荒神 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (688ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101369419

感想・レビュー・書評

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  • こちらも会社の先輩にお借りした一冊。
    これがお借りした最後の本。

    宮部みゆき先生、超久しぶり(^◇^;)
    若い頃、それこそ20代の頃はムキになって宮部先生を読み漁っていたが、時代モノが苦手でしばらく遠のいていた。

    お借りしたものは全て読む!
    きっとこれもご縁。興味がなくてもとりあえず最後まで読んでみる。


    こちらの本も時代モノ。
    私苦手なんだよなぁ。。。歴史がからっきし苦手で。。。
    藩だ、何だの言われてもさっぱり知識がない(-。-;

    というわけで、物語が起動に乗るまで読みにくいことこの上ない(-。-;

    先輩は途中で読むのを放棄されたのこと(^◇^;)
    気持ちわかるわー。
    やめたくなるわー。



    時は元禄の半ば、元禄っていつよ?ってレベルの私(笑)
    東北小藩の山村が、何物かに襲われ、一夜にして壊滅状態になる。

    隣接する二つの藩は常に敵対状態であった。
    そのような場所に突如現れた化け物。

    また、化け物が現れた頃、奇妙な病が流行り出していた。


    最初は設定の説明が長く、時代小説は全く頭に入ってこない(-。-;
    意味わかんない。想像出来ない。。。
    こりゃ無理かなぁ、、、
    って諦めかけた頃、話が進み始める。


    話が進み始めると、そこからはどんどん加速していく。
    最初の5倍?10倍?の速度で読み進められる。

    登場人物が兎に角皆味があって格好良い。
    朱音は最初から北川景子さんのような、キリっとした女性をイメージした。

    蓑吉の成長も素晴らしいが、宗栄、直弥、謎の絵師、圓秀、それぞれが皆かっこいい。

    食わず嫌いだが、時代小説も素敵な物語が多いのだろうなぁ。。。
    が、やっぱり苦手は苦手(^◇^;)

    • おびのりさん
      bmakiさん、こんばんは。
      私も実は時代物は、得意ではありません。
      日本史ポンコツなので。
      そして、この作品は、私もなんだかしっくりこなか...
      bmakiさん、こんばんは。
      私も実は時代物は、得意ではありません。
      日本史ポンコツなので。
      そして、この作品は、私もなんだかしっくりこなかったんですが、kumaさんのレビューを読ませていただき、びっくり!東北の震災への想いが入っているようなんです。
      作家さんって、すごいですよね。
      2023/10/28
    • bmakiさん
      おびのりさん

      こんばんは。
      はい、kumaさんのレビュー読ませて頂きました(^^)

      なるほど、あの怪物の出自はそんなところから...
      おびのりさん

      こんばんは。
      はい、kumaさんのレビュー読ませて頂きました(^^)

      なるほど、あの怪物の出自はそんなところから!
      作家さんの着眼点、本当に凄いですね!

      今、おびのりさんの狂骨の夢で土瓶さんがおすすめ下さった本を、漸く読み始めました。久々の榎木津に心ときめいています(*^▽^*)
      2023/10/28
  • 怪物もののパニックホラー時代小説!
    まさに宮部版「もののけ姫」という感じ(笑)
    さらには、「ナウシカ」をも思い出しました。

    元禄時代の、東北での物語。
    山の中、隣り合って問題が絶えない永津野藩と香山藩。怪物と思われるものに襲われた香山藩の村から逃げてきた蓑吉は永津野藩の朱音のもとで救われます。
    襲われた村の惨状。
    永津野藩と香山藩との確執、
    怪物の正体は?
    怪物から村を救うことができるのか?
    一方、朱音の兄の弾正はその怪物を戦の武器にしようと画策。

    というところから、激しい戦闘シーンてんこ盛り
    そして、怪物が生み出された秘密と明かされる朱音の出生の秘密

    怪物をやっつけることができるのか?
    そして生き延びることができるのか?

