警察庁長官を撃った男 (新潮文庫)

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著者 : 鹿島圭介
  • 新潮社 (2012年6月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101362816

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警察庁長官を撃った男 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 1995(平成7)年は、或る古老をして「戦後最悪の年だつた」と言はしめたほど、厄災の大きな年でありました。
    その代表例が、1月17日の阪神淡路大震災、3月20日の地下鉄サリン事件と申せませう。前者は自然災害(人災とも批判された)であるのに対し、後者はカルト宗教団体(オウム真理教)による凶悪犯罪でした。そして同じく3月の30日に発生したのが、國松孝次・警察庁長官狙撃事件であります。

    折からオウムに対する捜査が進んでゐた時期でもあり、公安部長は「オウム真理教の信者グループが教祖の意思のもと、組織的、計画的に敢行したテロ」として断定し、結局それで捜査は終結しました。世間も何となく、ああやつぱりオウムだつたのねと、わたくしも含めてさう認識した人が多かつたと記憶してをります。それにしては実行犯が特定されず、不思議な幕切れではありました。

    ところがどつこい、鹿島圭介著『警察庁長官を撃った男』を通読いたしますと、中村某なる老人が「犯人は自分だ」と名乗り出てゐたといふのです(元元、この人物を取り上げたのは「週刊新潮」のスクウプださうですが)。しかも詳細な自供内容で、犯行現場にゐた人物にしか分からぬ事実を次々と述べてゆくのです。さらに使用した銃についても、日本はもとより本場米国でも稀少な銃で、科捜研や科警研のメムバアも知らぬ知識を有してゐました。
    著者はウラを取るべく精力的に取材を試みます。銃器類に関しては、態々米国まで飛んで関係者の証言を求める旅をするのでした。

    そもそもこの事件は、本来捜査に当るべき刑事部がオウム捜査で手一杯の為、公安部にお鉢が回つてきたといふ事情がありました。これが悲劇の原因で、オウムの事しか頭にない公安トップは「中村説」を相手にせず、事実を捩ぢ曲げてまでオウム犯人説を「創作」したといふ事です。
    自らの保身と面子の為に、みすみす真犯人を逃し、迷宮入りにしてしまつた罪は大きい。俄かには信じ難いのですが、近年の警察組織の不祥事の数々を振り返ると、信憑性は高いのではないでせうか。事実は小説よりも奇ッ怪なり。まあ一度本書に目を通してくださいと申し上げます。著者の、事実を求める執念に圧倒される事でせう。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-664.html

  • [冷静に狂った男たち]地下鉄サリン事件の衝撃が醒めやらぬ中で、日本社会を震撼させた國松警察庁長官狙撃事件。2010年にこの事件は時効を迎えることになっており、事実、その時効は成立したのであるが、その直前になって「私がやりました」と突如名乗り出た男が存在した......。捜査路線をめぐる警察内部の対立や、自らを真犯人と名乗る「中村」の足跡を丹念に綴り、事件の暗部を抉りとったノンフィクション。著者は、本事件を長年にわたり追い続けた鹿島圭介。


    2015年も後半戦に差し掛かる中で、またしてもとんでもない一冊を目にすることになりました。公訴時効成立時の記者会見などでおぼろげな概要を知っている方もいると思いますが、本書で明かされる事件の一連の流れには、予想以上に背筋を凍らせるものが満ちていました。ここまで追っかけ続けた鹿島氏の執念はもはや天晴れとしか形容しようがありません。


    筆者はこの事件を指して「呪われた事件」としているのですが、「中村」の思想背景や事件に至るまでの潜伏期、そしてオウムの影響下にあったK元巡査長が捜査段階で果たした役割を考えると、この表現がまさにぴったりとなのではないでしょうか。「平成最大のミステリー」とも言われる狙撃の内幕を知りたい方にとっては必読の作品です。

