ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)

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著者 : 宮部みゆき
  • 新潮社 (2014年10月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (596ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101369402

ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • いやぁ~、ひさびさに宮部みゆきにハマったなぁ!
    先頃の川崎中1殺害事件の影響や本作の映画の評判がいいこともあって触手が動いたのだけど、
    「火車」や「理由」「模倣犯」の頃のほとばしる熱量を
    痛いほど感じさせてくれる噂に違わぬ良作だった
    (なんせ普段は一冊を一週間以上かけてじっくり読む僕が、一週間で六冊一気読みしたんやから笑)

    物語はバブル景気の名残が色濃く残る1990年12月25日。
    城東第三中学校敷地内に降り積もった雪の中から発見された2年A組の生徒、柏木卓也の死体。
    警察は事件性はなく、屋上から飛び降りたことによる自殺と判断。事態は終息したかに思えたが…
    やがて学校や生徒宛てに届く、犯人の名前が書かれた匿名による告発状と暴力事件。
    波風を立てることを怖れるあまり後手後手に回り、ただただ事態の収束だけを目指す学校側。
    執拗に学校関係者に張り付き、憶測で事態をかき乱すマスコミ。
    そして学校から犠牲者がまた一人…。
    柏木卓也の死は自殺なのか、他殺なのか、はたまた事故だったのか?
    大人たちを信用できない中学生たちは自分たちの力で本当の真実を
    探ることを目的とした
    前代未聞の「学校内裁判」を開くことを決意する…。

    とにかく真実が知りたいがために
    読者を読み続けるしかない状態に誘う「抗えない吸引力」と
    宮部さんお得意の、一人一人のキャラの行動や心理描写を詳細に詳細に描いていく群像劇の妙は、
    さすがベテランの一言。

    警視庁捜査一課に所属する父と司法書士の母を持つ主人公の出来過ぎ少女(笑)、藤野涼子や
    涼子に密かに思いを寄せる
    ひ弱でおとなしい少年、野田健一、クラスの不良グループのリーダー、大出俊次(おおいで・しゅんじ)、脳天気キャラの倉田まり子や
    涼子の友達で演劇部に所属するクールビューティー、古野章子(ふるの・あきこ)、自分の容姿に嫌悪感を抱く嫌われ者の三宅樹理と肥満体質で心優しい浅井松子、そして他校の生徒ながら大出俊次の弁護人に立候補した謎の少年、神原和彦(かんばら)などなど、真実に向かって突き進むスーパー中学生たちのひたむきで眩しいこと。
    スーパー中学生とあえて書いたように(笑)、あまりに大人びた思考や老成した口調に正直違和感は否めないけど、それでも彼、彼女らの純粋な思いや苦悩は充分過ぎるくらい伝わってきて、祈りにも似た気持ちで読み続けた。

    クラスメートが死んだのに泣けなかった自分と、心とは裏腹に相手に流されてしまう自分を自己嫌悪する涼子のシーンや
    愚かで身勝手な親に振り回され、
    自由になるために危ない計画を立てる野田健一の葛藤、胸を刺す三宅樹理の咆哮、
    そして神原弁護人による三宅樹理に聞かせるための大出俊次への厳しい尋問シーンには本当に心震えた。

    検事役の藤野涼子や弁護側の神原和彦の素晴らしさはもとより、
    首にあせもを作りながら判事役を全うした井上康夫のなりきりぶりには笑ったし、
    廷吏役の山崎晋吾の凛とした紳士っぷりもなんとも頼もしく安心感を与えてくれたし、
    個人的には是非ともこの二人に助演男優賞を!(笑)。

    この小説で描かれるのは、世の中の悪意といくつもの嘘と、はみ出し者たちの苦悩だ。
    世の中ではどんなことだって起こりえると身に応えて知ってしまった14歳の心情とは一体如何なるものだったんだろう。

    けれどもこの世界からはみ出し、逸脱していることに苦しむのにはちゃんと意味があるし(若いうちにはそれが解らなくても)、
    詩や表現のように逸脱しないと掴めないものや
    苦しんだ中からしか生まれないものがあると僕は信じている。
    勿論こんなスゴい中学生なんて実際にはいない。しょせん小説、たかが物語だ。だけどもたかが物語に僕たちの心は震え、どれだけ心が揺れ動いたかで人の心が作られるなら、これだけいろんなことを考えさせてくれる小説もそうそうないと思う。

