海峡の光 (新潮文庫)

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著者 : 辻仁成
  • 新潮社 (2000年2月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101361277

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海峡の光 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 色々な表情があるのが海。
    暗く、重苦しい、冬の海もある。

    函館の刑務所の看守官として働く主人公。子どものころに酷いいじめで苦しめたやつが受刑者となり、自分の前に現れる。自分を虐げたものへの憎しみ、過去の辛い記憶、看守とゆう立場になり、貶めたいと思う心に、苛まれる。

    全編を通じて、『私』視点で描かれている。私の鬱々とした心の闇を、仄暗い海を背景にしてスケッチされている。

    辻仁成はすかした感じで、好きではない。多分、読むことはないと思っていたけど、重厚な文体がなかなかよかった。

  • 花井の心の内が分からなくて、主人公とともに一時は空恐ろしくも感じたが、読み終えてしまえば、ただぼんやりと疑問が残るだけだ。彼は、自分が制御しきれない世界へ出ていくことが怖かったのだろうか。それは主人公にも言えることかもしれない。

  • 恋愛小説のイメージが強く、学生のころに「クラウディ」一冊読んだきりで、その後ほとんど読んだことのなかった作家でしたが、今回この作品を読んでイメージが変わりました。
    こんなに硬質な(古風な?)文体で書かれているとは思わなかった。
    いじめられっ子だった主人公が少年刑務所の看守、いじめっ子だった花井が受刑者として刑務所で再開する話。
    主人公の心の葛藤が延々と続き、希望という「光」も見いだせない…読後感の重い作品でした。

  • 私が抱えている悪夢の一つに、大学に入学できなくてこのまま高校生活を続けないといけない、という内容がある。定期的に見るのだが、20年以上たった今もうなされる。高校の頃に遭ったいじめの体験は、そのぐらい鮮烈だ。
    私は、自分が力を持った状態でいじめた相手に対峙したとき、どんなふるまいをするのだろう。

  • P161
    97年 芥川賞 受賞作品

  • 暗いお話。主人公は卑屈だし、花井さんが何をしたいのかわからないし、短気な人多いし・・
    多くを語らずに想像させてくれるのがいいところともいえる。

  •  
    ── 辻 仁成《海峡の光 199702‥ 20000229 新潮文庫》1997 芥川賞
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101361274
     
    ── 辻 仁成《代筆屋 200410‥ 海竜社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4759308334
     
    (20151225)
     

  • 自分はひょっとして偽善者ではないのか?ということを
    考えすぎてついおかしな行動に走ってしまい
    そしてそうしたとき、まさに自分は解放されていると
    そんなふうに感じてしまうことが、まあ
    誰しもにはないかもしれないが
    自分らしく生きることが知らず知らずのうちに
    誰かを傷つけてしまうものだとすれば
    そして、それに素で気付かないでいることが
    偽善などと言われてしまうぐらいなら
    いっそ最初から罪人として扱われたほうが気がラクなんじゃ
    そんな話だと思ってひどいけどおもしろだった

  • 廃止が決定された青函連絡船。少年刑務所や舞台となっている土地などの要素から、寒々しい寂寥感や疎外感といった感覚を強く覚えます。それは、少し前に読んだ桜木紫乃「硝子の葦」にとても良く似ていると思いました。(発表年は本作の方がかなり前になりますが。)

    そのせいか、ボリュームが薄いはずなのにページをめくる手がものすごく重々しく感じられ、読了するのに意外と時間がかかりました。改行の少ない、重々しい文章もその一翼を担っているのかな、とも思います。(この重々しさを醸し出すために、わざとそういう文章にしてる?)

    ただ、作品の内容——というより、花井の行動——が解せなくて、読み終えた後はなんだかモヤモヤした気分に。

    彼の理解しがたい行動の理由としては、ヒエラルキーの低い領域内でお高くとまっていたいのか?くらいしか想い当たりません。

    そして、刑務官としてそんな花井を「制御」できることに増長している主人公も、かつていじめる側、いじめられる側と対局にいたはずなのに、たいしてかわらないように思います。

    タイトルに「光」とあるので、もっと希望に満ちた内容や結末があると思ってました。けれどそれは、いずれ光ることを止めてしまう青函連絡船のそれをさしてるのかな、などと思ってみたり。その「光」は、海峡を渡ろうとせずに見知った世界に閉じこもってしまう主人公と花井の、鬱屈として発展性の無い将来を象徴してるように思いました。

  • 函館の陰鬱な景色。

  • 辻仁成・・冷静と情熱のあいだぶりかな、読むの。

    高校の教科書に載ってたらしくFacebookで話題になったので読んでみた。

  • 刑務所で働く主人公の元に、小学生の頃同級生だった人物が入所する。昔と立場は逆転したはずなのに、主人公はその同級生に振り回される。

    刑務所で働くそれまでのエピソードを函館という舞台に密着させて描く。暗流の海のようなどこか儚く閉塞的な空気は読み進める度に深みを増し、意識を沈められ息苦しく、まさに溺れるような錯覚を思う。果たして、そんな中のどこに光などあるのだろうか?

