ターン (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101373225

感想・レビュー・書評

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  • 今だからこそ心に沁みた、一冊。

    どんな一日を過ごしても定刻がくると一日前に戻ってしまう、そして永遠にひとりぼっちの世界を繰り返すという物語。

    単調な毎日に心の疲れも蓄積され、孤独な世界が欲しいなんて思っていた自分にはこの物語に頭をコツンとされた気分。

    静寂と孤独、主人公の心の機微はもちろん、何をすべきか…徐々に心が起き上がっていくような過程は何度も胸を打った。

    人は完全な孤独では生きていけない。何かと誰かと繋がっていることの有り難さを改めて噛み締める。

    今だからこそ、この物語の世界、数々の言葉、思いが心に沁みた。

  • 初の北村薫さん。文庫本の紹介文に惹かれて読みました。
    主人公の真希は内なる声といつも会話してるようだ。どうやら小さい時から。交通事故で意識不明の真希は誰もいない世界に入り込み、同じ日を数ヶ月孤独に過ごすのだか、やはり内なる声はそばに居る。突然、泉という男から電話がかかってきて現世との接点が出来るところから面白くなってきました。内なる声は泉なのか・・・。


  • 誕生日直前29歳の女性版画家が7月のある日自動車横転事故に遭い目覚めると誰もいない、どんな一日を過ごしても15:15になると昨日にリセットされる世界に。
    150日過ぎたある日電話が鳴り物語が動きます。毎日何事もなく繰り返す日常は尊くもあり年を重ねるごとに時間の流れがますます速くなる今日この頃、自問自答させて
    いただきました。後悔ない時間を過ごしたいものです。

  • 「時と人」三部作の第2作:
    版画家の真希は、夏の午後に事故って、気が付くと
    何故か自宅の居間で目覚める。
    何処にいても時間になると居間で目覚めるところから始まる。
    時に囚われながらも、真希は色んなことをやる。
    しかし何をしても残酷にも時間が戻る。気力が削がれていく。
    そんなある日、家の電話が鳴った。
    芥川龍之介の蜘蛛の糸を連想しました。
    そこからの切ない展開と、最後の怒涛の展開に心臓バクバク。
    これは好きです!!
    細かいところを突っ込むと感動が薄れるから
    あえて気付かないふりをします。

  • まず、本に「君」と呼びかけられ驚いた。
    まるで本と対話してるかのような錯覚に襲われ、
    不思議な気持ちで読み始めた。
    そして、この本を通して、メゾチントというものの存在を知った。
    さらには、「くるりん」を経験した「君」の最初の行動に驚かされ、
    私ならどうするだろうと考えた。

    そして、明かされる真実ー。
    リターン。

    ぜひ、すべてを読み終わった後にもう一度読み返し
    その意味を、この作品を味わいたいと思った。

  • 所々でふっと優しいきもちになれる本。特に終わり方が大好き。不思議な設定ではあるけれど、決して特別なことではなくて、真希に限らず誰もが体験しうる時間の感覚というか…。繰り返すのか、繰り返さないのか。そう感じるのか、感じないのか。全部がその人次第で、過ごし方次第。長さはあるけれど穏やかな気持ちになれる、存在感のある本。

    • まろんさん
      はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      時が「くるりん」する、北村薫さんの『ターン』、大好きな作品です!...
      はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      時が「くるりん」する、北村薫さんの『ターン』、大好きな作品です!
      まだ見ぬ運命の人とだけ繋がる電話、
      誰も見ていないし、時間はまた戻ってしまうのに
      買い物にきちんとお金を支払ってくるヒロイン真希。
      出会ったひとや、なんでもない毎日を大切にしなくては、と思わせてくれる本でした。

      好きな作家さんがかなり重なっていてうれしいsioさんの本棚と
      素直で綺麗な言葉で綴られたレビュー、これからも楽しみにしています。
      どうぞよろしくお願いします(*^_^*)
      2012/11/29
  • 「不毛なのは毎日ではなく、私だと。繰り返しの味気ない日常にしているのはいつも自分だ」

