ソロモンの偽証: 第I部 事件 下巻 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • / ISBN・EAN: 9784101369365

作品紹介・あらすじ

もう一度、事件を調べてください。柏木君を突き落としたのは――。告発状を報じたHBSの報道番組は、厄災の箱を開いた。止まぬ疑心暗鬼。連鎖する悪意。そして、同級生がまた一人、命を落とす。拡大する事件を前に、術なく屈していく大人達に対し、捜査一課の刑事を父に持つ藤野涼子は、級友の死の真相を知るため、ある決断を下す。それは「学校内裁判」という伝説の始まりだった。

感想・レビュー・書評

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  • 自殺と判断された少年の死だったが、殺人だという告発文が学校、藤野涼子、担任教師の元に発送される。一通の告発文を手に入れた茂木が、この事件周辺を報道する。
    そして、2-A浅井松子が交通事故で亡くなる。
    野崎君の両親殺害未遂。
    大出三人組の傷害事件。


    登場人物覚書 大人部門
    城東三中
    津崎校長 豆だぬき 後日引責で辞任
    岡野教頭 お洒落
    高木先生 2年学年主任
    森内恵美子 2-A担任 モリリン 美人24歳
    楠山先生 2年担任 柔道部顧問
    北尾先生 2年担任 バスケ部顧問
    品川先生
    村野事務局長
    尾崎先生 保険医
    岩崎 主事 後日 引責辞職
    石川 PTA会長 建設会社社長

    仲間哲郎 三年 剣道部自宅薬局 涼子先輩
    牧村、浅野、法山 バスケ部二年

    城東4中
    増井望 1年 大出傷害事件被害者
    田川実 増井救助 岡谷証券勤務

    刑事
    佐々木礼子 少年課
    里中 少年課課長
    庄田 少年課
    名古屋 刑事課
    伊丹 刑事課

    垣内美奈江 モリリン隣室
       夫 典史 証券会社 離婚協議中
       
    茂木 テレビ局 企画報道部 35歳

    小林修造 電気店主人 公衆電話近く

  • 【感想】
    6巻目中の2巻目読了。
    どうなるんだろうかと思い、読み進める手が止まりません。
    それ故に、2巻目の本レビューを書く前に3巻目を読了しちゃいました!
    ですので、詳しいレビューはそちらに・・・

    個人的に、本巻では三宅樹里の邪悪さが際立つ展開が多かったかなと。
    (本当に自分勝手で自意識過剰な嫌な子どもです)
    そしてそれ以上に、命を落としてしまった浅井松子が可哀相で仕方ありません・・・


    【あらすじ】
    もう一度、事件を調べてください。
    柏木君を突き落としたのは―。

    告発状を報じたHBSの報道番組は、厄災の箱を開いた。
    止まぬ疑心暗鬼。連鎖する悪意。
    そして、同級生がまた一人、命を落とす。

    拡大する事件を前に、為す術なく屈していく大人達に対し、捜査一課の刑事を父に持つ藤野涼子は、真実を知るため、ある決断を下す。
    それは「学校内裁判」という伝説の始まりだった。

  • 読んでいて、私の中に野次馬気分が混じっていたことは確か。この学校で何が起こっているのだろう。生徒たちの優しさや正義感の裏に潜んでいるのは、決して薄まることのない憎悪か。1部上巻に続いて、嫌な予感しかしない展開。しっかり楽しませてもらった。次巻へ。

    以下、ネタバレ有り(備忘録)。

    樹里の家に行く途中に、松子が事故にあった。涼子はドキドキした。何かが繋がっている気がした。気分が悪くなり保健室に行った。カーテンの向こうに樹里がいた。三宅樹里は笑った。涼子を見て笑った。樹里の存在に辟易し、取り繕った涼子を見て笑った。そして浅井松子が死んだ。殺された。樹里は邪魔者を消した。

    大出俊次、井口充、橋田祐太郎の三人の関係性に何の変化があったのだろうか。動揺し、疑い、争った。橋田は掴みどころのない生徒であった。井口に告発状について詰められ、井口を三階から落とした。大出家は放火に会った。

    死者の無念はどこへやら。柏木卓也の死が、生徒たちが持つ思いを揺り動かし、それが連鎖し、正義や悪、形容できない存在として物語は進んでいく。

    巻末で、妙な使命感を抱いた涼子に不安を抱いてしまった。どんどん危険な方へ向かっているように感じて仕方がない。

    読了、次巻へ。

  • 大出、井口、橋田の3人が懲りもせず、事件を起こすが、大出の父が揉み消す。腹立たしいが、抑制する方法はいくつかあると思うのである。
    更に何らかの裏があると感じながら読み進めた。

    三宅樹理の告発文をめぐって、佐々木礼子刑事が動く。この辺りの心理戦も事件編下巻の読みどころである。この作品、特に事件編で強く感じるのは事実かどうかの根拠に乏しいまま、憶測が憶測を生んで悶々としてしまうもどかしさである。

