ノエル: -a story of stories- (新潮文庫)
- 新潮社 (2015年2月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101355559
感想・レビュー・書評
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滑り込みで夏の読書となったクリスマスのお話(^^;
とても良かった。最初のお話好きだなぁ。騙されてあっという間に真相がわかる叙述トリックもあり(笑)
苦手なファンタジー要素は出てくるものの、童話の世界だと分かっているので、なんでもアリな感じではなく想像もしやすい。全然問題なかった。
圭介の作った物語もおじいさんが作ってきた物語も優しくて好き。
ただ、3話目の「あのね…」で話が途切れる箇所が何回かあるのがもどかしい。結局何なのか分からなかったのは、私の読解力のなさかな。
最後に出てきた若い男女はあの2人ではないの?(他のサイトで違うこと書いてあるの見た)とか。
とても感動する良いお話だっただけに、ちゃんと理解できなかった自分が悔しい!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
大きく3つのストーリーがあって。
1つの話が終わった後の感想「ちょっと技巧的に走り過ぎじゃない?」
2つ目のストーリーを読んで「あ、ここに繋がってるのね」
3つ目のストーリーを読んで「そのつらい気持ち良く分かるけど。でも・・・」
まとめの4つ目のストーリーで1~3話の繋がりと後日談をまとめています。
各ストーリーに通ずるのは「寓話」。
これをうまくストーリーのベースに乗せてそれぞれのストーリーが展開されています。
最後は全てを伏線としてエンディングに続きます。
なんか小説読んでて、現在の自分が救われるなーって話があったりしますが、この本が正にそれ。
小説の世界はあくまで小説なんだけど、もしかすると小説の世界の話がこの現世でも繋がるんじゃないのかな。
私が道尾秀介氏に求めているのはそれなんじゃないかな。
小説と言うフィクションの世界の話だ、とは言え自分のノンフィクションの世界で何か役立つんじゃないか。
心の持ちようが変わるんじゃないか。
それが著者の道尾秀介の意図しているモノなんじゃないかと思います。
とても良い本でした。 -
4周してる、ふと読みたくなるときがある。ずっと手放さない本になると、なんとなく思う
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物語のお話。
絵本作家の卯月圭介、生まれつき脚の悪い女の子の莉子・、妻に先立たれた老人与沢という3人と、それぞれが作った物語が緻密に絡み合っていて感動した。
卯月の絵本のなかで、翼を無くした王女さまが、青空の下に置いた鏡に横たわり、飛んでいるという結末の「空飛ぶ宝物」がすごく印象的だった。 -
2年前に単行本で読んでいたにも関わらず読み終えるまで全く覚えていなかった。つくづく記憶というものはいい加減だなぁと反省させられた。とはいえ、2度読みすることでこの本の素晴らしさが理解できた気がします。
解説は谷原章介さん。
『光の箱』では高校で虐められていた圭介と弥生が知り合うまでの経緯や絵本作家とその絵をかく現在の二人の様子が描かれている。
『暗がりの子供』では、梨子の妹となる赤ちゃんが生まれるまでとおばあちゃんとのやり取りが描かれている。新しいいのちと去っていくいのち。莉子はおばあちゃんの方が大好きなのにパパママはまだ顔もわからない生まれてくる子のほうが大切そう。この辺の微妙な感覚を男性である道尾さんがもちあわせていることの道尾さんならではの繊細さに脱帽。
『物語の夕暮れ』元教師の老夫婦が園児に読み聞かせをながら子供もいなく生徒の一人にも影響を与えることができなかった自分の価値を問う。
絵本を通して3つのストーリーが重なり、読了後ほんわかした気持ちにさせてくれる本でした。
本の中で出てくる童話のうち、カブトムシと蛍の物語が個人的には好きでした。 -
叙述トリックを駆使した連作短編集。
読めそうで読めない、良い塩梅の仕掛けが光る作品。 -
「道尾秀介」の長篇作品『ノエル―a story of stories―』を読みました。
2月の始めに読んだ『鬼の跫音』以来、12冊連続で「道尾秀介」作品です、、、
書棚にあった「道尾秀介」作品の在庫も、本作品が最後の一冊… 寂しいですが、暫しの間はガマンですね。
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現実に立ち竦み、自分だけの〈物語〉を紡ぐ三人の男女。
極上の技が輝く長編ミステリー。
孤独と暴力に耐える日々のなか、級友の弥生から絵本作りに誘われた中学生の「圭介」。
妹の誕生に複雑な思いを抱きつつ、主人公と会話するように童話の続きを書き始める小学生の「莉子」。
妻に先立たれ、生きる意味を見失いながらボランティアで読み聞かせをする元教師の「与沢」。
三人が紡いだ自分だけの〈物語〉は、哀しい現実を飛び越えてゆく――。
最高の技巧に驚嘆必至、傑作長編ミステリー。
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別々に思えた三つの作品が、実はつながりのある物語だったんだ… という構成のチェーン・ストーリーです。
■光の箱
■暗がりの子供
■物語の夕暮れ
■四つのエピローグ
■解説 谷原章介
『光の箱』は、童話作家の「圭介」とイラストレーターの「弥生」が、中学生時代に虐めから逃れるために自分たちだけの世界を築こうとするが、同級生の「夏美」の登場により二人の間に大きな溝ができてしまう物語、、、
でも、この作品… 「マサキ」と「正木」と「昌樹」や、同じクリスマスシーズンの雨の夜のホテルでの出来事等で、うまーくミスリードされる仕掛けがあって、頭の中で描いていた暗い結末とは、全く異なる明るい未来が感じられる展開が待っており、愉しく読めました。
『暗がりの子供』は、母親に子どもが宿り複雑な感情を抱いているときに、大好きな祖母が倒れて入院し、その際の父と母の祖母の扱いに関する会話にショックを感じてしまった小学生の「莉子」が、童話の続きを自ら綴り始め、母親への黒い思いを募らせる物語、、、
この作品は時間軸がわかりにくくなっていて、それでうまーくミスリードさせられました… 妹となるはずの命を殺めてしまったかと錯覚してしまうような展開でしたが、こちらも頭の中で描いていた暗い結末とは、全く異なる明るい未来が感じられる展開でしたね。
『物語の夕暮れ』は、最愛の妻を喪い自ら人生に終止符をうとうとする元教師「与沢」が、昔、暮らしていた家に童話作家が住んでいることを偶然、雑誌で知り、祭りの囃子を電話口で聞かせてほしいと依頼し、その音を聞きながら、死のうとする物語、、、
このエピソードの結果は、次の『四つのエピローグ』で明らかになります。
『四つのエピローグ』は、読者に隠されていた事実が明らかになり、三つの物語がひとつの環としてつながっていく物語、、、
「与沢」の自殺は、「莉子」の妹「真子」の機転により未遂に終わり、「与沢」が電話した家には、夫婦となった「圭介」と「弥生」が住んでおり、しかも、「与沢」は「圭介」が小学校時代の担任の先生… この4人は、今後も良い関係を築いていけたんじゃないかと思います。
それぞれの切ない人生を想いながら、じーんとしちゃう作品でしたね… 挿話として使われている童話もなかなかのもの、、、
それはそれで出版されてもイイんじゃないかと思いました… 現実を生きるために、物語って大切なんですね。 -
温まる物語集だった〜
最後まで読んでから最初の引用を読むと、そういうことか!と。繋がりがいっぱいだ。