「普天間」交渉秘録 (新潮文庫)

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著者 : 守屋武昌
  • 新潮社 (2012年8月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101366616

「普天間」交渉秘録 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 魑魅魍魎が跋扈する、とでも形容するしかない、混沌とした政治状況の中で、沖縄基地問題に奮闘し、政治と渡り合った、大物次官の姿が生々しく描かれている。その根気強さ、精神のタフさには、ただただ驚かされる。読んでいて、ここまで決められない政治にはウンザリ。信念なき日和見、保身の政治家が多すぎる、ということなのだろうか?

  • 「普天間」交渉秘録 元防衛事務次官 守屋武昌著 を読了。

    3月に、どこでも良いので、とにかく旅行に行ってみたいなと思い、行くことにしたが沖縄。

    「本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること 沖縄・米軍基地観光ガイド」という本をめくってみるうちに、ロードバイクに乗って、海を見て、各地のグスク(世界遺産に指定された琉球の古城跡)や米軍基地を見てまわるという旅程ができた。

    今帰仁から名護まで戻り、脚が残っていれば辺野古崎まで山越えをして辺野古を見てくる予定だったが、辺野古を見ずに帰ってきた。

    辺野古を見ずに帰ってきたモヤモヤ感をどうにかしたいと思っていた時に手にしたのが本書。

    テレビのニュースでは、連日のように辺野古や普天間の映像が流れているが、自分にはその映像をリアルな出来事として感じることができなかった。

    沖縄を訪れた後で、本書を読んで、海上ヘリポート案、軍民共同飛行場案、キャンプ・シュワブ陸上案、名護ライト案、L字案、X字案、V字案とは、実際のところ、どこで何をどうする計画なのか、初めて概要を理解できた。

    本書を読むと、日本政府が、いかに今日まで、沖縄の自治体首長、沖縄財界に翻弄されたかの一端を知ることができる。

    本書を読み終えて思うのは、日本の現政権は、沖縄の交渉術をどう理解しているのだろうか、これに対抗できるだけの交渉能力があるのかということ。

    沖縄でのロードバイクの旅の終わりにタクシーで那覇空港に向かった時のこと。

    タクシーの運転手とグスク(琉球の古城跡)の話なんかをしていると、三山を統一した、琉球王国の尚巴志のことを、「あれは実は本島の外から来たんですよね。… 昔から沖縄の役人は、明や清からは答礼使、冊封使を迎えたり、徳川幕府にもいい事言ってましてね。」と、「沖縄の役人」を軽く突き放したような口ぶりで話していたのが深く印象に残っている。

    その時、太田、仲井真、稲嶺など歴代沖縄県知事の顔と琉球の役人がダブってみえた気がする。

    ナイチャー(本土の人)からみた、沖縄の「懐の深さ」「得体の知れなさ」というのが、どこから来るのか、もっと知りたくなった。

    「テーゲー(大概と書く、薩摩から伝わった為政者訓という説もある)」というのは、処世術であるが、奥が深い交渉術でもあるのだろう。

  • 先日の沖縄県知事選では、三選を目論んだ現職の仲井眞弘多氏(自民党が推薦)が落選し、前那覇市長の翁長雄志氏(社民・共産・生活などが支援)が初当選するといふ結果になりました。
    なぜ沖縄の知事選にかくも耳目が注がれるのか。いふまでもなく、基地問題があるからですな。政府与党は、自らの政策を実行する上で都合の良い人を送り出せるかどうか。地元としては、国の言ひなりにならず県民の意思を強く主張できる人を当選させたい。
    沖縄県ならではの争点なので、他県の者には見えにくいところがあります。或は故意に本質を理解させないやうにする向きがあるのではないでせうか。

    『「普天間」交渉秘録』の著者、守屋武昌氏は防衛省の防衛事務次官にまで登りつめた人。防衛庁を省に昇格させる際には、水面下で八面六臂の活躍をしたといふことです。
    当時の小池防衛大臣の不興を買つたり、山田洋行事件で有罪になつたりと、マスコミの報道しか知らないわたくしとしては、それまでの守屋氏のイメエヂは芳しくないものでした。
    しかし本書を読みますと、真相はもつと裏がありさうです。無論人間は皆自分が可愛いので、都合の悪いことは出さないし、逆に実績となることは強調したくなるものです。
    さはさりながら、さういふ面を割り引いても、この普天間問題については「ちよつとをかしいぞ」と首を傾げたくなる事象が多多ございます。

    「普天間」の危険性は誰もが認識してゐるのに、一向に事が進まないのはなぜか。一体誰がこの問題を引き延ばしてゐるのか、本当の二枚舌は誰か...守屋氏の日記から垣間見える風景は、我我がマスコミ報道で知らされたそれとは、かなりの乖離があると申せませう。
    守屋氏は「本書は特定の個人を貶めるために書かれたものではない」と述べてゐますが、本書の内容はどう読んでも「悪者」は特定されてゐます。事実なら怪しからぬことであります。