    もう一つの道筋がある。柏木卓也の第一発見者である野田健一の家族関係だ。野田健一は柏木卓也の塾の友人である神原和彦という別の学校の生徒と現場で会っていた。これも大きな布石ではないかと推理を巡らす。
    父が刑事の藤野涼子が絡まってくる。そして三宅樹理の友人の松子が・・・。一方柏木卓也の家族関係も明らかにされていく。大出一家や学校関係者たちの人間模様も描かれている。

    事件編は多面的にそれぞれの人間関係を軸に拡げられるだけ拡げられたように感じた。
    決意編、法廷編への布石が概ねできたのではないかと感じた。

  • 年末年始の時間でじっくり読むつもりが、2日間で文庫6冊を「読まされて」しまった、宮部みゆきの金字塔(新潮社のサイトを見たら「現代ミステリの金字塔」って書いてありました。手垢のついた惹句ではありますが、でも「金字塔」って使いたくなるよなというのが正直な気持ちです)。

    圧倒的な筆力と500ページを超える文庫6冊の暴力的な物量を使って語られるのは、中学2~3年生が主役のジュブナイルであり、彼ら彼女ら一人ひとりの成長や踏み出した一歩を描く群像劇であり、そして見どころ読みどころの解説付きの上質なリーガルサスペンスです。




    以下、ネタバレあります。
    できるだけ興を削ぐようなことは書かないように気を付けます。でも例え粗筋であってもネタバレと感じる人はいると思いますので、ある程度はご容赦を…。





    クリスマスイブの深夜、雪の降りしきる中学校の校舎屋上から転落した中学2年生の柏木卓也。
    いったんは自殺という結論で事態は収束するかと思われましたが、同級生で不良の鼻つまみ者である大出俊次ら3人組が卓也を屋上から転落させた、それを目撃したと主張する告発状が届きます。

    この2巻では、大出俊次とその父である勝の(唾棄すべき)行状、告発状を受けた学校の(「生徒のため」の美名のもとになされる隠ぺい主義的な)対応、ひょんなこと(がどんなことかもじっくり描きこまれているのですが)から告発状を手に入れた部外者によるマスコミへの密告、また一つ学校の闇を手に入れたとばかりに舌なめずりをして動き始めるマスコミ(の問題記者)などが入り混じり、事態は混乱の度を深めます。
    卓也の両親も認める単純な自殺だったはずの「事件」は、実は殺人事件だいう告発状が届き、この告発状を卓也のクラス担任が隠ぺいしようとしたのではという疑惑が持ち上がり、このストーリーに沿ったニュース番組が放映され、この番組の筋書きを否定する保護者集会の内容を聞いたことで告発状の作成者三浦樹里の唯一の友人浅井松子が動揺から車にはねられて死亡し、さらに大出俊次の腰巾着、井口がもう一人の腰巾着橋口により大怪我を負わされ、最後には大出俊次の自宅から出火して彼の祖母が亡くなります。

    とんでもなく錯綜した状況ではありながらも、警察の出した結論は一貫して事件性なしとして動かなかったため、真相不明、告発状の真偽も問われないまま、誰も罰せられず、誰の名誉も回復されず、「事件」は何となく過ぎ去ろうとしています。

    不穏な1巻に続き、混迷の2巻です。

    この巻の山場の一つは、野田健一の物語。
    心を病んだ母親と、夜勤が多く家に帰らない日も少なくない父親の下、処世術として目立たないように学校生活をやり過ごしていた健一ですが、バブルの熱に浮かされた父が脱サラをして軽井沢でペンション経営を始めよう、なんてことを言いだします。
    人嫌いの母と、別にペンションを経営したいわけでなく現状から逃げ出したいだけの父親とが始めたペンションがうまくいくわけもなく、全財産をつぎ込んだあげく身動きが取れなくなりそうなことは中学生である健一の目から見ても明らかです。健一の言葉に父は耳を貸さず、母は何の力にもならず、八方ふさがりの状況の中、両親に対する殺意が健一の中に芽生えます。
    膨れ上がった殺意に健一が飲み込まれようとする前に彼を救ったのは凡庸で小太り、何とも頼りなさそうだった、しかし親友である向坂行夫でした。

    この殺意の描写が、なんというかもう、もの凄い。
    図書館でこそこそと毒物を調べている頃は何と言うか「児戯」という言葉が相応しかった健一の計画は、いつの間にか意思を持ち、健一を誘うようになります。飲み込まれる寸前の健一の目の前に降りてきた命綱は行夫がかけてきた電話だったのですが、ここがもう。思うように動かない手で取り落してしまった受話器の向こうから聞こえる幸夫の声。我に返った健一が気付いた殺意の顔。
    両親に対する自らの殺意と向き合った経験は、健一のこの後の行動に大きな影響を与えます。

    もう一人、事態を徹底的に引っ掻き回した「HBS」の記者茂木悦男の造形も見事です。
    ジャーナリストとしての(歪んではいるものの)正義感と功名心、学校に対する不信感と憎しみ、黄色いフォルクスワーゲンに乗り、立場が下の派遣社員には尊大な態度で臨む。誰もが思い浮かべるダメなマスコミのステレオタイプですが、ディテールを一つひとつ積上げていくことで、問題記者を見事に作り上げています。
    彼は告発状のストーリーにのっとって、札付き3人が卓也に手を出したのではないかという印象を与える番組を作成し、放映に持ち込みました。これが自体が大きく動くきっかけになります。