    本来ミステリーというジャンルは人間を書くのに最も有効な手段だけど、この作品は本格的なリーガルサスペンスであり、優れた青春群像劇であり、良質なビルドゥクス・ロマン(主人公たちの成長を描いた小説)としても楽しめる読み応えのある作品に仕上がっているので、
    僕のようにいつの間にか宮部みゆきの作品から離れてしまった人にもオススメだし、
    登場人物たちと同じ年代の悩める学生にこそ、読んで何かを感じて欲しい。
    心震わす、「たかが物語」の力をじかに感じて欲しいと切に思う。

  • 第一部ではそれぞれの登場人物の視点で事件を追いかけてきた。
    第二部では検事と弁護人が証拠集めに奔走した。
    そして、第三部は事件の関係者が法廷で語り出した。
    検事と弁護人は証拠になる答えを引き出そうと巧みに質問する。
    証人は勝手に語ることは出来ない。聞かれたことに答える。
    陪審員はそれをじっと聞き、判決を下す。

    そうか、裁判て聞くことなんだな…。
    遅ればせながら気付きました。
    陪審員になった生徒達には検事や弁護人とはまた違うすごさがある。
    ぶつかり合うそれぞれの主張を聞いて、信じるに足る真実を見いだす。
    すごいことだ。

    物語の結末に良いとか悪いとかはない。
    そこはようやくたどり着いた場所であり、次の一歩を踏み出すスタート地点なのだ。
    物語には未来がある。そのことを嬉しく思える小説だった。

    書き下ろしの「負の方程式」には思わずにやり。
    藤野さんは強い(笑)

  • この作品はあまりに素晴らしく、読了後、心の中に感動の嵐が吹き荒れた本だったので、文庫版にもレビューを再掲載させていただきます。

    私の数多あるレビューの中でも、何度も何度も本を読み返し、性格的にすぐ茶化したくなるのを懸命に堪え、気合をいれながら、かなり真面目に事細かく書いたレビューですので(笑)。

    単行本を読んでのレビューなので、第三部「法廷」全体の感想になっています。
    ご了承ください。<(_ _)>


    “終戦記念日は、毎年必ず、よく晴れる。(略)開廷時間は午前九時である。礼子は余裕を持って支度をした。衣服は簡素な麻のスーツを選んだ。”

    第三部『法廷』のこの書き出しを読んで胸が躍った。
    読んでいる自分自身も、何を着ようかと身支度を整えたくなり、思わず背筋が伸びた。

    ついに中学生たちによる学校内裁判の開廷である。
    これまで第一部、第二部で1400ページ以上に渡って展開された事実の裏に何があるのか、長い物語がこの第三部で終わりを迎え、法廷で真実が明らかになる。
    考えただけでも、ページを捲る指先に力が入った。
    ここまで読者を引っ張ることのできる宮部みゆきの筆力、さすがである。

    ──そして。
    何度かの休憩をはさみながら、700ページ余りを読み終え、感動的な小説に出会えた幸運と満足感で一杯になった。
    読んでいる最中、早く結末を知りたくもあり、逆にまだまだこの物語を読み続けたくもあり、心が揺れた。
    たくましく成長した少年少女たち。立派な裁判だった。みんなが素敵だった。
    よくやったと、肩を叩いてやりたくなるような生徒たちだった。
    この素晴らしき中学生たちに拍手を送りたいとも思った。

    個々のページから途中までの印象を語れば。

    :誇らしいのだろうと、礼子は思った。
    ──私も同じ気持ちだった。この物語の中だけの架空の生徒たちがまるで実在するかのように、彼ら彼女らが誇りに思えた。

    :「<人生に意味はあるのか>。<人間は何のために生きるのか>。<死は本当に誰にとっても平等なものなのか>」
    ──柏木則之が卓也と交わしたと言うこの議論は、まさにこの作品の本質的なテーマであり、私たち読者への問いかけでもあると思った。

