「リベラル保守」宣言 (新潮文庫)

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著者 : 中島岳志
  • 新潮社 (2015年12月23日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101365725

「リベラル保守」宣言 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • リベラル保守は反理性主義かつ歴史教訓主義というスタイルの問題であって、思想の中身の問題ではないという事か。結局は急進か漸進かの変化のスピードという事になるのだろうが。

  • 17/01/28 4:30am
    「第二章 脱原発について」について
    僕は中学の時は広瀬隆(今となってはただのデマゴーグだとの認識だけれど、彼の著作)など読んでいて、当時は明確に反原発の立場だったのだけど、今では、(東日本大震災を経た後でさえ)手放しに反原発を唱える気になれずにいる。
    その立場を、本章の内容に照らして説明できそうな気がする。
    著者は、原発を「未来永劫、不完全な存在」であり、「人間が完全でない以上、完全な原発など存在しようが」ないと、保守の原則に従って言う。
    すると僕のような素人が思いつく疑問、「では自動車などは?」にも丁寧に答えていて、「重要なのは、(中略)利便性とリスクを天秤にかけて利用する英知とバランス感覚」だと説く。
    ただ、「リスクを天秤に」と言うのは必ずしも保守の何たるかと言う文脈で出てくるものではなく、例えば僕の勤務先の会社でさえ昨今「リスク管理」にうるさくなってきている、と言うような一般的な話として理解して良い気がする。
    で、例えば別の章で福田恆存の「平和」に対する考え方を取り上げて、「「絶対レベルの理念」と「相対レベルの理念」を明確に区別し、絶対者の次元でこそ成立する「絶対平和の理念」を想起するがゆえに、相対世界における絶対平和の不可能性を受け止めようとする」と言うところの「絶対レベル」と言うのは、相対世界の住人である僕の頭の上50cmくらいのところに雲のような吹き出しが付いていてその中に描かれた、僕が相対世界たるこの世を生き抜くに当たって参照すべき、この相対世界とは連続していない絶対的な世界だと理解していたのだけど、本章の議論における「完全な原発」と言うのは、相対世界における自動車と、リスクに大きな違いこそあれ同じ地平でつながっているような印象を抱くのだ。であれば、技術の進歩によってそのリスクは最小化することができて、今ある相対世界においても利用可能な技術となり得ると僕は考えてしまうのだと思う。

    著者は吉本隆明の論を批判的に惹いているが、吉本の論は究極の進歩主義、設計主義だと僕にも感じられ、ほとんど共感できないものだった(少なくとも引用されている内容に関しては)。
    でももしかしたら僕の考え方は、根本では吉本の考え方と繋がっている部分もあるのかもしれない。

    ちなみに僕は原発を推進したいとは全く思っていない。現状の技術では、撤退するという選択が妥当なのかもしれないとも思っている。
    ただ、手放しに反原発を唱えることになぜ違和感を抱くのかを自分のなかで考えてみたいと思った。
    原発に関しては、もう少し色々な題材を参照しながら考えてみたいと思う。

  • 「保守」とはなにかを再考させられる一書。
    新たな気づきである。

  • 読了日失念。

  • 中島岳志という人を知ったのは、たぶん12年くらい前。おそらく論壇に出始めた頃だと思う。自分と大して年齢の違わない人が活躍し始めていることに軽い驚きを感じた記憶がある。その後も、どんどん気鋭の論客として名を上げていくさまをどことなく意識していたのだが、著作を読んだのはこれが初めて。
    保守とは本来何ものなのかを非常にわかりやすく、そして説得力をもって論じている。こんなに読みやすいとは思わなかった。
    わりと最初のうちに保守の定義が示される。曰く「保守は特定の人間によって構想された政治イデオロギーよりも、歴史の風雪に耐えた制度や良識に依拠し、理性を超えた宗教的価値を重視します」(p.37)ということで、決して懐古主義、復古主義ではないことが繰り返し述べられる。こうした論に照らせば、「保守」とされている現在の安倍政権のやっていることには首を傾げたくなることばかり。実際には、主義に従って為政をとるわけでもないのだからずれは仕方ないのかもしれないが、主義という芯がないのは危ういことだろう。
    一方、左派についても、その成り立ちや本義に照らすと、フランス革命は個人主義しか認めようとせず、市民団体や協同組合のような思想・活動も排斥していたとか、人間の力を信じ進歩を是とする本義に照らせば、原発を推進せざるをえないといった吉本隆明の論なども紹介される。
    私は、「自由」に高い価値を置いているつもりのわりに、頭が硬いというか、慎重だったり手放しに新しいものをよしとできないと自認し引け目を感じていたのだけど、ある意味、そうした自分の心の向き様がそれでいいのだと思うことができた。
    タイトルは「リベラル保守」などと保守の亜流や新派のような印象も与えかねないが、むしろ、保守本流のあり方を説明している傑作。出版までの顛末が書かれている書籍版あとがきがこれまた本編と並ぶほどに面白い。NTTは民営化して30年がたとうとしているのにいまだに公器だと思っているらしい。新潮社はうまく漁夫の利を得たなという感じ。

