くちぶえ番長 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101349206

感想・レビュー・書評

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  • 小学4年生のツヨシのクラスにやって来た転校生。一輪車とくちぶえが上手なチョンマゲ頭の女の子、マコトは転校初日に「わたし、この学校の番長になる!」と宣言。マコトとの出会いで、ツヨシと周りのみんなが少しずつ変わっていく物語

    純粋で傷付きやすくて、少しずつ成長している段階の小学4年生の世界・・・
    小さい頃にお父さんを亡くしたマコトは、誰よりも優しくて強くて思いやりがあって、とびきりキュートだった。特に得意な一輪車で珍しく転んだ場面は、とっても可愛くて微笑ましかった。

    私にとってのマコトは、クラスメイトではなく実の姉だったんだと思う。2歳違いの姉は私にとって最強女子で、いつも妹を守ってくれて、強くて頼り甲斐があって、とびきり面白くて、まさに自慢の姉だった。
    そういえば、私にくちぶえを教えてくれたのも姉だったな笑

    重松清さんが小学生の目線で描かれた物語は、やっぱりいつ読んでも温かくて、たくさんの学びが詰まってると思う。言葉で言い表せない感情の名前を、豊富な語彙力で表現出来るところを、敢えてしっかりと小学4年生の目線のままで描かれている。だからこそ、読み手はツヨシの目線に合わせて、子供時代にタイムスリップした気持ちで引き込まれるのだと思う。

    小学生の頃の毎日って、今と全く違う感情や考え方で物事を捉えていたんだけど、どんなだったかなぁと思い出そうとしても、残念ながらすごく断片的にしか出て来ない。
    こんな事があってどんな風に感じたとか、繊細な気持ちを抱いていたことは記憶の奥底にあって、自分でも存在していたことすら忘れかけている。
    けれど、重松さんの作品に触れると、そういった微かで曖昧な記憶が、しだいに輪郭を帯びて、時に鮮やかによみがえって来る。

    楽しかったことや嬉しかった記憶だけでなく、哀しくて苦かった記憶も含めて、ありのままに受け入れられる年頃になってきたからかもしれないが、そういう意味で自分とゆっくり向き合える作品でもあるなぁと思った。

    文体は平易で、小学生から読める作品なので、子供から大人まで幅広い世代の方にオススメしたい。

  • とても久々に重松清さんの作品を読んだ。好きな作家さんなんだけど、なかなか機会がなかったというか。

    記憶に残ってるのは「流星ワゴン」とか「その日のまえに」とか。後者はもう一度読みたいと思っているんだけれど、めっちゃ泣くだろうから、ちょっと躊躇している・・・

    それで、本書。
    書き出しからいい!もうおじさんになっている主人公がふとしたきっかけで思い出した、今やおばさんになっている大事な大事な友達を探して欲しいと読者に呼びかける出だし。その友達は一年間しか一緒にいなかったようなのだけれど、おじさんの語りからするにかなり濃い時間と思い出を共有していたようで、なんとも温かく、出だしからじーんとした気持ちになった。

    その友達、マコトが真っすぐすぎて、眩しい!
    マコトを仲間外れにしようと画策する動きを感じたツヨシが「学級会で話し合おうか」と提案すると、はっきりノーというマコト。その理由が正論過ぎて・・・、どうやったらこんなに純粋な心を持った子になるんだろうかと思う。
    その理由とは、
    ・それより、なぜ、これまで(イジメに近い状況にあった)高野さんのことを話し合わなかったのか。
    ・そもそも話し合う云々より、あんたが声をかけるなどの行動ができたんじゃないか。なぜそれをしなかったのか。

    ごもっともです。
    こんなに簡単に言葉にしていいことではないかもしれないけれど、苦労をしている子や、人生の早い段階で他の子より深い喪失感を味わった子は、得てして強く逞しくなっていくことが多いと思う。(逆に卑屈になる子もいるかもしれないけれど・・・)
    マコトはそんな逞しさに、純粋な正義感も持ち合わせていて、本当に稀有な存在だと思う。

