ターン (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101373225

感想・レビュー・書評

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  • 読了日 2020/05/03

    北村薫の三部作二作目。
    てっきりスキップの続編かと思ってたら、
    全然違った。

    わたしこと森真希が事故に遭い、
    7月のある日の3:15から翌日の3:14を延々ループする話。

  • 主人公は29歳の女性版画家森真希さん。ある日交通事故で命の危機に遭遇したのをきっかけに、時空のパラレルワールド"くるりん"に迷い込んでしまう。毎日15時15分になると、それまで過ごしていたことが全てリセットされ、昨日の15時15分@自室の畳の上 に戻ってしまう。そうして永遠に毎日同じ日々をくり返すのか、と思ったら果てしない孤独と生きがいの見出せなさに絶望感を抱いてしまいそう。
    現実では時間を繰り返すことはないけれど、付記にもあるように朝起きて朝食を食べ身支度をし仕事をして帰って寝るという同じ行動の繰り返しに、鬱屈とした気持ちを持つことが社会人なら誰しもあると思った。だからこそ真希の境遇に共感してしまうのだと思う。
    一人で生活していて、誰に見られてなくてもお店で商品を買った(もらった?)ときは必ずお金を置いてきたり、他人からの評価ではなくあくまで自分がどうあるべきかという軸で生きている姿勢がとても好き。
    そんな150日を過ごしてきて、かかってきた1本の電話。泉さんとの出会えて本当によかった(必然だったのかもしれないけれど)。やはり人を好きになるというのは生きるのに心の支えになるのだ。

    直に会うことはできなくても声を聞き、考えに触れることで好きになってしまうことはあるだろうなぁ。
    真希が愛について話した内容が素敵だった。
    「相手が自分だけを愛してくれるから、その人に魅かれるわけじゃない。その人が、自分以外の何を、どのように愛するか、それを知るからこそ、相手を愛せるのでしょう?」

    人を愛すること、そして自分にとっての生きがいを持つこと、すなわち日々成長が楽しいと思える習慣・仕事・趣味を持つことは大切だなぁと感じた。

  • あらすじ
    真希は29歳の版画家。夏の午後、ダンプと衝突する。気がつくと、自宅の座椅子でまどろみから目覚める自分がいた。3時15分。いつも通りの家、いつも通りの外。が、この世界には真希一人のほか誰もいなかった。そしてどんな一日を過ごしても、定刻がくると一日前の座椅子に戻ってしまう。いつかは帰れるの?それともこのまま…だが、150日を過ぎた午後、突然、電話が鳴った。

  • 時と人三部作の二作目。
    今作は世界の時の流れに置いていかれ、同じ時を何度も過ごす女性の話。
    誰もいない一人ぼっちの世界で絶望する中、ある日突然電話が鳴り…。

    前作のハッピーエンドなのかバッドエンドなのか複雑な気持ちになるストーリーとは違い、今作はどっちなのかは明確。
    さて、どちらでしょうか。

  • 主人公の駆け出しの女性版画家に絶えず話しかける男性の声。昔、池澤夏樹さんの1枚の写真をもとに「君」に話しかける掌編集があったけど、それに似ている文章。
    でも、あれは一方的に君に語りかけていかけど、この本では主人公とその誰かが対話している。不思議な文体。筆者が主人公に話しかけているんだろうか。

    事故で誰も居ない時間の中に囚われてしまった彼女。その時刻が来ると、1日前に「くるりん」してしまう。

    長い孤独の末に1本の電話が鳴って、物語が動き出さす。これが声の主?そうすると、これまでの文章は回顧してたわけか?
    後になって、勘違いに気付くんだけど、ボール球で空振りを取るのが上手いなあ。文句をつけているじゃなくて、お蔭で更に感動が深くなっている。

    北村薫さんの描く女性は皆、凛としているけど、本書の森真希さんが一番魅力的だと思う。北村さんはオジサンなのに、なんでこういう女性を活き活きと描けるんだろう。

    文章もドキッと心に刺さる処がそこここに。
    (引用)
    君は、くるりと振り返って、≪フウの木≫にいう。
    「わたしは、真希よ」
    そうか、と木は、葉を鳴らした。

    終幕も良かった。こんなラブロマンスもあるんだなあと感激しながら本を閉じた。僕にとって北村薫最高作。

    以下、雑文。
    実は子供の頃から目が覚めたら誰も居なくなっていることを夢想していた。そして、いい年したオッサンになったのに、まだ時々誰も居ない、たった一人の毎日を考えている。
    電気も水道などのインフラは使える前提は都合良過ぎ。スーパーに行けば食料はあるから、生きていける。
    急に人が居なくなっても何故か交通事故は起きていないし、火事も起きない。そう云う処はこの小説に似ている。
    つまりこういう空想をするのは人間嫌いだからなのかな。北村さんも?まさかね。

  • なんて言ったらいいのかなぁ。
    くるりん、泉さんの声、時を生きること

    うーん
    生きていなければなぁ
    ただ過ごすのではなくて
    くるりんの中でも生きようと思えたように
    生きていなければなぁ

  • 序盤は「君は…」と話しかけてくる「声」と、発話している女性との二人称をどう捉えて読み進もうかペースがつかめず、なかなか進まなかったが、だんだんと、明らかになっていく。
    前作「スキップ 」のほうがわかりやすく楽しめたが、この「ターン」は読み直すと、また違った味が楽しめそうな作品。とにかくストーリーを追いかけることに必死だったので、細部を落ち着いて読み直したい。

  • 銅版画家の真希はある日、大きな交通事故に遭う。目覚めるとそこには自分以外の人間が誰一人としていない世界だった…。
    著者の時と人シリーズの一部作目『スキップ』を読んだので、続けて二作目のこちらも読破。前作と違って、パラレルワールド的な世界観の本作。世にも奇妙な物語とかでありそうだなぁと思いながら読みました。
    ストーリーは前作と好みが分かれそうだが、北村薫さんの描くヒロイン&ヒーローは、とても温かくて魅力的。一本の電話で繋がる運命、なんてロマンチック!

  • 主人公真希の潔さがすごい。
    こうなったからには、と自暴自棄にならず毎日をいつもと同じように送る。
    何をやっても同じ、なら、柿崎のようにも真希のようにも生きることができるのだけど、なかなか真希のようにはいかないなぁ。

    北村薫の文章の美しさも堪能

  • 3部作、これで読み終わり。

    これも好きだなー( ´∀`)

    置いてかれた?立場で、
    人がいない場で自分を保つのは
    なんと苦しいことか。
    怖いことか。

    どうなるのか、と先がすごく気になって
    どんどん読み進みました。

    面白かったです。
    3部作を薦めてくれた友だちに感謝(*´∀`)♪

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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