猛牛(ファンソ)と呼ばれた男―「東声会」町井久之の戦後史 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101360416

感想・レビュー・書評

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  • 在日と右翼の黒幕。同じく六本木を根城にしている今の半グレとは規模が違う。

  • サブタイトルに―「東声会」町井久之の戦後史―とあります。
    町井久之(韓国名:鄭建永)といふ人は、在日韓国人の二世で、敗戦後日本のどさくさの中、武力でもつて台頭してきました。
    まあ一般的にはヤクザ屋さんのボスとして捉へられてゐるのではないでせうか。自ら組織した「東声会」も完全に暴力団のイメエヂであります。
    暗黒街で政財界の大物とつながりを持ち、隠然たる力を示した男...

    『猛牛と呼ばれた男』は、その町井久之氏の生涯を追つた実録ノンフィクションであります。
    もともと彼に対する知識はほとんどなかつたわたくしなので、明かされる意外な素顔に「ほほう」となつたものです。
    そもそも町井に思想的影響を与へたのは、石原莞爾の「五族協栄」「民族調和」の精神だと言ひます。その理念を実現せんと「東声会」を結成します。
    しかし組織が大きくなるにつれて、末端のチンピラが暴力事件を繰り返すことで、同会は世間からは完全にやくざと同一視されるのでした。

    町井の本音としては、暴力の世界ではなく実業界で一目置かれる存在を目指してゐたフシがありますな。児玉誉士夫・大野伴睦・河野一郎といつた面々とのつながりも、将来の実業界進出を意識してのことかも知れません。
    東声会を解散したのも、もう暴力の世界とは無縁だとアピールしたかつたからでせう。

    しかし、世間はやはり町井=やくざの印象を払拭できなかつたし、事業も甘いものではありませんでした。
    あまりにも短い絶頂期のあとは、転落するのみで、描いた理想との乖離に懊悩したのではないでせうかね。

    城内氏の正攻法かつ地道な取材により、我我はもうひとつの戦後史を俯瞰することができるのであります。骨太の一冊と申せませう。

    ぢやあまた。ご無礼します。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-167.html

  • 久々に面白いノンフィクションを読んだ。
    猛牛と呼ばれた男、町井久之は「東声会」という暴力団グループのトップ。
    2002年に亡くなるまで、その名を政財界だけではなく韓国や北朝鮮の要人たちにも知れ渡っていた。
    この町井久之の人生を見つめる事によって、戦後の在日社会と韓国・朝鮮のつながりや、在日社会と政財界のつながりの一部を読み解く事ができる。

    町井久之は、在日朝鮮人二世として日本に生を受ける。
    戦争中は石原莞爾の「五族共和」に共鳴し、戦後は児玉誉志夫のもとでヤクザ者たちを束ね、在日本韓国民団支部の中でもその存在感を大きくした。
    日本の政財界とも深くつながり、大野伴睦・岸信介・中川一郎や、西武グループの堤清二氏や、東急グループの五島昇氏、三越社長の岡田茂氏などと交流。
    大山倍達、力道山などの在日韓国人のスターたちとも親交した。

    戦後の闇市からバブル景気前夜までを、暴力・パチンコ・不動産・リゾート開発など、日本の裏と表で活動する姿が描かれる。

    ただし、この本は在日系暴力団の抗争劇を描いたものではない。
    町井久之という在日韓国人の姿を通して、戦後の光と闇の一部を浮き彫りにした一冊である。
    作者である城内康伸氏の取材対象は多岐にわたり、政財界から暴力団関係者などから得られた様々な証言によって構成されている。
    客観性を保った取材対象者との距離感も非常に好感が持てた。

    ただし、戦前の歴史観にだけは「?」という部分もあったので、内容全てに諸手を挙げて賛成はできなかったのだが。。。

    ただ、全編にわたってエネルギーにあふれた素晴らしい意欲作ですし、日本の戦後を裏側から見つめたい方には非常にオススメな一冊です。

  • 戦後銀座六本木でのし上がり"六本木"と呼ばれた男。以前から愚連隊とは違うイメージを持っていたけど、安藤昇なんかとも一線を画すその繊細で無骨な生き方伝記

  • 78

  • 初めてこの人を知った。権力者は様々なタイプがいるもんですね。

  • 単行本で既読。

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著者プロフィール

1962年生まれ。東京新聞外報部記者。ソウル特派員、北京特派員などを歴任。著書に『昭和二十五年 最後の戦死者』(小学館、第20回小学館ノンフィクション大賞優秀賞』『「北朝鮮帰還」を阻止せよ――日本に潜入した韓国秘密工作隊』(新潮社)ほか多数。

「2015年 『朝鮮半島で迎えた敗戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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