    その背景には人間の業があるのかなと思います。
    ちょっと深い

  • 関ヶ原の戦も過去となり、多少の諍いはあるが、太平の世となった日本。東北地方の二つの小藩の対立が続く山村。突然、一夜にして一つの村が壊滅する。逃げ延びた少年が、村を壊滅させた恐ろしい怪物を語る。
    時代設定とか登場人物像とか、さすが宮部さんと読了はしたけれど、ただのファンタジーではないでしょうと数日放置していた。
    恐ろしい怪物は、巨大で重く、柔らかく硬い、ぬめりとして速い。身体が蝦蟇で脚が蜥蜴尻尾が蛇。これが、人の呪術によって作られたというところに意味があるのだろうと思ってはいた。皆さんのレビューを読んで、なるほどと。そして、原発事故の投影というKumaさんのレビューに感嘆しました。震災が2011年、朝日新聞掲載が2013年から。
    一夜にして街を壊滅した人の作った魔物。砦で怪物を押し留めようとする男達は、まるで作業員さん達。怪物の消滅をその呪術に責がある系統の人物に担わせる意味深さ。すっきりしました。皆さんレビューありがとうございます。

    • しずくさん
      おびのりさん、kuma0504さん、コメント返信をありがとうございました。
      お二人のコメントを拝見しているうちにある映画が浮かんできました...
      おびのりさん、kuma0504さん、コメント返信をありがとうございました。
      お二人のコメントを拝見しているうちにある映画が浮かんできました。
      韓国映画(2006年作)グエムル-漢江の怪物-。
      17年前に観た時は核に対する警鐘から、放射能汚染によりグエムルという途方もない怪物が現れたと他愛もない想像で終わらせていました。
      しかし、今回あらためてググってみると
      『監督のポン・ジュノが2000年に在韓米軍が大量のホルムアルデヒドを漢江に流出させた事件をヒントにした社会風刺。また、作中に登場する「エージェント・イエロー」という化学兵器は アメリカ軍がベトナムで使用した枯葉剤「エージェント・オレンジ」に掛けており、アメリカ軍を風刺したものである』
      と説明されていました。
      隣国の韓国での事件を知らないまま鑑賞していたということですね。17年の時を経て知りました・・・。

      >芸術作品の大きな役割の一つに、みんなが体験している大きな事件を自分の内面に落とし込みそれを再構成する仕事もあるのだろうと思います。
      >ストレートに表現された小説よりも、より一層深層に迫れると思いました。

      同感です!
      2023/04/25
    • おびのりさん
      しずくさん、映画情報ありがとうございます。
      そんな作品があったんですね。気が付かないだけで、多くの作品にメッセージがあるんでしょうか。
      日本...
      しずくさん、映画情報ありがとうございます。
      そんな作品があったんですね。気が付かないだけで、多くの作品にメッセージがあるんでしょうか。
      日本もアイドル主演の映画から脱却して欲しいです。
      私は、今は図書館予約の本が中心で、人気作は予約数が多いので、文庫化がされている作品を読んでいるのですが、時事や時代の反映を考えると、タイムリーに読むべき作品もありますね。
      2023/04/25
    • kuma0504さん
      しずくさん、こんにちは。
      ちょうど日本の映画公開の直前に、漢江を歩いたので、その時の記録をコピペします。
      私の韓国旅と映画の印象では、韓国民...
      しずくさん、こんにちは。
      ちょうど日本の映画公開の直前に、漢江を歩いたので、その時の記録をコピペします。
      私の韓国旅と映画の印象では、韓国民は反日よりも反米の方が、より熱いという印象があります。そういう雰囲気も嫌韓に染まっている日本人には見えにくい。

      (以下コピペ2006年9月記入)
      親しくお話した韓国在住の二人は二人とも見ていて、二人とも「面白い」と太鼓判を押していました。いちおう舞台の漢江を散歩しました。映画をまだ見ていない段階だったので、地下鉄駅からでて、すぐみえる国会議事堂と公園との対比を頭に刻んだのですが、あんなに近いのにこの映画では一切出て来ませんでした。米軍の毒物不法投棄から生まれた怪物ですが、社会に対するこの監督の視線は病的なほどに冷めています。

