根津権現裏 (新潮文庫)

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著者 : 藤澤清造
  • 新潮社 (2011年6月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (377ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101356167

根津権現裏 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 小説の柱となっているのは友人の自殺と貧しさ。殉後弟子である西村賢太の作品を読み慣れている人にはお馴染みのあの独特な文体で己の貧しさやあきたらなさについて滔々と描かれている。解説にもあったけれどそういう良くも悪くも自然主義的な特徴を多分に備えた作品として読んでいたけれど、最終章ですべてのアイテムが回収されているのと、あとやはり構成も巧みだと感じた。あの岡田の反復はどうだろうなどと思いながら読んではいたけど、結果として当然必要な反復であったわけで。省略になれている現代の小説読者からみると些か奇異に映るかもしれない。

  • ☆3つ。
    もうなんだかづいぶんと長い間この本を読んでいる事になった。一ヶ月以上グズグズと読んでいたかなあ。独特の表現文体と存外ありきたりな物語なので、めちゃおもしろい!とはいかなかった。でも昔の東京の情景が描かれているところに少し興味が持てた。
    わたしだって、もちろん風俗通い芥川賞作家西村賢太の影響でこの本を読んだのです。西村賢太の作品はすごく特徴のある語り口をしている・・・と思っていたら、なぁんだ何のことは無い、この『根津権現裏』の話法そのまんま真似っこではないかい。
    慊りない(アキタリナイ:途中で「飽き足りない」に変化している。たぶん意図あり)とか、直ぐと感じて、などなどそのまんまだし。でも最初はなんでもまずは模倣から始まるのだから、まいっか。しかし、塵芥賞後もづっとそのまんまなのね。そこから次にはきっと自分独自の文体を作り上げていこうか、という風な気概は無いのだろうかなぁ。ま、とりあえづ風俗行ってからかなw。すまぬ。

  • 何もかもが悲しい。→金があれば解決する。→とにかく金が欲しい!→だが貧乏になる宿命なのだ(その証拠がこの足だ)。→何もかもが悲しい。→(エンドレス)
    という負の循環思考回路をもつ、非生産的な主人公。読む人によっては、数頁で嫌気が差すだろう。

    シュンペーターの創造的破壊よろしく、この思考回路を打ち破るのは精神的イノベーションである。親友・岡田の死は、最大のチャンスでもあった。しかし、それは失敗に終わった。「私」が説く自殺反対論や貧困脱出法は、結局のところ空理空論にすぎなかったのである。それゆえ、同じ思考回路に留まったままであった。「私」の将来は岡田のそれと同様、質的には悲惨なものになるだろうと暗示されている。

    これは、藤澤清造の私小説である。藤澤氏の体験・考えをそのまま小説に投影している。そのため、話の展開が遅く読みにくい。その反面、「私」の考えが機微に記されているので同調しやすい。西村賢太氏が惹かれたのは、このためでもありそうだ。

  • 西村賢太作品を読み進むにつれて、彼に多大な影響を与えた藤澤清造の小説を読みたくなって手にとった本。この「忘れ去られた作品」が今になって復刊されたきっかけはもちろん西村であり、文庫の解説や注釈も彼が手がけている。
    実は読み始めたものの、最初の三分の1ぐらいは、なんだかまどろっこしいというか、いっこうに物語がはじまらないような気がしてあまり乗り切れず、何度も途中で放り投げていた。
    小説が俄然勢いを増すのは、友人岡田の死あたりからだ。岡田の兄に向かって彼の死までのいきさつを説明するシーンは恐ろしく長く、壊れたレコードのように長く何度も同じような話を繰り返すところなどほとんど「芸」といってもいい狂気を孕んでおり、語り手の意識の流れには思わず笑ってしまう記述も多く、そのあたりは西村作品と通ずるものがあった。
    ただ、西村作品に比べると、話の進み方もおどろくほど遅く、また本筋と関係のなさそうな文章も多くて、決して読みやすくはない。しかし、不器用な印象を受ける長く寄り道の多い文章には、確かに誰にも似ていないリアルがあるように思った。

