- Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101351513
作品紹介・あらすじ
本当に愛する人ができたら、絶対にその人の手を離してはいけない。なぜなら、離したとたんに誰よりも遠くへと行ってしまうから-。最初で最後の運命の恋、片思いの残酷な結末、薄れてゆく愛しい人の記憶。愛する者を失い、孤独に沈む者たちが語る切なくも希望に満ちたストーリーたち。真摯な対話を通して見出されてゆく真実の言葉の数々を描いた傑作中編集。
感想・レビュー・書評
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「対話」しコミュニケーションを取り合う中で
人は自分にとって
特別な出会いを獲得していくことを解らせてくれる
3篇からなる短編集。
なんて味わい深く
人を好きになることの真理を
そっと心に届けてくれる作家なんだろ。
孤独の淵に立ち
運命の糸に操られていると感じる
それぞれの主人公たち。
彼女のためなら命を投げ出しても構わないと思える
一世一代の恋。
。
やがて忍び寄る
別れや死の影。
しかしどの作品も
読む者に強い希望を与えてくれる。
金城さんの小説はハードボイルドだ。
(村上春樹が文体までも抑制されたハードボイルドなスタイルにこだわっているのに対して、金城一紀は恋愛小説の中に
「精神のハードボイルド」を貫いている)
みな自分の信念を持ち、
自分のルールに従い、
自分の意志で決断を下す。
それは後悔をしないため、
運命という見えない力に
少しでも抗うために。
(社会に馴染めぬ落ちこぼれや不良などを主人公にした
権力に反発するアウトサイダーの視点にもいつも激しく共鳴してしまう)
そう書くと
なんか暑苦しい作家なのかなと敬遠する人もいそうだけど(笑)、
その一方で
彼ほどロマンチストな作家はいないと思う。
(また優れたハードボイルド小説がそうであるように、男同士の友情やベタベタしない絆を描くのがホントに上手い)
恋が始まる瞬間を捉えた、
まるで二人の鼓動が
リアルに聞こえてきそうな会話の妙。
「天国と地獄」をBGMに
忍び込んだ夜のプールと
金網越しに絡み合う指と指。
映画館で「鉄道員」を観たあとに
彼女がねだった
淡い紫色の忘れな草。
そんなうっとりするような詩的な表現や
情景描写にも
いつも胸を衝かれてしまう。
大切な人の手を探し求め、握り続けるためだけに、
人はどうにか生きているし、
どれほど心が動いたかによって
人は作られていく。
言葉を尽くすことを
怖れないこと。
大切な人の手を
決して離さないこと。
この作品とリンクしている「映画篇」と同様に、
自分にとって大切なこの小説が
誰かのどこかを揺さぶり、
いつかどこかで
誰かを支える記憶の一部になれば嬉しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
亡くなった愛する女性への想いを語る登場人物の気持ちを描いた作品。
別れた奥さんの遺品を受け取りに行く道中で語られる夫側の思い出を描いた三作品目の「花」は特に良かった。 -
運命の歯車という争いようのない大きなものの中で、それでも私たちは大切な人を、ものを見出して生きていく。
恋愛小説
死神と呼ばれ、親しい人や愛しい人を全て失う運命。どんなにお金があっても、これほど残酷なものはない…。
永遠の円環
どこか伊坂幸太郎のような、味わいがある。。
花
記憶を辿る旅。こちらは重松清ぽい。 -
『対話篇』 金城一紀 講談社
もともと金城さんは好きでしたが、これはタイトルから、難しい物を連想してしまい、読んでいませんでした。想像していたのと全く違って、しみじみと良い作品でした。
3つの物語が入っているのですが、どれも引き込まれ、特に最後の「花」は、切なくて鼻の奥がツンとしてしまいました。
一つ一つの話に浸ってしまい、どれも「恋」の話なのに、何でタイトルが『対話篇』なんだろう?と訝しく思う鈍い私。一晩たってから、3つの話が、全て二人の男性の「対話」で成り立っている事に思い至り、納得しました。
それぞれに、死と生、男と女、運命を考えさせられる話でしたし、内2篇に、レコードのセンターラベルに《UNbreakable》とシールが貼られているにも関わらず、それが割れる話が出てきたのも、何か象徴的でした。
これを読んで、対話とは男同士の物で、愛し合う男と女に必要なのは、手を離さないで居続ける事なのかも…。と思わされました。
金城さんの書く人物の言動に、いつも心臓を締め付けられる様な愛着と憧憬を感じるのは何故なのでしょう。どうしてこんなに心惹かれるのでしょうか。私の場合、それが異性に対する憧れでは無く、自分が男なら、男に生まれていたら、と言う強烈なシンパシーを伴う物として迫って来るのです。
金城さんばかり読んでいたら、私は本当は男に生まれて女を愛したかった、と思うようになりそうです。-
るりまつりさん、はじめまして!
関西出身で東京在住、
読書は勿論、映画と音楽と猫には目がないプロボクサーです。
早速のリフォローあ...
るりまつりさん、はじめまして!
関西出身で東京在住、
読書は勿論、映画と音楽と猫には目がないプロボクサーです。
早速のリフォローありがとうございました(^o^)
僕もこの金城さんの小説大好きです。
感性が似てる部分があるからか
同世代だからなのか分からないけど、
いつも共感しきりだしストンと腑に落ちて
他人とは思えないくらい肌で理解できるんですよね。
この作品は特に純粋な恋愛小説なので
文章がすごくロマンチックで
うっとりするような詩的な表現や 情景描写にも激しく惹かれました。
それにしても、 ゆりまつりさんのレビュー読ませてもらって、
その優しい眼差しと繊細な感性に惹きつけられました。
またオススメありましたら
教えていただけると嬉しいです(笑)
ではでは、これからも末永くよろしくお願いします!