      河岸を歩きました。コスモス花畑では恋人が記念写真をとり、、遊覧船がゆったりと往来し、ちょうど天気のよい日曜日だったので、家族連れも多くローラースケートする人、河を眺める人、まさに映画の雰囲気そのままでした。まさか売店があれほど重要な舞台になるとは思わなかったので、写真に撮ることも買い物もせず、大変残念です。

      怪物造形の見事さ、スピード、韓国らしい「親族」愛、ハリウッド的な予想を裏切る展開、見事なキャラ造形(ただしぺ・ドゥナのみは不満)、一級のエンターテイメントである。
      2023/04/25
  • 大作だ。pー565 単行本で読むには
    腕も手も痛くなる。
    登場人物を時々見ながら
    永津野藩 主藩ー☆竜崎家ー
    津ノ崎城
    名賀村


    香山藩 支藩ー☆瓜生家ー
    御館
    仁谷村
    本庄村
    御館町
    同じ藩でありながら、永津野と香山反目していた
    また、村を超えると捉えられ匿ったものも、すべて
    村ごと焼きつかされてしまう

    長編で昔からの深い因縁と
    想像だにつかない恐ろしい「こんな単純な言葉では言い表せない」ことが起こる

    仏法には
    依正不人ニという教えがあり
    正法ー我々の心
    依方ーそれを取り巻く世界、環境
    は一体で
    心が汚れてくると
    周りも汚れ、飢饉、疫癘、地震、災害が頻繁に起こる
    人身は地に落ち不幸になる
    そのことをこういう形で表されてると思った

    お家争い、呪い、呪詛
    山の神はその汚い呪うべく心を溜め込めて
    あるとき突然
    村の人たちを呑む
    信じられないことが厳然と起こる
    見てないからないのではなく
    あるものはある。
    宮部みゆきの警鐘?穿ち過ぎ?

    まぁ何もわからない私めのレビュー?
    笑止千万で見過ごして!

    これだけのオドロオドロしい、恐ろしいことに出会うと人は腑抜けになる
    今でいうPTSD?
    本文よりー
    絵師
    菊池圓秀はあまりの怖いこれを見たことによって
    腑抜けになり奇行をし
    ある時正気に戻り絵を完成させその場で突っ伏して果てる
    その絵は傑作だがこの世にあってはならぬもの、
    人が目にしてはならぬものを描いてる
      だから後世、この絵を見た者は誰もいないー
    と終わる。

    曽谷弾正と妹朱音の悲しすぎる話
    最後に朱音の優しさが救いだ。

    時代と場所とどんなに変わろうと
    人間は同じ
    苦しいことも一緒、悲しいことも

    今の世も平安ではない
    苦しいこと、不安なことも多い
    100年前と同じようにコロナ喎
    一寸先は闇。
    どんな災難大過が人を襲うかわからない
    現実起こっている
    いつになったらみんなが幸せな安穏な暮らしができるのだろうか?
    民度はいよいよ下がり
    心は腐敗、荒れている
    朱音のように〜
    優しさはどこに行った。、やはり宮部みゆきは
    大した者だわ。
    そしてなおかつ
    それぞれの登場人物をこうまで生き生きと、
    存在させ
    手に取るようにわかる
    今やこの中に入り込み弾正に朱音に蓑吉に
    おせんにやじに
    魅入られてしまう。
    一緒に怯え泣き、喜び安堵し〜
    この描写はいつもならの宮部みゆきの筆力
    表現力ー凄すぎる
    読者を魅了して「こうじんの世界」へ誘う










     