    :「兄さんなんだからもっと大人になれとか、きれい事を並べて僕を否定せずに、僕のわがままを丸ごと受け入れてくれました。それがなかったら、僕はどこかで道を踏み外していたろうと思います。つまり、家の外で問題を起こすとか」
    ──柏木則之の祖父母に対するこの感謝の発言は、問題が起こった時に誰かが支えてくれなければ、どんな人間でも誤った方向に進んでしまう可能性を示唆している。それを阻止するためにも親子でも兄弟でも先生と生徒でも正確にその人間の状態を把握してくれる存在が必要なのだと。
    現在起きている実際のいじめによる自殺の問題でも、誰かどこかに心打ち解けられる理解者がいれば、それを防ぐ方向に持っていけるのではないかと。

    :「人間の愚かさについて考えるならば、それは正しいことと間違っていること、善と悪について考えることになります」
    ──これもまた、この作品のテーマであろう。それを追求するためにもこの裁判の存在理由があるのだから。

    :「教師からは管理教育というひとつの物差しで測られ、選別され、生徒同士のあいだでは、容姿や身体的能力や人付き合いの上手下手でまた選り分けられ、排除されたり攻撃されたりする。そこには確かに“悪“がありますが、誰もそれを”悪“とは名指ししない」
    ──丹野先生のこの言葉はまさに現在の学校の実態を端的に表現している。みんながそこから目を背けようとするから、いまだにイジメはなくならないし、それによる悲劇的な自殺も起こるのだ。

    :「学校からは出ていっても、世界から出てゆくのはまだ早い。世界のどこかには絞首台のない丘があるはずだと、彼に言いたかった」
    ──柏木卓也に言いたかったというこの言葉はぐさりと胸に突き刺さる。そういう希望がどこかにあるはずだと、わたしたちは悩む子供たちにしっかり教えていかなければならないのではないかと。

    :「お辞めにならないでください。柏木君のように、先生と一緒に画集を見たり絵の話をすることで学校のなかに居場所を見つける生徒が、ほかにもいるかもしれません。そんな生徒には、先生が必要です」
    ──丹野先生に呼びかけた涼子のこの言葉には不覚にも涙が零れた。

    ──さらに、弁護人神原和彦の正体が明らかになる終盤。
    ある程度推測されたことではあったが、それはこの物語の主題ではない。
    そのことの持つ意味。彼の行動が何をもたらしたか。結果的にそれは良かったのか、悪かったのか。
    それらにも触れながら、陪審員となった九人が究極の答えを出す。
    大岡裁きとでも言えるような、傍聴人を、そして読者をも唸らす見事な裁定、判決だった。
    それは事件発生の雪のクリスマスイブから約八ヶ月、少年少女たちの誰もが成長したことの証でもある。

    あんなにか細く弱弱しかった野田健一も。
    傲慢でどうしようもない不良少年だった大出俊次も。
    嫉妬と羨望と憎しみの塊だった三宅樹里も。
    あっちに揺れ、こっちに揺れしながら、移り変わったそれぞれの心情。
    第一部を読み始めたときとは明らかに彼らの印象が変わっていた……。

    設定はバブル時代の1990年。
    それもその終焉を大人たちはうすうす感じつつある時期。
    携帯もない、メールもない。だから公衆電話や家の電話が謎解きのパーツとして重要な意味を持つ。
    『構想15年、執筆9年! 宮部みゆきさん最新長編現代ミステリー。小説家デビュー25周年を迎えた宮部みゆきの新たなる代表作』。そのようにブクログでは紹介されている。
    そうか、あれから25年も経つのか……。
    彼女の実質的なデビュー作である『パーフェクト・ブルー』からは23年。
    そのストーリーテラーとしての卓越した文章。社会問題に根ざしたテーマ設定。ミステリーとしてのスケールの大きさ。それらすべてに舌を巻き、ものすごい新人が現われたものだと思った。

    その後、『魔術はささやく』『レベル7』『龍は眠る』など彼女の作品が立て続けて刊行されるたびに感動と驚愕を覚え、虜になった。
    思えばあれはバブル真っ盛りの時代。
    今回、この超大作がバブル時期の設定なのは、彼女自身、自分のデビュー時を思い返し、何か感ずるところがあったのかもしれない。

