100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101351667

感想・レビュー・書評

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  • 「単連結な三次元閉多様体は、三次元球面と位相同型である」

    さっぱり分からぬ。大体、私は算数でつまずいているので数学
    なんかもっと分からない。

    高校時代の数学のテストなんて、50点以上を取ったことがない。
    あ、なんの自慢にもならんな。

    それでも100年も解けなかった難問に答えが出たと聞いたら、
    興味は湧くのである。しかもそれが私の愛するロシア絡みと
    なれば尚更である。

    という訳で、冒頭のポアンカレ予想なのだ。何人もの数学者が
    挑み、敗れ続けた難問を解いたのがロシアの数学者グリゴリー・
    ペレルマン(本書ではぺりルマン表記)。

    しかし、彼はポアンカレ予想に懸けられた懸賞金もフィールズ賞の
    受賞も辞退したばかりか、務めていた研究も辞め、姿を消した。

    何故、彼は難問を解明したのちに姿を消したのか。ここが一番興味
    をそそられることなのだが、本書はペレルマンその人の追うことも
    しているが、紙数の多くが割かれているのは数学者たちがいかに
    ポアンカレ予想と格闘して来たか…だった。

    なので、私にはちょっと肩透かし。それでも、数学門外漢でも理解
    しやすいように書かれているのでざっくりと理解するにはいいかも。
    NHKの番組の書籍化なので、番組を見ていれば一層に理解が深まる
    かもしれない。それでも、ポアンカレ予想は理解出来てないが。

    でもね、やはりもう少しペレルマンの半生にも焦点を当てて欲しい
    と思うのよ。ソ連時代に少年期を過ごしているのだし、ユダヤ系
    なのだから差別があったはずなんだもの。

    一応、テレビ番組としてペレルマン本人に接触しようと試みては
    いる。ペレルマンを知る数学者たちに彼に関してのエピソードも
    聞いている。だが、結局はペレルマンを追えてないのは残念。

    友人・知人との交流も断ち、雲隠れするように菅を見せなくなって
    しまったペレルマン。彼は今も孤独に数学の次なる難問に挑んで
    いるのかもしれないね。

    ロシアの森でキノコ狩りをしながら。

  • ペレリマンが証明した内容を解説するわけではなく(仮に解説されても理解できるはずもない)、ポワンカレ予想が解かれるまでに数学界で起きたことのドキュメントと云うべきか。

    ひとりの超絶的な天才と、引き立て役に回った数学者たち。あるものは失意のままに病死し、またあるものは諦めて研究分野を変える。人間ドラマとしても楽しめる。

    ペレリマンが「現在、別の関心事がある」と述べていると、あとがきで紹介されている部分で、ぞくっと鳥肌が立った。

    本作はドキュメンタリーとしてすぐれているので、NHKスペシャルの「単なる文字起こし」とは、誤解しないほうが良いと思う。

  • 2016/06/22

  • 数学の難問を解くことに、人生を懸け、周囲と交渉を断って、思索の世界に没頭する数学者。
    そして、ついに100年の難問ポアンカレ予想を解いた数学者は、数学の思索の世界から逃れられなくなった。その世界は、きっと論理的で美しい世界なのだろうと思う。
    ポアンカレ予想が、なぜ解けたのかは、なんとなく分かった気がする。
    中学の数学の時に、グラフ理論の一端は教えてもらった覚えがある。。。しかし、ポアンカレ予想がどう解けたのか理解が及ばなかった(なんとなくわかった気もしない)のは、悔しい。

  • ポアンカレ予想を証明したグレゴリー・ペレリマン。人前から姿を消した彼の消息を追いながら、ポアンカレ予想に挑んだ数多の数学者たちに光を当てる。ペレリマンに会うことはできるだろうか。

  • 数学の発展と教育を目的として組織された、クレイ数学研究所なる団体があるさうです。この団体が、2000年(平成12)年に「ミレニアム懸賞問題」といふものを発表しました。100万ドルの懸賞金がかけられてゐるので、この名称になつてをります。さしづめ20世紀の数学界が遣り残した「宿題」と申せませう。
    全部で七つあり、そのうちの六つはまだ解決してゐません。解決した一つが「ポアンカレ予想」で、これの証明がされた時は、結構なニュースになり騒がれた記憶があります。なにしろポアンカレが1904年に提唱してから、あまたの数学者の挑戦を跳ね除けてきた、まさに「100年の難問」ですから。