  • 宮部さんの新たな挑戦から、またしても生まれた傑作でした。

    デビューから30年以上が経っても、未だに宮部みゆきさんの世界は広がり続けていると思います。
    「杉村三郎シリーズ」のように、徹底的に人の悪意を見つめたかと思えば、『小暮写真館』『ソロモンの偽証』のように、中高生を主人公にしたり、『悲嘆の門』『過ぎ去りし王国の城』など超能力や異世界などの、超常的なものまでもミステリーの物語に組み込む。

    それは時代小説でも然りで、連作短編の形式で怖いもの、切ないもの、ちょっとほっとするものと、多種多様な怪談話を重ねていく「三島屋シリーズ」
    時代小説にサイコサスペンスの要素を取り入れた『この世の春』とあって、この『荒神』でも、また違った宮部さんの時代小説の姿が現れてくる。

    深い対立を抱える永津野藩と香山藩。その二つの藩の国境間際にある村が、一夜にして壊滅してしまう。香山藩の小日向尚也が村で見た光景は、想像を絶するものだった。
    一方、その村から逃げ出した少年は、永津野藩の村で命を救われる。永津野藩の藩主の側近曽谷弾正の妹・朱音は少年の話を聞き、恐るべき災厄が身近に迫っていることを悟る。

    大枠で見るなら時代小説。そこにパニックホラーと伝奇小説の要素がふんだんに取り入れられ、さらに激しい戦闘シーン、類を見ない怪物の脅威に禍々しい描写と、自分がこれまで読んできた宮部みゆき作品とは、また一味違う激しい場面もてんこ盛り。まさに大スペクタクルという呼び名が相応しい。

    それでいて、時代小説ならではの設定が光る。歴史的に対立を抱えた二つの藩。その歴史を紐解くと、関ヶ原の戦い以降の諸侯と幕府の治世や思惑が浮かんでくる。そうした歴史的な出来事をうまく絡めつつ、二つの藩の対立から、怪物が生み出される経緯、そして、物語のカギを握る朱音の出生の秘密にまでつながってくる。

    壮大なほら話でありながら、設定の作りこみと書き込みは、他作品に負けず劣らず。荒唐無稽な話だからこそ、詳細がより練られていて、物語に現実味が増す。その書き込みも「さすが宮部さん!」というべきか。

    一方で登場人物の描き方は、いつもの宮部さんらしくて安心できる。優しさと、自身の兄の非道な行いとの間で揺れる朱音をはじめ、たくさんの登場人物が、義や人のため決死に行動する。人の強さと優しさが感じられます。

    そして描かれる人の暗い部分。怪物がなぜ生み出されたのか。そして朱音の兄・弾正が抱えた心の闇をはじめ、物語の要所、要所で人の心の闇が現れ物語を惑わせる。ここの話の流れもさすがの一言に尽きる。

    ミステリのように、物語のすべてにキレイに決着がつくわけではありません。秘密のまま、葬り去られたことや、登場人物の推測でしか語られないこともいくつかあります。
    それでも、モヤモヤ感は個人的に感じなかった。秘密の部分、闇に葬られた物語の余白。それが、大きな力に翻弄され続ける人々や、世界のままならなさと哀しさを映し、物語に静謐とした余韻を残す。静かな風が、心の中でスッと過ぎ去っていったような、不思議な感情が読後に残りました。

    宮部さんが描く人間の心理や優しさ、そして悲劇というものは、大枠としては変わらないと思います。ただその表現の仕方の引き出しが、本当に幅広い。ミステリー、ファンタジー、時代小説、ホラーetc。

    それだけに留まらず、あらゆる物語の可能性が宮部さんの引き出しにはしまわれていて、それを自由自在に取り出し、変幻自在に組み合わせ、一つの作品にまとめられているかのよう。引き出しが多いなんてレベルを超えて、四次元ポケットのように無限に、物語のあらゆるピースが、宮部さんの中にはしまわれているのではないか、とも感じてしまう。