    告発状の差出人、三宅樹里が松子の死を受けて藤野涼子に見せた笑いも凄まじい印象を残します。文武両道、容姿端麗な涼子をすっかりビビらすほどの笑み。計画の弱点が消えたことに安心する安堵の笑み、自分の平和な学校生活を阻む障害をもう一歩で排除できることを喜ぶ笑み、そして自分とは何もかも正反対でカースト頂点の涼子を手玉に取ったことに対する嘲りの笑み。
    なお、笑っていた樹里が、自分が唯一無二の優しい友人を失ってしまったことを悟り、悔やんで涙を流すのはもう少し先になります。

    多くの事情を知らされている読者でさえ、絡まりきった糸をどこからほどいていけばいいのか、手を付けかねる状態のまま、しかし、事件は自然消滅を迎えようとしていました。

    そんな状況を歯がゆく思った2-Dのクラスメイトが自然発生的に図書館の前に集まり、そこでみんなで真相を解明したらどうだろう、という会話が交わされます。
    割り切れない思いの泥沼に首まで浸かった同士が空を見上げて見つけた一筋の光。みんなで真相を見つけるという、手が届きそうにない解決策。その思いつきに、まるで過ぎ去った時代への憧憬のようにその場の皆が思いを寄せます。その場限りの光だったはずが、ゆくゆくは学校内裁判につながっていくこの思いを、この場この時の雰囲気を、きちんと文章にできるからこそ、読者はすんなりと「学校内裁判」に入ってけるわけで、この表現力こそが宮部みゆきのすごさだと思います。


    なお、一度6巻まで読み終わってからすぐに読み返していますので、一巻同様、伏線や手掛かり、ミスリードを誘う仕掛けを探しながらの再読を楽しんでます。
    そう言えば、この巻では神原和彦が顔見せで出てきます。
    また、舞台になっているのはバブル華やかなりしころであり、携帯電話が普及する前の世界です。大出家に代表されるバブルの空気、携帯のない時代に一般的だった固定回線に接続された親子電話など、舞台を十分に活かしたストーリー展開や小道具が心憎いほど見事です。

  • すごい。
    第一部「事件」というタイトルが今になってようやく(遅い)解った。
    長い長い序章だったんだ。戦いはこれから。
    そう、たぶん彼らは戦うんだろうと思う。
    自分達を無視して事件を進行させた全てと。

    それにしてもこの密度はなんなんだろう。
    どこまで行けばこんな文章が書けるんだろう。
    この物語を言語化することが出来る人が宮部みゆきさん以外に存在するのだろうか?
    読むのが辛い章もあったし、こわくて寝付けなかっりもした。
    この「事件」は本当に重くて、どうしても面白いと思えなかった。
    でも、読むことを止められない。
    いつもそうだ。
    宮部みゆきさんの小説は私をからめ取って離さない。
    今回はいろんな人に感情移入してしまった。
    どうしてこんなことになってしまうのかと頭を抱えた。
    何もかもが悪い方に向かっていくようで苦しかった。
    でも、第二部、第三部で彼らがどんな結論を出すのかが今はとても楽しみだ。
    誰も傷つかない結論なんてきっとない。
    もしかしたらもっともっと傷つくことになるかもしれない。
    それでもきっと逃げたり誤魔化したりしないでいてくれるはず。
    自分の望む形にねじ曲げたりしないはず。

    どうしたらいいかなんて意味のない問いだ。
    模範解答があるわけじゃないから。
    結局は誰が事をリードするかにかかっていて、その人にとって無難な結論におさまることになる。
    じゃあ、いろんな人が手を伸ばしたら?
    あっちこっちに引っ張ってぼろぼろになってしまったら?
    それが大事な日常だったら?
    戦う決断をさせたのは怒りなんだろうと思う。
    やっぱり楽しい話ではない。
    でも、すごく大切なテーマだと思う。
    だってこの混沌の中で生きなくちゃいけないから。

  •  オーディブルで聴いているのだが、やはり紙で読みたいという欲求が湧く。ここは辛抱だ。

  • 少年の死は本当に自殺なのか、不可解な告発の三通の投書。拡大する事件。とにかくページを捲る手が止まらない小説。これでまだ3分の1?ひえー。

  • 登場人物の描写(生活環境、観察、背景、心理)が細かいので、どうしてここに至るのかの過程が面白いと思います。理解できない面は多々あるのですが…。
    浅井松子家族の優しさ温かさ、は良かった。
    新たな死者、事故、事件が起きて、面白くなってきました。

  • シリーズ2作目。
    1作目で柏木君が亡くなったことを「事件」として掘り下げるのかと思ったら、その後浅井松子までも亡くなり、橋田が井口を窓から突き落とし、大出家は火災に見舞われ全焼……これでもかというほど事件が続く。なんとも不気味で不安定な空気感が流れる2作目だった。
    最後に何か決意した涼子が、次作以降でどういった行動を取るのか気になる。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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