    読み終わってからようやく、「あ、児童書なのかな?」と気づいたけれど(遅っ)、「小学四年生」で連載されていたものということ。なるほど、小学生中学年以上なら、読めそうな良書。
    シンプルでまっすぐで、大人にありがちな変な思惑や邪念がなくて、読後はなんだかとっても心が晴れ晴れとした。今の子どもたちの目の前に広がる世界も、こんなふうにシンプルでまっすぐでありますように。

    それにしても、こんなに子どもの目線で物語を紡げる重松清さんはやっぱりすごい、と思いました。

  • 運動神経がよくて、かっこいいおんなのこ。
    なぜちょんまげなのか。
    ちゃんと意味がありました。

    お別れと、思い出を大事にする気持ち。
    いつまでも忘れてはいけない気持ちです。

    自分にとって大事なことはなにか。
    今それをしなければ後悔するだろうな、とおもえたから、だから一生懸命生きている、それがかっこいいし、それが自分だけでなく人にも影響を与えている。

    いい生き方の見本ですね。
    みなさん読んでみてくださいね。

  • 「くちぶえ番長」良かった。
    面白くて楽しかったなって感想です。
    実際にあった話かなあって思いますよね。どうなんだろう^_^
    悲しかったり悔しかったり楽しかったたりと気持ち温まる物語でした。
    マコトちゃんて素敵な女の子ですね。いつかマコトちゃんとツヨシくん会えるといいなって思いました。
    くちぶえを吹くと涙が止まるのですね。

  • 重松さんの作品の中で1番誰でも読みやすいのがこの作品。
    文字も大きく、ページ数もかなり少ないので小学生でも読めると思います。
    ですが内容もかなり興味深く定期的に読み返したくなります。

  • 小学生のときは、何故か仲のいい友は転校してしまった。街中や通勤電車ですれ違ったりしてるのだろうか。子供時代を懐かしく想う一冊でした。
    でもガムガム団はムカつく。

  • 小さい頃、重松清の中で一番好きな本だった。
    少し大きくなると、小学校4年生を題材にした本なんて自分と関係ないし、もう読んだし、って感じて本棚の奥深くに眠っていたこの本。

    久しぶりに読んだら、なんだか少年時代を思い出しました!塾に行くための電車で読んだなぁって。
    その頃はスマホなんてまだほとんど持ってなくて、みんな新聞とか本とか読んでたんだよなぁって懐かしくなりました。
    なんだかいつでもこの本を読んだら昔に戻ってこれそう。また読もうかな

  • 「弱きを助け、強きをくじく」ブレない番長マコトが痛快。反面、放課後から祖母の介護や家事に精を出す姿は甲斐甲斐しい。海水浴、社会科見学、ガムガム、木登りなんかは事故に繋がらないかとヒヤヒヤしちゃう。

  • もう15年もたつんだ
    その間ずっと読まれている児童文学
    重松清さんは、「小学五年生」とか
    どうしてこんなに子供の描写がうまいのかしら?
    もうすっかりおじさんとは思えない
    子供の頃って出来事はなんとなく覚えていても
    感覚は忘れていますよね
    そこが好きです

    番長きっとお元気ですよ

    ≪ くちぶえを そっとふくんだ 樹の上で ≫

  • 非常に読みやすい一冊でした。
    犬の小屋をベンチに作り替えるシーンは、ちょっとうるっときました。

    大切な人との別れは必ず来る。誰もが避けては通れない経験だ。その時きっと、悲しく辛いと思うのだろう。でも、それでいいのだ。失って悲しく思えるくらい、大切な人と出会えたのだから。

    大事なのはここから。
    ありきたりの表現だが、失っても心の中には残るものがある。きっとこれから、あなたを支えてくれるはずだ。

    大切な人の死は、これほど人を大人にさせるのだとも思いました。
    自分が辛くても我慢して、人を思いやるなければならない時が来る。しかしそれは、順番である。我慢する時は我慢しなければならないのだ。自分が誰かに助けられている、思ってくれている時は、誰かが自分よりもあなたのことを優先してくれているのだから。

    そんなことを、この本を読んでて感じました。

    まことの真っ直ぐな性格、その性格を裏付ける過去なども、笑いあり涙ありで読んでて楽しかったです。ありがとうございました。

著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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