    〜この事件は、オウムでゴールする。それはもう決まっていることなんだ。〜

    今年は事件モノの作品に個人的な当たりが多い☆5つ

  • 現実は小説より奇なりとはよく言ったもの。
    当時、なんとなくオウムの犯行だと思っていた、長官狙撃事件の驚愕の真犯人と裏。
    このようなテロリストが存在したことにも驚きだが、真相を面子などの為に隠蔽した、当時の警察上層部にも驚愕する。
    こんなことがあっていいのか?
    暗澹とした気分になる。

  • 驚くべき調査の深さ

  • 地下鉄サリンの十日後の狙撃事件。オウムの犯行とされてきたが,解決を見ることなく15年後に捜査は時効で終結した。しかし,実は捜査の過程で,真犯人である可能性が極めて高い人物が浮上していた。オウムと無関係なその老スナイパーは,いかなる動機でこのテロを計画し,どのようにして警察庁長官を撃ったのか。警察・検察はなぜ真犯人に肉薄しながら立件を見送ったのか。それらの謎に迫った労作。
    警視庁が刑事部でなく公安部に捜査を任せたことが,迷宮入りの遠因になっている。銃器犯罪に慣れない公安は犯行動機を過大視し,追い詰められたオウムの組織的犯行との見方に凝り固まってしまった。膨大なマンパワーを投入してこの線での捜査を続けた結果,いつしか後戻りすることができなくなってしまう。捜査の方向性を誤った幹部の責任問題につながる情報は,結局握り潰されてしまった格好だ。事件が時効を迎えた2010年の会見でオウムの関与を強調する警察の異様さは記憶に残っているが,裏でこのようなことが起こっていたとは,まったく知らなかった。真犯人であることの自供,秘密の暴露,所持する銃器の種類と量,そして動機の面でもこの老スナイパーの容疑性は極めて高い。自らの組織の長が殺されかけた事件にも関わらず,真相の解明に近づく軌道修正がなされなかったということには本当に驚く。
    失敗に終わった壮大な見込み捜査。警察はこの件についてもっと批判されるべきだろう。再びこのような過ちを犯さないためにも。

  • なんとなくオウムの事件と思っていた。
    見事に警察の思惑どおりだったのですね…。
    というか。こういう本を読むと何が本当なのかよく分からなくなる。国家権力が恐ろしいものなんだな、というのは…よく分かったが。

  • テレビ特集を観て読んだ。巻末参考資料の手記通りなら、思い込み捜査の愚行が、結果としてオウム事件に対する警察組織の愚かさが露見するのを防いだことになる。時効により司法手続きを経た情報を得れない市民にとつては、本書は面白い本の一つでしかない。

  • 久々にこれ程面白い本を読んだ。
    と言うか、これ程興味を引かれる人物はなかなかいないだろう。
    東大在籍時に極左思想に染まり、ノーベル賞級の頭脳の持ち主と教授に謳われながら、共産党の地下組織に潜伏し犯罪者として服役。出所後も革命運動に参加すべくニカラグアに渡航、秘密工作員として訓練を受け、国内で武装蜂起を図る私設軍を秘密裏に組成。オウムによるテロを未然に防ぐべくサティアン爆破を企図するも、地下鉄サリン事件が勃発。警察の威信を掛けたオウム壊滅へ誘導すべく実行された諜略としての長官狙撃。
    こんなマンガのような人物の存在も日本の闇の一面だが、公安部と刑事部の暗闘によって、政略的にその真実が葬り去られたというのが事実であれば、その闇は更に深い。

  • 立花隆氏推薦の本 オウム真理教が実行犯として、追跡されるが確たる証拠が見つからぬまま、未解決の事件として闇に消えて行った 

  • 面白い本だった。
    テレビに触発されて読んだ。

    中村氏が犯人あるいは犯人に極めて近い人物であることは間違いないと思われる。
    ただ、残念ながら引き金を引いた確実な証拠はないのだろう。

    すごい犯罪であったことを今更ながら思い知ったが、動機には全く共感できない。
    革命思想といわれるようなものが独善的であることを再確認した。

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101362815
    ──  鹿島 圭介《警察庁長官を撃った男 201003‥ 20120701 新潮文庫》20120627
    http://www.shinchosha.co.jp/book/136281/
     
