なんくるない (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101359298

作品紹介・あらすじ

沖縄には、神様が静かに降りてくる場所がある-。心ここにあらずの母。不慮の事故で逝った忘れえぬ人。離婚の傷がいえない私。野生の少女に翻弄される僕。沖縄のきらめく光と波音が、心に刻まれたつらい思い出を、やさしく削りとっていく…。なんてことないよ。どうにかなるさ。人が、言葉が、光景が、声ならぬ声をかけてくる。なにかに感謝したくなる滋味深い四つの物語の贈り物。

感想・レビュー・書評

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  • 『人間ってそんなにはがんばれないものだから…。そして、がんばるために生まれてきたわけじゃないから』。

    この世を日々生きていくことは大変です。それは主として人と人との関係性によるものではないでしょうか?もちろん、何もない無人島での暮らしが一番とも思いませんが、人と人とが関わり合う暮らしの中では常に利害関係から生じる軋みが発生してもしまいます。

    学校で、職場で、そして家庭の中で、私たちはそれでも日々を生きていくために、さまざまに想いをめぐらします。その中で正しいと思う選択を日々繰り返していく私たち。とは言え、全てが思い通りになるわけではありません。どんなに思っても、どんなに願っても自分の力ではどうにもできない事ごとというものはあります。しかし、本当にそうでしょうか?どうにもできないと思うのが自分自身であるとしたら、それは自分こそがそれを解決することができる唯一の存在なのではないでしょうか?

    さてここに、心に刻まれたつらい思い出を持つ人たちが主人公となる物語があります。『沖縄』を訪れる主人公たちを描くこの作品。リアルな『沖縄』の情景に心躍るこの作品。そしてそれは、「なんくるない」という『沖縄』の方言に込められた言葉の意味をしみじみと感じる物語です。
    
    『宿の車が迎えに来てくれたのを、家族みんなで確認した』、『あ、あそこに見えてる』と『はしゃいで指さ』すのは主人公の『私』。『波は静かにゆらめき、真っ青な海の色をきわだたせた』中に『出迎える人々は郵便や物資を待ってにぎわってい』ます。『にぎやかな風景なのに、全体が奇妙な静けさに覆われていた』と感じる『私』は、そんな記憶を『今思えば、それが私の平凡だった少女時代最後の家族旅行だった』と思い返します。『宿の部屋にはぺったんこのふとんが無造作につみあげられていた』という部屋へと入り『こんなに陽があたったら布団を干す必要はないわね』と『畳に足を投げ出して母は言』います。それに、『あ、牛が見える。牛も暑そうだな』と『窓の外を見ながら』話す父親。そんな両親の『だらけたやりとりに退屈』した『私』は、『手を洗ってくる!』と廊下へと飛び出します。『じっと窓の外を見』る『私』は、そこに『白い風車』があるのに気づきました。『近代的な風力発電の、かっこいいデザインの風車』は、『同じリズムでぐいん、ぐいん、と回ってい』ます。『その光景は幻想的で、まるで夢で見る景色のように、私を一種の催眠状態にし』ます。『少し退屈で甘く切なくとんちんかんで、永遠に続くかと思われた平和な家族の夢。まだ子供の時だけに感じる独特の世界の味』。そんな時のことを『贅沢で無邪気な時期だった』という今の『私』は、『断片的にしかおぼえていない』、『その旅を象徴する光景は何よりもあの風車だった』と思います。そして、『島を去って本島についてから、私たちは父の妹、今は沖縄の人と結婚して那覇に住んでいるおばさんのところに遊びに行』きました。そして、『うわさ話で知ったすごくあたるというユタのところを興味本位でたずねていった』母親の一方で、市場へと出かけた父親と『私』。『ドラゴンフルーツ、マンゴ、パパイヤ…』と『海の中の魚のように色とりどりの果物の甘い味。おみやげにいくつも、持ちきれないほど買』った『私』。そして、『おばさんの家に戻ると、母はなんだか興奮した様子で必死におばさんに話しかけて』います。ホテルへと戻り、『おなか一杯になって』『寝てしまった』『私』でしたが、『何かいやな気配を感じて』目を覚まします。『前から思っていたのよ、あの、庭先の、池がね、全部いけないっていうの』、『すごくぴったりきたのよ』、『自分ではどうしようもないことって、あると思うの、目に見えない法則が…』と興奮する母親。『何の話かよくわからな』い中に『いやなことが始まっているのだけはわかった』という『私』。そんな『私』は、『トイレに行って、ふたりの話を中断させようか、それとも…』と逡巡する中に寝てしまいます。翌朝、『何事もなかったかのように笑』う両親でしたが、『母の中にくすぶっていたある雰囲気が、形を得てしまってどんどん力をつけてい』きます。東京へと帰ると『ボランティアのようなことをはじめ』た母親。やがて、『いつのまにか母は私たちの手の届かないところに行ってしま』いました。『この世の今目に見えている姿は全部まぼろしで、自分にはほんとうのところが見えていると言い張』る母親。一方の『私』は、『ものを食べなくなっ』ていきます…そして…と描かれていく最初の短編〈ちんぬくじゅうしい〉。沖縄への家族旅行の先に待つまさかの展開、『里芋の炊き込みご飯』という意味を持つタイトルの先に穏やかさと緊張感が同居する好編でした。