    この作品を読了後、余韻を楽しむために、別の小説に取り掛かるのは少し間をあけることにした。
    『本読み』の一人として、この素晴らしき大作を読み終えた充実感、満足感を大切にしようと。
    友のために、或いは自分のために、ひたむきに真実に立ち向かう大切さを教えてもらった。
    この作品を書いてくれた作者と作品に登場した素晴らしい少年少女たちに感謝です。
    最後に、この少年少女たちが高校生になってさらに成長した物語を読みたいなと、ふと思った。

    追記:第一部『事件』を読み返しているのだが、145P(単行本で)に大きな伏線、というよりのちのち重要になる大事な文章があったことに気付いた。
    ここに、神原和彦の思いを推測できるヒントが書かれていたのですね、なるほど。すっかり頭の中から消えていました。
    このシーンを思い出せば、彼がどんな思いを抱いてこの裁判に臨んだのか、大体は気が付くようになる。
    一言一句無駄な文言や表現はないうえに、ものすごく綿密に練られた構成でこの小説は書かれているのだなあと思いました。あらためて宮部さんに脱帽です。
    最後まで読み終えて、その部分を思い出せなかった方は是非『第一部』の145Pを読み返してみてください。

    ※再追記:この小説を読んで法廷推理物に興味を持たれた方に、かなり古い作品になりますが、高木彬光 の「破戒裁判」をオススメします。
    この本とは毛色が違いますが、日本における法廷推理小説の草分けで、最後、真実が明らかにされた時、思い切り泣けます。
    「破戒裁判」下記をクリック。
    http://booklog.jp/item/1/4334740820

  •  徐々に明らかになっていく柏木卓也の人物像、裁判を決定づける証言、裁判最終日に検事・藤野涼子が召喚した最後の証人。そして判決が下される。

     最終巻、特に最後の証言者の語りにとにかく圧倒されました。読んでいて憤り、恐怖を感じ、悲しくなり、切なくなる、
    そんな風に、ありとあらゆる感情が自分の中に現れては消えていき、時には渾然一体となり読んでいて自分が今何を感じているのか、何を思っているのかすらも分からないままページをめくり続けていた、そんな気がします。

     単純に言ってしまえばある人物がむき出しにした悪意の話なのですが、その悪意というものは蔑み、軽蔑、差別という自分の心のどこかにある誰にでも普遍的な悪意であること。
    そして、その悪意にプラスしてこの年代の子どもが持つ一種の大人への不信、社会への不信、プライドなどといった自分にも身に覚えのある感情が事件の根底にあったことが分かると、
    その悪意が決して理解不能なものではなく、もし一歩間違えれば自分もこの悪意を持ちえたのかもしれない、と思ったが故の憤りであり恐怖だったのかもしれません。
    そしてその悪意に立ち向かった少年の感情も想像すると読んでいてあまりにも苦しい…

     しかしその後陪審たちが評決を下すため審議に入るのですが、きちんとそうした悪意と今までの裁判の経過と向き合い真実だけでなく、その悪意が向けられた人物まで救おうとしていることに読んでいて救われた思いがしました。

     それはきっとこの裁判が陪審はもちろん検事も被告人も弁護人も全員が一から自らのために、この裁判を作り上げてきたからだと思います。真実の探求と共にそこで生まれた一体感、友情が評議から判決までに表れていたと思います。

     三宅樹里の話も皮肉だったなあ、と読んでいて思いました。自分が今まで抱えてきたいじめの痛みや苦しみ、悔しさが初めて認めてもらえたのが家族でも同級生でもなく、他校の生徒だった、ということです。

     この本のハードカバー版が発売される前に大津いじめ事件がありました。それもあってか、大津事件とこの本の関連が指摘されることも多かったのですが、
    1~5を読んでいく中で学校の隠ぺい体質や中学生が立ち上がるなど似ているところはあるものの、大元のいじめについてはあまり似ている風には見えないよな、となんとなく思っていました。(そもそもいじめが主テーマでもないですしね)

     ただ樹里のいじめで感じた痛み、苦しみ、悔しさが法廷で証拠として採用される場面を読んでいて、
    今までいじめ自殺をしてきた少年や少女はきっと死んで、遺書を残すことでしか自分の声を取り上げてもらえないと思い込んでいるところまで追い込まれていたのかな、
    と思いました。だから彼女の認められてこなかった苦しみをきちんとすくい上げたことは彼女を大きく救ったのだと思います。

