淋しい狩人 (新潮文庫)

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著者 : 宮部みゆき
  • 新潮社 (1997年1月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101369174

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淋しい狩人 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 舞台は東京の下町の古本屋さん。
    店主のイワさんと、イワさんの孫の稔が本に関わる6つの事件に巻き込まれる。
    イワさんと稔の会話はとても楽しく微笑ましい。
    素敵な関係だなぁと思う。
    でも事件の背景はとても残酷だ。
    そのギャップがすごい。

    特に「六月は名ばかりの月」と「うそつき喇叭」を読んで、人の心には悪意というものがたしかに存在するのだと再認識した。
    身勝手で暴力的な仕打ちに何も出来ずに耐えている人がいる。
    納得出来ることではない。でもそうなのだ。どうしたらいいのかも分からない。

    ただ私はイワさんと稔のような存在でいたいと思う。
    誰かを傷つけることを目的にしたりしない、そんな人間でいたい。

  • ワタクシにとって、サスペンス劇場的人情話で読みやすいという印象の宮部みゆきさん。
    2012年、今年の夏の「新潮文庫の100冊」のおまけブックカバー目当てに買ってみました。

    連作短編集。
    起こる事件は一生経験することはないかもしれないが、生きてると経験する悲しい気持ちが、読みやすい文章で書かれています。
    現実にありそうなところがまた、やるせない。
    ちょっと辛くて、感想文を書く目的がなければ、ニ度読みをしなかったかもしれません。
    それでも、一度目を通し始めると、何度も何度も読み返してしまうフレーズがあって、読んでよかったと思える本でした。


    そういえば。
    読み終わった後に、自分の中で消化するのになんとなく時間が欲しくて、感想文を書くことなくしばらく置いていた、そんな本だったばっかりに、応募券を切り取り忘れ、目当てのおまけは、応募し損ねたことに、さっき、気がつ(略)

  • 東京の下町にある古本屋を舞台に、店主の65歳のイワさんと、孫の高校生稔が活躍する現代ものミステリの連作短篇集。古本屋らしく、全部に本が関係している。

    読む前は、宮部みゆきには珍しい、殺人事件のない「日常の謎」ものかと何となく思っていたが、その予想は全くはずれ、しっかりと殺人事件がでてくるミステリだった。

    全部に本がからんでいるが、実在の作家の実在の本がでてくる短篇もあるし、架空の本がでてくる短篇もあり、趣向がこらされている。「六月は名ばかりの月」は実在の翻訳ミステリ(ビル S.バリンジャーの「歯と爪」。この前本屋で文庫を見つけた。「淋しい狩人」で書かれているとおり、最後の部分が袋とじになっていてびっくり。宮部みゆきさんがこの本を好きなこともわかっておもしろい。)が出てきて、雰囲気もなんとなくそれ風(翻訳ミステリ風)だし、「黙って逝った」はどこかハードボイルド。宮部さんが書く少年や、少年性を失わない男性は魅力的だと思う。「詫びない年月」は怪談風。「うそつき喇叭」には問題提起があるし、「歪んだ鏡」は山本周五郎の「赤ひげ診療譚」が取り上げられていて、宮部みゆきの江戸ものと現代ものがミックスしたような感じ。

    表題作の「淋しい狩人」には、久しぶりにゾクっとした。これは「模倣犯」のもとになった短篇のような気がする。私は「模倣犯」を読んでいないけど、そう思った。

    江戸ものや怪談ももちろんいいけど、私は宮部みゆきさんのリアリズムの文が好きだ。江戸ものには宮部さんの文章の優しさを感じることが多いが、現代ものではテンポのよさ、切れの良さ(?)を感じることが多い。特に短篇では、密度が濃く、その特徴が顕著だと思う。長いものももちろんよいのだけど、こんな感じの短篇も書いてほしい。残酷なシーンはなしで。

