僕の妻はエイリアン―「高機能自閉症」との不思議な結婚生活 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101350516

作品紹介・あらすじ

しばしば噛み合わなくなってしまう会話。「個性的」を通り越し、周囲の目を忘れたかのような独特の行動。ボキャブラリーも、話題も豊富な僕の妻だが、まるで地球人に化けた異星人のようだ…なぜ?じきに疑問は氷解する。彼女はアスペルガー症候群だった。ちぐはぐになりがちな意識のズレを少しずつ克服する夫婦。その姿を率直に、かつユーモラスに綴った稀有なノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 高機能自閉症の妻を持った夫が妻との生活を綴ったエッセイ...らしい。
    自閉症のかたを描いたものというのは東田直樹さんの『自閉症の僕が跳びはねる理由』を読んだことがあるのみ。
    東田さんとの共通点や違う点を思い起こして読み比べてみるのが興味深かった。やっぱ、ぴょんぴょん跳ねるのは心を落ち着かせるためなんだね。
    「妻」は饒舌というか自分のことを分かりやすい例えで語ってくれるのでありがたい。彼女の気持ちも分かるゆえ、「夫」になんでこんなことも分かんないの?とちょっとイラつくことも。
    最初から「夫」のキャラにも「妻」のキャラにも違和感があったのですがその理由が著書のあとがきによって明らかになったときは合点がいった。なるほど、そういうわけだったのね。

    解説は自身も自閉症スペクトラムの作家、市川拓司さん。
    彼も「妻」とも東田さんとも違っていて、当たり前だけどひとくくりにしちゃいかんな、と思いました。

  • アスペルガー症候群の著者を外国人または宇宙人に例えて何がどう違うのか描く。
    自分の感想を書く前に、うっかりAmazonのレビューを読んでしまったら、もうダメ。自分の感想がどこかへ飛んでしまった。それほどまでに強烈な憎悪嫉妬がレビュー欄にはうごめいている。曰く、「こんな自慢話聞きたくもない」。

    著者は、アスペルガー症候群に伴う様々な困難を努力と持ち前の頭の良さでなんとかカバーして生活を送っている。その過程で起きるドタバタも、悲惨になりすぎないようユーモアを交えながら、でも、本人と周りの辛さや戸惑いも残しながら、教育的なエンターテイメントテイストで描かれている。私にはとてもいい「ちょっと脚色されているけど、登場人物たちに共感しつつ困難を克服していく冒険譚」だと思えた。
    自閉症については、もうかれこれ四半世紀くらいずっと追いかけているテーマで、それなりに背景となる知識は持っているのに、やはり医者ではなく当事者側からの発信には驚かされることが多い。貴重な作品だ。(自閉症的な傾向は自己アピールとは反対だから)

    でも、Amazonのレビュー欄には「こんな自慢話ばかり聞かされ苦痛」というコメントがずらーっと並んでいる。それはかえって自閉症スペクトラムにとっていかに日本が生きにくい社会なのかを強烈に強烈に照射している。
    この程度の話しをしただけでここまで叩かれるのか。
    ずいぶん控え目だと思うが自慢話として受け取られ妬み嫉み憎しみ蔑みの対象になるのか。
    そりゃあ生きにくいよ。
    そりゃあ周りとぶつかるよ。
    アスペルガー症候群は「ビョーキ」で、ビョーキを持っている側が「悪い」から「歩み寄る」ことを強いられるけど、これは辛いよ。二重三重に辛いよ。

    空気を読めないのが自閉症スペクトラムで、空気を読めない人に厳しいのが日本。
    本書のタイトルが奇しくも示しているように、自閉症の人はエイリアン=外国人。「グローバル人材」の要件って、英語ができるかどうかではない。エイリアンとうまくやっていけるスキルのこと。Amazonのレビュー欄が本書の存在意義をある意味で正しく照射している。

  • 近所のアーケード商店街にオープンな本棚が出来てました。その本棚に入っていた一冊です。
    私も発達障害と診断されて心療内科に通っている身ですので、読んでみようと手にとって、3ヶ月かけてようやく読み終えました。

    「異星人妻」が私と全くと言っていいほど特性が同じなので、ほとんど自分の事を言われているように思いながら読み進めておりました。

    が……

    だんだん、「この旦那何様なん?」「いやそんなん分かるわけないやん」「『ふつう』人間代表のつもりかコイツ?」と腹立ってきましてですね。

    それでも何とか最後まで読み終えて、うん、そうかなとは思ってたけどやっぱそうだったのねと、安心して読了することできました。

    とりあえずな、旦那も旦那だと思うぞ。
    泉さんの言ってる事は間違ってないけど、語りのちょっと自虐気味な感じがつらいな。

    旦那さんとの違いも、距離のメタファーで言うところの「異星人同士」っていうよりかは、「同じ星を回る小惑星」レベルな気がします。「日本と韓国」レベルって言ってもいいんじゃないかな。


