悲嘆の門(下) (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101369440

作品紹介・あらすじ

おまえは後悔する――。度重なる守護戦士の忠告に耳を貸さず、連続切断魔の特定に奔走する三島孝太郎。なぜ、惨劇は起きたのか。どうして、憎しみは消えないのか。犯人と関わる中で、彼の心もまた、蝕まれていく。そうした中、妹の友人・園井美香の周囲で積み重な った負の感情が、新たな事件を引き起こす。都築の、ユーリの制止を振り切り、孝太郎が辿りついた場所。〈悲嘆の門〉が、いま開く。

感想・レビュー・書評

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  • 上巻では日常に迫る不気味な気配にゾクゾクして、勇んで中・下巻を買いに行きました。が、異世界の約束事が展開され、ついて行けなかった。主人公の平穏な日常が侵食されて、言動の変わり方にも違和感。

  • 「英雄の書」より遥かに面白かった。

    ―というような〈言葉〉を、作者は欲していたのかもしれない。いや、ホントに面白かった。前回が物語と言葉をめぐる概念の「思想書」だとしたら、今回はその思想に影響を受けた人々の「実践の書」であり、人々に普及するための「物語」でもあるだろう。 ―前回は少し難解だったかもしれない。今回はエンタメに振り切ろう。 ―そう作者が考えて、それを実践したようにも思えた。

    たいへん面白い物語を紡いだ作者に言いたい。やはり貴女(あなた)が一番物語を〈渇望〉している。その証拠に、こんな物語世界を実現させても、まだ満足していないでしょ?この30年間で紡いだ貴女の〈物語〉を、ガラの眼で見ればどんな形をしているんだろ。貴女が心配だ。この巨大な〈物語〉に、貴女は潰されることはないのだろうか。

    「あれからいろいろ考えたよ。それで ―思うんだ。ガラが君に教え、君がいろいろ経験してきて思う、その〈言葉〉と〈言葉の残滓〉のことをね、昔から人は、こう呼んできたんじゃないかねえ」
    業、と。
    「人の業だよ。生きていく上で、人がどうしようもなく積んで残してゆくものだ。それ自体に善悪はない。ただ、その働きが悪事を引き起こすこともある」(376p)

    作者とは全く関係ないけれども、年末年始にかけて、今年も様々な事件が起きた。言葉を操って自殺願望者を引き寄せ連続殺人をした男に影響を受けたのか、その模倣犯が未遂で捕まった。自殺願望者たちが道行の結果1人だけ生き残った。またこの小説の中にもあるように、親族同士の諍いの末に幾つもの殺人が起きた。

    第三者の私たちにとり、小説世界の殺人も、ニュースとして見聞きする殺人も、「情報としては等価だ。ーこれって、〈物語〉じゃないか。」(195p)と、孝太郎同様、私も思う。


    だから、貴女は最後に〈メッセージ〉を残したのだろう。物語の行き着く先は、そうでないとならないのだと。

    「ここが〈輪〉だ。物語が続き、命が巡り、祈りが届き、嘆きが響く。ー〈輪〉の小さき子よ、生きなさい。」(386p)

  • ファンタジー、ミステリー
    英雄の書の続編ではないけれど
    英雄の書を読んでいればなおストンと入る
    部分が多い。

    頻発する失踪事件と謎の建物、
    大学生と元刑事
    とミステリーの予感が強く、読み進めてから
    あファンタジーか、、と一瞬戸惑った
    でも英雄の書とのリンクが随所にあり
    記憶を呼びながら楽しめた。
    言葉、物語、概念、とか たまに考えた方がいい題材。

    ただ事件の解決法を文中のようにされると
    残された人のモヤモヤがまた渇望になって
    延々とリンクしそうだ。

  • 主人公の大学生が、そのあとどうなったのか
    紡ぎ出される言葉の力は限りなく強かった。
    最後の最後で無事に戻ってこれでほっとした。
    希望、生きること、プラスのワード
    なんだか闇をみて反対のことの大切さをより強く感じた。

  •  終章「悲嘆の門」が、なあ……(´ε`;)ウーン…
    「模倣犯」や「ソロモンの偽証」等々、ミヤベ大長編はどれもこれも最後の6分の1さえ「こうじゃなければ」大傑作なんだけどなあ……(´ε`;)ウーン…
     何なんだろう、事前に結末を考えずに書き進めていくタイプ? 広げた大風呂敷をうまくたためない? 物語が作者の手を離れて勝手な方向に成長しちゃう?……(´ε`;)ウーン…

