貘の檻(ばくのおり) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.12
  • (18)
  • (81)
  • (132)
  • (45)
  • (19)
本棚登録 : 1316
感想 : 90
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (570ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101355566

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 32年前、主人公大槇の故郷の山村で殺人事件が発生する。その犯人とされる男の息子であった彼は、その事件の真相に関わると思われる女性の死を目撃する。
    大槇は、息子を連れて、事件となった故郷へ向かう。
    山村の風景、過去現在に起きる現場となる人工の水路、古い日本家屋の雰囲気。セピア色の幼児期の記憶と、現在の息子の行方不明事件。陰鬱な情景が終始作品に漂います。松本清張の「天城越え」、横溝正史の「犬神家」、覗くつながりで宮本輝「泥の河」などを思い出し、懐かしさを感じるミステリーでした。
    各章に時折、大槇の悪夢が幻想的に描かれていきます。ここは、好みが分かれるところですかね。タイトルは、ここからきていると思うので、読みどころになるのかもしれないですが、夢といえば夢だし。
    ラストは、それぞれ事件に関わった人達が真相を少しずつ誤解しながら終焉となります。謎解きだけを目指すのではなく、事件に翻弄された人達の心情が細やかです。

  • 32年前に殺されていたはずの人物がある日、辰夫の目の前で電車に撥ねられてしまう。
    その現場を目の当たりにした辰夫は過去の出来事と向き合うのだが・・・
    終始じめじめした雰囲気(良い意味)で進んでいきます。
    夢なのか妄想なのかよくわからないフワフワとした描写と、作中に出てくる方言に少し苦労しました。
    タイミングの違いや思い込みが人を変えてしまうことと、どこで、どうすれ違うのか分からないからこそ怖いものだなと思い知りました。
    でも最後はほんの少しだけ希望が見えるような親子の絆に胸が熱くなり、辰夫が俊也(息子)と共に貘の檻から抜け出せますよにと願います。

  • 道尾さんの小説は全体に重めですが、これは量、質ともに特に重く感じました。
    村人殺しの汚名を背負って逃げ、地下水路から死体になった父の記憶。父と一緒に失踪して、32年振りに現れた女。父の死に纏わる何かの記憶を忘れようと、薬を飲み続けて家庭の崩壊する主人公。
    プロットは、閉鎖的な田舎における物語展開が重いです。クローズドサークルでもないので、特に何も起こらないです。また、解説でも指摘がありますが、エンタメ的には幕間の悪夢のシーンが更なる重さを感じます。
    終盤、道尾さんらしい伏線回収、ロジカルな展開、誰もが少しだけすれ違っている心理描写など、読む手が止まらなくなります。
    ただ、とにかく重くて途中で投げ出してしまう方がいてもしょうがないとも感じました。体調が良くて時間のある時に一気にどうぞ。

  • 全体的に重くじっとりとした雰囲気で、読後の爽快感などとは対極に位置する作品だと感じた。
    冗長に感じる悪夢の描写や地域開発の歴史が占めた第一部を読み進めるのには骨が折れたが、それを乗り越えて美穪子と父親の死の真相に迫っていくのは読み応えがあった。
    巻末の市川真人氏による解説が最も印象に残った。

  • それぞれの思い込みの果てに、複雑に絡まった事件が32年の時を超えて、解決に向かう。
    しかし、それぞれの思い込みのせいで、新たに死亡する人たちが…
    伏線回収が相変わらず見事な作品でした。

  • 子どもの頃の記憶に、大人になっても苦しめられる大槇
    自ら死を選ぶ前にその記憶に迫ろうと、息子をつれて故郷を訪れ、過去の事件の真相に少しずつ近づいて(気づいて)いく物語

    哀しくて重たくて辛い
    終始暗い雰囲気の中、事の真相も次々分かるのではなくゆっくりと顔を出してくる感じ
    読み慣れない田舎言葉(耳で聞いたらもう少し分かったかも?)や、夢の中の話で躓き
    最近読んだ本の中では一番時間がかかったかも

    個人的に、一つ前に読んだ道尾作品が「サーモンキャッチャー」なので
    その作風の幅広さというか落差というか
    本当に同じ人の作品ですか!?と思った

    1部は特に心が折れそうになるけど
    2部に入ると少しスムーズに読めるようになって
    最終章は息つく間もなく一気読み
    諦めずに読み進めてよかった

  • 嫌いじゃない、また読み直す予定

  • 全体的に暗くて救いが乏しい。夢の描写が夢だとわかるのに生々しくて、息苦しい。俊也が誘拐された辺りからは展開が気になって読む速度が速くなったけど、落ち着くとまた悪夢に絡めとられるような。語り手の辰男が色々病んでるのがなー。勘違いの連鎖による悲劇。味方が怪しいと思ってたので意外性は無かった。ラストはどういうつもりの助けてくれ、なのかな。奥さんとよりを戻したいのか、俊也だけを引き取りたいのか。おそらく後者だけど、子どもに負担かけすぎでは?子どもはわかっていないようでいろんなことを見て感じている。

  • 重厚。
    最終で一気に明らかになるが、それまでは過去や抽象的な夢が絡まる
    過去に囚われたままの大人。受け入れていく子供。
    もどかしい関係性がほぐれていったようなので過去の呪いは解けるのか、ここから始まるのか。

  • 3.0
    好き嫌いが分かれそう
    全てがスッキリ終わるわけじゃない
    夢の描写のキモさは道尾秀介っぽい

著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

道尾秀介の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×