空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫)

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制作 : 寮 美千子 
  • 新潮社 (2011年5月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101352411

空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • この本は奈良少年刑務所の受刑者たちが紡いだ詩を集めた本。
    被害者がいるから加害者がいることを考えると複雑な思いも込み上げるが、彼らの真っ直ぐな言葉を読むと胸を打たれる。
    特に母について書かれた詩を読んで涙が止まらなくなった。
    母親の愛情を十分に受けなかった、期待されすぎた、様々な事情があるにせよ彼らの母への思いは強い。
    母親としての責任の重さを改めて思い知らされた。

    どんなにパパが優しくてもどんなに私が怖くてもママっ子の我が息子。
    理屈じゃないんだなと思う。
    母親って特別な存在なんだ、特に男の子にとって。
    毎朝保育園に送っていく途中で「ママ、早くお迎えに来てね」という息子。
    どうしてと尋ねると決まって「だってママ大好きだもん」と。

    いつまでその小さな手をつないでくれるかわからないけれど、悔いのないよう愛をいっぱいいっぱい息子にも注いであげたい、そんな気持ちになった。
    出来るだけ早く早くお迎えに行ってあげないと。

  • 編者が参加した、奈良少年刑務所の更生教育「社会性涵養プログラム」でつくられた作品を主にまとめた、受刑者たちの57編の詩と、それに伴う編者の活動記録の一部からなる本書。

    この少年刑務所の試みは、過日読んだ『ライファーズ』で行われていることと全く同じだ。
    心に溜まった思いをはき出し、そのすべてを同じ境遇の他の受刑者たちや、彼らの更生に心を砕く刑務官や職員たちに受け止めてもらい、自分を再確認する、その場所を提供するという試みである。

    実は彼らの更生には、教え指導するようないわゆる「教育」は必要ない。
    ありのままの自分を、そっくりそのまま受け入れてくれる、あたたかくて安心できる場と寄り添ってくれる人が必要なだけなのだ。場が与えられ、寄り添う人がいるだけで、信じられないほど劇的に、受刑者たちの中で何かが変わっていく。
    『ライファーズ』でもこの奈良少年刑務所でも、全く同じなのだ。

    著者の「受刑者たちは、加害者であると同時に、この社会の被害者なのかもしれない」という思いは、私の思いそのままだ。
    犯罪は憎むべきもの、加害者はその責を負うべきもの、しかし同時に社会が犯罪者を作り出しているのも事実。
    刑務所に収監されている人の半分以上が再犯者なのだそうだ。刑務所が罰のためでなく更生施設として機能されれば、犯罪が半分になるとは言えないか。受刑者の更生が、社会の安全を生むと考えられはしないか。

    紹介された57編の詩は、まっすぐで純粋で、それはまた彼らの悲痛な叫びにも聞こえ、決して上手ではないかもしれないけれど、作り事でない本当の心の声が聞こえる気がする。
    そして何より、彼らの詩作の現場をつづった、編者による後編「詩の力 場の力」「文庫版あとがき」が胸を打つ。言葉の持つ力、物語の持つ力をまざまざと見せつけられる。
    少年法の厳罰化を訴える人に、ぜひこの本を読んでほしい。彼らのプログラムの成果を知ってほしい。

    「人は変われる」この言葉が信じられる本です。

  • 真面目すぎていいことを書きすぎる子どもに対して「無理するなよ」って気を配る先生が印象的。自分の表現を受け入れられるってすごくうれしいこと。

  • こないだぶんぶん文庫で単行本を借りて、帰りの地下鉄でちょっと読み、そのあと本屋に寄ったら文庫があったので、在庫のあった『ハリール・ジブラーンの詩』とあわせて買う。

    ハリール・ジブラーンの詩に神谷美恵子が解説をつけて編んだように、この詩集は、奈良の少年刑務所で服役する受刑者たちが社会性涵養プログラムのなかで書いた詩に、寮美千子が解説をつけて編んだもの。

