蘇我氏の正体 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101364728

感想・レビュー・書評

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  • 「藤原氏の正体」でも書かれていたが、蘇我入鹿を極悪人の代名詞のように仕立てて、古代史から蘇我氏を葬った藤原氏が日本書紀で蘇我の祖先になぜ触れていないのか。
    蝦夷、入鹿という名が示すように蘇我が東方出身だとしても、または渡来系だとしても、ヤマト外からのよそ者が成り上がったものとしてしまえるのに、なぜそれを敢えて「しなかった」のか。
    蘇我とスサノオとの関連の深さ、武内宿禰と事代主の関連、サルタヒコ・天日槍・武内宿禰に連なる神功皇后との関係、邪馬台国とヤマトとの関係、書紀にまで記された浦島太郎伝説の意味するもの…諸々を紡ぎ合わせて、蘇我氏は半島へ攻め入り新羅を治めた者たちであり、いわば当時の「正統の」大王家だったのではないのかという見立て。
    彼らが日本へ帰還したので古代史の初めから大きな力と影響をもって存在していたのではないか。
    そして彼らが留守中に日本を治めていた者たちが蘇我氏を追い落とすために聖徳太子一族を滅亡させた悪人として入鹿を抹殺した。
    疑問は多いものの、なぜ蘇我の身内である聖徳太子一族が入鹿によって根絶やしにされたのかが単なる内紛だけでは理解できなかったのが、聖徳太子にまつわるエピソード自体が大きな虚構であれば、腑に落ちる気はする。
    その蘇我氏の追い落としを行った勢力の中枢にいた藤原氏が百済系だとすると、まさに蘇我が半島へ出張ってたうちに別の半島勢力によって日本は支配されたことになる。
    この流れだとすると非はクーデターを起こした天智側にあり、それをまた壬申の乱で取り戻した天武が古代の日本の正統を守ろうとしたことになる。
    ただその後の策謀で藤原氏に絡めとられていったのは不比等の頭脳の方がはるかに勝っていたからではあろうが…。
    正否は判らないがこういう見方で晴れる疑問もある。
    また何より現実味のない古代の神話が人間臭い駆け引きとその言い訳・取り繕いのように読めてくる…問答無用にこの面白さを否定するのはもったいない話だと思う。

  • 暫く積読だった本。久し振りにこの著者の本に手を出してみた。
    前半は、祟るんだったら聖徳太子より山背大兄王の方だろうとか、梅原猛が法隆寺の蘇莫者は聖徳太子としていることに対し、強引な付会いとしている。この蘇莫者が斉明帝の死後に現れた蘇我の亡霊に似ている。飛鳥に残った元興寺のことなど、成程と思うことがあった。
    中臣鎌足の正体や石川麻呂と娘の蘇我造媛の塩に纏わるエピソードは漫画「天智と天武」のもあったなあ。

    残念ながら、後半はトヨ=神功皇后説をそれこそ強引に展開し、トヨと天の日鉾の婚姻とか、事代主も一言主もサルタヒコも何でもかんでも無理やり結びつけられるので、かなり辟易した。
    トヨがヤマトから北九州の卑弥呼を滅ぼしに行ったのが本当なら、魏の査察官はあんな倭人の条を残さないだろうに。このトンデモ説を止めてくれたら、もっと説得力のある古代が描けるだろうと思う。

    奈良の神社を訪ねると、事代主を祀っていることは確かに多い。国譲りのとき、チョットだけ出てくる端役じゃないんだな。一言主と同一神とは思わないけどねえ。

  • やはり武内宿禰。我蘇り。

  • 邪馬台国のヒミコの後継と目されているトヨは実は神功皇后で、ヤマト勢力の指図でヒミコを滅ぼしヤマト勢力の人として支配権を後継したという推測は面白かった。
    出雲に鉄王国があったからヤマトに侵略されたとかいうのは初耳ではなかったし、蘇我自体が王家の一族というのも古代中国、殷王朝の王家の実情推測から比定すると容易に想像できるし実際そう思っていたので新鮮味はなかった。 ただ、論旨がぴょんぴょん飛ぶし、古代人名の振り仮名も初出のときのみで二回目以降からふりがな無しだし、一般の人にとって古代の人名や神の名前は読みづらいし、人物相関もなじみが薄いからコモディティを考えての出版ならきわめて不親切といわざるをえないかな。
    こういう見方もあるんだよ、という視点を紹介するという姿勢においては悪くないと思う。

  • 前作「藤原氏の正体」を受けて自説を膨らましている。

  • 蘇我氏はその出自の正統なる故に日本書紀から隠蔽された。
    と云う筆者の主張を元にした蘇我についての考察。
    私見としては、面白いが若干無理があるような感じ…。

  • 2011年24冊目

  • 黒岩重吾さんの『蘇我入鹿』を読んだのをきっかけに古代史にハマりました。
    関裕二さんの作品もこれが初めてですが、なかなか面白く読ませていただきました。
    トンデモと決め付けられがちな方のようですが、私はそうは思いません、むしろロマンに満ち溢れていて古代史ファンを増やす一役を担っている人ではないでしょうか。
    日本では権威主義に凝り固まった歴史学者が跋扈していますので、若い時から頻繁に奈良へ足を運んでいたという歴史オタクの関さんのような方のほうが歴史の謎を解いてしまうのかもしれませんね。
    まぁそれでも腑に落ちないところがいくつかありましたけど・・・

  • 歴史は常に勝者の手によって編纂される。史料は冷静な目で見なければ真実は見えてこない。この本は、敗者になってしまった蘇我氏の無念の思いを発掘し、その深層を探ろうとする使命感に満ちている。

  • 登録日:7/29

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著者プロフィール

歴史作家

「2023年 『日本、中国、朝鮮 古代史の謎を解く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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