無限の網―草間彌生自伝 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101365411

感想・レビュー・書評

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  • 水玉の人,カボチャの人というイメージしかなかった.ほとんどの人がそんな印象を抱いているんじゃないんだろうか.

    ところがそのバックグラウンドには複雑な生い立ち,閉塞感からの解放を求めてのアメリカでの渡米,渡米先での成功を積み重ね,欧米を世界を代表する20世紀の芸術家になった人であったということを知ることができた.

    あらゆる体験が濃く,芸術に対するストイックさと相まってすごい人生だと思う.

    水玉で埋め尽くされた描写には世界,自然と同化し自己が消滅することを描いているらしい.

    「戦争とフリーセックスのどちらがいいの?」という究極の2択.

    "作る側の立場から見ると、すべてがギャンブルであり、未知の世界だ。かつて何万の芸術家がしてきたように、峰の知れぬ山を何かの引力に引かれて登るのだ。もし、この峰の深みが知れていたら、明日からの私の人生は灰色になってしまう。"

    “人前でセックスしたり、国旗を焼いたり、そうしたことはすさまじいと言えばすさまじいだろう。けれどそういう受け取り方そのものが既成の観念なのである。"


    前衛的であることとただカオスなだけの違いがなんとなくわかってきた気がする.前者は歴史,文脈,世相,規制の概念を注意深く観察し,それに対するカウンタアークションを絶妙な方法で表現しないといけない.一見無秩序に見えて計算されているところに美しさがある.

  • 草間彌生を知るのに充分すぎる本。
    瀬戸内芸術祭で作品を見て読みました。

    半世紀前のニューヨークで大胆で先駆的な芸術を
    成し遂げていたパワーに圧倒されました。

  • 小説家としての活動があったことは知らなかった。とにかくパワフルでぶれない生き様。自分好きのする文章がすごい...

  • 水玉、かぼちゃ、日本を代表とする女性アーティスト。
    そんな初歩的な情報しかないなかで読み進めた本作。いや、草間さんすごい。早々に日本を飛び出したことが本当に良かったと思う。日本にいたままだったらここまで認められることもなかったのでは。何年後かに朝ドラ原作とかなりそうな人かな?と思っていたけど、本作を読んだら絶対無理だなと(苦笑)松本に行ったとき休館日で行けなかったミュージアム絶対行こうっと。

  • 草間さんの作品をあまり知らずに本書を読んでしまいました。

    本書を読んで、草間さんまでとはいかずとも、自分も人間として、もっとアイデンティティを炸裂させ、いろいろ表現していったほうがいいのかなって考えてみたりした。
    そして彼女のぶっとんだバイオグラフィー。彼女のある種の才能がそれを実現させた感はあるけど、自身、年半ばながらそういったバイオグラフィーに憧れを持っていて、目標にしたい気持ちも未だに少しはあったりする。

    作品を見ずして「草間彌生」を知ることは(当然ながら)できないので、都内にある草間弥生美術館に作品を見に行ってこようと読了後に思った。

  • 嫌いなものを増幅させて征服するとは相当荒療治。なんと強いこと!辛い過去を背負い病と闘いながら、自分と世界を愛し生きることに希望を見出している草間彌生の生き方は、とてもかっこいいと思う。尊敬する。作品展に行きたくなった!

  • 今読んだんかいっ!すげーな彌生、すげーなわたし。って気づくの遅いか。

  • 一年ほど前にルイ・ヴィトンや各種メディアで取り上げられておりました草間彌生先生の自伝でございます。

    いやこれがもう何が凄いってすべてですよ。すべて。
    日本での活動、アメリカでの活動、世界での活動。それぞれが織り交ぜられながら大まかな時代ごとで分けて書かれておりますが、書かれているそのすべてが規格外でございます。
    と申しますのも、先生。幼い頃から幻視・幻聴に悩まされながらも描くことで表現することで生き延びてきたそうなのです。周囲、特に母親からの圧迫に耐え、もともと敏感だったのでしょう幼い頃から無意識化の情動に接し、見えているものを描き表現されてきたのです。
    「日本では自分は生きることができない。この狭苦しく閉じこもった日本から早く飛びたしたい」(要約)
    そう仰りながらも先生は渡米前に既に日本で業績をある程度認められております。もうスケールと申しますか見ているものが違うのだとワタクシ呆気にとられるばかりでございます。


    セックスクイーン草間彌生

    さて、そんな草間彌生先生ではございますがなんと若き頃はフリーセックスの伝道者だったのでございます。今では水玉のイメージばかりが強く現代アートに興味がある向きでなければ驚いて腰を抜かしてしまうほどかもしれません。ワタクシも話には聞いておりましたが本書を読むまでは詳しくは存じ上げませんでした。
    本書の中でも草間先生が憤っておられたのが日本のマスコミでございます。平気で嘘をつきアートの文脈も読まずに扇情的に非難する。批判ではございません。非難でございます。もちろん当時と現在では外的状況が違うかと存じますが残念ながらワタクシはテレビで当時のセックスシンボルとしての草間先生を視聴したことがございません。結局のところ日本のマスコミの性質自体は変わっていないのではないか。そう考えてしまう今日この頃なのでございます。

    そうは申しましても本書は世界的アーティストの自伝としても読めますし、サクセスストーリーとしての文脈でも読めます。それだけ一人の人間の人生、ましてや波乱万丈を絵に描いたような人間の人生となれば多種多様な切り口がありうる訳でございまして、であるからこそワタクシのこの駄文などささっと読み流して頂き、烈火の勢いで本書をご一読することをご提案致します。何しろ「一回の読書は百の書評に勝る」と申しますから。すいません。申しません。今、考えました。ですがまあこれはこれでひとつの真実でございますからして読者様の寛大な御心で許して頂ければ幸いでございます。

  • これ読んで あらためて作品を観たい
    どこかで回顧展やらないだろうか
    とくにニューヨーク時代のを観たい

  • 「幻覚や幻聴」
     幼いころからを験する。
     スミレが人間のような顔つきをして話しかけてくる。
     その光景を残しておきたいと絵を描くようになった。
     そのときに感じた驚きや恐怖を絵に描いて静めていく。それが私の絵の原点。

    「カボチャ」
     祖父の採種場でお目にかかった。
     太っ腹の飾らなぬ容貌、たくましい精神的力強さに興味を覚えた。

    「サイコソマティック芸術」
     コンプレックス、恐怖感を表現の対象にファルス、マカロニ、
     その表現の中に埋没し恐怖を克服。オブリタレイト「消滅」。
     バックもすべて水玉模様にしてセルフ・オブリタレーション「自己消滅」。
     水玉がポジ、網目がネガ。ポジとネガが一つになって私の表現となる。

    「私のプラン」
     自分の生きたいように生きる。
     今は、一にも二にも、いい芸術を作りたい。
     今は「死」が主なテーマ。 

著者プロフィール

前衛芸術家。小説家。1929(昭和4)年長野県松本市生まれ。10歳の頃より水玉と網模様をモチーフに絵を描き始める。57年渡米、翌年ニューヨークに移り、ネット・ペインティングを発表。73年の帰国後も彫刻、映像、パフォーマンス等、自らの表現を追求し続けている。

「2012年 『クリストファー男娼窟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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