将軍たちの金庫番 (新潮文庫)

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著者 : 佐藤雅美
  • 新潮社 (2008年9月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101360515

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将軍たちの金庫番 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 江戸時代の幕府、特に将軍の浪費に苦慮した経済官僚たちが悪戦苦闘して考え出した政策(秘策?)を中心とした江戸時代の経済、とりわけ通貨や税、財政といった金融に関するよもやま話。
    著者は、これまで「大君の通貨」「薩摩藩経済官僚」「幕末住友役員会」「主殿の税」という歴史経済小説を書いてきたが、それらの小説で書ききれなかったことを、書き残しておきたいという思いから執筆したと言う。

    徳川家康は、天下統一とともに、全国の金銀鉱山を一手に押さえ、時あたかも日本はゴールドラッシュを迎え、莫大な資産を残した。
    三代将軍家光は、桁外れの浪費家と言っていいほど使いまくった。家光一代で5百万両は使ったらしい。(別途調べてみると江戸時代前~中期は1両で8~10万円程度のようである。)
    だがその頃を境として金銀の産出は目に見えて衰えていった。それでも四代将軍家綱には六百万両以上残したが、家綱が死んだ時には、遺産は百万両を切っていた。五代将軍綱吉の前半は、農政に力を入れ、税の増収に力を入れたが、一方で浪費は続いた。

    この家光・家綱・綱吉の浪費は、日本経済という観点から見れば、大いにプラスになったようで、この後の元禄文化が花開く種を撒く効果があった。
    ところが、綱吉の在位15年目の元禄七年頃(1694年)には、幕庫は空っぽになっており、幕府は財政難に七転八倒していた。

    綱吉は関係役人に「なんとかならぬのか」と何度も諮問した。この時に荻原重秀(勘定吟味役→勘定奉行)という男が「金を捻りだす愚案があります」と言った。「愚案」というのはウルトラC級の「貨幣の改鋳」だった。
    理由は、①金貨・銀貨は長く使っているので、擦り切れて軽くなっている。
    ②商品経済活動が活発化しているので、通貨の供給量を増やさなくてはならない。一方金銀の産出量は減っており、増量は期待できないので、従来のものを作りかえるしかない。という位科学的・合理的内容だった。

    しかし、荻原の狙いは別のところにあった。
    この時に、金貨・銀貨の品位を落とした。金貨を例にとると、慶長小判2枚で、新しい元禄小判3枚を作った。しかも交換比率は1:1。
    からくりが単純なだけに世間は直ぐに気がつき、悪評が乱れ飛ぶなかを、貨幣の改鋳を強行した。(この後何度も改鋳する第1回目である)
    結果、幕府は五百万両以上の益金を得たが、綱吉がそれをそっくり使い切ったことにより、世は好景気に沸き立った。詢爛豪華な元禄文化が花開いた。

    その後、家宣~家継が将軍になり、儒者の新井白石が政治をリードした。財政は綱吉時代からの勘定奉行の荻原重秀が取り仕切っていた。新井白石はこの荻原を目の敵にし、罷免を要求すること三度。そしてついに家宣の死後、遺命だとして荻原を罷免に追い込んだ。
    このときににわかに起こったのが、日本史上初の通貨論争である。幕府役人・旗本・御家人・銀座役人・両替屋・儒者などが入り乱れて論争した。
    この時に荻原重秀が言ったのは「通貨というものは、幕府の保証さえあれば、材質など、瓦礫でも紙でもどんなものでも良いのではないか(官府の印理論)」という意見だ。
    そんなするどい意見も出されたが、新井白石は聞く耳を持たなかった。強引に通貨を元の慶長の金銀に戻した。
    元禄8年の荻原の貨幣改鋳以来、混乱を続けていた通貨はようやく元の状態に戻った。つまり現在の経済用語でいう「デフレ」になった。

    その後、デフレによる深刻な不況が続き、元文元年(1736年)「世上金銀不足」という理由で、金銀貨の改鋳を行った。渋る吉宗の尻を叩いて大岡忠相が実行に移させた。

    将軍の浪費する金を何とか捻出するためにではあるが、「官府の印理論」という凄い考え方が江戸時代に現れていたと言うのが驚きであった。

    だが、幕末になり、... 続きを読む

  • 本書は、江戸時代の幕府や藩の税、通貨、財政等について綴った書。
    結構知らないことばかりだった。例えば、田沼意次は賄賂に血道を上げた汚れた政治家でも、経済政策に長けたテクノクラートでもなく、頼まれたことを着実にこなす実務家だったらしいこと、その功績が、将軍家治の日光参詣資金捻出であったこと、法則性のない恣意的な御手伝普請(治水工事等の公共事業を諸大名の負担で行わせること)が賄賂横行を招いたこと、江戸も中期になると「官府の印理論」(「瓦礫であろうと紙であろうと、官府の印を押せば通貨である」という荻原重秀の理論)に基づき金属の価値以上の価値を持つ通貨を発行・流通させていたこと、このような通貨の仕組みがアメリカを始めとする先進諸国に理解されず、不平等で歪んだ通商条約が結ばれてしまったこと等。

