ハゴロモ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101359274

感想・レビュー・書評

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  • とても癒されました。それでいて、力強く背中を押してくれた、弱っているときにはたまらない。
    愛情という拠り所を失った若い女性が都会から故郷へ帰ってくる。そこにも、大切な人と一生の別れをした人がいたり、癖のある人との出会いもあった。人の辛さに寄り添いながら、自分も傷を癒し成長してゆく。
    繊細で、綺麗な文章は苦しんでいる人をそっと肯定し、時にシビアな言葉ではっと気づかされる瞬間がある。
    住んでいる場所。小さな町の大きな川、土手、川の水の流れ。自分の周りにある風景に、知らず知らずのうちにエネルギーをもらっていたのだと感謝する気持ちにもなった。これから川の水の音を聞いてみようと思う。
    弱っているときは、そのままの姿を見せればいい。無理をしてなんでもないって顔をしたら、一生どこかが固いままになってしまう。時間がかかっても大丈夫。
    人の意図しない優しさ、さりげない言葉の数々は羽衣。
    みつるくんがやっているインスタントラーメン屋さん。
    私は、あのラーメンは「塩」だ。

    • アールグレイさん
      こんにちは♪
      kazekaoru21さん
      この本にでてくるのは、若い女性のように思います。自分の気持は無理せずにいたいですね。
      私の性格は自...
      こんにちは♪
      kazekaoru21さん
      この本にでてくるのは、若い女性のように思います。自分の気持は無理せずにいたいですね。
      私の性格は自分で思うに、思ったことを口にして、後になって後悔してしまう、
      フォロワーの皆さんへのコメントにも何かを書いてしまっているのでは、と思います。
      kazekaoruさん、何か言っていたら(o_ _)o
      そろそろ11月、そちらでは紅葉は如何でしょうか?
      2021/10/25
    • アールグレイさん
      私は、醤油とんこつ、塩とんこつのどちらかです。
      私は、醤油とんこつ、塩とんこつのどちらかです。
      2021/10/25
    • kazekaoru21さん
      ゆうママさん、こんばんは!
      主人公は20代半ば、まだまだこれから、羨ましい若さです。
      そうですね。無理をせずに、気持ちに忠実に。時に無理...
      ゆうママさん、こんばんは!
      主人公は20代半ば、まだまだこれから、羨ましい若さです。
      そうですね。無理をせずに、気持ちに忠実に。時に無理が必要なこともありますが!
      ゆうママさんのコメントは楽しいですよ。これからも宜しくおねがいします!そっか、そろそろ紅葉ですね。出かけることもなくすっかり忘れてました(^-^;
      塩とんこつも美味しそうですね。私は、昔っからの塩が好きです!
      2021/10/25
  • 羽衣を奪われた天女は空へ帰れなくなり、男の妻となり人間界で暮らす。
    18歳で愛人関係という「ハゴロモ」を手にしたほたるは売れっ子カメラマンの彼に与えられた都内のマンション暮らし。8年間続いた関係は彼からの一方的な決断で終わり、「ハゴロモ」を失った彼女はふるさとに帰ることにした。

    大きな川の流れるその町で、これまでに失ったもの、忘れていた大切な何かを取り戻すまでの再生の物語。

    それぞれ大切な誰かを失った人たちが、寂しさや後悔を乗り越えて、べつの誰かに優しい気持ちを向ける。
    ばななさんらしい優しいおとぎ話。

  • 弱っているときに読むとそのままでいいや、ゆっくりいこうという気持ちになって、心が軽くなる小説。
    川の音は人を癒す作用がある。テレビをつけっぱなしにしていることは落ち込んでいるときにはかえって回復を遅らせてしまう。
    色んなことを言葉にしなくてもわかってくれて不自然じゃない優しさで包み込んでくれる、るみちゃんすごいな。


  •  何か辛いことがあった時、また読み返したい。流されてもいいよ〜と思える本。

    「人も幽霊も同じだよ。こちらの思い入れで接すると、必ず痛い目に合う。〜でも、それをしっかりとふまえた上で背筋を正して接していれば、何かわかりあえるものがある。ただただきれいな話には、必ず落ち度があるものだと思う。」p55

