- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101351667
感想・レビュー・書評
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2000年、アメリカの私設研究機関であるクレイ数学研究所が数学上、重要な未解決問題を選び、100万ドルの懸賞金をかけた。
その中の一つ、「ポアンカレ予想」
「単連結な三次元閉多様体は、三次元球面と同相と言えるか」
というもの。
専門知識がなければ、何を言っているかさえ分からないが、宇宙の「外」に出ることなく、宇宙の形を調べる事につながるもの。
1904年にポアンカレの論文の中で「問題」として提唱されたため、「ポアンカレ予想」と呼ばれるようになった、この「宿題」は、その後、約100年の間、数学者を苦しめることになる。
そのポアンカレの「宿題」も2002~2003年に一人のロシア人数学者、グリゴリ・ペレリマン博士によって解決される。
その事自体、数学界が大騒ぎするほどの話題になったが、それ以上に騒ぎになったのは「数学界のノーベル賞」と呼ばれるフィールズ賞受賞が決まった時のこと。
ペレリマン博士は、その賞の受賞と賞金の受け取りを辞退したのだ。
裕福なわけでもないのに・・・。
それどころか、その後、公の場から姿を消してしまう。
・・・というより失踪同然の状態となる。
100年の間、数学者を苦しめた難問とはどのようなものか
その難問を解いたペレリマン博士はどんな人物なのか
そして何故、フィールズ賞を辞退したのか
本書は、2007年10月22日に放送されたNHKスペシャル「100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者 失踪の謎」が元。
そのためか、番組で使った写真が多数掲載されている。
ただ、その写真も人物ばかりでなく、ポアンカレ予想や関連する問題を解説する図にして欲しかったという気はする。
(そのため、分かりにくくなっている、というわけではないが)
ちなみにポアンカレ予想の説明は、イメージ優先ではあるが分かりやすい。(少なくとも分かった気にはなった)
また、この問題の解決に関わった数学者達の話もついつい引き込まれてしまう。
本筋から離れてしまうが、著者は番組作りの際、何度もこう言われたという。
「数学の番組を作る?私は数学は嫌いでしたねえ」
確かに学生時代、自分も数学は嫌いだった。
が、社会人になった直後くらいから、全て理解できなくても、数学の話題について興味を持つことも多くなった。
(それに比例して「玉砕」することも多くなったが)
数学が現実の自然現象を解くカギになることが分かったからだろうか、試験で合格点を取る必要がなくなったからだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
世紀の難題「ポアンカレ予想」がどのような来歴を辿り、如何に証明に至ったかを纏めたTVドキュメンタリーの編著。所々映像の一画面をそのまま貼り付けたような見にくいところがあるか、直感的に素人にも馴染めるような解説は好感が持てる。
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ポアンカレ予想と、それを解いたペレリマンを追った本です。
NHKスペシャルとして放送された内容をまとめてます。
さらっと読めますが、数学者たちの人生を追った部分はどうしてもちょこっとだし、かといってわかりやすい数学の本、というわけでもなく…
やはり中途半端な感じの本になってました。
NHKスペシャルの副読本みたいなもんでしょうか。
1冊の本としての面白さは少々欠けますが、入門編としてはいいのかも。 -
大変,興味深い本でした。私のような人間には,ポアンカレ予想そのものを意義を理解すること自体がむずかしいですが,この本は,そこのところ,素人にもわかりやすく解説しつつ,難問に挑戦する人間の姿を活写しています。
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NHKドキュメンタリーの書籍版。取材班が執筆。
いくつかの図が、テレビ画面を取り込んだようで見にくいのが気になる。
多くの数学者への取材を経てペレリマン博士に近づいていくのが面白い。 -
数学の難問、ポアンカレ予想を証明し、その褒賞とも言えるフィールズ賞の受賞を拒否したペレリマン博士に関するNHKスペシャルをまとめた本。数学に対する不思議な魅力をわかりやすくまとめていると思う。結局、数者が何をやっているのかは、相変わらずわからないけど、どうも科学界の芸術家のような存在であるらしい。
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求道者の後ろ姿を見せることにより、数式が証明される過程が描かれている。放送されたNHKの映像が観たくなった。
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100年もの間、誰も解き明かすことのできなかった数学の難問「ポアンカレ予想」。この世紀の難問がついに解き明かされた。そして、ノーベル賞よりも権威があるとも言われるフィールズ賞が授与されることになった。だが、彼は、受賞を拒否し行方をくらましてしまった。いったいなぜ…?そもそも「ポアンカレ予想」とは何…?
元々はNHKスペシャルで放映された内容。友人がこの番組を見て興奮気味に話をしていたのでずっと気になっていた。
難問を解明した彼の前代未聞の事件からはじまり、「ポアンカレ予想」とはそもそもどういうものか、数学にも年代によってトレンドがあること、そして、どういうアプローチで「ポアンカレ予想」が解き明かされたのか等の説明は、数学が苦手な私にもサクサク読み進めることができた。
難しい言葉をいかにわかりやすく噛み砕いて説明するか著者の苦労が、あとがきからひしひしと伝わってきた。
「ポアンカレ予想」によって人生を翻弄された数学者が何名もいたこと、そして、思いもよらないアプローチで「ポアンカレ予想」が解き明かされていくくだりは、一気に読み興奮した。
意外だったのは、散歩好きな数学者が多いこと。なんでも道を歩きながらの方が研究に集中できるのだそう。東大の本郷キャンパスから三四郎池を潰して有効利用すべきだという計画が持ち上がったとき、数学の教員だけは猛反対したというエピソードがあったのだとか…。
受賞を拒否した数学者がなぜ行方をくらましたのか…については期待できる結果ではないのだが、未来への考察は、ワクワクするものだった。 -
数学に興味があれば面白い。
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夏休みといえば、読書感想文。
読書感想文といえば、自分に縁遠い内容の本。
ということで、新潮文庫の100冊の中から、自分に縁遠そうな本を購入。
ポアンカレ予想という100年にわたって謎だったという、読み終わった後でもやっぱり何が何やらさっぱりわからん謎の証明をした人と、謎を考えた人、謎に取り組み続けた人を取材したNHKディレクターの人が書いた本。
思いのほか面白かったのですが、「賢くて、世の中の役に立つお人かもしれないけれど、こんな人、職場に居なくて良かった」というのが一番初めの正直な感想。
だが読み進めていて、改めて考えた。
世の中で役にたったり、偉い人というのは、世界的な発見をしたり研究をしている人ではなく、地道にこつこつ仕事をしている人ではないか。
たとえば、TV放送と言う万人に向かって発信する情報を作るために、こつこつ取材をし、映像化を考えたこの本の著者の人たちだ。
仕事とはいえ、すごいと思う。
と思うほど、謎を解いた人は、個性的で済ますのはちょっとまずいんじゃないのかなぁ。な人だった・・・。