  • 亡くなった旧友の遺志を継ぎ、孫の稔の手伝いのもと古本屋・田辺書店を営むイワさん。

    行方不明になった姉の残した「歯と爪」という言葉が何故か結婚式の引き出物に書かれたという女性「六月は名ばかりの月」。

    平凡な父親のようになりたくないと思っている男性は、亡くなった父親の書棚に三百冊もの同じ本が置かれているのを目にし、ある結論を下す「黙って逝った」。

    毎晩枕元に幽霊が現れるという老女の住む家から戦時中の骨が見つかり、ある夜その老女が行方不明になる「詫びない年月」。

    田辺書店で万引きしようとした少年は、誰かから虐待を受けていた「うそつき喇叭」。

    自分の容姿にコンプレックスを抱く女性がある日電車内で拾った文庫本には名刺が挟まっていた「歪んだ鏡」。

    行方不明になった小説家を父に持つ女性の元に、小説家が残した未完の小説の内容通り連続殺人事件を起こすというハガキが送られてくる「淋しい狩人」。



    登場人物に愛着がわきました。

    主人公イワさんを通して、著者の推理小説家としての主張がなされていてとても好感がもてました。

  • 田辺書店という古本屋さんが舞台のおじいちゃんと孫が事件を解決していく連作短編。ほのぼの系のコージーミステリみたいな感じかなと思って読んだら、おじいちゃん・孫・古本っていうあったかアイテムを除くとなんとも厳しいお話しばかりだな、と。
    「黙って逝った」と「歪んだ鏡」がよかった。
    平凡にたいする暖かな目線なんて全然ない、ああそういえば「火車」書いた人だもんな、と納得。

  • うーんどのお話にも無理があるのか、ぜんぜん入り込めなかった。
    主人公の人物像にもちょっと無理があるような気が・・・
    残念。

  • とある都内の古本屋を舞台にした、連作短編集。
    本をきっかけとした日常系のミステリーって感じでしょうか。

    この辺り、"ビブリア古書堂シリーズ"と同じ構成ですが、
    ちょっと異なっているのは、実在しない本も題材となっている点です。

    中でも作中作の「うそつき喇叭」は秀逸で、読後に探してしまいました。。
    まぁ、"絵本"としてみると、なかなか子供には読ませにくいテーマですけども。

    ん、テンポの良い文体はさすがの宮部さんって感じで、
    結構重めのテーマな話も多いのですが、一気に読めました。

    こんな風に祖父と孫の関係が築けたらいいなぁ、なんて。
    ふと、昨年亡くなった祖父を想い出してしまいました。

  • 宮部さんはやっぱり未成年の男の子を描かせると天下一品。
    祖父であるイワさんとの遣り取りも生意気さ全開で微笑ましい。

    と思って読み進めてみたら
    全部の話が重たいというか読後感がどんよりしてしまう話だった。
    3話目の児童虐待の話なんかは現在の方がハマりそうなくらいで。
    最後に諸々の関係性(稔と淑美さん、イワさんと稔)が
    なんとなく曖昧なまま終わるパターンも
    宮部作品としては独特なのではないか。
    それともまだ続くのを想定してるとか???…それはないか。

    とはいえ、作中に出てくる本が悉く読みたくなる話ではあった。
    山本周五郎の『赤ひげ診療譚』、トライしてみようかな。

  • 古本屋を経営するイワさんと孫の稔が次々と本に関わる事件に遭遇します。
    日常ミステリですが、後ろ暗い部分のある連作集です。

    ◆六月ばかりの月
    後味の悪いラストです。
    新婚ホヤホヤの女性に「ストーカーの顔を確認して欲しい」と頼まれる。
    彼女の姉は失踪していて、「嫌がらせをしてきた男の仕業ではないか」と疑っていた。

    失踪した姉は、新婚夫婦に殺されていた。
    しかも、動機は金だった。
    ストーカー疑惑を持たれた男は全くの濡れ衣でした。

    ◆黙って逝った
    急死した父親の遺品整理をしていた男は、異様な光景を目にする。
    本棚にビッシリ入っている同じ本。
    押入れにあった12万円。
    「父は強請りをしていたのではないか」と疑惑を抱く。

    結果的には、男の勘違いだった。
    警察に行ったお陰で、本の著者を殺した犯人が見つかる。
    比較的、後味の良い作品です。

    ◆詫びない年月
    戦争はロクなものを生みません。

    生きるのがやっとだった時代。
    老女は何をしてしまったのかは分からない。
    母子を死なせてしまったことは認識している。
    それは誰も悪くないが、老女はずっと悔いていた。
    今の世の中、戦争経験者は減る一方で平和ボケしていますからね。