     この経験を通して大きく変わった印象のある樹里ですがそれは被告人の大出俊次にも言えることであって、
    元々この事件で悪い印象の強かった二人の変化と成長をしっかりと描き切っているあたりもさすが宮部さんだな、と思います。

     宮部さんは決して都合のいいラストや登場人物に手心を加えるような甘い人ではないけど、それでも優しい人なのだな、と読んでいて感じました。

     判決が近づいてくるうちに徐々に自分の中で空虚感が大きくなってきたのですが、
    それはもうすぐこの登場人物たちと別れなければいけないのだな、という寂しさがあったからのような気がします。

     全6巻、事件の発生から裁判の準備、そして判決と中学生たちが必死に戦っている様子を読んでいるうちに
    自分も彼らと一緒に戦っているような戦友のような感情を持っていてしまったのかもしれません。そして彼らと一緒に人間の底知れない悪意と戦ったという経験もあるからかもしれません。
    とにかく読み終えてしまうのが本当に寂しく感じてしまいました。

     そして登場人物たちのその後についても触れすぎないもの宮部さんらしいですね。最後に2010年に舞台が移るのですが、それなのに裁判後の登場人物たちのことを話してくれない(笑)

     非常にもどかしくもあるのですが、安易に登場人物のその後を語らないからこそ、この裁判に関わった中学生たちの記憶が自分の心の中に刻み込まれたような気がします。

     そして本編終了後、書下ろしの中編「負の方程式」が収録されています。こちらでは大人になった藤野涼子が再登場。『誰か』などに登場している杉村三郎とも共演するとても特別なエピソードです。

     まだ自分は杉村三郎シリーズは『誰か』しか読んでいないので、それのネタバレ的なところがあるのはちょっといただけなかったですが…(杉村三郎シリーズを知らなくても読むのに支障はありませんが)、
    単に二人を共演させてファンのご機嫌をうかがいました、なんていうぬるい作品ではなく、こちらもしっかりと人間の本質的な支配欲というものを描いている秀作となっています。

     個人的にはこんな感じで藤野涼子の短編集も書いてくれるとうれしいな、と思ったりしています(笑)

     それにしてもこんな風に杉村三郎に再登場されるとまたそっちの作品も気になって追っかけなくっちゃいけない…。それは全然上等なのですが、宮部さんに巧いこと掌の上で転がされているような気がします(苦笑)

     話は逸れましたが間違いなく名作です! 解説にもありましたが本当にあらゆる年代の人に受け入れられる作品だったと思います。改めて宮部さんには一生ついていこうと思いました!

    2013年版このミステリーがすごい!2位
    2013年本屋大賞7位

  • 文庫6冊一気読み。一人の少年の死を巡って、中学生たちが真相にたどり着く、主に夏の物語。主人公涼子や、友達などは前向きで一生懸命な中学生として書かれている。でも、事件に関わる人の家庭の事情とか、主に負の心情とかが細かく書かれていて、人の自分勝手さとか、弱さとかが突きつけられた作品だった。
     結局起こった事件は1件(後に事故とか傷害はあったけど)で、次から次へとスリリングな展開があるわけではない。でも最近じっくりと心情や背景を書き込んだ作品に興味がある。これって北欧ミステリーに似ているところがあるなあと思う。

  • あぁ、読み終わってしまった・・・
    もちろん長いのですが、6冊もあるほどのボリュームは感じさせない。あっという間だった気がします。

    第Ⅲ部はいよいよ始まった裁判。
    もう本当に自分も傍聴している気分で読み進められるほど没頭し、引き込まれ、終わった時には安堵のため息が出ました。

    事の真相は、読んでいればなんとなく想像する通りなのですが、そこに至る過程にゾクゾクしました。
    ただ真相だけを言えば、大出君への判決は予想通り、電話ボックスの少年も予想通り。だけどそんな結果だけの話ではなく、本当にこの裁判をやって良かったなと思える結末でした。