    この問題は、一部の人間にとつては解決を先延ばしするほど果実の恩恵を享受できるのださうです。また首長らは沖縄県民向けと日本政府向けの二つの顔を使ひ分け、地元からは票を、国からはカネを得ることに腐心してゐるとか。
    結局自らの地位の延命をはかる一派が、当初は志が高かつたかもしれませんが、国との折衝を重ねるにつれ、ウマミを感じるやうになつたのでせうか。

    本書で名指しされた方方は、反論したのかこれから反論するつもりなのか、それとも「あんな奴の云ふこと、一々気にしとれるかい」と無視するのか。何らかの反応が欲しいところであります。
    それにしても、大臣といふもの、他愛無いものですなあ(もちろん中には能力が高い人もゐるが)。政治主導はいいけれど、脱官僚とか言つて敵対関係を作るのは愚の骨頂と申せませう。

    さて今回新たに知事となつた翁長氏は、辺野古移転に反対し、国外(県外)への移設を主張してゐます。また揉めさうですなあ。本当に「最後は金目でしょ」になつてしまふのか...

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-500.html

  • ○防衛省元事務次官の日記・経験に基づく実話。
    ○普天間基地移転に係る米国・沖縄との交渉を中心に、我が国の防衛面での課題を交えてまとめている。
    ○バイアスはあるかと思うが、政府における防衛面の中心的役割を果たした立場からの交渉の記録は、極めてリアルであり、ニュースなどで見聞きした情報の裏側について知ることができた。まさに、交渉とは裏表があるということを再認識。
    ○政治家の実名も登場するため、意外なイメージを持った人もいる。
    ○沖縄の基地問題については、諸々の考え方があり一概に善悪を決めることができないが、本書を読んで、実態の一面を知ることができた。

  • あくまでも一政策者の目から通した「外交交渉」なので一概には何とも言えない。
    が仮にこれが真実だとしたら沖縄は相当なタフネゴシエーターといえるだろう。しかし本来それは米国に対して向かうはずであって、日本(ヤマト)に向かうべきものではない。

  • 信念を貫いた官僚の手記だろうか。手法の良し悪し、後に有罪となる事件の内容はわからないが、基地をめぐる地元沖縄とアメリカ、永田町と霞が関の立ち回りが克明に、ダイナミックに記されている。

  • すっかり悪人のイメージな著者の沖縄のやり取り。小泉、飯島がずいぶんいい人として登場。貴重な交渉記録だとは思うが、割り引いた方がいいかな。何故、悪者としてマスコミに晒されたかはよくわかった。仕事が出来る人で外務省やらのやっかみでやられた。

  • 自民党が沖縄の基地移設に関してどういったやり取りを沖縄、アメリカとやっていったかを時系列に追ったもの。面白いけどなんか飽きるね。

  • 本書の発行は2010年7月10日、この本の中では防衛省汚職問題については身に覚えが無いとしてほとんど触れられていないが2009年12月22日東京高裁は2審で有罪判決を支持し、2010年8月27日には上告を取り下げ刑が確定している。また2011年12月16日には守屋氏のインタビューを元に森功が「狡猾の人」を発光しているがこちらは元々守屋氏が自分から持ち込んだ企画で途中で翻意したが、強行発行されたと言う経緯らしい。

    本書の記録は自信の日記が元になっており、2004年の沖縄国際大学ヘリ墜落事件から2007年の守屋氏の退官までの普天間基地の辺野古移設の交渉経緯を”防衛省”側から見た記録となっており、強かな交渉相手の沖縄県や名護市、方針が一致しない政治家、言うことを聞かない米軍と言う印象を与えるがこれはかなり割り引いてみたほうが良さそうだ。本書の中身の多くは官僚や政治家の主導権争いの描写に裂かれているが当の守屋氏本人が人事権を握って次官に上り詰めたことが知られている。

    以下本書の内容からは外れるが状況整理
    1995年米兵少女暴行事件を機に基地反対運動が再燃し以降の交渉で海上基地建設と引き換えに普天間基地の返還が決まる。
    1997年に辺野古沖埋め立てが有力となる。97年12月21日名護市の住民投票では賛成45%、反対53%、98年2月の選挙では知事の意向に従うとした岸本が当選。この時の主張はむしろ地域振興を全面に出していた。当時の知事太田は選挙期間中に反対を表明。
    1998年11月沖縄知事選で県内に軍民共用空港を建設することを公約に上げた稲峯恵一が当選。2002年再選。
    2004年ヘリ墜落事件を受け普天間移設案の検討が進む。
    2005年2月時点で守屋案はキャンプシュワブ陸上案。
    2006年に名護市長選では基地容認派の島袋吉和が当選。
    2006年11月の知事選では基地容認派ながら現行案の修正を求める仲井眞弘多が当選
    2008年の県議会選では反対派が躍進
    2009年の衆院選では賛成派は全て落選。マニフェストには無かったが鳩山は7月19日那覇で「最低でも県外」と表明。11月にはオバマ大統領との会談で「Trust me!」と発言、
    2010年1月名護市長選で反対派の稲峯進が当選。
    2010年5月4日鳩山ー仲井眞会談で県外移設が難しいことを伝える。
    5月21日辺野古地区行政委員会は環境アセスメントやり直しの無い範囲、地域振興策の実施を条件に移設容認を決議
    5月23日鳩山ー仲井眞会談で辺野古移設方針を通達。
    5月28日日米両政府で辺野古移設の合意を発表。
    そして2013年3月29日政府の埋め立て申請を沖縄県が受理した。

