宿命―「よど号」亡命者たちの秘密工作 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (685ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101355313

感想・レビュー・書評

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  • 読むべき価値のある酷い話。
    共産主義という考えが、ありとあらゆる方法で人を不幸にするということを再認識する作品です。
    なるべく早くに、共産主義黒書の方も読みたいです。

  • 1970年3月末、赤軍派メンバー9人が日航機をハイジャックし、北朝鮮へ亡命した「よど号」事件。
    犯人たちのその後の人生とは。
    犯行の計画、北朝鮮の思想教育、日本人拉致の実態、そして日本潜入工作――。
    ルポルタージュ。

  • 「反対だけが実績です」というポスターを目にしたことがある。

    予算に反対しておきながら「私たちがやりました」と平然と言えてしまう人々のことを言ったのだろう。

    では、その人たちが政権を担ったらどうなるか?

    「反対ができない国」「選挙がない国」が出来てしまう。


    1970年3月31日。

    「われわれは赤軍派だ。北朝鮮へ行け!」

    羽田発福岡行きの日航機「よど号」は、学生たちにハイジャックされてしまう。

    「我々はあしたのジョーである」

    「世界同時革命」という妄想の末、多くの人の犠牲の上に彼らは北朝鮮に渡った。

    「首領様の金の卵」として遇され、「主体思想の戦士」に染め上げられていく。

    赤子の手をひねるように簡単であり、赤子の手をひねるように残酷なことだ。

    考えるのは首領様であり、人民は手足である。

    失敗は自分の責任であり、成功は首領様のおかげである。

    「よど号赤軍」は、朝鮮労働党の手先となり、日本人拉致事件に関わっていく。


    北朝鮮に渡った赤軍派。その家族。彼らに嫁いだ日本人妻。彼らに拉致された被害者。そしてその家族。

    誰一人、幸福になったものはいない。

    彼らの革命が成就されることはない。
    誰の支持も得ることはないからだ。

    誤った思想が人生を狂わせる。
    取り返しの付かないことになる。

    よど号赤軍派のかつての仲間でもある著者の渾身のルポルタージュ。

  • 「よど号」ハイジャック事件犯たちのその後の数奇な人生を綴った渾身のノンフィクション。たいぶ前の本だけど、久しぶりに面白いノンフィクションだった。

    赤軍派の一部メンバーが日航機"よど号"をハイジャックして北朝鮮のピョンヤンに降り立ったのは1970年。当初は1年程度の軍事訓練を受けて帰国するつもりだったのだが、その目論見は大きく外れ、逮捕されて戻ってきたメンバー以外は未だにピョンヤンの地にいる。当初は幽閉させていると日本では見られていたメンバーだったが、実際には金日成のチュチェ思想の洗脳を受け、やがては日本を北鮮化(赤化ではない)する"チュチェの戦士"と変貌を遂げてしまった。そのチュチェの戦士達が金日成らと最初に行ったことは、なんと、永久革命を目指すための嫁探し!馬鹿馬鹿しい作戦だが、日本での革命を行うには日本人の妻が必要だということなり、これが後に両国の間の大問題となる"日本人拉致事件"の原点となっていく。それ以降のよど号メンバーと日本人妻達の日本や欧州における工作活動や、内ゲバ、あるいは滞在が長期化することによる望郷の思いなどを元々は赤軍派にいた作者だからこそ迫れる内容でその実を暴いて批判を加えていく。

    日本に共産主義革命をもたらしたかったよど号メンバーは、北朝鮮においてチュチェ思想の革命家となり、北朝鮮の特権階級となっていった。他方、日本に戻れば犯罪者となるし、金日成らの巧妙な統治によって家族を人質にとられ裏切ることもできない閉塞状態において、日本への望郷の念は心情的にも政治的にも増殖をしていくその様子は、本書の文中にも書かれている通り、"<政治>というもののむごたらしさ"を読むものに感じさせずにはいられないし、この本の最大の見せ場はこの"政治的葛藤"にあるのだと深く思う。

    そこから40年を経た今、アメリカでもイギリスでも民主主義の中で国是を劇的に変えうることが明白になっているので、革命を通じた彼らの政治的活動というのは一体なんだったのかと思えてならない。それも含めて政治は恐ろしい。冷静な態度が政治には必要だと読むとつくづく思えてしまう一書であった。

  • 最近、出版されたよど号メンバーによる本の内容とは違う点がある。当たり前かもしれないけど、本当に真相は闇の中。。

  • 20代の幼い思想で突っ走り、後半の人生を北朝鮮で過ごしたよど号のっとり犯人たち。
    決行日、飛行機など乗ったことのない貧乏学生たちは、
    飛行機を電車のようにすぐに乗れると思っていて遅刻者続出したとか(で、別の日に再度決行した)、
    北朝鮮で半監禁生活(けっこういい暮らしだったそう)の中、日本から恋人をおいかけて女の子が一人やってきてから、男同士がぎくしゃくしだしだとか。(この女の子もびっくりだ。)

    私の中で歴史の中の事件の犯人が、生き生きとした息子たちと変わらない青年にみえてくる。

    犯人は謎の死をむかえたり、行方不明になったりしたが、2名ほど存命だそう。

    次は重信房子さんの話を読みたい。

  • 「よど号」ハイジャック事件が発生した時、わたくしはまだ頑是無い子供でありました。よちよち歩きとまでは申しませんが。よつて当時のことはほとんど覚えてゐません。
    ひとつには同時期に開催された大阪の万国博覧会の印象が強すぎて、ほかのニュウスはかき消されてしまつたといふ事情もありさうです。

    北朝鮮へ渡つた「よど号」メムバアは、予想外の好待遇で迎へられ、朝鮮労働党から有形無形の恩を売られたことで、思想改造も容易に進んだのではないかと思はれます。
    その後は金日成体制下の主体(チュチェ)思想に則り、労働党の傀儡もしくは手下として動くしかありませんでした。日本人拉致事件にも関つてゐたのです。

    日本の関係者が全く情報を得られず、何となく北朝鮮国内で不自由な生活を強ひられてゐると思ひ込んでゐた時期に、実は彼らはヨーロッパ各国で活動したり、ちやつかり日本へ潜入したりしてゐたのでした。
    また、9人のメムバアは全員が同じ方向を向いてゐた訳ではなく、主体思想に馴染めない者もゐました。さういふ人物はある日忽然と姿を消すのであります...

    質量とも充実したノンフィクションと申せませう。著者の高沢氏は、メムバアのリーダー・田宮高麿の友人だつたさうで、高沢氏だからこそ彼らもここまで語つたのでせう。
    2012年2月現在、9名ゐた「よど号」メムバアのうち、健在が確認できるのはわづか4名に過ぎないのださうです。
    彼らには今後の展望は見えてゐるのでせうか。現在も続く悲しい歴史であります。

    http://ameblo.jp/genjigawa/entry-11153510683.html

  •  謀略に怒りを覚える。そして自身の置かれた境遇が重なって暗くなる。

    http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20080830
    http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20110804

  • 「よど号」というまだまだ歴史というには近すぎる昭和史について知るには最適の一冊。

  • 真実かどうかはともかく、かなり興奮して読んだ。特に最後の方の金太郎さんの話は。ノンフィクション版ミステリー。

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