に混沌としてたなーエイジ、ツカちゃん相沢ちゃん…みんなみたいに私はりっぱじゃなかった。

  • まだ5年前中学生だった私には、共感できる部分が多い本でした。
    中学生の時に出会えたら良かったと思える本ですが、もし中学生の時に出会っていたら、友達よりも親に勧めていたと思います。
    中学生のモヤモヤした気持ち、そして解説にある様に一生懸命に生きている姿がひしひしと伝わって来ます。
    中学生の気持ちを忘れてしまった人は、これを読んだら少し中学時代の気持ちを思い出せるかもしれません。
    余談ですが、重松清さんがこの本を書かれた頃はまだ私は小学生だったためか、マジといった類の言葉遣いに少々違和感を覚えました。

  • 中学2年のエイジ。
    彼のクラスにはガキ大将もいれば、東大を目指す秀才もいる。
    エイジはクラスでみんなから一目置かれ、ショートヘアの女子に恋をして、
    家族も仲が良くて、お手本みたいに一般的な中学生ライフを送っていた。

    ニュータウンで連続する通り魔事件。女性が突然後ろから棒のようなもので殴られ、流産してしまったひともいる。
    犯人として捕まったのはエイジのクラスメイトだった。

    罪を重ねた彼の気持ちを考え、悩むエイジ。
    親の言動が気に障り、キレてしまうエイジ。
    学校から飛び出してしまうエイジ。

    エイジだけじゃなく、ガキ大将も必死で悩んでいた。
    母親を心配するあまりキレてしまうガキ大将。週刊誌に戸惑うショートヘアの女子。

    悩んでるのは自分だけじゃないことを知ったエイジ。
    あの秀才だって必死なんだと知るエイジ。

    みんなが通り魔になる可能性はあるし、ならない可能性もある。
    キレることもある。いじめだってある。
    色んなことを認め、エイジは受け入れる。

    ------------------------------------------------------

    少し前に中学生が小学生の首を絞める事件が続いた。
    http://www.sponichi.co.jp/society/news/2013/06/26/kiji/K20130626006095310.html
    この報道を見たときにすぐ、この小説を思い出した。

    「ゲームや漫画が生み出した、歪んだ性衝動が起こした事件」
    そんな感じで物知り顔で学者のひとがテレビで解説していた。

    こういう話を聞くといつも納得できない。
    ゲーム、漫画の暴力描写が性的興奮につながることがあるというのはわかる。
    でも、それを見たひとがみんな女性の首を絞めたくなるのか、通り魔として襲いたくなるのか。

    「理性がその衝動を抑えていて、それを抑えられないひとが犯罪を犯してしまう」ということなのかもしれない。
    それを抑えられないひとって何だろう。そもそもみんなに犯罪を犯したい衝動があるのか。


    ロックバンド「マキシマム ザ ホルモン」のマキシマムザ亮君は中学パワーという言葉を多用する。
    音楽でも漫画でも何でも、大きな感動を得たときのあの衝動。
    それはエロに向かうときの衝動でもある。

    そしてその衝動こそが創作意欲であり、自己顕示欲であり、
    その衝動によって彼は自身のバンドを唯一無二の存在まで押し上げた。


    そんな中学パワーを、通り魔や首を絞めることで発散する中学生は本当に悲しい。
    そういった行動をとらないと、自身の性衝動を抑えらないということが悲しい。
    自分の欲を満たそうとすると、それが犯罪になるジレンマ。

    中学パワーの暴走なのかもしれない。
    罪を犯した彼らには現代の社会はとても生きにくいんだと思う。
    彼らに適正な矯正教育を。あわよくば唯一無二の存在に。

  • こんな大それた体験はしてないけれど、たしかに中学生の頃は今では思い出せないような小さなことや気にするなよ…と思うような事が重なって、悩んで、泣いて、親に当たり散らして。自分の中で消化できない葛藤があったけれど昔も今もその感情は上手く言葉にできない、そんな不思議な心情があったなと自分とエイジを重ねてしまった。

    本作を読んでハッと気が付いたけれど、すごく一人前の気持ちでいた中学生は小学生に毛が生えたようなもん。いろんな葛藤があったからこそ、いまの自分があると思うと無駄じゃない体験たちだと思うし、そう思うことで過去の自分も報われる。

  • 中2という多感な時期の心理描写に圧巻!親、先生、同級生の友達、先輩後輩、様々な人との関わりの中で、外向きの顔と本当の自分との間で揺れ動き、悩み、時には全ての関係を断ち切り、自由になりたい、と願う。自身の中学時代に重ね合わせ、共感できる部分が沢山あった。重いテーマを扱っているのに、爽やかな読後感。中学生の子供を持つ親、指導する立場の方には必須の書!

  • ある日、自分が住む町で連続通り魔事件が起きた。
    そして、その犯人は自分の同級生だった…。

    中学校はとても狭い世界。
    しかし中学生にとってはそれが世界のすべてだった。
    そんな中で必死に生きる主人公、
    思春期という精神的にも不安定な時期に起きた同級生の事件に
    『いつか自分もキレてしまうのだろうか…?』という葛藤が生まれる。
    その葛藤からいつしか心の中に持つ見えない凶器で人を傷つける…通りすがりの見知らぬ人、中学生、そして同級生までも。


    小説だからと飾らない、中学生が現代を生きる様子がそのまま息づく作品である。
    読み終わった後にはまるで自分がその場にいた中学生であったかのような感覚になるだろう。

  • 私たちが日頃他人事として耳に入れ、ほんのひととき被害者への憐憫をおぼえ、いつしか日常に戻り忘れるようなことかもしれない「少年犯罪」

    もし身近でそんな犯罪が実行され、犯人が自分のよく知る(知っていると思っていた)人物だったとしたら……

    親目線で読むと、筆舌に尽くし難い苦しさに支配される。もし自分の子が、とまで思い至らなくても、もし我が子の友達が罪をおかしたら、何を言えるのだろう?

    この作品は、現代社会への問題提起ではないかと思う。

著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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