    “沖縄には、神様が静かに降りてくる場所がある ー。なんてことないよ。どうにかなるさ。人が、言葉が、光景が、声ならぬ声をかけてくる。なにかに感謝したくなる滋味深い四つの物語の贈り物”という内容紹介が絶妙にこの作品を言い表しています。書名の「なんくるない」とは、”挫けずに正しい道を歩むべく努力すれば、いつか良い日が来る”といった意味合いの沖縄の方言だそうですが、書名にそんな方言が使われることから想像される通り、この作品は主な舞台を沖縄に描かれていきます。”絶対、よしもとさんは沖縄好きですから!”と新潮社の方に声をかけてもらった先に沖縄へと旅し、この作品の成立へと至ったという展開。吉本ばななさんというと、「まぼろしハワイ」でズバリ、ハワイの地も描かれていますし、南の島に相性が良い作家さんなのだと思います。

    では、そんな吉本さんが描く沖縄の描写、せっかくですから食べ物の描写を見てみましょう。『安里にある有名な小料理屋さん』へと出かけた主人公の食の風景です。

     『名物の「魚のマース煮」を頼んで、ていねいに食べた。大味な魚なのに、夢のように繊細な味がした。塩と昆布だけで煮ているのに、甘くて、ふっくらとしていた。私は骨をしゃぶりつくして、汁もみんな飲んだ』。

    恐らくは、吉本さんご本人が注文して味わわれたそのままの光景なのではないかと思いますが『魚のマース煮』という塩水で蒸すという沖縄ならではの料理、私も食べたことがありますが、これはいきなり食欲を掻き立ててくれます。一方で、さらにメジャーな食はこんな風に描写されています。

     『オリオンビールを飲みながら…海ぶどうをつまんだり、おいしい!と言ってはサーターアンダギーをほおばった』という母親の一方で、『亀せんべいと塩とかつお入り味噌でのもろきゅうで泡盛を飲み始め』た父親。

    メジャーどころはさらっと一気に表現してしまう吉本さん。誰もが知るものばかりですから、これだけで一気に沖縄ですね!食ばかりではなんですから有名な観光地も見てみましょう。『いつまで見ていても飽きない、光の中の熱帯魚たち』という『水族館』です。

     『ジンベエザメが行ったり来たりしてるだけなのに、私は口をぽかんとあけて、いつまでもそれを見ていた。優雅なその姿はまるで空をゆく飛行船みたいだった。まわりでひらひらしているコバンザメはまるでかもめのようだった』。

    海の生物を空に飛ぶものに比喩するという絶妙なセンス。なかなかこのようには比喩できないと思いますが、なんだかとてもワクワクしてきます。嗚呼、『沖縄』に行きたい!そう、一冊丸ごと『沖縄、沖縄、沖縄』どっぷりな本を読むのは、そうは言ってもとても行ける状況にない…という身には強毒ですね(笑)。

    そんなこの作品には四つの短編が収録されています。それぞれに関係性はなく、また表題作の「なんくるない」が全体の半分を占めるなど作品によって分量もバラバラです。そんなバラバラな作品を一つにまとめていくのが上記した『沖縄』の描写でもあります。では、四つの短編をご紹介しましょう。