    名護市は元々辺野古周辺のリゾート開発計画が有り地元の建設業者や開発業者を中心とした賛成派、沖縄県の南北格差是正を目的とした地域振興策を条件とした容認派がおり、反対派には米軍駐留そのものに対する反対以外に辺野古地区の環境問題によるものがある。

    この本の経緯では建設業者を中心に埋立て案が推されており、守屋氏は環境問題と費用を理由に出来るだけ埋立てを少なくする陸上案を推進、また安全性と騒音の問題から離発着航路が村落の上空を避けること、海兵隊の主張として同様に飛行経路上の高度の障害物(山など)の制限やヘリ部隊と高速の戦闘機の管制を別にすること(嘉手納案が却下された理由)海兵隊の訓練の問題(地上部隊とヘリ部隊の共同訓練)がある。日本の政治家は地元や日米合意が進むかどうかを気にしておりテクニカルな問題については妥協するという描写が目につく。

    アメリカ海兵隊は20万人で第3海兵遠征軍は唯一海外に司令部(キャンプ・コートニー、うるま市)を置く、兵数は1万7千。主力の第3海兵師団(歩兵部隊)で6ヶ月毎のローテーションで沖縄に駐留する(キャンプ・シュワブとハンセン)。また第1海兵航空師団(6400名)の司令部は瑞慶覧、輸送・戦闘ヘリ部隊(普天間)、対地支援ジェット戦闘機部隊(岩国)からなり、普天間移転時にはヘリ部隊だけではなく歩兵部隊の共同訓練の要請から県外移設のためには歩兵部隊も移動させる必要が出てくる。在日米軍再編計画で2014年までに8000名の兵と9000名の家族をグアムに移転する計画が日米政府で合意されている。上に書いた訓練についてはグアムの方が制約が少ないと言う話もある。それでも沖縄海兵隊の規模は1万人を維持することになり2012年2月の仲井眞談話では県外移設の要求に変わりはないとしている。

    巻末には守屋氏の日本の防衛に対する沖縄の重要性が述べられているが、オスプレイの配備によりヘリ部隊の展開能力は増しているので訓練の問題を除けば県外移設の可能性は充分あると思う。
    http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130313/244982/?ST=top

  • 小説の琉球処分の現代版のようだっw

  • 最近、この手のノンフィクションを読む機会が多いのですが、どうしても、著者やその周りの登場人物を「善者」として見てしまいます。本著者は退官後?かな?逮捕されてますが、本書では(当たり前ですが)、100%国をおもう優秀な官僚です。
    一体、どちらが真実なのやら…

    沖縄の役人の姑息で汚い交渉も。

  • 本書は防衛事務次官として、アメリカ、沖縄、永田町と対峙してきた著者が自身の筆によって書き残した膨大な当時の日記を下につづる回顧録です。生々しい記録ですが、結構文章が難しかったです。

    現在も刻々と変化を続ける沖縄の基地問題ですが、個人的に裏で行われている政治的駆け引きがどのように行われているかについて興味があったのでということとこれと同時進行で読んでいる「狡猾の人」という筆者を取材対象としたノンフィクションを補完するという意味もございました。

    筆者による当時の生々しい記録を克明に記した日記と現場を知った人間にしか欠くことのできないおどろおどろしいまでの政治家、官僚、アメリカの綱引きのやり取りには日ごろ僕らが知ることすら出来ない「現場」というものを記してくれました。

    確か、現在では筆者は『塀の中』にいらっしゃると聞きましたが、またそのときの事は『狡猾の人』をこちらで紹介させていただくときに自分の中でまとめておきたいと考えております。政治の世界はかねてより『魑魅魍魎』の渦巻く世界ではありますが、この、『沖縄問題』は日米関係や中央の『政治エリート』と沖縄県民との問題など、様々なものが複雑に絡んでいると思っておりますので、今後もこの問題の経緯を見守っていきたいと考えております。

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元防衛事務次官が綴った膨大な量の日記。詳細に記された自身や交渉相手の発言内容、行動から浮かび上がるのは、一向に進展をみせない「普天間問題」の真相であった。霞が関、永田町、アメリカ、そして沖縄。手練手管の「引き延ばし」「二枚舌」で解決を妨げているのは、誰なのか-。互いの思惑が錯綜する交渉の、最前線を見つめた著者が明かす、国民に隠された基地問題のすべて。

「普天間」交渉秘録 (新潮文庫)はこんな本です

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