    読んでいて、この表紙の青い色のせいもあるのか、『ぼくは12歳』を思い出した。

    ひとり ただくずされるのを まつだけ

    岡真史の書いたその一節がこころにうかんだ。

    表題作 空が青いから白をえらんだのです のタイトルは「くも」。この詩を書いたAくんのおかあさんは「つらいことがあったら、空を見て。そこにわたしがいるから」と最期に言って亡くなったのだという。

    ▼ふだんは語る機会のないことや、めったに見せない心のうちを言葉にし、文字として綴り、それを声に出して、みんなの前で朗読する。…そして、仲間が朗読する詩を聞くとき、受講生たちは、みな耳を澄まし、心を澄ます。ふだんのおしゃべりとは違う次元の心持ちで、その詩に相対するのだ。…その「詩の言葉」が、人と人を深い次元で結び、互いに響きあい、影響しあう。(p.177)

    詩の力とともに、互いに聞きあい、語りあう場の力の大きさがあったことを、編者の寮美千子が書いている。「自分で書いた詩を自分で朗読し、仲間から拍手をもらい、感想を聞いて、受けとめてもらえた実感を持つこと。」そこから自分を大切にする意識がそだっていく。このプログラムの教室が「お互いを尊重しあう学びの場である」ことを毎回確認しあう。

    ・相手が発言しているときは、きちんと聞く
    ・意見を求められたらできるだけ答える。答えられないときは「わかりません」という
    ・みんなのための時間なので、一人で長く話さない

    これは「教育で守ること」として刑務所の教官が作成し、毎回声に出して読むのだという。

    刑務所内の教育の場で大切にされていることは、「日の丸」「君が代」を強制しようとすることに躍起となっている"教育の場"と、ずいぶん違うものだと思う。

    「自分の心に気づくこと、吐きだすこと。それは凝り固まっていた心を解放する第一歩にもなるのだ」(p.191)と寮はいう。先生が心も身体をもこわばらせる場になってしまっている学校で、子どもは自分の心に気づき、それを解放して表すことができるだろうかと思う。

    受刑者たちが「一度も耕されたことのない荒地だった」というならば、いま東京都がギリギリと縛りあげ、大阪府がそれに追随しようとしている"教育の場"は、よくほぐされ温かかった土が、耕作を放棄され、荒れていく環境のように思える。

    ▼すぐそばにいる友の心の声に、耳を澄ます時間を持つ。語りあう時間を持つ。それができたら、子どもたちの世界は、どんなに豊かなものになるだろう。(p.178)

    すぐそばにいる同僚の声に耳を澄ますこともなく、対話は拒まれる。そんな職場はどんなにかきつい。そんなことになった職場や教育の場の実例が目に見えるだけに、この奈良少年刑務所で心をつくし時間をかけて開かれている場がありがたいものに思える。ほんとうは、あたりまえにあってほしい場だと強く思う。

    (2/13了)

  • もちろん被害者のことは第一に考えられなければならないが、それでも、犯罪を生むのは社会であり、この少年たちも、被害者でもあるのだ、ということを強く感じる1冊。
    少年たちの詩だけでなく、詩人でもある著者の解説が、胸をうつ。
    この本はもっとたくさんの人に読まれていいと思う。
    発刊の1年後には文庫化されて、反響があったはずなのに、この本を見つけるのに何軒も書店をまわった。残念なことです。
    この少年たちの再犯が防げれば、世の中の犯罪はぐっと少なくなるという。わたしたちは、この少年たちを受け入れる社会がつくれるだろうか。

  • 少年刑務所で情操教育として詩などを教えている著者。現場であるとき、「何も書くことがなかったら好きな色について書いてください」という課題を出す。
    ある少年が
    「ぼくのすきな色は
    青色です
    つぎにすきな色は
    赤色です」
    という、詩とも呼べないような文を綴る。これには著者もどうコメントしてよいのかわからない。だが、ほかの受講生が二人すばやく手を上げ、
    「ぼくはBくんの好きな色を、一つだけじゃなくて二つ聞けてよかったです」
    「ぼくも同じです。Bくんの好きな色を、二つも教えてもらってうれしかったです」