     ・〈ちんぬくじゅうしい〉: 『今思えば、それが私の平凡だった少女時代最後の家族旅行だった』と親子三人で『沖縄』へと旅した過去を振り返るのは主人公の『私』。『沖縄』の美しい自然とゆったりした空気感を満喫する三人でしたが、母親が一人で『うわさ話で知ったすごくあたるというユタのところ』に行ったことで空気感が変わります。『私たちの手の届かないところに行ってしまった』母親、そして家族は…。

     ・〈足てびち〉: 彼と『ちょっとしたハネムーン気分で沖縄旅行を決め』たのは主人公の『私』。ホテルで目が覚めると、『海と浜は一面の男子高校生で埋め尽くされていた』という中に歩き始めた二人は、『隣の浜にある私の友達の家』へと赴き、夫婦と『息子がわりだと紹介された』『若い青年』と時を過ごします。そして、今の『私』は『あの午後に戻れるなら何でもすると彼も思っているだろうか?』という時を生きていきます。

     ・〈なんくるない〉: 『離婚してから一年たった頃、やっと生活が落ち着いてきた』というのは主人公の『私』。『イラストの仕事を細々と続け』、『姉の家に居候』している『私』は、彼が『私と別れて数ヶ月後に』『再婚した』ことを知ります。『会いにくくなるのが淋しかった』という『私』。『離婚から来る、ぐるぐるした堂々巡りの考えから抜け出す処方箋を真剣に考え』た『私』は、『沖縄』へと旅立ちます。そこで…。

     ・〈リッスン〉: 『特に目的もなく浜を横切っていた』というのは主人公の『僕』。『人気の少ないビーチに出た』『僕』は、さらに先へと進み、『ひと泳ぎして浜に上がると』、『木陰でごろりと横にな』ります。そんな中に『向こうから女の子が歩いて』来るのに気づきます。『薄汚い女の子』、『顔はいかついけどわりとかわいかった』という『女の子』に『どこから来たの?』と声をかける『僕』。

    四つの短編は最後の〈リッスン〉のみ、男性が主人公を務めますが、他は女性主人公の視点で展開していきます。それぞれの主人公たちは何かしら心に傷を負っています。それは、『手の届かないところに行ってしまった』母親であったり、『離婚』であったり、さらには『不慮の事故で死んだ』人への思いであったりします。そんな主人公たちの心を、その思いを沖縄という特別な地が癒していく。この作品には『沖縄』が見せる独特な空気感によって、そんな物語の展開を全く不自然に感じさせない物語が描かれています。しかし、そこには単に時の流れが解決するという物語が描かれるわけではありません。上記した通り、書名の元となる「なんくるない」という言葉は”挫けずに正しい道を歩むべく努力すれば、いつか良い日が来る”という意味であり、その過程にある挫けない、努力するということを重視してもいます。そんな過程の先に安らぎを見る物語。

     “沖縄という場所が私の人生に入ってきたことは、とても大きなことだった”

    そんな風に語る作者の吉本さん。この作品には吉本さんの『沖縄』への深い思いが詰まっているからこそ万人が納得できる物語の姿があるのだと思います。『沖縄』のあんなこと、こんなことが鮮やかに描き出されていくこの作品。吉本さんらしく美しい言葉の数々が紡がれるこの作品。

    『沖縄』という地の魅力を再認識させてくれる、吉本さんの想いを強く感じた、そんな作品でした。

  • 後期のスピリチュアルな顔も現れるが、基本初期のバナナの美しい景色、人、空気が感じられる作品。
    沖縄という土地が、それぞれのあるがままの自分を賛美してくれる応援小説と私は感じた。美しい景色を感じられる文章は嬉しい。

  • 短い短編の中に、沖縄の海が、太陽が、ぎゅっと詰まっている。
    私はうまく言えない。でも、きっとそういうところなんだろうな、と思う(私は行ったことがありません)。
    すごく、とってもとってもいい。

    ーーー

    足てびち
     とても素敵な思い出だった。
     沖縄の海にきらめく、なんというかきらきらする、そしてはかない思い出。はかなすぎる。確かに、こうした思い出はいつまでも残る。そして、自分の人生でいつまでも輝く。