     「人間は、絶対に無理をしてはいけない。無理が全ての悪いことを生み出すんだって、」p153

    ☆「そういうのが最高なんじゃないのか?自然に、川のように流れて、あるところにいつのまについてしまうっていうのが。」p163

  • 病気になった人のほうがつらいと、誰が決めたのだろう、と私は思った。病気にならず、泣かず、ちゃんとごはんを食べて、散歩もして、友達に会ったりしている人のほうがつらいということもあるかもしれないと、なぜ彼は思わなかったのだろう。

    まるで春にきれいな風が吹いてきて鼻先がちょっとあたたかく甘い匂いがするのが好きなのと同じように、冬にストーブの前にいて膝が熱くなって幸せになるように、ただただ楽しかった。

    人の、感じる心の芯のところは、決して変わることがないようだ。

    人の、意図しない優しさは、さりげない言葉の数々は、羽衣なのだと私は思った。いつのまにかふわっと包まれ、今まで自分をしばっていた重く苦しい重力からふいに解き放たれ、魂が宙に気持ちよく浮いている。

    心の強い人は、たいてい心さえしっかりしていれば体はなんとかなる、って体のことをばかにしているんだ。
    でも人って、ある線をすぎると、こんどは体が弱っていることが心を引っ張っていってしまうんだ。

    たとえどんな死に方をしても、どんなつまらないことの巻き添えになって死んでしまったのだとしても、そのお父さんの魂が汚れることは決してない。つまらない意図で、つまらない人生に行き詰まってはた迷惑な生き方や死に方をした甘えた人が決して、絶対に遺せないずっしりしたものが確かにあるし、それは、形を変えて絶対に続いていくはず。
    遺していく力の重みこそが、きっと人間が唯一このどうしようもなくたまらない世界の中に置いていける何かなのよ。

  • 再生をテーマにした青春小説。ばななさんの冬の情景描写が好きなのですが、「あとがき」を読んだらご本人はずっと東京暮らしだからこういう寒そうな地域の生活を知らないらしくてびっくり。

    大失恋をして田舎に戻ったヒロインが、だんだん人生に対して希望を取り戻していく様子は、弱っている誰かにそっと寄り添ってくれるはずです。

  • 川のそばにいくと、いろんなことが良くなる気がしていたのはわたしだけじゃなかったんだなぁと。何かあると川の近くに行って唄ったり、あそんだり、眺めたりしていたのを思い出しました。
    この本のような奇跡的な体験ってほんとにあるのかなぁ、ないだろうなぁと思うけど、気づいていないだけで奇跡みたいなつながりで周りの人と出会っているのかも〜と思うと、愛おしくなりますね

  • ぼろぼろになって帰ってきても、色々詮索せずにいつも通りの生活をしながら見守ってくれる家族と自然豊かな田舎があるのはうらやましい

  • Xで、失恋した方が『この本の言葉はどれも今の私に刺さる』とポストされていたので気になって手に取った本です。かく言う私も失恋したばかりで、自分の存在意義や後悔に押しつぶされそうになっていたけれど、なんとなくこの本を読んでホッとしたような気がしました。これからは自分を生きよう、川の流れのように、少しずつ回復して前を向いていこう。

  • ・そしてそういう景色には、見ている側の甘えをきっぱりと拒むような、何かぞっとするところもあった。

    ・だから、どうにもほっとできない気持ちの中にいる人が、ふと読んで、何のメッセージを受け取るでもなく、ただちょっとだけ苦しみのペースを落とすことができたらいいな、と思います。(あとがき)

著者プロフィール

1964年07月24日東京都生まれ。A型。日本大学芸術学部文藝学科卒業。1987年11月小説「キッチン」で第6回海燕新人文学賞受賞。1988年01月『キッチン』で第16回泉鏡花文学賞受賞。1988年08月『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞受賞。1989年03月『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞受賞。1993年06月イタリアのスカンノ賞受賞。1995年11月『アムリタ』で第5回紫式部賞受賞。1996年03月イタリアのフェンディッシメ文学賞「Under 35」受賞。1999年11月イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門受賞。2000年09月『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞受賞。『キッチン』をはじめ、諸作品は海外30数カ国で翻訳、出版されている。

「2013年 『女子の遺伝子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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