    このくだりをシティボーイズの大竹まことが涙ぐみながら読んでいたのをテレビで見てさっそく購入した本書。

    少なくとも文章を生業にしている自分は、言葉を道具に商売をしているというわけで、それはそれで自負するところはあるわけだけれども、時にはこのようなむきだしの素直な言葉にも触れなければ感性が磨滅するなぁ、と反省させられる。

    犯罪心理学の本など読んでいたことがあるので、生来の犯罪者というのが存在するのは納得できる。
    だが多くの犯罪者は幼少期の環境の影響で犯罪者に育つのであって、こちらは若いうち、育てなおし(というと不遜だが)が効くうちになんとかしてあげないといかんのだということも思う。
    だが、たとえば自分の故郷・足立区で起きた女子高生コンクリ詰め殺人事件の犯人の一人が反省もせで現在のほほんと暮らしている、という記事などを読むにつけ、人間的キャパの小さい自分などは、どうしても少年犯罪の被害者の気持ちを考えてしまうため「悪いのは環境だから」といって加害者を赦すことなどできないんだなぁ。

    ……いろいろ考えさせられる本でした。

  • 著者のラジオでのお話を聞いて,興味をもって読みました。
    ページを開き,10分後には泣いていました。
    言葉の持つ力はすごい。

  • 「クリスマス・プレゼント」
    が忘れられない。

  • これは、本棚にずっと置いておきたい一冊。

    早朝、寝ぼけ眼な中。
    付けっ放しのテレビからうっすらと聞こえてきた言葉が、数秒後にこの本から紡ぎ出されたものだと知り、必ず読みたいとメモに残しておきました。
    ようやく出会えたこの本、休みなく読み終えた。
    そして、寮さんが思っていたようなこと…少年院に対するイメージを、わたしも当所思っていたなと思い出しました。
    実際今関わっているわけではないから、それは限りなく初心に近いままだけれど。

    どの詩も心に残ったけれど、クリスマス・プレゼントという作品がなんだか心に残った。

    p134〜引用



    五十二人の仲間のクリスマス
    ごちそうを食べて ケーキも食べて
    ゲームをやって 思い切り笑って
    プレゼントだってもらえるんだ
    寝ている間にだれかが
    こっそり枕元に置いていってくれるんだよ
    それが サンタさんなのか 学園の先生なのか
    ぼくは よく知らないけれどね

    でも ほんとうにほしいものは
    ごめんね これじゃない ちがうんだ

    サンタさん お願い
    ふとっちょで怒りん坊の
    へんちくりんなママでいいから
    ぼくにちょうだい
    世界のどっかに きっとそんなママが
    余っているでしょう
    そのママを ぼくにちょうだい
    そしたら ぼく うんと大事にするよ

    ママがいたら きっと
    笑ったあとに さみしくならないですむと思うんだ

    ぼくのほんとうのママも
    きっと どこかで さびしがっているんだろうな
    「しゃかい」ってやつに いじめられて たいへんで
    ぼくに会いにくることも できないでいるんだろうな

    サンタさん
    ぼくは 余った子どもなんだ
    どこかに さみしいママがいたら
    ぼくが プレゼントになるから 連れていってよ

    これからはケンカもしない ウソもつかない
    いい子にするからさぁ!



    あと、Xくんが書いたという「孤独な背中と気怠さと」も寮さんのホームページに載っていたので貼っておく。↓
    http://ryomichico.net/bbs/meteor0002.html#meteor20110906232635

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空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫)の作品紹介

受刑者たちが、そっと心の奥にしまっていた葛藤、悔恨、優しさ…。童話作家に導かれ、彼らの閉ざされた思いが「言葉」となって溢れ出た時、奇跡のような詩が生まれた。美しい煉瓦建築の奈良少年刑務所の中で、受刑者が魔法にかかったように変わって行く。彼らは、一度も耕されたことのない荒地だった-「刑務所の教室」で受刑者に寄り添い続ける作家が選んだ、感動の57編。

空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫)はこんな本です

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