ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101354415

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  • 筆者は早稲田のアニメ研究会からアニメ制作会社に就職し「タッチ」の絵コンテなどを担当するようになったものの、仕事のせいなのか、元々の性格によるものなのか、統合失調症になり、誇大妄想的な発言が増え、遂には入院する。その後、退院し復職したり、父親を手伝ったりして社会生活を送るようになった時期があるものの、数年後には再び発症して入院。その後も入退院を繰り返し、今はグループホームで暮らしているという。
    その本人が当時の記憶や日記などを元に、その当時自分はどう感じ、考えていたかを書き綴っている。
    「タッチ」の就職してアニメ制作を担当したという事からも、世代的には自分とほぼ同じくらい。
    そういう筆者が二十代〜三十代の頃を書いているのだが、社会的な出来事の記録はおくとして、日記などがあるとはいえ、当時の心情について事細かによくそこまで覚えているなと驚く。というか、それは統合失調症となんらかの関係があるのかしらとも思えてくる。
    その詳細な記録と記憶を元に自分がいかにして発狂してしまったのか(筆者は自分自身で「発狂」という表現を使っている)という経緯を説明している。
    その道筋には、やはり極端な発想というか、尋常ではない展開を感じるものの、解説によれば統合失調症の本人自信がここまで克明に自分自身の心理状況などを独白したものというのはとても少ないのだそうだ。

  • 色々なラベルの羅列、表面をなぞるような何かを言っている様で特に何も言っていない言葉の応酬、客観的視点の欠落、明日は我が身と恐る恐る読んでみたが、う~んこれはやっぱり全く違う考え方だなぁと思いました。父親の死の事がとてもあっさり書かれていることがとっても印象的でした。

  • 統合失調症を内側(本人)から観察したルポ。

    病状の変遷も興味深いけど、思考がおもしろく、そんなに昔に書かれた感じがしない。
    特にパラダイムシフトのことや、新しい価値観と新しい幸せで生きていく話しは震災後に書かれたのかと思えるくらい。

    アニメ会社に勤めていた人なので関わってた実際の作品もしばしば出てくるので、好きな人にはそれも面白いかも。

  • 読書の疑似体験という効用を実感できる本

    現時点においては実感あるいは真の理解ができない精神疾患について、患者である著者が自身の体験を綴った本

    理解しきれないところも当然あるのだが、中には自身にも少し違った形で身に覚えがあることであったりすることもあった。

    要は程度の差であると思った。
    振れ幅の差こそあれ、誰にでもある、あるいは起こりうることなのだと思い、少し怖くもなった。

  • 幻覚妄想状態になった筆者の闘病記と今日に至るまで。
    アニメの制作現場のエピソードと医療の現場の様子が興味深い。

  •  何をもってして異常と正常を分けることができるのか、それが世の中の常識をもってだとするとあまりにも不明確すぎるし、正しいか間違いを瞬時に判断できるのならば道徳など必要ない。

     作られた精神障碍者にならないためにはどうすればよいのだろうか。ここから始まると精神異常者判断されやすくなりそうで怖い。

  •  幼女殺人事件の方は容疑者が「モヤモヤとした、とめどもない高鳴りが一気に爆発し」と犯行声明で語っていたが、僕には”とめどもない高なり”という精神状態がよくわかるような気がした。自分もそうだったから。だがその次の段階の殺人と言う行為と精神科に逃げ込むという行為の差は世間の人々に認めてほしいと思う。

  • 統合失調症の患者の体験記。こういう人が世界をどう見ているのかってのが分かると、自分の脳の仕組みについてイメージしやすくて良い。


    ●脳への感想で一番強く考えたこと。「リミッタ―があるんだな。」
    普段はリミッターで抑えてあるから思考にはスピード制限があるけれど、精神病のような症状が出ると抑えが利かなくなるんじゃないかな。
    そうすると、著者のように次々に思考がつながって、頭の中に言葉が溢れてくるのではないだろうか。
    このリミッターはホルモン的な何かなんだろうけれど、これの分泌をコントロールするのが精神病の薬なのかな。

