絶頂美術館―名画に隠されたエロス (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101355412

作品紹介・あらすじ

観るものの心をときめかせるエロティックな絵画。時を超え、文化を超えて人々を引き付けてやまない「性」の讃歌を湛えた名画の、細部に宿る謎を解き明かす。しどけなく横たわるヴィーナスの足指が反り返っているのはなぜか。実在の娼婦から型取りされた裸体彫刻の、ねじれたポーズの意味するところは?神話や時代背景を読み解き、読者を知的絶頂へと誘う、目からウロコの美術案内。

感想・レビュー・書評

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  • もしかしてこの本は、今の美術展ブームの火付け役となった?
    私が30年前フランス文学部生のとき、現在のように絵画展は盛況ではなかったように思う。あるフランス文学の大家の文学作品と絵画との関係を研究テーマとしていた私は、論文を書くにあたって、著者の西岡氏が述べるように、小林秀雄の格調高い美術批評は必ず読んでおくものであると思っていた。当然アプローチは哲学的なものとなる。他には高階秀爾の美術批評。私はそれらにどれだけ寄りかかったことか。敷居の低い名画紹介は当時読んだ記憶がない。しかし西岡氏は1991年の末には『絵画の読み方』という、読んですぐ理解できる美術書を執筆されていたとのこと。巡り会いたかったなぁ。西岡氏の柔らかくてクスッと笑ってしまう紹介で、名画はにわかに息づいてくる。ヴィーナスなんて、肌ツヤ良く血色を取り戻すかのよう。美しいものは、こうして愛でなきゃ。

    願わくば、映画はもちろん写真も見たことのない、想像もできなかったころの人の目になって、そして可能なら男性となって、裸婦像をみてみたいものである。

  • 2022.1.22 朝活読書サロンで紹介を受ける。ヌードは美しくもあり醜くもある。

  •  再読。その昔、東村山駅前、美術関連に重きを置いたあゆみブックスという書肆があり、そこで入手した本。
     印象派の主張や手法が一人勝ちした美術史で、今や埋もれた感のある新古典主義の画家や作品が紹介される。
     児童のころ親しんだ妖怪図鑑や怪物事典で、有り得ない生き物をリアルに描いてくれる絵師の誠実さに心を打たれた。それと同じく、神話の設定を口実に、絶頂に達した美女を表情から爪先に至るまで真摯に表現する芸術家たちに、今さらエールを送りたい。
     第11章「宿命の女(ファム・ファタル)の恍惚」、ラファエル前派の旗手ロセッティが負った業、残した影響。被害に遭ったモデル女性を今さら悼んでしまう。

  • ふむ

  • 美術作品をどう見るかではなく、何を描こうとしたかを解説。また描かれた時代背景が説明されていたのが良かった。西洋美術は裸体が多い印象だが、神話や教典が殆どで、現代画なるものは非難されるリスクがあったのは初耳。2020.7.24

  • 『恋愛偏愛美術館』から遡って読んだ。美術系のウンチク本をあまり読んだことがないので比較の対象を持ち合わせていないが、この人の論評は好きだ。信頼できる評者であるという印象をますます強くした。しかしこの本は電車の中で読むのには適さない。あまりにも多くの裸婦像が収録されており、その裸婦の多くは本書タイトルどおりの様相を呈しているからだ(笑)

  • 裸婦はなぜ描かれたのか、という問いに答えた本。



    答えは「男は女の裸が見たいから」ということになるのだが、美術の素人の俺が相槌を打つと「やっぱりそうなんか」となる。裸婦の絵は芸術性云々よりその官能に引き寄せられる。俺は絵より裸婦像の尻を1時間ぐらいじーっと見てたことがある。あれはマジで触りたかった。



    ちなみに、裸婦の足の指を見ると官能の度合いが分かるらしい。ポーズだけ見るとリラックスしてそうなのに、足の指は妙に力が入っていたりすると、エクスタシー度が高いらしい。背景を知ってみると、本質にすんなりたどり着けていいな。

  • 太古から脳内Photoshopがあり、結局変わってないんだわ〜と納得した一冊

    美術と音楽と哲学と、文化は歴史の産物で、また文化は暇の産物

    学校で教わるゲージュツがいかに表層的か
    世の中知らないことがたくさんあるのですねぇ

  • 裸婦画の歴史として読んだけれど、裸婦画を軸とした美術史の正統派入門書という感じ。面白かった。ロセッティの項はラファエル前派展に行った後だったのでタイムリーだった。

  • エクスタシーをおぼえる人間の魅惑的な肢体、足指、ボディライン、くびれ、トルコ風呂、接吻、美少年ヌード他。

    指摘されて気づく。無意識のうちに、思考停止になってしまっていたことに。

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著者プロフィール

多摩美術大学名誉教授・版画家

1952年生まれ。柳宗悦門下の版画家森義利に入門、徒弟制にて民芸手法の型絵染を修得、現代版画手法としての合羽刷として確立。日本版画協会展、国展で受賞(1977・78)、リュブリアナ国際版画ビエンナーレ五十周年展(2006)に招待出品。作品が雑誌「遊」(工作舎)に起用されたことを機に編集・デザインに活動の幅を拡げ、ジャパネスクというコンセプトを提唱。1992年国連地球サミット関連出版にロバート・ラウシェンバーグらと参画、2005年愛知万博企画委員。著書『絵画の読み方』(JICC)、『二時間のモナ・リザ』(河出書房新社)等で、今日の名画解読型の美術コンテンツの先鞭をつけ、「日曜美術館」等、美術番組の監修を多く手がける。著書多数、全集「名画への旅」、「アート・ジャパネスク」(共に講談社)を企画、共著にシリーズ「公共哲学」(東京大学出版会)がある。

「2024年 『柳宗悦の視線革命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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