    だから、宮部さんの小説のジャンルは幅広いし、物語の展開も多種多様。でも一方で「宮部ブランド」ともいえるような、宮部作品が持つ雰囲気というものは、どの作品でも常に纏っているようにも思えます。それが宮部さんの人間への視点であって、優しさでもある気がする。だから史実の流れを汲みながらも、呪術や怪物といったトンデモ要素も組み込まれる、この『荒神』も自然と受け入れられ、そして読まされる。

    『どこまで行くんだ! 宮部みゆき』

    文庫版『小暮写真館』の帯に書かれていた言葉。まさにその言葉通り、宮部さんは進み続け、この『荒神』という作品も生まれたのだと、そう強く感じました。

  • 今年夏の宮部みゆきはコレ。まさかの怪獣小説でした。発表は、「シン・ゴジラ」よりも2年早いので、原発事故を怪獣に代えるのは、宮部みゆきが最初ということになろうか。解説において「シン・ゴジラ」の特殊撮影監督の樋口真嗣さんがつくり手として映画化を挙手しています。どころが、帯にはそれとは別方面なのか、「NHKドラマ化決定!」の文字が。悪い予感しかしないのですが。

    宮部みゆきはつくづくスティーブン・キングの愛弟子だと思う。現代サスペンス、SFから時代小説、ホラーをエンタメとして仕上げて秀逸。そしてそれらを我々に提示する時に、最も判りやすいのが「怪物」小説だ。キングも確か同じようなモノを書いていたような気がする。

    ともかく、今迄見たこともない怪物を描いて、なおかつ怖い楽しい興味深い、宮部エンタメの極致だろう。

    ともかく、宮部の怪獣(神)は、人間が関わり、それをつくった人々が居なくなる頃に、忘れた頃にやって来て、大きな厄災を起こす。つくった者にとって敵側にも、つくった者にとっても、厄災がやってくる、ということでは原発事故に似ているし、人間というモノの業を写しているとも言えるだろう。それを防ごうとする人たちと、それを利用しようとする人たちと。恨みは形となって、人々を襲うだろう。

    2017年7月17日読了

  • 宮部氏得意の怪物もの。最初は誰が主人公か分からず淡々と進む。絵馬が盗まれた事で怪物の封印が解かれたと思ったらどうも違うようだ。主人公らしき若侍の頭の固さに比べて、従者や旅の侍、怪物から逃れた小僧などの多くの登場人物が柔軟に対処してゆく。途中までは長かったのに怪物は呆気無い程簡単に退治される。それでも幾つか残った疑問や登場人物達のその後も見えず、中々スッキリした読後にはならなかった。

  • 久しぶりに、『物語』を読んだ!、という読後の充足感に浸ることができた。
    時は元禄、相争う永津野藩と香山藩、それぞれの藩の人物たち、謎を思わせる客人、九死に一生を得た村の少年、そしてなにより前代未聞ともいえる怪物。『物語』の面白さ、楽しさに満ち溢れ、著者の類を見ない想像力と創造力が編み出した時代小説の傑作。
    この物語での出来事を、東日本大震災になぞらえることもできるし、「呪詛のちからでつくられた」という怪物を原発と見做すこともできよう。
    「よかれと思い、より良き明日を望んで日々を生きる我々が、その望み故に二度と同じ間違いをせぬように、心弱い私こそが、しっかりと覚えておかなければならない」
    終盤、語られるこの言葉は、東日本大震災を踏まえた、著者からのメッセージではないだろうか。
    いろいろな読み方もできるこの小説、やはり宮部みゆき嬢は類稀なストーリテラーと称賛したい。

  • 宮部みゆきさんの圧倒的な筆力で最後まで読ませる。山の怪物の弱点にいまいち説得力を欠く。

  • 男なら誰でも好きな怪物ものを稀代のストーリーテラーが書いたのだから、面白くないわけがないでしょ!
    宮部みゆきは純粋なミステリーよりもホラーよりの作品にその真骨頂はあると思う。