  • 心の闇が美しく、恐ろしく描かれていた。

  • 青函連絡船の職を辞した斉藤は、函館の刑務所の看守として働くことになります。

    そんな彼が務める刑務所に、小学校時代の同級生だった花井修が服役してくることになります。優等生だった花井は、いじめっ子たちを影から操って、斉藤をいたぶっていたのです。斉藤は、かつて自分を苦しめた男が、今は自分に監視される立場に立たされているという優越感に浸りますが、しだいに彼の心のうちに、自分の心情が花井にコントロールされているのではないかという猜疑心が芽生え始めます。

    かつて交際していた溝口君子が、連絡船から投身自殺した事件や、逸早く再就職の道を見つけた斉藤にかつての同僚の妬みがぶつけられるエピソードなどを織り込みながら、看守としての役割に徹する主人公の、心のうちの揺らぎを描いた作品です。

  • 来月の舞台を見に行く前の予習。
    舞台では、主役が看守ではなく囚人になるとのことで、小説とは違ったものになりそうで期待。
    細かな心理描写や情景を舞台上でどのように表現されるのか?

  • これは観たくなってきたなー。

  • 外と内を隔てる海峡と二面性を持つ受刑者。
    看守は海峡のような受刑者の内に光を求めて監視する。
    彼自身を照らすための光を。

  • 作者が育ったとされる函館を舞台とした二人の男の話。「私」の前に現れたのは、かつての「私」を苛めた主犯格の「花井」。看守と受刑者となった二人の関係は、立場が逆転したと思われたが..... 「私」が葛藤する反面「受刑者」となった「花井」の心は闇のままで、わずかに語られる言葉がより一層闇を深くする。二人の男にとっての自由とは何なのか?

  • この著者の本は読まず嫌いでしたが、読んでみるとまぁまぁでした。

  • 来春、初舞台化が予定されている著者の芥川賞受賞作。函館が舞台で、その閉塞感が全編に溢れている。一文一文が珠玉の美しさを成し、主人公の内面の葛藤を見事に描き出した傑作です。

  • 1996年下半期芥川賞受賞作。暗く硬質な抒情が、一貫してこの小説の通奏低音として流れている。そもそも小説世界そのものが狭く、きわめて閉鎖的だ。物語の舞台に選ばれているのは函館なのだが、そこで描かれるのはエキゾティックなトーンを持った街ではなく、あくまでも狭い砂洲の街である。しかも、さらに閉塞状況を高めているのは、少年刑務所こそが小説の主たる舞台であるからだ。しかも、主人公の斉藤は2重の意味での過去に囚われており、そこから抜け出すことができない。辻仁成の小説から1作を選ぶなら、今のところはこの作品だろう。

  • 1996年芥川賞受賞作。とても久しぶりに、辻仁成を読みました。このひとはなんといっても、中学受験の国語で読まされた印象が強く、それはつまりきちんとした日本語で万人にある解釈を促す物語を書いているということで、苦手意識を持っていました。「海峡の光」はやっぱり優等生的なふうにもおもえて、でもわたしは既読の辻仁成作品でこれがいちばんすきだとおもった。北国の海の暗くて素朴な力強さ、潮の匂いがするような錯覚に陥ってしまうその描写力は素直に感嘆。あと全編に溢れる閉塞感といい、花井という存在が醸し出す理不尽な、不合理で予測のつかない暴力の予感といい、この物語の核となる部分に、わたしは非常に惹きつけられる。主人公にとって花井は、世界の不条理さ、暴力性そのものであり、本当は花井は主人公自身何度も思う通り現実的力をたいして持たない、ふつうの、すこし歪んでしまった人間であるのだけれど、そのすこしの「歪み」が主人公にとってはまさに脅威であって、逃れられない。花井に対する畏怖と嫌悪と軽蔑と、時折混じる同情と、劣等感と。最も憎むべきものであるけれど、その暴力性が閉塞感を破るような期待を向けたり、憧れを抱いたりもしているようにおもえるし、そうしたら暴力というものは、ほんとうにわたしたちは逃れることができなくて、しんどいとおもった。とりあえずここには、暴力を扱った物語の、重厚感と確かさがある。どこにも辿り着かなかない暴力のおはなし。

  • 「海峡の光」辻仁成◆刑務所看守として働く斉藤が函館の刑務所で出会った受刑者・花井は、かつて斉藤を苛めていた男だった。仮面の下に見え隠れする花井の本性が怖い。何から何まで語られるわけではないがそれが余計に不気味で、詩的で奇麗な文体だけど読むうちに深く暗い所へ引きずられていくような。

  • 先日辻さんのトークショーに行き、今まで読まず嫌いしていたんだがそれも良くないと想い手に取った作品。
    光が存在するところには必ずその裏側に闇が存在する。
    人も同じではないか。
    みな光だけで構成されているのではなく、闇の部分も持ち合わせている。だけど、どうも闇とはわかりづらい。
    その闇も含めて付き合える仲がやはり「ともだち」と呼べるものであるべきなのだろう。

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海峡の光 (新潮文庫)の作品紹介

廃航せまる青函連絡船の客室係を辞め、函館で刑務所看守の職を得た私の前に、あいつは現れた。少年の日、優等生の仮面の下で、残酷に私を苦しめ続けたあいつが。傷害罪で銀行員の将来を棒にふった受刑者となって。そして今、監視する私と監視されるあいつは、船舶訓練の実習に出るところだ。光を食べて黒々とうねる、生命体のような海へ…。海峡に揺らめく人生の暗流。芥川賞受賞。

海峡の光 (新潮文庫)はこんな本です

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