- Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101369174
感想・レビュー・書評
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東京下町の荒川土手下にある小さな古本屋<田辺書店>の店主<イワさん>こと岩永幸吉と、〝たった一人の不出来な孫〟の岩永稔の老若コンビが、この大衆好みの娯楽本を揃えた本屋を舞台に、舞い込んできた奇怪な出来事や事件の謎を解いていく6篇の連作短編集です。 ビル・S・バリンジャ-の『歯と爪』、山本周五郎の『赤ひげ診療譚』に纏わる事件や、未完の探偵小説〝淋しい狩人〟を題材にして、日常生活で蠢く様々な人間模様の語り部<宮部みゆきワールド>に、いつの間にかひきこまれ、読みふけってしまうのでした。
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題名からして書店モノとは思わずスルーしてきました。宮部さん最近は読まないけれど昔はよく読みました。あまり長大ではないものが沢山有ったのでかなり読んだと思います。
さてさて久しぶりに昔の宮部さんの本読みましたがやはり良い。お得意の快活な少年と頑固で愛情深い老人という組み合わせもしっくりきます。
意外と物騒な話なので書店ものとしては結構珍しい気がしますが、しっかりライトな謎も準備されているのでミステリー読んでいるなあという気になります。
というか謎にはあまり頓着しないタイプなので、ヒューマンドラマとして読んだときになかなかいい本だと思いました。
もう一作くらい続編書いても良かったんじゃないかと思いますが。。。 -
どんどん読み進めてたのしい。宮部さんの文章はわかりやすい上に訴えるパワーも大きいとおもう。
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東京下町にある古書店を舞台に老店主とその孫が遭遇する不可解な事件を描く連作短編集。江戸っ子の祖父と小生意気な孫息子が探偵役なので、ほのぼのした日常の謎を取り扱うのかと思いきや、冒頭から割と血生臭いミステリーが展開される。タッチは軽く、宮部作品らしい人情味も多分にあるが、冷徹で辛口な描写が頻出するので序盤は少々面食う。長編作品ではアクセントとなるこの毒素が、こと短編となると思いの外強烈な印象だ。稔少年の色恋エピソードは蛇足的な気がするが、バリエーションの豊富さは実に魅力的。宮部さんは短編でも名手なのですね。
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短編集だが、ドラマをたくさん何本も見てる満足感
テンポよく話が進むが、決して早すぎることなく「どうなるの?」と言うワクワクをする時間もある -
宮部みゆきは連作短編集もイケる!古本屋を舞台に、本キッカケで起こる謎。こういう設定、好きやね。
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20数年ぶりに再読。
東京下町で古本屋を営む65歳のイワさんと孫の稔を中心に、日常的な事件をめぐる連作短編6編。
イワさんと稔の関係が、幸福な関係から次第に変容してゆく。
少年の描き方がうまい著者には、ほのぼのとした心温まる作品も多いが、本書はひと味違い、人間の裏側を描き出す重苦しさも。
本を媒介にして話が進むのは、『ビブリア古書堂の事件手帖』を思い出す。 -
東京の下町にある古本屋の老店主が、計らずも探偵役となる、連作ミステリ短編集。
威勢の良い聡明な店主が、孫の男子高校生と共に、客に持ち込まれる事件の謎を解き明かしてゆく。
変わらず平易な文体で、一見、軽妙で手軽なミステリのようでいて、その実、凄惨な事件や動機の度し難さ、遣る瀬無さが混じるのを鑑みるに、後続の『模倣犯』へ至るまでの、犯人像に関する試験的な意味合いも感じられる。
バディである孫との関係の一時的な悪化も、少々唐突で、必然はあまり無いのかもしれないが、事件の背後にいる、ごく普通の人々の観察と描写にこだわる著者らしい風穴とも言える。 -
表題作含む6編収録の古書店を舞台にした連作短編集。
本に纏わる話ではあるが、古書店というのがこの作品の大事な部分。新刊書店では起こりえない事件ばかりだからだ。本を中心に据えた作品なら「ビブリア古書堂の事件手帖」が有名だが、本作はそちらとは全く雰囲気が異なる。しかし、本を通してわかる人間の深層心理のようなものは共通するところがあるように感じる。人間の強さ、弱さなどが凝縮された作品集であるように思う。