    なんくるない
    142頁
     そして、シャワーを浴びて、温泉に行って、ただのポカリスエットをちびちび飲みながら扇風機の前の椅子で涼んで、そのあと部屋でお昼寝をして、また夕方が来て……私は昨日照会されたお店に向かってぴかぴかになって出かけていった。
     そう、海で清められて、お昼寝で清められて、まっさらな私。これまでの経歴や経験もみな忘れてしまった私で、出かけていったのだ。

    162頁
     そして大人だからもう自分のことは自分でやりなっていう感じで、決して過保護とも言えず、ただそこには愛があった。
     でも嫌いじゃないな……この感じ。東京では成立しにくいな、と私は思った。
    どうしてだろう、波とか星とか近くにないからなのか。空間がせまくてなにかとぜちがらくなるからなのか。

    ーーー

    沖縄(わたしのすきな沖縄感)
    https://www.tiktok.com/@chiyomaru2022/video/7137787539393432834

  • ばななさんの言葉で溢れてる。
    ばななさんと沖縄が混ざると、都会の喧騒にいてもちゃんと作品のゆるさに浸ることができる。
    登場人物はみんな、きちんとなにか決めたり、パキパキ動いたりする訳じゃないから、好みは別れるかもしれない。
    沖縄に行ったことがないけど、素敵な場所だというのはすごく伝わる。
    表題作の「なんくるない」は、自分的にタイムリーというか、、。何事も深く考えすぎたってしょうがないんだから、とりあえず今を楽しめばいいじゃない!って背中を押される作品だった。
    ヘラヘラしてる人間だからかな、どれもしっくりきた。

  • どこまでも続く真っ青な空。

    強く照りつける日差し。

    キラキラと輝く
    エメラルドグリーンの海。

    日に焼けた肌の痛み。

    秋の匂いと
    そこはかとなく漂う淋しさ。


    まるで沖縄にトリップしたかのように
    ゆったりとした時間の流れさえも
    肌で感じられるこの心地よさ。


    崩壊した家族を離れ
    沖縄で暮らす少女の成長を描いた
    「ちんぬくじゅうしい」

    30代後半の恋人同士と
    那覇の浜辺に暮らす
    仲睦まじい夫婦の
    儚くも夢のようなひとときを描いた
    「足てびち」

    離婚の傷を引きずるイラストレーターは
    ふらりと入ったイタリア料理店で
    運命の男トラと出会う…
    「なんくるない」

    父と共に自転車で放浪する少女に
    翻弄される旅行者の男を描いた
    「リッスン」

    など沖縄を舞台にした4つの短編集。


    ばななさんの小説の魅力は
    想像力の余白を残した文体だと思う。

    どんな匂いなのか
    どんな風が吹いたのかを
    切なさを内包した独特な言い回しが
    読者の想像力を育んでくれる。

    そして
    悲しくて切なくて
    幸せだったひとときを描くのが
    本当に上手い。


    実話だという
    未来少年コナンの
    コナンとラナみたいな自然と対になってる夫婦の揺らぎない強さや、

    バカ正直で純粋な
    ダメ男のトラの優しさ、

    放浪する少女の
    片方の目がうんと細くなる笑い方にも
    否応なく惹きつけられてしまう。


    涙が出るくらい美味しい
    おばさんが作ってくれたオムレツ。

    ゴーヤーチャンプルーにソーキそば、豚足(足てびち)、魚のマース煮、泡盛、アメリカ風ピザなど、
    食べることが好きな
    ばななさんだけに
    この小説でも
    様々な料理が人を繋いでいく。



    トラ、俺も思うよ。

    悲しいことやツラいことや
    見えない悪意が人生にはふんだんにあって
    それと戦うために、

    人は好きなものや
    好きな人を沢山作って
    自分の「好き」を武器に
    運命と戦っていくもんなんやって。

    ちっぽけでくだらない自分の人生を
    誰にも渡さないために。


    沖縄の匂いを感じたい人や
    旅人の気分を味わいたい人、
    都会のサイクルに疲れてる人、
    オススメです。

    • MOTOさん
      沖縄の方言って、まるで魔法みたいですね。

      「なんくるないさぁ~」って言われると、
      どわわ~っと、
      ♪青い空~青い海~あおぉ~い風が
      心の中...
      沖縄の方言って、まるで魔法みたいですね。