    まぁ……結婚生活、よくやってますよこの人たち……。

    よく、結婚生活やってますよね、っても(角が立つけど)言いたくなるけど、多分ここに書いてあること以上に泉さんはだいぶ旦那さんに救われてもいるんだろうなぁ。

    発達障害抱えて一人暮らしすることがどれだけ恐ろしいことなのかは、例えば
    「ツッコミ担当が抜けたばかりのお笑いコンビで、いよいよボケ担当が初めてピン芸人として活動する」
    様子に立ち会うようなもんです。
    本人も不安と怯えで一杯だけど、周りとしても見ていて非常に危なっかしい。

    だから、「介助者」って程でもないけど、生活を共にしてくれる「パートナー」は無いと生きられないんですね(もちろん、身体障害・知的障害・難病を併せ持っていたり発達障害の程度が重度だったりする場合は、必ず専門性の高い「介助者」が必要です)。
    まぁ、「パートナー」とは言わないまでも、「ツッコミ担当」「翻訳担当」「“ふつう”目線担当」「一緒になってボケてくれる担当」、あと特に「黙って悩みを聞く担当」「医療サポート担当」「ソーシャルワーク担当」は必ず必要ですね。

    旦那に全部やれはキツイでしょう。というか、無理です。
    旦那には旦那の立場ってもんがあるでしょう。旦那だから出来る仕事がある以上に、旦那だから出来ない仕事も沢山あります。友だち巻き込んで分担出来るのが一番いいし、公的なサポート、特に医療・福祉系のサポートも必要になる話ですしね。

    まず、今の時代、この本が書かれた時点よりも理解が進んだ社会に、支援が発達した社会に生きられるようになってきたように思います。まず、この先も現状に胡座をかかずに、したいこと、しなければならないこと、できることを、一つ一つやっていくだけですが。

  • 結婚してからアスペルガーだと診断された妻を持つ夫の苦労・愚痴話。
    いわゆる「カサンドラ症候群」ってやつかと思いながら読み進めたのだが、どうにも夫が自分のことを棚に上げて、すべてのうまくいかない元凶を妻の障碍のせいにしている思考が鼻につき、ずっともやもやしていたのだが、著者あとがきで衝撃のネタばらし(まさか叙述トリックミステリだったとはw)。
    自閉症スペクトラムとはどんなものなのかという興味を持つきっかけづくりとして本書は最適。

  • 高機能自閉症の著者(女性)が、夫婦生活を夫の視点で綴ったドキュメンタリー。

    夫婦生活を通して自閉症の特徴(社会に適応するのが難しい、人と気持ちを伝え合うのが困難、思考の仕方が柔軟性にかけ、特定の事にこだわりを持つ)が分かりやすく描かれている。

    自分も、居酒屋みたいにガヤガヤした所で会話を聞き取るのがとても苦手。何人かのグループで楽しく会話しながらお酒飲んでて、実は自分だけよく聞こえなくて疎外感を味わってたってこと、よくあるので、「妻」の聞き取りが苦手という部分には共感した。

    本書の凄いところは、相手の気持ちをうまく理解することが出来ない著者が、夫の視点に立って、自閉症の妻のことをどう感じ、どう対処してきたかを克明に綴っていること。目隠しして知らない町を探索しているような、一大チャレンジだったんだろうなあ。

    著者には申し訳ないけれども、こんな「異性人」的な人と同居生活をするのは、自分にはとても無理だろうなあ、と思った。その意味で、著者の旦那さんは凄い!

  • 「高機能自閉症」の妻との生活。

    妻の努力は素晴らしいと思った。
    自分を知れば、対処方法もわかるはず、と。

    接する機会のある人には関わり方の参考になると思う。

  • あとがきを見てびっくり。

  • ノンフィクションではあるが、普通にリアルな小説として楽しませてもらいました。著者のあとがきを読んで驚きました。それに気づいたとき印象が変わると思う。

  • 発達障害とはなにかを考えるときに最初に読みました。
    面白い内容でした。

  • 自閉症スペクトラムの事を異星人って表現するのはなかなかユーモアがあって、著者の言葉への深い理解と尊敬を感じさせる部分な気がした。
    異星人が日常でどんなズレを感じているのか、分かりやすくてとっても興味深かった!

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