  • めちゃおもしろい

  • 義実家の本。
    ・家光の浪費こそが17C後半の経済の興隆をもたらした(p15)
    ・六代家宣の死後起こった通貨論争(通貨というものは政府の保証さえあれば、材質などどんなものでもいいのでは?)(p25)
    ・上方は銀、江戸は金が流通(p198)


    通貨そのものが金や銀を使っていることで価値を持つ(近代は政府が保証してるから通貨が価値を持つってなってるけど)、っていう時代の経済に興味があるので、面白く読んでる。

  • H20.10.1.初、並、帯なし
    2013.2.13.津BF

  • 経済の簡単入門

  • 将軍家を中心に主に金融から江戸時代を見ると、私たちが思っているような江戸とはまた違った風景が見える。
    著者の言う「官府の印理論」、官府が一両といえば金銀の含有量に関わらずすべて一両として取り扱うというものは今で言う管理通貨制度であり、世界史でこの制度が一般化するのが1900年代と考えると当時の日本社会がどれほど安定していたかをうかがわせる話。
    しかし、これが幕末の開国騒動時に大きな混乱を起こすことになったという話は、現在の金融をはじめとした経済政策にも繋がる話であり、もっと多くの日本人がこのことを知っていないとと個人的に強く思う。
    意外と知らない日本の歴史の一面を垣間見れる良い本です。

  • 徳川幕府の財政事情~通貨改鋳のからくり・・ と
    金の流れを描いた話

    江戸時代って 実はそんなに昔のことじゃないんですよね
    これを読むと江戸幕府時代もリアルに感じられる
    現実的な側面から書いてり 個人的には勉強になってよかった^^

  • この人の「大君の通貨」が幕末の外国との
    金銀為替関連の話で面白かったので購入。

    うーーーん。こねた知識によかったかな。

    エッセ風の江戸時代の経済説明書的な。。。

  • 大君の通貨の副読本
    もっと詳しい本書いて

  • 大好きな佐藤雅美さんのお金のお話
    ≪ここが解った≫
    家康が残したお金がどんだけ使われたか
    家光は500万両使い果たし、600万両遺産とした
    家綱は100万両足らずしか残さなかったが、
    萩原重秀の貨幣改鋳で500万両ぐらい益金があった
    (ドンだけ使った!)
    幕府には予算がなく、年間120万両程度の収入にたいし
    費えは10万両ずつ不足していった
    この収支不足を補ったのが、徴税システムではなく
    貨幣改鋳と、瓦礫であろうと官府の印さえあれば価値
    を認めさせた
    つまり、現在の日本でも取りざたされたデフレの処方箋と同じ
    (「政府紙幣」を印刷して庶民がお金を使う事で景気向上)

    そう考えると、家光・家綱がお金を使い、江戸幕府初期では
    物々交換程度の経済環境が、一気に貨幣経済に転換したのでは
    ないかとか、庶民までお金がいきわたったという推測は妥当だと
    思いますね~

    ためになります

  • 江戸時代の初めから、開国にいたるまでの経済事情を様々な角度からみてゆく。 初めは羽振りのよかった将軍家も、金銀の産出が落ち込むにつれて、財政難に苦しみ始めた。 貨幣の改鋳で乗り切ろうとする経済官僚、倹約で打開を図る改革派。 田沼意次は何をなし、何をなさなかったのか、その実像と虚像を解きほぐしてゆく。 大大名にも、小禄の武士にも重くのしかかってゆく、武士階級の慢性的な困窮。

    後半は、幕末の貿易事情、特に膨大な金の海外への流出がなぜ起こったのかを詳しく検証する。 最大の要因は、今でこそ当たり前でも、当時は世界に類を見なかった、額面と本来の価値が異なる貨幣の存在。 そして様々な行き違い。 駐日総領事ハリスの素顔にも迫る。 江戸時代が到達した、精妙な貨幣システムの一端を知ることができた。

  • 小説家による江戸期財政通史。ただ資料の少ない世界のこと、金銀の通貨史、薩摩藩の財政逼迫、幕末開港に伴う通貨混乱、にフォーカスした経済読本の体裁になっている。

    江戸時代は、中世的な封建制を政治的基礎にしながら集権的であり、米穀のみに課税しながら商工業が発達し、大型船舶をもちながら限定貿易という、経済史的に特殊で面白い時代だったと言える。武士階級の消費が町民階級を育て、参勤交代が街道往来を活発化させ、金銀の改鋳でマネーサプライを拡大させたのだから、武士の堕落と儒教的な観点から批判される時代性も、マクロ経済で見れば政府部門がポンプ役となり済成長を促したのだと評価できる。

    本書の初版は20年前。昔は江戸時代の歴史を政治史として、儒教的な道徳観から論じるのが主流だったが、時代を経て経済史にも光が当たるようになり、例えば井沢さんなんかも積極的に採り上げている。明治以降の西欧化は江戸時代の蓄積なしには考えられない。この分野に興味を持てた一冊。

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