うたかた/サンクチュアリ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (179ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101359168

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で書棚から選んだ本。
    吉本ばななさんの作品は人気絶頂のころ、某文芸評論家が「小説の体をなしてない」とこき下ろしていて、それを読んで以来食わず嫌いしていた。
    今回気まぐれで借りて、めでたく初読み。

    「うたかた」が第99回、「サンクチュアリ」が第100回芥川賞候補作品。
    芥川賞候補2作品をカップリングという贅沢な形式で単行本出版するなんて、さすが昭和だな、と。

    今はどんなうっすくても、芥川賞候補になれば1作品ずつ単行本にして売り出すものね。

    ちなみに、この書籍は昭和63年発刊だから、昭和の最も終わり、バブル真っ只中の頃。
    登場人物のセリフも時代を感じます。
    リアルに感じないことを年月のせい(なんせ元号で
    いうと2つも前の時代だ)にできるので、今読むと小説としては十分成り立っているかな、と思う。

    2作品ともつきあっているようなつきあっていない微妙な距離感の男女を描いたもの。恋の輝きと切なさに満たされた作品。

    どことなく懐かしい気もして楽しめました。

    ♪TRAIN-TRAIN/THE BLUE HEARTS(1988)

  • 何気ない会話のなかに、そのひとの心がみえる。
    違う違う。額面どおりじゃない。
    いろんなことを言っている。改めて考えてみると、とっても深いし面白いなあ。

    74ページ
    「私の髪の毛を百万回くらいさわってもいいよ。本当よ。」

    人を好きになることは本当にかなしい。かなしさのあまり、その他のいろんな哀しいことまで知ってしまう。果てがない。嵐がいても淋しい。いなくてももっと淋しい。いつか別の恋をするかもしれないことも、ごはんを食べるのも、散歩するのみんなかなしい。

    登場人物の人間関係がとてもよい。美しい。
    苦しいけれど、だからこそ誰もが応援したくなることだろう。

  • ばななさんの作品に流れる、愛する人を亡くした喪失感、そしてそこからの回復。というテーマが流れているのは他の作品群と同様だと思うのだけれど、この二篇の物語は、ばななさん自身が後書きで述べているように、ちゃんと、きれいな流れのある、誰が読んでもすてきな作品。

    まさにこれだなあ、と気持ちが暖かくなるような気がした。

  • 失敗作だと書いてあるけれど、私はこの本がとても好きになりました。
    恋愛、というと一気にチープになってしまうのが悲しいけれど、
    それか、もしくはもっと深い愛情のような関係性を通じて
    若い二人のこころの葛藤や世界との関わり方が変わっていく、
    それが心地よい風のようにすーっと通り抜けるような
    お話です。月で言うなら、5月のような小説だと思います。
    何で好きなんだろうと考えると、とても分かりやすいからなんだろうなと。
    それでいて、余韻が幸せを含んでいるからだろうなと。
    今の私にはとてもいいお話でした。
    うたかたのお母さんの包丁のシーンが印象的で、
    大きく変わるには象徴的な意味ででも何でも、一回死ぬ必要が
    あるのかな。と。お話だけど、あのとき人魚が帰らなかったとして
    その後のお話はどう変わっていたんだろうなと、
    もしかしたらお母さんは人魚が帰ってこなくても本当には
    死ななかったのかもしれないななんて、考えたりしました。
    うーんまたも支離滅裂。ですが、私にはとにかく心地いい小説でした。

  • いつもの作風とは少し変わったお話のように感じた。
    二作どちらも、切っても切れない縁を描いているので、なんとなくさくらんぼのイメージが私の中である。

  • 年度末の決算ということもあって、ここ最近仕事が忙しく通勤時間はうとうとしてしまい、帰宅後も読書時間がなかなかとれず、今読んでいる本は頭に入ってこなくてイライラを募らせています。
    それでもなにか軽い気持ちで読めるものはないかと、書棚を眺めて、タイトルに惹かれて手に取りました。

    しばらくぶりの再読です。中身はあんまり覚えてません(ぇ
    とても空気感のある、まるで景色のように流れていく物語。
    家族のこと、恋愛のこと、死のことも、重くないけどちょっぴり寂しく切なくてアンニュイな気分になりました。
    疲れているときは甘いラブストーリーよりもホラーよりもミステリーよりも、これぐらいの方がちょうどいいな、と思いました。

    あまり本の感想ではなくなってしまいましたが、疲れているときは、ちょっとほろ苦く、さくっと読める本がいいですね。

  • 恋のお話を読みたいと思って手に取った本。
    ちょっとだけ望んでいたものとは違ったけれど、「うたかた」も「サンクチュアリ」も優しいお話だった。

    淡い恋心というものを、その心の状態を、とても愛おしく思う。
    「うたかた」と「サンクチュアリ」で描かれている恋心もまだはっきりした色彩を持たず、淡く優しく心を温めてくれる想いのようだ。
    いつしかその想いは変形し、変色し、変質してしまうかもしれなくても、そんな想いがスタート地点にあればそこに戻っていけるかもしれない。
    どうだろうか?
    「うたかた」と「サンクチュアリ」のその後を読むことが出来たらこの疑問にも答えが出せるかもしれないのに。

    淡い恋心のその後のお話をもう少し探してみようと思う。

  • はじめて脇役に感情移入した。

    明るくて、向上心がある。。
    友子のことが気になった。


    「人生はそういういつも自分に有利なものだった。」

    「うまくいかないときだって、人生にはあるのに。」

    「それを認められなくて、プライドから死を選んだ。」

    「友子は貯金を使い果たしてしまったんだ。」


    旦那と恋人が後に、友子を語る言葉。


    これって、
    ほんとうにそうだったのかな。





    あたしはなんとなくだけど、違うと思う。


    貯金を使い果たしたわけでもなくて、
    自分で認められなかったわけじゃないと思う。




    ただ、まっすぐに望んでいたかったんじゃないかな。





    「かわいそうなことをした、かわいそうだと思う」


    2人もいたのに、
    じゃぁ何でなんとかしてあげられなかったの?


    なんか、友子さんの結末が悲しかった。

  • あとがきで作者が、「…失敗したというのが正直な気持ちです。…あんなに長い間少女漫画を読んでいろいろ勉強したのに、全然役立っていない…とちょっとがっかりしたが、いつか、何かで役立つ日が来るでしょう」って書いてるのを読んで、思わず笑ってしまった。

    私は好きだったけどな。
    『サンクチュアリ』で、智明くんが夢を見て起きて混乱するところとか、馨さんのいろんな辛さとか、私もすごく身に覚えがあるんだけど、それが悲惨な感じでなく淡々と言語化されてることで、私の気持ちも一緒に整理されて、救われる感じがする。
    吉本ばななさんの作品は、どれもそういう感じがあるから好きなんだろうなと、やっと気づいた気がする。

  • よしもとばなな作品初。
    個人的には「うたかた」が好き。
    淡々とした文章でいろんな意味で中身のない作品と言われていたりするが私は逆にそこが印象に残っている。

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著者プロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)、2022年『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『吹上奇譚 第四話 ミモザ』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

「2023年 『はーばーらいと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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