  • 先頃、芥川賞を受賞した西村賢太が最も影響を受けた私小説作家、藤澤清造の長編。西村は私費を投じて藤澤の全集刊行を期しているというだけあって、なるほどモチーフや文体はよく似ている。しかし、西村のほうが同時代性及び「自己」のキャラクター掘り下げにおいて一歩鋭い。加えて、西村が芥川賞を受賞しなければ、本書が世に出ることもおそらくなかったわけで、これは「出藍の誉れ」ってことでしょうな。西村の次作が楽しみでありんす。 

  • 話題の芥川賞作家・西村賢太が入れ込んでおり、そのお陰でこの度の復刊となったのだけど・・・正直これは微妙。
    消えた作家らしい作品、と言うのだろうか。
    何がそこまで西村賢太の琴線にふれたのか、自分には理解できなかった。
    確かにお金があれば病院にも行けて、その人が抱える問題も解決することだろう。
    ただお金を欲してからの思考に欠けるというか、もっと踏み込んだ描写があってもよかったように思う。
    どうもその辺が短絡的に感じた。
    また主人公と岡田のやり取りを見るに、主人公は普通の立派な分別ある青年だった。
    少なくとも岡田に対しての助言は至極的確に思えた。
    岡田の言動にはイライラさせられたが、「ダメのダメによるダメのため小説」を期待していた自分としては拍子抜けするような出来栄えだった。
    この時代に悪くはないが、優れた小説かと問われると言葉に詰まる。
    素直に西村賢太を読んだ方がいい、と西村賢太を未だに読んでいないのにそう思ってしまった。

  • ある種の潔癖症で、誰に対しても悪者にはなりたくない
    いつまでも中庸でありつづけたい
    つまりモラトリアム…要するに無責任な立場にしがみついている
    しかし無責任ゆえの不用意さで失言を発するわ
    潔癖症ゆえの馬鹿正直さで自分の立場を危うくするわ
    不安のあまりに「許す」の一言を強要して言質をとろうとした挙げ句
    なんも関係ない友人のところに泣きついて
    ホモとノンケの悲惨な愁嘆場みたいに無益な言い争いを繰り広げるわで
    まったくろくでもない野郎なんだ
    しかしまあ、世間じゃわりによくある青春の1コマなのかもしれない
    死ぬこたあないと思う
    けれども、カネの無い男が出世するには、一つの疵も命とりなのだ
    そんなふうに思い詰めておかしくなっていく

    これだけのものを書きながら、永らく忘れられた作家であったのは
    誰もが我が身に覚えある類の醜さをストレートに出したことに加え
    学歴偏重主義に批判を加えたことも大きかったのだろう
    しかしそれにしても長すぎるというか
    女のエピソードや終盤の内省的な部分はもっと短くできたんじゃないか

  • 日本図書出版, 1922年(影印) 「貧苦と病苦と」(p.92)を描いて有名だが、太宰治『人間失格』とどちらがより読者を沮喪させるか興味深い小説。個人的にこういう傾向は好まない。図書館本。 65

  • ねちっこい文章が西村ケンタそっくり。というか、まぁ西村ケンタが真似したんだろうけど。中身は西村ケンタの方が数倍面白い。

  •  金がないばかりに不幸せになっていく人たちのはなし、詳細については西村勘太の解説を読まれたし、解説から読んでみてそれで小説を読みたいと思う人であれば、この本は価値があるのかもしれない。

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根津権現裏 (新潮文庫)の作品紹介

根津権現近くの下宿に住まう雑誌記者の私は、恋人も出来ず、長患いの骨髄炎を治す金もない自らの不遇に、恨みを募らす毎日だ。そんな私に届いた同郷の友人岡田徳次郎急死の報。互いの困窮を知る岡田は、念願かない女中との交際を始めたばかりだったのだが-。貧困に自由を奪われる、大正期の上京青年の夢と失墜を描く、短くも凄絶な生涯を送った私小説家の代表作。

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