    ●もう一点、精神的ななにかで大事な観点があると思った。「客観性」
    障害者とか精神病患者は客観性の欠如がうかがえる。別の言い方をすると「思いやり」とか「他人の気持ちを察する能力」
    この本の中でもよく出てきたが、世界が自分を中心に回っているように強く感じるとのことである。
    少し話は逸れるが、人は大人になるにつれて「客観性」が身についていく。他人の気持ちを考えられるようになるから友人を作れるようになるし、恋ができるし、仕事もできる。客観的に考えられるから法律を扱えるようになる。
    考えや行動が子供っぽい人ていうのは、我がままだったり視野が狭かったりする人だと思うんだけど、つまり客観性が無いってことだと思う。
    つまり、精神病患者ってのは幼児期への退行のようなものではないかと思う。

    自分や知人がもし、「幼児的な退行現象がみられる」とか「最近客観的に考えられなくなったかも」って思ったら、その人の精神的な負荷を軽減してあげられるようになろうと思う。

    ___

    ●大隈重信=円の単位を作った人

    p187 秩父困民党事件…松形デフレで困窮した農村部の非暴力決起
    秩父の農民とアイヌ人が関連している!? そもそもこの事件は秩父が隠れキリシタンの秘境であったという可能性も問題に含まれている。
    統合失調症には関係のない部分だった。

    p190 『スター・シーカーズ』積読

    p209 心は脳にあるか
    もし心が脳にあるのなら、薬を飲めば精神病は完治できるはず。しかし、そうはならない。一度なったらどこかしら影響が残る。
    というのも、精神病がよくなってもその時の自分の記憶は心に堆積しているから。だから脳だけ直しても心にある傷が癒えないから、精神病は一生モンになってしまう。
    つまり、心と脳は別物だ。

    う~ん。持論では、心は脳が言語経験によって作りだすのが心なんだよね。だから、心=脳ではあると思う。
    心が死んでも脳は機能するけど、脳が死ねば心も死ぬと思う。だから私は養老猛に共感して唯脳論を指示します。

    p228 元号の改定における世論
    「(平成は)平和な世の中になってほしい。」「新天皇は世の中を平和にしてほしい。」
    この世論は非常に低級である。平和な世の中は一人一人の活動によって実現していくものである。上記の回答は、とにかく自分以外のものが平和的活動をしなくてはだめだということになる。
    じゃあおのれ自身は何をするというのか。マスメディアも「どんな時代にしていきたいですか?」と能動的な問いかけをすればよかったのに。



    この手の著作は視野が広がるわーーーーーーーーー(╹◡╹)

  • なかなか読み進められず、読了までに時間がかかりました。
    タイトルにひかれたのですが、統合失調症という病気を〃精神病だっけ・・・・?〃と全く知らなかった私でも、興味深い内容でした。

    著者の日記をベースに書かれていますが、とても詳細にさらけ出しているので、崩れていくカンジや傍目からみると、あきらかに異常と思える言動も、当事者の中では理路整然としたものになっているんだ、とわかりました。

    同じ病でも、個々によって違いはあるでしょうが、本人または身近に同じ症状の方がいる人でも、参考になる貴重な本だと思います。

  • (主に)統合失調症の方の日記のようなもの。
    急性期のパニック(のような)の時はきっとご本人はとても辛いのではないだろうか。精神障害者とその中から犯罪を犯す人は違うので一緒にしないでほしいとのこと。なるほど。
    精神障害者にとって大事なのは、自殺しないこと、他者を傷つけないこと、だめだと思ったらすみやかに精神科に入院すること、だそうだ。なるほど。
    病気の人と、病人の家族が大変なのはきっとどの病気も同じですね。
    精神障害者への偏見云々の話は、作者も少し触れていたポイントですが、精神障害者と、その中から犯罪を犯す人の違いというかその辺りが分かっていないからではないでしょうか。

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