  • 中島岳志さんに注目してるというのに、この本を読んでないのはダメだろうと読むことにした。

    そもそも中島さんは「保守」であることを常々宣言しておられる。私としては、中島さんの言っておられることはいつも素晴らしいと思っているのに、「保守」というイメージは昔から全く好きでなく、どうしたものかと思っていた。

    大体この本のタイトルにもある「リベラル」と「保守」を合わせることが理解できなかったのだ。ただ、やはり尊敬する内田樹先生がよく「今の自民党は全く保守ではない」とよく言われ、それはそれでよくわかり、今までの私の中の自民党=保守というイメージも崩れていってたのだ。

    では「保守」とは何か?
    中島さんは何カ所かで定義づけられている。
    人間の不完全さを認識の基礎に据え、特定の人間によって構想された政治イデオロギーより、歴史の風雪に耐えた制度や良識、「伝統」を重んじる。しかし、決して「復古」でもない。

    わかりやすく書かれていたが、私がすべて十分理解したとは言えない。だからかもしれないが、多分100パーセント賛成というわけではないように思う。ただこれからもずっとしっかり彼の考えを追っていきたいと思う。

    あとがきに書かれていたNTT出版との絡みは由々しきことで、でも最近ありがちな話で、本当にどうすればいいのかと思ってしまう。

  • 保守思想研究者の中島岳志は北海道大学に努めていて三角山放送局でFlydaySpeakersという番組をしていた時から知っていた。
    保守主義者でありながら脱原発やら反橋本やら、私の知っている「保守」たちとは一線を画す主張に興味を持った。
    私の持っていた保守のイメージは保守は右翼とあまり違いがなく、愛国的で伝統を固持し新自由主義的、というものだった。これは自民党の議員たちから帰納されたものだったということが今にしてみればわかる。普通保守と言えば今でもこのようなイメージなのではないか。
    しかし、本源的な意味での保守とはそうではないと中島は言う。フランス革命を支えた啓蒙思想への反動として生まれた歴史を紹介しつつ、保守とは人間の合理性を懐疑し物事を漸進的に改善する姿勢、であるとする。
    彼の視点からみるとリベラルと保守は必ずしも対立するものではなく、タイトルのリベラル保守という言葉もすんなりと理解できる。
    丁寧に論を追ってほしい。必ず中島の言わんとすることが理解できる。
    鶴見俊介は自身が中島の言う保守だと彼に言ったというのをどこかで見たが、どこで見たか忘れてしまった。

    本文は平易かつ論理的で、高度なことを論じながらも非常に読みやすい。保守って何?リベラルって何?右翼って何?左翼って何?という疑問を持ったことのある人は多いだろうが、この本は確実な答えである。これらの言葉の誤用が―政治家のあいだでも―はなはだしいことに気づくことができるだろう。

  • 面白かった。
    確かに、俗的・古臭が漂う醜い保守でもなく、
    教条的でなんでも反対し、あぶなっかしい左翼でも
    ない、人間の本質をとらえ、そのうえでの
    歴史をかさねてきたものの重要性を鑑みた保守。
    また、自由を集団的狂信や多数者による専制を疑う
    リベラルというのがしっくりくると思われます。
    橋下・安倍のなんでも声高に否定する保守、集団的
    狂信を起こそうと考えるリベラルに嫌気がさしてくる
    ような事象が多くあるような気がします。
    かといって、”リベラル保守”というレッテルで突き進む
    のも変な気もします。自分たちで考えるということが
    必要なのではと改めて思われます。

  • 単行本で出版されたとき、あとがきを見て買おうと思った。版元が出版にストップをかけた問題作なのだそうだ。橋下徹に関する件が問題なのだとか。だけど、それが、メディアで話題になった気配もないし、たぶん著者があとがきに書かなければ、そんなことなかった話になったのだろうなあ。でも、ちゃんと出版してくれる版元もあるわけで、こうして文庫にまでなった。単行本を買わなかった理由はもう記憶にない。著者はここ数年、メディアに登場するようになったし、分かりやすい文章を書くのだろうと期待して読み始めたが、そう簡単ではなかった。引用が多いのもその理由かもしれない。半分くらい理解した中で言うと、保守というのは何も変化を嫌うわけではなく、時間をかけて議論を尽くして変えていくのならばそれもよいと考えている。熱狂に熱狂するような状況になるのを危険と感じている。その点は良いと思う。原発に対する考え方は少し違う。私自身は即刻やめるべきと考えている。しかし、僕より10歳も若いのだけれど、深く物事を考えているなあと感心してしまう。当たり前か、それを生業にされているのだから。序章にある寛容というキーワード、あとから出て来なかったように思うけれど、他でも目にしたので、ちょっと心にとめておこう。

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「リベラル保守」宣言 (新潮文庫)の作品紹介

リベラルと保守は対抗関係とみなされてきた。だが私は真の保守思想家こそ自由を擁護すべきだと考えている――。メディアでも積極的に発言してきた研究者が、自らの軸である保守思想をもとに、様々な社会問題に切り込んでゆく。脱原発主張の根源、政治家橋下徹氏への疑義、貧困問題への取り組み方、東日本大震災の教訓。わが国が選択すべき道とは何か。共生の新たな礎がここにある。

「リベラル保守」宣言 (新潮文庫)のKindle版

「リベラル保守」宣言 (新潮文庫)の単行本

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