    不幸な事件が色々と起こっているので、手放しでハッピーエンド!とはなりませんが、考えうる中で一番いい結末だったんじゃないかなぁと。やっぱり宮部さんは優しい方なんだろうなと思いました。柏木君側(特に両親)から見ると辛い結果かもしれませんが・・・
    でも柏木君も、反論したければ死んでしまってはダメだと言う事。

    登場人物が多いけれど、各々の心情がとてもよく描写されていて胸にずっしり来ました。
    みんな考えて考えて、傷ついて、それでも真実を求め、その結果大きく成長した。

  • ああ、久々の宮部節。
    京極夏彦の謎解きが、「ふふふ、実はこうなっていたのだよ、ほうら!」と一気に風呂敷の中を広げて圧倒させるのに対し、森博嗣の謎解きが、「ここまでは教えてあげましょう。あとは自分で考えてね」と先生に宿題を出されたような気持ちになるのに対し、宮部みゆきの謎解きは「そう、こっちで合ってるよ。おいで。一緒に見よう」と招かれるような。
    推測ですが、読んでいるひとはみんな、同じようなタイミングでオチに気付かされるのだと思います。そしてそこから始まる怒涛の宮部節。急き立てられるように、坂道を走るようにして、どんどんと視界が開けていく感覚。そして明かされる謎。
    視界が開け切ったその場所に置いてきぼりにしないのも、宮部節。感情的に、納得のいく時間をくれるというか、「さあ、もう帰ろう」と手を引いてくれるような最後。
    「僕たちは、友達になりました」で涙しました。
    唯一、気になったのは、本当の意味での事件の被害者の女の子。彼女が命を落としたのは、一体何のためだったのか。理不尽極まりない。彼女のことを思うと、やるせない気持ちが残ります。どうしてもそこだけが消化不良だったので、星は4つ。

  • 2015/5/30読了。

    読後、ため息が一つ。
    最後は思っていたよりも、あっさり、という気がしたけれど、賢く心優しい中学生とともに過ごした時間は貴重だった。

    こんなしっかりした中学生がいるんだろうか?
    高校生の話にした方が良かったんじゃないか?
    …と思ったこともあったけれど、
    これは山を一つ乗り越えた高校生ではなく、まだ山登りの途中で道に迷い、道を見失っては頑張ろうとする中学生だからこその話なのかもしれない。

    最後も優しい終わり方で、思わずポロリ。
    みんな元気で頑張っているかな。

    もう一度読み返したい。長い話だけれど、そう思わせるほどの力を持った作品だと思う。

  • 読み進めながら中学3年だったときの自分のクラスを思い浮かべた。大出のような暴力的なやつ、柏木みたいに斜に構えたやつ、藤野みたいに賢いやつ、野田みたいに目立たないふりをしてるやつ、松井みたいに優しいやつ、三宅みたいに敬遠されてるやつ…。ただやはり神原和彦みたいなやつはいなかった。これが物語の底流に流れていた不穏な空気感を演出していた。この物語は、嘘をつかずに自己と向き合い対話し、同じように他人に向き合い対話することが、いかに大切なことかを教えてくれる。嘘は何の幸せも生まぬということを。

  • この3ヶ月、ずっと楽しみにしていましたが、遂に終結。全6巻にわたる壮大な、隙のない構成に感服。これだけの内容を中学生が主人公の模擬裁判を舞台にすることには当初疑問があったけど、最後まで読んでみると主人公が中学生ではなければならない理由、ホンモノの法廷ではなくて中学生の『夏休みの課題』の裁判でなければならない理由がよく分かった。もう少し欲を言うならば、大どんでん返しが途中で推測できてしまう演出になってたので、最後まで分からない方がよかったかなあと。中学3年生という子供と大人の境目に立つ登場人物たちの心情が詳細に描写されていて、のめり込める大作でした。

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ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)の作品紹介

ソロモンの偽証は宮部みゆきさんが書かれた長編ミステリー小説です。
第Ⅰ部、第Ⅱ部、第Ⅲ部の三部構成の作品です。第III部 法廷 下巻は宮部みゆきさんが作家人生25年の集大成として書かれた現代ミステリーの最高峰の完結編です。20年後の偽証事件が描かれている書き下ろし中編の負の方程式が収録されている一冊です。

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