      「なんくるないさぁ~」って言われると、
      どわわ~っと、
      ♪青い空~青い海~あおぉ~い風が
      心の中に忽ち広がって行くような…

      すると、
      本当に、どんなことも「なんくるないか」
      なんて気持になっちゃうから不思議です。(^^;

      実は、
      よしもとばななさんの作品は未読でしたが、
      円軌道さんのレビューを読んで、
      ここから始めたくなりました♪

      一度も旅した事はありませんが、
      憧れてやまない土地、沖縄♪
      三線を弾いてみたくて、楽器店を探し回りましたが、生憎みつからず。
      結局、購入したウクレレを爪弾きながら島唄歌っていまぁ~す。^^♪
      2013/05/09
    • 円軌道の外さん

      MOTOさん、
      コメントありがとうございます!

      魔法の言葉って分かるなぁ〜(^O^)

      自分も10年ほど前に沖縄に行った時...

      MOTOさん、
      コメントありがとうございます!

      魔法の言葉って分かるなぁ〜(^O^)

      自分も10年ほど前に沖縄に行った時に
      現地の人たちの優しさやあったかさに
      心から来て良かったと思ったし、
      考え方も変わりました。

      都会で暮らしてると
      時間に追われて
      仕事に疲れて
      何のために生きてるんやろって
      自分を見失ってしまいがちやけど、

      沖縄ののんびりとした雰囲気の中にいると
      肩の力が抜けて
      みるみる力が湧いてきたんですよね。


      ばななさんの小説は
      全編切なさの塊なんやけど、
      沖縄と同じく
      なぜか読んだ後は
      生きる気力が湧いてくる不思議な力を持ってるので
      是非是非トライしてみてくださいね(^_^)v

      てか、ウクレレを爪弾きながらの島唄
      聴いてみたいなぁ〜♪

      2013/05/12
    • 円軌道の外さん

      まっき〜♪さん、
      コメントありがとうございます!

      いや、実は自分も同じく
      半年くらい寝かしていた本なのです(笑)

      本や...

      まっき〜♪さん、
      コメントありがとうございます!

      いや、実は自分も同じく
      半年くらい寝かしていた本なのです(笑)

      本や音楽や映画って
      その時の環境や心の在り方や経験が
      感動を左右するので、
      賞味期限はないけど
      出会うべきタイミングってあると思います。

      自分に響いたから
      まっき〜♪さんにも響くとは限らないけど、
      ここでこの本にまた出会ったことは
      やはり何かの縁なのかもしれないですよね(^_^)

      特別なことが次々と起こるような
      ドラマチックな話ではないけど、
      読めばこれからの季節
      南の島に行きたいなぁ〜っと
      旅心がうずくのは確実です(笑)

      また感想楽しみにしてますね(笑)


      2013/05/12
  • 沖縄を舞台にした4つの物語。

    久しぶりのばななさん。
    ゆるやかに時間が流れる沖縄で、ばななさん特有の色彩豊かな物語でした。全ての物語の根底にある、ぽつん、とした空気感が沖縄の風土と意外な程合って新鮮でした。
    どれもすこしだけ、ぎゅっと胸が締め付けられます。

    自分の力ではどうにもならないことは、たくさんあるけど、そんな「なんくるないこと」に対して、なんくるない、と言ってくれる自然な優しさに癒されました。
    ばななさんの描写は、とにかくいつも優しくて、ばななフィルターを通して見た世界が大好きです。

    「目の前に広がる景色があまりにもきれいすぎて、その透明な水の中に住んでいる魚たちの色がまるで宝石みたいに海にちりばめられているさまも、空と海が混じることなく似た色でどこまでも続いていることも、悲しく思えた」
    なんて、きれいな言葉。胸がぎゅっとします。

    私は沖縄に行ったことがありませんが、沖縄に魅了された友人はみんなこぞって沖縄に通っています。1度行ったら満足、というのではなく、何度でも行きたい、むしろいっそ住み着いてしまいたい、という魅力に溢れている土地なのでしょうね。