  • 宮部みゆきさん流の「もののけ姫」というかんじ。
    自由自在な祟り神さま、
    あまりに大暴れするのでびっくり。

    蓑吉がとてもいい子で、
    じっちゃがかっこよくて、
    登場人物たちが魅力的なところがとてもよかった。


    朱音さま、助かって欲しかったなあ。
    後半は面白かったけど、前半がなかなか入り込めなかった。

  • ファンタジー好き、ミステリー好き、時代小説好き、どの立場のファンも満足させる宮部みゆき先生さすがです…

  • 最初は誰が主人公なのか分からなかった。途中の描写は少しグロいところもあったけど、最後は静謐な印象を受けたかな。

    面白かった。

    人に紹介する時、どんな説明が合うのか難しい。

  • テーマは、良かれと思ってやったことが、必ずしもいいことではないということ。
    その時はいいと思っても、時代が変わり、周りも変わってくると、それが悪い方に働くこともあります。

  • 宮部みゆきさんがホラー好きなのは存じ上げていましたが、まさかこの類のホラーを書かれるとは思いませんでした。

    まだ寒さが残る春先の夜、山中の深い森を必死に走るひとりの子供の描写から始まった話は、その子供の故郷である村の謎の消滅を皮切りに、山という、平地とは異なる畏怖すべき場所を舞台に、不気味で不可思議で不安と怖気がじわりじわりと増してくるエピソードを重ね、ついに圧倒的な恐怖が正体を現します。

    その恐怖と人間との戦いを主軸にしつつ、宮部さん、それだけでは終わらせません。

    クライマックスで明かされる恐怖の発端の真相、ラスト近くに語られる一つの推測、自分自身もそうである人間というものに対して、いろんな感情が込み上げてきて、ただただ「うーん」と唸るしかありませんでした。

    ほんま上手いなぁ。

  • 【読間】
    9分の5くらい時点。
    「霊験お初」と「ぼんくら」シリーズの合いの子くらいの、時代劇サスペンスを予想して手に取ったのだけれど・・・

    ところがどっこい、パニックホラーというか、怪獣映画というか・・・・な展開に、口があんぐりと開きっぱなし気味に。それでいて、目が離せないくらいに物語に引き込まれている。このまま一気に最後まで読まねば。

    ※舞台が、故郷の近く♪


    【読了】
    一気読み・・・ではなかったけれど、心のハマり具合はそれに準じるくらいに、面白く読み終えた。

    実は香山藩側の陰謀も何やらかにやらうごめいていたらしい、というのはまあ、よしとしようか。ただし、「伊吉」の正体はもう少しだけでも明かして欲しかったな・・・。

    主人公(?)達の語らいでは「公儀の隠密」となっていたが、クライマックス場面で彼が自ら名乗ったところでは、「北の・・・・・」という描写があった。江戸の指名で動くなら「北の」の冠はそぐわない!!!!!

    それとも、続編があるのか?
    キャラが立ってる登場人物も幾人かおり、上記のように謎を残した者もいるし、続編作ろうと思えば作れなくもなさそう・・・・。


    ★4つ、9ポイント。
    2017.09.25.新。


    ※ついでに、「霊験お初」の続篇も、読みたいな・・・・と。宮部さん・・・・・。

  • 一言で素晴らしかった。本好きで良かったと思うのは、こうした作品に出会えるからである。
    物語自体、飛び抜けて斬新なものではない。しかし、ひとつひとつの背景が綿密で、散らばった伏線が余韻を残しながら、回収されていくのである。この心地よさと驚きにまして、宮部みゆきならではの人物の豊かさと表情が物語に温かみをまとわりつかせる。時代小説家にはかけない、時代小説に思う。読めてよかった。そう思う。

  • 宮部みゆき作品は好きなものが多いのだけど、時代小説は読まず嫌いしていたというか…今回人に勧められて読了。やっぱり時代小説らしい言い回しに四苦八苦して、前半は時間がかかった。
    得体の知れない怪物に人々が翻弄される様は掴みバッチリだったのだけど。