    <PRE>
     中村 泰  狙撃犯 1930‥‥ 満州 /195702‥ 沢井 精三(26)逮捕(籍=ひろし)東大中退
     山川 治男 巡査  1934‥‥ 東京  19561123 22 /射殺/武蔵野署西荻派出所勤務
     □□ □□ 警備員 1947‥‥ 愛知 /20021122 UFJ銀行押切支店で被弾
     
     國松 孝次 警察庁長官16 19370628 静岡 /[19940712-19970331] 東京大学法学部卆
    /19950330 自宅マンション前で狙撃、一時危篤/20100330 時効成立
    ── 《世紀の瞬間&日本の未解決事件スペシャル 20140831 18;56-23:10 テレビ朝日》
    </PRE>
     
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/19950330
     迷宮 ~ 国松警察庁長官狙撃事件 ~
     
    (20140831)
     

  • 警察庁長官狙撃事件を追ったルポである。文章に独特のキレがあり迫力を生んでいる。
    http://sessendo.blogspot.jp/2014/04/blog-post_7642.html

  • 面白かった!

    オウム真理教が起こした地下鉄サリン事件は衝撃的だった。TVで映し出される次々と搬送される人たち。日本でもこんな無差別テロが現実に起こるんだと思った。その他の非合法活動も含めて、オウム真理教はテロ集団として深く記憶に刻まれた。

    オウム真理教が起こした事件と思われる中に、警察庁長官狙撃事件がある。國松孝次警察庁長官が出勤の際に何者かに狙撃された事件。地下鉄サリン事件が発生した10日後でもあり、オウム真理教の関与が疑われた。本書は、この狙撃犯の真相に迫るノンフィクションだ。

    著者の鹿島圭介さんはノンフィクション・ライターであり、著者紹介によると政治、経済分野で精力的に活躍中とあるが、amazonなどで調べても、他の著作はない。大手新聞社に勤める人が、偽名を使っているのではないかという話しもある。いずれにしても、これだけの取材をするのはすごい人だ。

    当初は、オウム真理教の平田信が容疑者として疑われ、警察は平田信が真犯人だとこだわりぬいた。だが、証拠不十分で起訴しきれずに2010年に時効となる。本書では、実は平田信は事件には無関係であり、真の犯人は中村泰なる人物であることを炙り出す。中村は、別の事件で起訴され、現在は岐阜刑務所に服役。1930年生まれだから、もう80歳を超えている。中村は幼いころから勉強がよくできるが、親にも内緒で東大を受験。東大時代は学生運動に身を投じたようだが、為政者と官憲に対して思うところがあったようだ。その後、窃盗事件をきっかけに東大を自主退学。地下組織活動に傾倒していったようだ。だが、その大部分はよく分かっていない。

    中村がなぜ、警察庁長官の狙撃に至ったのか。一方で、警察はなぜ、オウム真理教が犯人だとこだわったのか。複雑に絡み合った糸を一つ一つほどいていく過程が抜群に面白い一冊だった。 

  • 2014.3.5~3.17 読了
    これだけ十分な状況証拠が固めても不起訴とは!警察上層部、特に公安の思い込みの強さに呆れ果てる。それだけオウム事件のインパクトが強く公安として未然に防げなかった裏返しでもあろうか。限りなく本ボシに近い中村泰の思惑(オウム犯行への見せかけ)は見事すぎるくらいに的中した。最終的に物証(拳銃)と共犯者(ハヤシ)が出てこなかったことが弱かった訳だ。マグナム弾を3発クラっても一命をとりとめた国松長官も奇跡的というか驚異的。

  • 丹念でち密な調査がうかがわれ、一気に読んでしまった。考えさせられることの多い作品。

  • 私の知らない世界の住人の話だと思いました。勿論、驚きの意味で。

  • 警察内部の罪。人間、いくつになっても容易に変わるものじゃないな・・・という気がしました。

  • 保有状況:譲渡&購入日:41089&購入金額:620

  • 「実行犯は不詳、支援者も不詳。でも、これはオム真理教の犯行
    です」。国松警察庁長官狙撃事件の時効数日前、特捜本部は
    東京地検に書類送致を行った。

