- Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101361277
作品紹介・あらすじ
廃航せまる青函連絡船の客室係を辞め、函館で刑務所看守の職を得た私の前に、あいつは現れた。少年の日、優等生の仮面の下で、残酷に私を苦しめ続けたあいつが。傷害罪で銀行員の将来を棒にふった受刑者となって。そして今、監視する私と監視されるあいつは、船舶訓練の実習に出るところだ。光を食べて黒々とうねる、生命体のような海へ…。海峡に揺らめく人生の暗流。芥川賞受賞。
感想・レビュー・書評
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主人公であり刑務所看守の私の逃れられない苦しみと、その原因をつくった受刑者である花井。
なんともカオス。
そして花井がサイコパス過ぎて怖い。
どうなるの?
この先はどうなるの?と夢中になって読んでしまった。
お互いに制裁を加えたい。
だけれどもお互いに罪悪感の中で生きていて、
それを償うように生きている。
「お前はお前らしさを見つけて、強くならなければ駄目だ」
だれしもそれがわからなくてもどかしく生きているのではないかと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
昔読んだ作品の再読。この作品が芥川賞をとる前に読んだが一読で好きになった。心のひだや処理できない思いなど、蓄積された気持ちのゆくすえが題名の海峡の光と真逆でなんとも哀しかった。
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一般的にこういった小説を純文学と呼ぶとき、その要素として余白が語られることがあり、それは読後に読者が抱くものの自由さ(解釈の余地ともいえる)を指す。
ただ、その自由さには「これはいったいどういうことなんだろう」と小説内で自分の思考が循環してしまうような閉鎖的な自由さを性質として持つ「余地」と小説内にちらばるエッセンスを出発点として自分や世界に対して思考の広がりを持つ「余地」があり、この小説は前者であると私は感じた。
作品内に通底する感覚の着地点が濁されているように思えた。それは何か物語として綺麗な結末や、登場人物の関係性の変化を求めているのでなく(結果としてそうなることもある)、作り手が作品をこうだと規定する意思のようなもので、読み手が抱く自由さとは真逆のものだと思っている。 -
高校生のころに初読した作品だけど、その時は全くわからなくて、再読したら前よりは少しわかったような気がしたけれど、やっぱりよくはわからなかった。肌に合わない作品というものもあるのだなあ、と思う。
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芥川賞作品は難解であったり、読みにくい文体の作品もあるが、この作品は読みやすい。美しい表現の文体の純文学。但し、エンタメ系ならば伏線が回収されていないとも感じるストーリーですね。そこは読者が考え、感じる余白のようなものなのでしょうか。
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'97芥川賞受賞作
看守を務める函館の刑務所に、小学校の同級生が受刑者として入ってきた。
優踏生の仮面を被った卑劣な奴は、18年たった今も変わってはいなかった。
立場が逆転した主人公の心の内
しかし、強烈な過去の敵愾心が逆に執着となり感情が囚われる。
登場人物の感情を直接表現せず、ただ見せるという文章で、読者の想像力に訴えてくる。
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終わり方がなんだか不気味でも、そこに不思議な魅力とかっこよさを感じる。
文量的にも読みやすいです。