    登場人物たちは各々魅力的で引き込まれる〜!ってなるのだけど、最終的にストーリーが複雑過ぎたかな。香山藩士、小日向直哉の目線で同藩の人物を辿っていくと誰も彼も順当に怪しくなっていって、真実誰が黒幕なのか小日向の憶測で終わった感が拭えなかった。
    そして何より朱音殿には助かって欲しかったな…
    お兄ちゃんに改心して犠牲になって頂いて(笑)
    ありがちなハッピーエンドを期待しすぎちゃってました。

  • o女史オススメ本。
    宮部さん、綱吉公時代の地方の藩のお話。
    得体の知れない怪物が怖くて怖くて仕方なかった。
    また恐怖の時間が結構長い。
    いつまでこの恐怖は続くのかと思ったら、また次の場所に出てくる。恐ろしすぎる。
    舌も尾も鉤爪も怖いのに、口から酸を吐くなんて、油を飲んだら火を吐くとかどんだけ強い化け物を描くのかと思ったら。
    呪術かぁ。なるほどぉ。としか言いようがない。
    怪物を収めるための悲しい朱音の運命と覚悟も良かったけど、
    香山のかんどりの真相がきちんと回収されて良かった。
    それにしても宮部さんの創造力の恐ろしさ。
    怖いのだけど続きを読みたくなるのがさすがでした。

  • 再読。宮部さんの時代物にしては派手なシーンが多い。怪獣の造形描写や破壊描写は脳内映像化がしやすいくて面白い。そんな中にも現代に通じるテーマがきちんと描かている。怪物を勝手に生み出し放置する無責任さ、眠れる怪獣を甦らせた憎悪や禁忌、正義を盾にした争いの虚しさ。そして重いテーマの合間にあふれる魅力的な登場人物たちの出会いと別れと愛情。最初に読んだときは派手な場面に気を取られて見落としていたことに気が付けて味わえた。
    映画監督・特殊技術監督の樋口真嗣さんの解説がとても面白かった。ぜひこの方に映画化を・・・と感じ入っていたら、NHKの100分ドラマになってしまうんですね。あんまりしょぼいことにならなければいいのですが。

  •  時は元禄、太平の世にあっても常に争いの火種を抱える人々は、自らが生み出した怪物に対し、いかに立ち向かっていくのか。

     久しぶりの宮部みゆき作品でしたが、時代小説とはいえ、怪物に襲われるパニック映画を見ているようでした。

     しかしただの怪物映画ではなく、その怪物が人々の怨恨によって生み出されたものであり、そこに多彩な登場人物たちのそれぞれの思惑が絡んでいく展開は、さすが宮部作品だと思いながら一気に読んでいきました。

     しかも、元禄という時代背景も物語に少なからず影響し、どの時代にあってもその時代ごとに世界に影響を与えていることを考えさせられました。

     また、その中でそれぞれの人物が自分の生き方を貫いていく生きざまも読みごたえがありました。

     対立する者同士が手を結んでいくためには、共通の大きな敵が必要なのかもしれません。

  • なんの予備知識もなく図書館で借りて読み始めましたんで、”怪物”もなにかの本当の仕掛けがあるものかと思って居たら、直球でした。ものすごくビジュアル素晴らしいホラー大作、なんといいますか昔の超能力者が出てくるころの宮部みゆき作品が好きだったのを思い出しましたわ。出てくる怪物は蠱毒とゴーレム(ジューイッシュのラビが作る土人形)を足してハリウッドのゴジラ(98エメリッヒ)とトレマーズ(90アンダーウッド)を足して二で割ったような、かなり濃いヴィラン。しかも第二形態になるところなんぞはそのままゲーム。読みながらもどんどんと頭の中で映像化していくタイプで非常にエンターテイメントでした。今流行りの山登り要素とかもあったり、色々と盛り込まれとるねぇ、、ヴィランだけでなく出てくる人間登場人物や人間以外の登場人物も非常にキャラの勝ったのばかりですばらしいねぇ。ラストはホラーらしくモヤモヤさせられましたしねぇ、、でもハリウッド大型予算映画化したら宗栄はトムクルーズになりそうでイヤだ(笑)。

