- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101359366
感想・レビュー・書評
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雫石、楓、片岡さんの3人の関係がとってもいいです。心地よい風が流れています。
信頼できる人、あったかく毛布のような人、…
いろんな人とのかかわりの中で、雫石のぐらぐらしていた足元も、しっかりしてきます。
人を成長させるのも人なんですね。そして自然がその人の持っている力を引き出してくれる。
身体の真ん中があったかくなる感じがしました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
特殊な環境で育った雫石もゲイで盲目の楓も、目に見えなくても手で触れられなくとも、そこに確実に存在するものや想いを大切にしているから、こんなにも優しい物語になっているんだと思う。別段悲惨なことや幸福なことがたくさん起きるわけじゃない。でも、言葉のひとつひとつが美しくて厳しくてあたたかくて思わず涙が零れてしまう。読み終わったときの充足感を言葉にするのは難しいんだけど、一言でいうなら「ありがとう」。いや、いい歳してこんなことを言うのはかなり恥ずかしいんだけども。読むことができてよかった、錘を軽くしてくれてありがとう、素直にそう思えた。
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吉本ばなな『王国』シリーズ三部作。
胸にすとんと入ってきて自分の血肉にそのままなるような、すごく読んでよかったなぁと実感した作品。
言葉ひとつひとつが、私が理想とする人間の感覚にすごく近くて心に残った。
私たちの日常と比べるとあまりにもスピリチュアルだけど、いつか人間が死ぬときはこういう自然な感覚に戻っていくんじゃないかなぁ。 -
意味がない存在でいると、頭の中の声が大きくなってくる。頭の中でいつもぶつぶつと考えていたあの機関を経たことで私は私が生きていることが、今、どういう流れの中にあるのかはっきりと理解していた。
みんないつでも前のめりで、5分先を生きている。みんな急いでいる。無駄にエネルギーを使っている。それはエネルギーはすぐに充電できるという幻想を持っているからだろう。
一人一人の人間がその人本来の姿に戻ったら、怖いくらいの力を発揮する。でもその力は解らずじまいで墓に行ってしまう可能性が高い。それでもいいと人々は思っているのだろう。
人の心は本当は無限に広がっていく限りないもので、風が吹くたびに、光の感じが変わるたびに世界は違う顔を永遠に見せ続けてくれる、だから果てしないものなのだ。
そのすべてが何気なく生かされるこの毎日が、いつまで続いていてもいい。それが私の人生の望みだ。
人生、そうそう何かあったりしませんよ。怖いのは自分の気持ちじゃない? -
「理解できるけど、どうしてそんなひどいことが言えるのか、僕には理解できない。人が人として生きていくことを、侮辱しているように思える。そしてそれは僕にとって、君の最大の魅力でもあったんだ」
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212 大丈夫なときとだめなときは、必ず交互に、やってくるのだ。
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最初から分かっていた。
不倫は長続きしないことを。
「いつかバレるかもしれない」
「我々はいけないことをしている」
というスリルから来る胸の高鳴りが
恋をしているときのそれと勘違いしているんだろうなー、と。
吊り橋現象ですよ。
雫石はあれで良かったのだと思う。
もちろん真一郎くんとのやりとりは好きだったけれど
すぐに高橋くんの家に越した真一郎くんは
死んだ友が残した庭の管理、という大義名分を使って
初恋の人の元に行ってしまった、ということへの
嫌悪感はぬぐいきれない。
雫石は私と同じ言葉で復活する。
「彼が私を愛していたことも、2人の思い出も色あせないし、誰もその思い出をいじることは出来ない」 -
久しぶりのばなな本だったが、昔のようにストーリーや情景にどっぷりひたる感じではなく
日々の暮らしに対する姿勢、こうあるべき生き方のようなものが伝わってきた。
でも押し付けがましい感じではなくて、いつもなんとなくしか感じていないので、
うっかり忘れてしまいそうだけど覚えておきたい教訓のようなもの。
こんなストイックにはやってられないよなぁと思いながらも
忘れないように傍線をひきたい気持ちになった。 -
ぴったりのタイミングで読んだので、ゴクゴクと水を飲むように、からだとこころにしみました。
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100529