    ◆うそつき喇叭
    喇叭は「らっぱ」と読みます。
    児童虐待を扱っているので、一番ブルーな話です。
    しかも、やっていたのは先生でした。

    この辺りからイワさんと稔くんの仲がギクシャクしています。
    稔くんはホステスの女性に熱を上げています。
    しかも、部屋へ入る仲になっています。

    深夜のアパートに二人きり。
    稔くんはお年頃ですし、トランプ遊びだけで済む訳はないよね。

    ◆歪んだ鏡
    見た目がパッとしない女性がある日、電車の網棚で文庫本を見つける。
    本には名刺が挟まれてあった。

    女性は本の持ち主がどんな人か想像する。
    実際に会ってみると、拍子抜けしまうが…。

    女性は文庫本を読んだことがキッカケで、自分の中の何かが変わった。
    一方、名刺の男は上司である恋人と無理心中をする。

    ◆寂しい狩人
    表題作。

    未完のミステリに「解答を見つけた」と書かれたハガキが挟まっていた。
    不安を感じた著者の娘はイワさんに相談する。

    殺人が二つ起きた時、「死んだ」と思っていた著者は生きていて、「ミステリに解答はない」と主張する。
    逆上した犯人はイワさんに襲い掛かろうとした。

    稔くんは彼女との交際を家族から反対されて、フラれた挙げ句、犯人に刺されます。
    酷い目に遭っていますが、イワさんとは仲直り出来て良かったよ。

  • 面白くて一気読みしたけど
    ハッとさせられるフレーズもあって、学ぶこともあった

  • 宮部みゆきの現代物をちゃんと読んだのは初めてかも。
    時代物に通じる市井の寒さ、暖かさを感じる話が「田辺書店」を媒介にして語られていく。
    久しぶりに、読書っていいな、って思った。

  • 読みやすいな、面白いなと思ったら宮部みゆきだったと納得する。
    ライトな明るさの中にザラリとした錆びを見る感じ。

  • 【あらすじ】
    東京下町、荒川土手下にある小さな共同ビルの一階に店を構える田辺書店。店主のイワさんと孫の稔で切り盛りするごくありふれた古書店だ。しかし、この本屋を舞台に様々な事件が繰り広げられる。平凡なOLが電車の網棚から手にした本に挟まれていた名刺。父親の遺品の中から出てきた数百冊の同じ本。本をきっかけに起こる謎をイワさんと稔が解いていく。ブッキッシュな連作短編集。

    【感想】

  •  この本を読むのは2度目になります。
     タイトルのイメージとは裏腹にこの本を2度目に手にしたとき、「あ、これ楽しかった本だ」と初めて読んだときに感じた思いが甦りました。そして都合のいいことに肝心のオチを忘れていて、新鮮な驚きも感じることができました。
     古本屋田辺書店の店主イワさんの周囲で起きる不可思議なミステリーを描いた短編集です。孫の稔とイワさんの関係がとても好きでした。

  • 既読でした。
    古本屋のオヤジを中心に描く短編。短編だけに気軽に読めるけど、模倣犯や楽園に通じるような人間の嫌な部分を見せるようなとこもあり。

  • 志賀直哉に勝るとも劣らぬ純文学の騎士 宮部みゆき
    「詫びない年月」が良かった。深い!

  • 田辺書店が出てくる連作短編集。
    田辺書店の雇われ店長のイワさんと、高校生の稔を中心に引出物の本「歯と爪」に隠された秘密、自費出版の本が大量に棚に合った父と息子の話、棚から拾った文庫本に挟まっていた名刺の相手に会いに行った、女性の話。

    あとがきにあるように、稀覯本をめぐる蘊蓄やこだわりの本好きは出てきません。イワさんのたちの家族や、出会った本で自分の生き方が変わる人達の物語です。
    古書の買取も書いてあって古本業界もちょっと覗ける楽しみもあります。

  • 古書店。祖父。孫。親友から託された古書店で店主として頑張るイワさんと孫の稔。古書店に持ち込まれる謎を解決していく。ミステリだけでなく、祖父と孫の関係、家族の関係も描かれていて、宮部さんだーって感じる。何度目かの再読。

  • ミステリー小説の短編集。舞台は古本屋、そこの店主とその孫を中心に話が展開されていく。経過や結末にはわりと残酷なことが書かれていたりするのだが、背筋に寒気を覚えることはない。「心あたたまる」なんていう読了後の他の書評も見受けられる。それがこの作者の強みなのかもしれない。強烈なインパクトを求める読者には物足りないだろうとは思う。

  • 意外と以前の作品でしたが、今読んでも違和感ありません。面白い、ほっこりする話とはちょっと違いますが、よくできた物語と思います。
    下町にある古本屋のイワさんと孫の稔が、本にまつわる事件に関わっていくのですが、この二人の関係がいいですね。べったりではなく、干渉もほどほど。いい距離感です。それだけに最後、恋話と事件にちょっとわざとらしさのような感じがしますけど。
    自分は特に「黙って逝った」と「歪んだ鏡」がよかったです。でもなぜか、全部の作品に言えることですが、どうも印象に長く残る作品ではないような気がします。いい悪いということではないのですが。

  • 読み終わってから発行された日付を見て驚いた。いつ読んでもどこか新鮮に感じる物語はずっと読み続けられる。

  • 小山清『小さな町』にも、荒川土手下の古書店が出て来たっけ。 133

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