  • 怪物の怖さも人間の狂気の描き方も、風景・情景を想像させるところも相変わらず上手い。
    導入からクライマックス、オチの付け方。
    どこを切り取っても「宮部みゆき」で安心して読めました。

    好きな話か、というとそれはまた別なので星4つ。。。

    でも、これを100分のドラマにするのは絶対無理があると思うんだけどなー。
    内田有紀&平岳大の兄妹はいいとして。
    しょぼいCGとかにしないでねー!
    原作を読んでないと理解できないような内容にしないでね。と勝手に心配してみたりする。

  • 宮部みゆきは一体いつまで面白いのかしら。
    キャラの魅力。

  • 良くも悪くも宮部節全開の、安心して読める娯楽時代小説、というかモンスターパニックもの。ミステリー的要素もそこそこ強い。もっと重厚で、おどろおどろしく、ひねりの効いた内容を期待していたが…オーソドックスなまとめ方にちょっと拍子抜け。“騒々しい”後半より、怪物が姿を現すまでの前半の方が、流れがスムーズで緊張感もあって楽しめた。実写ドラマ化は、不安。

  • 息つく間もなく読み終えました。

    東北の2つの小藩にまたがる、とある悲劇が生み出した災い。
    村が襲われたという1つの事実から、次々と視点を移しだんだんと怪物の正体が明らかになっていく様は、言いようのない恐怖ではあったものの心を掴んで離してくれませんでした。

    特撮、時代物、ヒューマンドラマ…等、見る方によって、いろいろな見方ができるお話だなと思いました。

    実際ドラマ化もされるようで、解説は特撮映画監督の樋口真嗣さんと言う方が執筆されています。
    どんな風になるのか楽しみです。

  • 宮部みゆきの筆力、創造性、空想力の豊かさを感じさせる作品。最初に出てくる直弥が主人公と思って詠み始めたが、朱音、蓑吉もだ。そしてこの3人を取り巻く人物もそれぞれ魅力的だ。つちみかどさま、どんな怪物なのか?読者のそれぞれどう想像しているのかと思うと少し面白い。人間の弱さ、愚かさ、疎ましさ、悲しさなどがヤマの土の姿を変えて現れた。自分の中にもきっとあるはず。魔物の部分が山を呼んでいる。

  • うかつだった。
    病院の待ち時間に、終盤に差し掛かっていた本作を持参してしまった。

    ウルウル、ヤバイ泣きそう…

    そうなのだ、私は7,80%ぐらいの確率で宮部作品に泣かされるのを忘れていた。

    読了、疲れた。
    なんだかみんなが、悲しいなぁ。

    簑吉、頑張れ

  • 長すぎる、が一番の印象。
    散漫なものになってしまった気がした。
    怪物。怖さを出すのであれば、例えば映画のエイリアン的な描写を文章でやるとか、そういった、おぞましさ、気分を悪くするような描写を追及して欲しかったなあと思える。
    登場人物も、多すぎたのかなと思える。2藩の間のこと、それに間者などが加わってという豪華さは、要らなかったのかも。絵師が描くという視点だけあれば、足りたような。
    テンポが一本調子でラストまでいくのは、やはり苦痛な気がした。新聞連載なら、これでもよかったのかも知れないが。
    ドラマが、いきなり怪物の設定を変えたりしているようなので、観るかどうか、わからない。

  • 久しぶりに宮部みゆきの時代物を…と手に取った。が、なんだこりゃ!時代物版シン・ゴジラか!?と途方もなく思った。(笑)
    登場人物も様々で主人公は誰だ?ってくらい。
    誰に感情移入していいのかわからず、物語に入り込むまで時間がかかった。
    しかし、朱音さまが素敵だった。
    蓑吉が勇敢だった。
    心に残る人物はたくさんいた。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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