恋細工 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101357737

感想・レビュー・書評

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  •  老中首座・水野忠邦によって1841年から1843年にかけて行われた江戸三大改革の一つ、天保の改革。
     厳しい倹約令が課された江戸城下における、職人たちの生態を活写した人情物時代小説。
     百年の伝統を誇る錺(かざり)職・椋屋の娘、お凜の目を通して、職人たちの生きざまと交流が描かれる。
     女の身ながら、幼少より細工の修業に明け暮れ、四代目亡き後の跡目争いを見守りながら、奢侈禁止令の不自由を掻い潜り、懸命に椋屋を切り盛りするお凜。
     男社会である職人世界のしがらみの中、生きる証を求めるようにもがく彼女と、椋屋に現れた謎の男・時蔵とが織り成す、一進一退の奇妙な絆。
     職人たちの嫉妬や矜持が錯綜する中、斬新な技・平戸細工を磨き続け、己が道を邁進する時蔵。
     そして、消沈した江戸の町に活気を与えるべく、椋屋は一丸となって、一世一代の大仕事に取り掛かる。
     その顛末と、お凜と時蔵の情愛の行方は、最後の最後に、彼ららしい形で結実する。
     『職人は、名を残さずに技を遺す』。
     読み終えた直後、素晴らしい細工物を目の当たりにしたかのように、“…お見事”と呟いたものだ。

  • 飾職人の家に生まれたお凛が、家の跡継ぎを指名する立場に立たされ、かつある職人を家に引き入れたことから、波乱の展開を迎える。西條奈加さんなので期待していましたが、その期待を大きく超える面白さでした。お凛ちゃんの真摯な仕事への姿勢とその有能さもよかったですが、近所に住む大店の娘、お千賀ちゃんが流行の第一人者というのもすごく燃えた。女の人たちがすごいかっこいい話だった。男もがんばってるんだけどね。そしてラストはまた白眉でした。さすが日本ファンタジーノベル大賞受賞者!という高い視点を思わせる物語に仕上がっていました。おすすめです。

  • 101
    絶品である!

著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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