また素敵なレビュー楽しみにしてるし、
いろいろ参考にさせてもらいます。
あっ、コメントや花丸ポチいただければ
必ずお返しに伺います。
(仕事の都合によってかなり遅くなったりもしますが…汗)
2015/04/19 -
コメントいただいていたのに、ずっと気づかないまま、本当に申し訳ありませんm(_ _)m
体調を崩して、3月、4月と寝たきりの事が多かったの...コメントいただいていたのに、ずっと気づかないまま、本当に申し訳ありませんm(_ _)m
体調を崩して、3月、4月と寝たきりの事が多かったのですが、漸く回復して来ました。読んだ本全てには、レビューがなかなか書けませんが、ぼちぼち楽しんで行こうと思っています。
この『対話編』は、本当に素敵な作品ですよね。円軌道の外さんの本棚は、私の好きな作品が沢山あつて、楽しみです。プロボクサーの方と本を通じてお話する事があるとは夢にも思いませんでした。これからも宜しくお願いします(^ ^)2015/05/23 -
るりまつりさん、おはよーございます!
ご無沙汰しております。
いえいえ、僕のコメントはお気になさらずに(笑)
それより、お体大...
るりまつりさん、おはよーございます!
ご無沙汰しております。
いえいえ、僕のコメントはお気になさらずに(笑)
それより、お体大丈夫ですか?
僕はるりまつりさんの
好きが伝わる、誠実で感じのいいレビューが好きなので、
あまりムリをなさらずに
るりまつりさんの『好き』を少しずつ増やしていってくださいね。
自分だけの『好き』は心の核になって
どんなツラいときも自分自身を救ってくれます。
あはは(笑)
僕は見た目がいかつく見えて
いかにも本なんて読まなさそうに見えるのか、
本屋でうろうろしていたら
必ず万引き犯に間違われて警戒されます(笑)(^^;)
(顔が傷だらけでいつも大きなスポーツバックを持っているのも怪しく見えるのか、いつも誰か書店員があからさまに僕をマークしてるのを感じます笑)
あっ、こちらこそ
末永くよろしくです!
また僕の本棚にも気軽に遊びに来てくださいね(^^)
素敵な週末を!
2015/06/13
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もしかしたら明日にでも死ぬかもしれないという状況に置かれた時、人は最期に何を、いや、誰を思うのか。
不思議な関係(初対面だったり、普段は全く親しくなかったり)の男性二人がこのようなテーマについて対話するという形式で進む短編が3つ。
静かな静かな短編集だった。
最近読んだ「流星ワゴン」とも一部重複するテーマがあった。
「映画篇」を読んだ時に、緩やかにしかつながっていなかった個々の短編が、最後に一気に集約されていくさまを見たので、この作品についてもきっと最後の短編が他の短編の総まとめに違いないと思って読んでいたら肩透かしをくらってしまった。まぁ、これは私が勝手に期待しただけで作者には何の非もないが(笑)。
しかしこの3編、まったく交差するポイントが無いかというとそういう訳でもない。ただしそれが谷村というチャラい法学部教授だというとても残念な感じ…w
穏やかなんだけど、背筋がどことなく寒くなるような部分もある2編を読んでからの、最後の「花」がハートウォーミングで良かった。
ちなみに、金城一紀作品は今まで『映画篇』しか読んだことなかった。
これは金城作品の読者としては相当イレギュラーな傾向だと思われるし、そんなバックグラウンドのために他の読者とは違った感慨を持っている模様。
他の作品はもっと熱くて勢いがあるみたいで、想像がつかない。 -
ほっこりというか、ほんわかというか、
軽くて温かみのある話が、BGMのように読ませる。
軽い、あっさーりしすぎ....と思うけどこの軽さがいい。
どっしりとした読み応えのある話もいいけど、
さらっと読めて、ジーンとくるのも好きだなぁ。
ラストの話は思わずウルウルしてしまった。 -
本当に久々にときめいた恋愛小説集。
3編全てが素晴らしい。切なく暖かく心に染み渡った。
汚れた心が洗われるような読後感。
一編がたった70ページかそこらなのに、こんなに奥行きのある物語が作れるんですね。最近の小説ってやたら長いだけのものが多くて辟易します。見習って欲しい。というよりも作者の力量がなければ、ここまでシンプルなのに胸を打つ物語はきっと作れないのかも。
中でもオイラのお気に入りは、仲良くなる人々全てが死んでしまうという呪われた男の子の物語。友達になれば死んでしまうことがわかっているから、ずっと孤独に生きてきた大学生が、生まれて初めて女の子に思いを寄せるという、切なさ純度100%のラブストーリー。
…恋愛がしたい。 -
どのお話も、死は身近にあり、愛する人と会ったり話したりすることは当たり前ではなく、奇跡的なことなんだと感じさせられました。
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私はとても好きでした。
去ってしまったら、死んでしまったら、もう戻っては来ない。しかし悲しんでいるばかりではない。
過去を振り返っては思い出し、美しい記憶に思いを馳せながら生きる人間を、愛しいと思う。人間の愚かなところも、愛しいものだと、愚かさこそが、愛しいもののように私には感じられてくる。だから私は金城一紀さんの作品が好きなのです。