    読んでいて心が浄化されるかのようでした。
    ひさびさのばななワールドを堪能できました。

  • 沖縄を訪ねる人たちの、ささやかな物語が4篇つづられています。

    無意識のうちに蓄積した、ゴワゴワした心の強張りを手放して、緩んでいく姿が描かれています。


    あとがきにある、

    「私はあくまで観光客なので、それ以外の視点で書くことはやめた。これは、観光客が書いた本だ。」

    という、この姿勢が誠実で好きです。


    「沖縄を訪ねる」ということは、いつかは元の場所へ戻ると分かっている、ということ。


    ちなみに、「なんくるない」は沖縄の言葉で「何とかなるさ、大丈夫だよ」という意味として知られていますが、本来は「まくとぅそーけーなんくるないさ」という定型句なんだそうです。


    「まくとぅーそーけー」は「正しいこと、真(誠)のこと」という意味。


    まくとぅそーけーなんくるないさ。

    正しい道を歩いていけば、きっと大丈夫。

    (かんちゃんさん)

  • よしもとばななさんによる沖縄旅行者としての沖縄短編集。

    沖縄の古本屋で買って、沖縄旅行中のゆっくり流れる時間の中で読みました。
    分量のメインはタイトルにもなっている、「なんくるない」。主人公のバツイチ桃子が、長年の”都会的”な夫に合わせた生活からか、離婚を切り出されてしまった悲しみからか、都会での生活が息苦しくなり、沖縄旅行で新たな出会いをするお話。
    感想を書こうとするとありきたりになってしまうけれど、ありきたりもっとのんびりと、どんくさく生きてもいいんだぁと思わせてくれる小説。

    私が1番好きだったのは、「ちんぬくじゅうしい」。子供目線から親同士のすれ違いを不安に感じる様がすごくしっくりきた。好きな表現や文章がたくさんあって、また読み返したいと思う小説でした。

  • ずっと読みたくてたまらなかった「なんくるない」
    普段は行かない店舗のBOOK・OFFで見つけて即座に手にしました。

    私は自分のものにした本には、鉛筆で線を引いたり折り目をつけたり、後々読み返した時や元気がなくなってしまった時に自分を助けるよう目印をつけるのだけれど、この本は線・折り目だらけになってしまった…それくらい、ココロにグッとくるものが沢山!沖縄の誰をも包み込むようなパワーや性とのバランス、人と人とのフィーリング。

    長く長く、大事にしたい本です

  • 「つまんないことがたくさんたくさんあって、力がなくなるようなこととか、生きててもしかたないと思うようなことがたくさんある、TVを観ても、なにをしててもいつでもたくさん目や耳に入ってくる。だから面白いことをたくさんして、逃げ続けるんだ。逃げ続けるしかできない戦いなんだよ。僕のちっぽけな人生を誰にも渡さないんだ。」(p.214)

    わたしの人生は、生きるべきものだ、愛すべきものだという確証が揺らいでしまう瞬間というのはどうしようもなく訪れる。ここ数年は特に。
    絶望や退屈、緩慢な死。
    それらから目を背けるため、活字や音楽、居心地のいい他者と過ごす時間によって得られる幸福に目を向けるという「逃避」は、決して否定されてはならない。そうして過ごす時間こそ、わたしのちっぽけな人生の、一番大事なきらめきで、価値なのかもしれない。
    いつもここではないどこか、を探している。

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著者プロフィール

1964年07月24日東京都生まれ。A型。日本大学芸術学部文藝学科卒業。1987年11月小説「キッチン」で第6回海燕新人文学賞受賞。1988年01月『キッチン』で第16回泉鏡花文学賞受賞。1988年08月『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞受賞。1989年03月『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞受賞。1993年06月イタリアのスカンノ賞受賞。1995年11月『アムリタ』で第5回紫式部賞受賞。1996年03月イタリアのフェンディッシメ文学賞「Under 35」受賞。1999年11月イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門受賞。2000年09月『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞受賞。『キッチン』をはじめ、諸作品は海外30数カ国で翻訳、出版されている。

「2013年 『女子の遺伝子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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