    そのポアンカレ予想を証明したのが、ロシアの数学者・ペレリマン博士。
    これほどの偉業を為した人ですから、「数学界のノーベル賞」といはれるフィールズ賞が贈られることになりました。ところが! ペレリマン博士は受賞を辞退し、懸賞金も受け取らず、社会と関はるのを避けるやうに姿を消すのでした。どうして?

    『100年の難問はなぜ解けたのか』は、元々「NHKスペシャル」として放送された同名の番組を書籍化したもの。著者の春日真人氏はその番組を制作したディレクターださうです。
    彼らは、行方が分からないペレリマン博士を探し、サンクトペテルブルグを皮切りに取材を開始するのでした。
    果たして、取材班はペレリマン博士に会ふことができたのでせうか...?

    そもそも、ポアンカレ予想とはどういうものでせうか。それは次のやうに表現されてゐます。
    「単連結な三次元閉多様体は、三次元球面に同相である」
    わたくしには全くわかりません。著者がいろいろと用語を云ひ換へて素人に解るやうにい工夫するのですが、それでもわからない。
    数学語と呼ばれる特殊な用語を駆使するため、一見日本語でも、まるで未知の外国語で説明されてゐるやうな気分になるのです。

    それでわたくしは数学上の記述を完全理解するのは諦め、ポアンカレ予想に関つた数学者たちの栄光と挫折を描いたノンフィクション作品として愉しむことにしました。本書については、「掘り下げが足りない」「内容が浅い」との声も聞きますが、わたくしにはこれで十分であります。これ以上深く掘り下げられても、ついていけないのは明白。
    数学語を知らない人向けの入門書として取り扱ひませう。

    ぢや、また。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-503.html

  • ポアンカレ予想と、それを解いたペレリマンを追った本です。
    NHKスペシャルとして放送された内容をまとめてます。
    さらっと読めますが、数学者たちの人生を追った部分はどうしてもちょこっとだし、かといってわかりやすい数学の本、というわけでもなく…
    やはり中途半端な感じの本になってました。
    NHKスペシャルの副読本みたいなもんでしょうか。
    1冊の本としての面白さは少々欠けますが、入門編としてはいいのかも。

  • NHKドキュメンタリーの書籍版。取材班が執筆。
    いくつかの図が、テレビ画面を取り込んだようで見にくいのが気になる。
    多くの数学者への取材を経てペレリマン博士に近づいていくのが面白い。

  • あくまでテレビ番組の書き起こしなので、サイモン・シンを期待してはいけない。
    入門講座みたいな感じ。映像で観ればちょっとは違うのかも

  • ポアンカレ予想が解決されたというインパクトは、フェルマーの最終定理が証明されたのと同等の衝撃的なインパクトがあった。

    もちろん、私は数学の門外漢であるがゆえに、ポアンカレ予想もフェルマーの最終定理もその深淵を知る術がない。ただ、多くの偉大な数学者が挑み続けて挫折したという壮大なドラマが、証明に至る困難さを物語っている。      

    さて、フェルマーの最終定理に至る道のりには、様々なドラマがあった。そして、そこには日本人数学者たちの貢献が光る。岩沢理論を始め、何と言ってモジュラーと楕円曲線に橋渡しをした谷山・志村予想。そして、若くして自ら命を絶った谷山と、その後を引き継いだ志村の友情など、多くの逸話が残されている。    

    一方で、ポアンカレ予想も、フェルマーの最終定理に負けず劣らずの逸話を数多く残している。第一、証明に成功したペレルマンがすべての名誉を投げ捨てて世捨て人同様の生活に籠ってしまったこと自体が驚きだ。   

    本書では、残念ながら最後までペレルマンに出会う機会はなかった。ただ、ペレルマンが次なる大問題の解決に向けて研究に入ったことが示唆されている。

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