そこに僕はいた (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101361215

感想・レビュー・書評

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  • 重いコンダラで思い出した。これ読んだことある。確か中学生の時。タイトルが実に厨二心をくすぐるじゃあないか。

    あぁでも今読むと違う。全然違う、と思う。
    昔読んだ感想は覚えていないが、面白かったという単純なものだったのではないか。

    自分がまさに「そこ」にいたから。
    変な友達がいて、ふざけて、毎日が楽しくて、異質な物に憧れを覚えて。
    昭和の子ども時代を振り返る面白エッセイ。
    少し背伸びをし始める後半も何だかカッコいい。

    それが今は後書きに共感して胸が詰まる思いだ。

    育った町は変わりゆき、もう心の中にしか残っていない故郷の姿。
    自分だけが覚えている友達。
    孤独に仕事をしながらも、確かに存在したあの頃の思い出があるから生きていける。
    胸が痛むほどに思いが重なった。

    中間と最後に差し込まれたざっくり描かれた町のイラスト。
    こういうのは昔から好きだった。
    子どもの頃はよく児童文学にあるような周辺地図としか思わなかったはず。

    それが今は見るだけで切ない。
    ここに描かれているお店も家も、大半はもうないのだろうから。福岡の地図には私も知らない路線が描かれていた。長い年月には勝てず個人宅どころでなく交通網すら変わってしまう。

    大人はノスタルジーを喰みながら生きるしかないのか。
    しんどいが、同じ思いで生きる仲間がいることに救われた。
    そして私に楽しい思い出をくれた両親や友人には感謝しきれない。

    そして今生きているこの時が、同じように10年後の自分を支えるのかもしれないと思い立つ。
    今もないがしろにはできないのだ。
    出来るだけ楽しいことを記憶して、未来の自分を支えなければならない。
    将来の自分は新たに築いた家庭や同僚に感謝できるのだろうか。できていると嬉しい。

  • ゴワスの「静電気」がツボでした。
    辻さん、本当に面白くて、色んなことに挑戦して成長されたんだなぁと、思いました。
    確かに友達は作るものじゃないですね。
    自然にできるものですね。
    自分の子供の頃を思い出し、純粋に遊んでいたことを心にふわっと出してくれるエッセイでした。
    大人になって連絡を取らなくなっても、そこに私はいたんだなと、切なく淡い気持ちにさせて頂いた本でした。
    とにかく良かった。

  • ばかばかしくて、呆れる程愉快で、少し泣きたくなるようなむかしの思い出。辻さんは本当に大事に思い出を語る。個性的なエピソードでも、不思議と読めば「わかるわかる」と頷いてしまう何かがある。
    純粋な頃の思い出は、ちくりと痛む記憶であっても、自分にとって大きな支えであり、宝物なのだと思う。

  • 今回は積本からではなく、再読。
    本が好きになるきっかけを与えてくれた辻さんのエッセイ。

    中学生の頃、国語の教科書に「そこに僕はいた」は掲載されていた。
    当時は本なんて全く読む気もなかった私が、
    その読みやすい文体と内容に引き込まれました。

    義足少年とのエピソードである表題作以外にも少年から青年期までの辻さんのエピソードが面白くて、共感できます。
    友達と喧嘩したり、好きな女の子に意地悪したり、新聞配達のヒーロー達に憧れたり…。
    もちろん私は辻さんと同年代でもなく、住んでた地域も違うので完全に共感できるというわけではないんですが、私もこの年頃の時は同じ事考えていたなー、もし辻さんと同じ状況だったら同じ事しちゃうだろうなーなんて思ってしまうんです。

    読了後、私は本屋で辻さんの本を買い漁り、CD屋でエコーズ、ソロのCDを買い、どっぷり辻さんフリークになりました(笑)
    辻さんに満足した後はいろんな作家さんの本に触れる事ができました。

    今改めて考えると「そこに僕はいた」は私にとって、ふと思いついた時に初心に戻れる、記念すべき最初の一歩です。

    なので、最近の辻さんが恋愛小説ばっかり書いているのは嫌なんです…(笑)

  • 私はエッセイは基本的にあまり好きではないのだが、これは面白おかしく読めた。解説にあるように、辻仁成は「普通ではない」。エッセイを読みながら、ふふっと笑ってしまったのは初めてだった。友達は作るものではなく、自然と出来るものだと作者は言っている。出来た友達を大切にしよう、覚えていようと思った。

  • 小学6年生のころはじめて読んで、これはやばい!と深い感銘をうけた
    今は、ここまで自分の過去をキラキラさせて書けるって、すごいよなって思うけど…やっぱり好きです…

  • なんて飾らない淡々と綴られたまっすぐな文章が素敵です。僕がいた場所を誰もが思い出せると思う。

  • 何回読みなおしたかわからないくらい好きな小説。

    子供のころに戻ったみたいにわくわくするが、同時に、戻れない時間を感じて切なくもなる。

  • 2007

  • 小学校6年生の時に読んだ本。本屋に並んでいて懐かしくて買ってしまった。昔読んだ事があるから、自分の過去の思い出が描かれているようで懐かしい気持ちで読めた。

著者プロフィール

東京生まれ。1989年「ピアニシモ」で第13回すばる文学賞を受賞。以後、作家、ミュージシャン、映画監督など幅広いジャンルで活躍している。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版「Le Bouddha blanc」でフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞。『十年後の恋』『真夜中の子供』『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』『父 Mon Pere』他、著書多数。近刊に『父ちゃんの料理教室』『ちょっと方向を変えてみる 七転び八起きのぼくから154のエール』『パリの"食べる"スープ 一皿で幸せになれる!』がある。パリ在住。


「2022年 『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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