     本作がこんなんなっちゃった最大の原因はキャラ造形なんじゃないかな?……(´ε`;)ウーン…
     孝太郎、都筑、並びに彼らの関係者、薄ペラでテンプレな悪役たちやモブキャラに至るまで、毎度おなじみ「劇団ミヤベ」の座員ぞろいというか、昭和下町ホームドラマの再現というか……(´ε`;)ウーン…
     ああいう人情ミステリー向けの単純明快で底の浅いキャラクターは、本作みたいな深刻な心の闇を探るシリアス作にもハードファンタジーにもまったくそぐわない(>_<)
     特に絵に描いたような好青年・孝太郎が完全に場違い(>_<)
     終盤こんな展開に放り込むんなら、序盤からもっとゲスでえげつない彼自身のダークサイドをしっかり描きこんでおかないと人物に説得力が生まれない(>_<)

     お話じたいも何だかなあ……(´ε`;)ウーン…
     まず「物語と言葉の源泉」というテーマそのものに何の興味も持てないし、小っ恥ずかしい西洋かぶれファンタジー世界観にも魅力を感じないし、観念世界の決着をつけるのがケダモノ同士の取っ組み合いっていう安易さ、「愛が地球を救う」おめでたいオチにもガックリだし……(´ε`;)ウーン…
     孝太郎がぬけぬけこっちの世界に戻ってきたときには本気で怒りを感じた(>_<)
     
     いっちゃ何だけど(正直大半の読者が思ってることでもあろうけど)、この作品、ファンタジー要素をぜんぶ取っ払えばかなりの傑作になってたろうな……(´ε`;)ウーン…
     ネットパトロール、いじめ、不連続殺人事件、元刑事のサガ……(ありがちながら)面白そうなネタ満載だし、動くガーゴイル像にしたって合理的なトリックさえあったならけっこう魅力的な小道具になっていたと思う……(´ε`;)ウーン…

     中巻(半ファンタジー)までの興奮に、終章(完全ファンタジー化)で冷水を浴びせられた感じ(>_<)
     結局ファンタジーと社会派ミステリーの融合という実験的試み(クーンツがよくやってるけど)は、劇団ミヤベ人情キャラという触媒の選択ミスで最悪の結果に(>_<)
     まあ、そうでなくてもこんな世界観のファンタジーはどこをどう料理しても面白くはなんないか……(´ε`;)ウーン…

     本作、売れないといいなあ……(´ε`;)ウーン…
     もうこんなシリーズ打ち切りにして、ミヤベさんにはもっと社会派ミステリーをたくさん書いてほしい……(´ε`;)ウーン…



     あと、「解説」。
     ひとつ根本的に読み違えてない? テーマでなくストーリ-そのもので。「嫉妬に狂って恋仇を殺す」? え?( ゚д゚)

    2020/03/08

  • 再読。やっぱり再読してよかった。1回目はこのラストに向かうあたりから小難しくて退屈になってきたのに、2回目はすんなりと入ってきて登場人物の心情に入り込めた。最後の「生きていけばいいのよ」「生きてゆくよ」は泣けた。宮部さんからの強烈なエールがストレートに響いた。久しぶりに宮部さんを読むと、手練れの語り手だなあとつくづく恐れ入り楽しませてもらった。

  • 連続殺人事件も、物語?
    殺醍醐の状況から作り出された物語・・・
    主人公の青年と元刑事は、事件の真相を求めて、それぞれ事件の現場へ奔走する。
    度々語られる「存在するが実在しない」。
    彼らは問答する。それは、言葉であり、物語であり、概念とも言う。それらは目には見えないが、存在する。
    フェイクニュースが論じられ、ネット上には偽情報が氾濫する現代。それらに対する免疫力をつけ、惑わされないように、そして被害者とならないようにとの意図を、著者はこの作品に込めているのではないだろうか。

  • ちょっと私にはファンタジー感強すぎたかな。。。
    面白くないとかでは無いんだけど、いまいちサクサクは読めなかった。。。ただ本当にアニメにして欲しい。見応えのあるミステリーアニメになる事間違いナシ!!な気がします。

  • 読み始めて、おぉ、なかなか面白い。
    ドキドキすると、展開を楽しみしていたら、

    何だそんな感じかよ…現実世界の話じゃなく、異世界の話はあんまり好きじゃ無いなぁ…あああ、でも何これ、面白い!

    と夢中になって、上中下3冊を数日で読み終わってしまった。

    ミステリーで、この世の物では無い力を使う感じはあんまり好きじゃなくて、何だろう。この世のもので起きたものはこの世のもので解決して欲しいというか。

    ミステリーならミステリーであって、ホラーならホラーであって、ファンタジーならファンタジーであってほしいように僕は感じてしまう。

    なので、途中の異形のものが現れたときは何だよ…と思ったけれど、それはそれとして楽しめた。

    最後に、ハッピーでは無いかもしれないけれど、最悪の事態にはならなくて、気持ちがホッとした。

  • ぼやっとした終わり方ですべてが中途半端な感じで…想像を遥かに超えて残念な終わり方だった…。

    クライマックスであろうガラの戦い、悲嘆の門の部分なんて読み飛ばしてしまったほど…。

    ふと「デスノートでいいじゃん?」て思ってしまった…。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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