    これについては先日、オウム真理教から名を変えたアレフが
    名誉棄損訴訟を起こし勝訴したとのニュースが流れた。

    首都東京を恐怖と混乱に陥れた地下鉄サリン事件の後の狙撃
    事件だったので、あの当時は教団の犯行だと言われれば疑う
    人はすくなかったろう。現役警察官にも信者がいたことだし。

    狙撃事件の捜査を担ったのは警視庁公安部。証拠を積み重ねて
    捜査に当たる刑事部とは違い、彼らは「まず犯人ありき」で捜査を
    進める。

    しかし、使用されたと思しき銃や弾丸とオウムとの繋がりがまったく
    出て来ない。それでも公安部はオウム犯行説に固執する。

    そんななか「私が撃ちました」と名乗り出る男が現れた。既に違う
    事件を起こし獄中にいるそお男は、やはり解決を見ていない八王子
    でのスーパーで女性3人が射殺された事件の際にも名前が取り沙汰
    された老スナイパーだった。

    本書は公安部がこだわったオウム捜査と、刑事部が独自に捜査を
    積み重ねた老スナイパー関連の証拠を対比させ、どちらに真実味が
    あるかを検証している。

    革命の英雄、チェ・ゲバラに憧れて地下活動に邁進して来たと述べる
    老スナイパーの足跡は非常に興味深い。そして、実態が明かされない
    彼の共犯者も。

    内容は面白いんだが、本書には決定的な瑕疵がある。文章が読み
    難いっ!

  • 最初に頭に浮かんだのがデ・ニーロ演じる『タクシードライバー』の孤独な主人公。読み進める内に、戦争でも始めるかのような人間武器庫振りに“ランボー”の原作『一人だけの軍隊』を思う。それなら、その謎に包まれた地下活動と卓越した射撃能力はゴルゴ13か?但、本書は純然たるノンフィクションであり、彼も銀幕のヒーローではなく、一介のテロリストかつ犯罪者に過ぎない。銃器密輸と要人テロを完璧にやってのけるにも拘わらず、寄る年波に勝てず接近戦には弱かった。東大中退でノーベル賞級の頭脳を持ち、チェ・ゲバラを夢見た老詩人の半生。

  • 著者の無念が滲み出ていて、読者としてもいたたまれない気持ちになる。本当にここまで真実が強く推定される状況でも司法手続きの壁は立ちふさがってしまうものなのか。そうであるなら、警察はもちろん、、検察にも期待できそうにもない。そのための検察審査会も、制度として効果的なのかには大きな疑問がある。
    司法制度を、民意を基礎に構築するのは歴史に照らしても失敗が強く推定されるが、この場合は参考にすべきところも多いのではないか。
    警察、検察のメンツや組織維持のための司法制度になることを防ぐ手だてを、もう少し検討する必要があると感じた。

  • 国松警察庁長官が撃たれたあの事件は、一連のオウム真理教の事件で騒然とする世の中にさらなる衝撃を与え、何かとんでもないことが起きたんだなとまだ中学生だった自分にもしっかりと感じられた事件だった。てっきりオウム真理教の犯行だとばっかり思っていたがどうやら違うらしい。まさに公安のプロパガンダに乗せられていたわけね。
    立花隆がオススメするだけあってなかなか読み応えがある本。
    思い込みと保身がどれだけ害悪かよくわかる本。

  • 寡聞にして知らなかった事件の真相。これぞジャーナリズム、という一級のルポ。

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警察庁長官を撃った男 (新潮文庫)の作品紹介

1995年3月、日本中を震撼した国松孝次警察庁長官狙撃事件。特別捜査本部を主導する警視庁公安部がオウム犯行説に固執する一方、刑事部は中村泰なる老スナイパーから詳細な自供を得ていた。だが、特捜本部は中村逮捕に踏み切らず、事件は時効を迎えてしまう。警察内部の出世とメンツをかけた暗闘や、中村の詳細な証言内容など極秘捜査の深層を抉るノンフィクション。

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