キッチン (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101359137

感想・レビュー・書評

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  • 偶然にも本書を読み始めたのが、祖母が亡くなった日で、過剰投影しながら読んでしまった。

    祖母は静かに、穏やかに、眠るように息を引き取った。それを家族とともに見届けることができた。このご時世に、その場に立ち会えたことが幸福で、死ぬのが怖かった私に「そんなに怖いものではないのよ」と祖母が身をもって示してくれたように感じられて、私は寂しかったけど、同じくらい感謝と温かさにも包まれた。

    そんな自分の感覚が主人公に押し寄せる孤独感とずれていて、感受性豊かに書かれた文章がところどころ理解できなかった。本当は主人公の喪失感に寄り添って読み進めるべきだったんだろうけど、今の私は受け取れる状態ではなかったように思う。

    風景描写がすごく綺麗で透き通っていることと、お茶の暖かみが印象に残った。

    引用
    59p 本当にひとり立ちしたい人は、何かを育てるといいのよね。子供とかさ、鉢植えとかね。そうすると、自分の限界がわかるのよ。そこからがはじまりなのよ。

    111p 世界は別に私のためにあるわけじゃない。だから、いやなことがめぐってくる率は決して、変わんない。自分では決められない。だから他のことはきっぱりと、むちゃくちゃ明るくしたほうがいい

    135p 本当のいい思い出はいつも生きて光る。時間がたつごとに切なく息づく。

  • 多分、今後何度か読むうちにどんどん好きになっていく作品だと思う。

  • この方の文章は好きだけど、正直この本は精細すぎる文章がくどく感じてしまった

  • 初めて吉本ばなな先生の作品を読んだ。
    文章が綺麗で読みやすかった。
    中高生向きだと思う。

  • 数十年前にこの本を読んで吉本ばななさんにハマったのを思いだし再度読んでみましたが、年齢を重ねたせいか当時のように心に響くことはありませんでした。10代、20代の方に向いてると思います。ですが懲りずにまた吉本ばななさんの別の作品も読んでみようと思っています

  • 2022-3

    映画ムーンライズシャドウがこちらが原作と知って読んだ作品。
    初吉本ばななだったけど私には文章が右から左に抜けてしまってなかなか進まなかった。
    時代も違うし喋り言葉とかもナチュラルに感じなくて同じ文章を何回も読んだり…

    それでも言葉にできない感情をうまく比喩したりしてこういうこと!って納得できたり、感情をふわっと何かに例えるのが上手いなと思った。理解できない部分は私がまだ経験していないからでしょうか?

    キッチン
    えりこさんはとても魅力のある人だった。実際私は死をまだ近くに感じたことないけど雄一やえりこさんのように側にいてあげることができる人間になりたい。みかげからあまり感情を読み取れなくて感情移入ができないで終わってしまった。

    ムーンライズシャドウ
    ちょっとファンタジーのような。テニスショップの前で立ち尽くす柊の表情が伝わってきた。こんな経験した人みんなそんな奇跡に巡り合えたらきっとさつきみたいに前に進めるんだろうな。

  • うーん、主人公に共感できない。

  • 吉本ばななの名作。
    主人公とその側に寄り添う男性。
    2人の感情は、、、。
    今まで出会ったことない人間のような。
    感受性の強さからくる苦悩と孤独を持ちながらも、それでも生きてさえいれば人生よどみなく進み、それはさほど悪くない。
    日々、苦しい切ない思いをしてる人へ。

  • (01)
    大切なひとの死をどのように受け入れるのか、ひとりで立ち向かうのか、ふたりで慰め合うのか。身近な人の死に際した読者は、そのひとを思い出し、まだあまり死に際に臨んでいない読者は、これから立ち会う死について想像するかもしれない。
    主人公の女性は、祖父、同居人の母(父)、恋人の死とこの作品のなかで向き合っている。「ムーンライト・シャドウ」では川と橋(*02)が生死の境を媒介する。「キッチン」とその続編では、台所と食がそれにあたる。
    また、女性と男性の境界は曖昧になることもあり、主人公は、決まった居場所がないように、居候をして、取材旅行に同行し、タクシーで右往左往し、川べりをジョギングする。ジェンダーという役や、役を演ずる舞台がどこかに放棄されてしまっている。
    ひとは人間という役を降りることが可能なのだろうか。台所は、その人間に残されたぎりぎりの地点であり、食べることは、栄養の摂取というだけでなく、人間(あるいは複数の人間)に残された唯一の役割のようにも感じられる。

    (02)
    三途の川が象徴されているというより、川の流れが記憶を隠喩しているのは、物語としてよく使用されるかたちである。鈴の音も、地蔵の笏から聞かれる音を連想させるが、金属と金属とがかち合い、転げる音というのは、それが例え小さな音でも、人間を感じさせる何かではあった。人類学の問題としても考えられそうである。

  • お父様の語り口も好きでした。

著者プロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)、2022年『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『吹上奇譚 第四話 ミモザ』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

「2023年 『はーばーらいと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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