    「人間は、人との約束は守ろうと努力するのに、自分との約束はすぐに破ってしまう」という何かで読んだフレーズが頭に浮かんだ。自分ひとりの世界で、強い意志を持って生きるのは難しい。コロナ禍の自粛の中、この期間をどう生かすか。

  • 主人公は29歳の女性版画家森真希さん。ある日交通事故で命の危機に遭遇したのをきっかけに、時空のパラレルワールド"くるりん"に迷い込んでしまう。毎日15時15分になると、それまで過ごしていたことが全てリセットされ、昨日の15時15分@自室の畳の上 に戻ってしまう。そうして永遠に毎日同じ日々をくり返すのか、と思ったら果てしない孤独と生きがいの見出せなさに絶望感を抱いてしまいそう。
    現実では時間を繰り返すことはないけれど、付記にもあるように朝起きて朝食を食べ身支度をし仕事をして帰って寝るという同じ行動の繰り返しに、鬱屈とした気持ちを持つことが社会人なら誰しもあると思った。だからこそ真希の境遇に共感してしまうのだと思う。
    一人で生活していて、誰に見られてなくてもお店で商品を買った(もらった?)ときは必ずお金を置いてきたり、他人からの評価ではなくあくまで自分がどうあるべきかという軸で生きている姿勢がとても好き。
    そんな150日を過ごしてきて、かかってきた1本の電話。泉さんとの出会えて本当によかった(必然だったのかもしれないけれど)。やはり人を好きになるというのは生きるのに心の支えになるのだ。

    直に会うことはできなくても声を聞き、考えに触れることで好きになってしまうことはあるだろうなぁ。
    真希が愛について話した内容が素敵だった。
    「相手が自分だけを愛してくれるから、その人に魅かれるわけじゃない。その人が、自分以外の何を、どのように愛するか、それを知るからこそ、相手を愛せるのでしょう?」

    人を愛すること、そして自分にとっての生きがいを持つこと、すなわち日々成長が楽しいと思える習慣・仕事・趣味を持つことは大切だなぁと感じた。

  • あらすじ
    真希は29歳の版画家。夏の午後、ダンプと衝突する。気がつくと、自宅の座椅子でまどろみから目覚める自分がいた。3時15分。いつも通りの家、いつも通りの外。が、この世界には真希一人のほか誰もいなかった。そしてどんな一日を過ごしても、定刻がくると一日前の座椅子に戻ってしまう。いつかは帰れるの?それともこのまま…だが、150日を過ぎた午後、突然、電話が鳴った。

  • 主人公の駆け出しの女性版画家に絶えず話しかける男性の声。昔、池澤夏樹さんの1枚の写真をもとに「君」に話しかける掌編集があったけど、それに似ている文章。
    でも、あれは一方的に君に語りかけていかけど、この本では主人公とその誰かが対話している。不思議な文体。筆者が主人公に話しかけているんだろうか。

    事故で誰も居ない時間の中に囚われてしまった彼女。その時刻が来ると、1日前に「くるりん」してしまう。

    長い孤独の末に1本の電話が鳴って、物語が動き出さす。これが声の主?そうすると、これまでの文章は回顧してたわけか?
    後になって、勘違いに気付くんだけど、ボール球で空振りを取るのが上手いなあ。文句をつけているじゃなくて、お蔭で更に感動が深くなっている。

    北村薫さんの描く女性は皆、凛としているけど、本書の森真希さんが一番魅力的だと思う。北村さんはオジサンなのに、なんでこういう女性を活き活きと描けるんだろう。

    文章もドキッと心に刺さる処がそこここに。
    (引用)
    君は、くるりと振り返って、≪フウの木≫にいう。
    「わたしは、真希よ」
    そうか、と木は、葉を鳴らした。

    終幕も良かった。こんなラブロマンスもあるんだなあと感激しながら本を閉じた。僕にとって北村薫最高作。

    以下、雑文。
    実は子供の頃から目が覚めたら誰も居なくなっていることを夢想していた。そして、いい年したオッサンになったのに、まだ時々誰も居ない、たった一人の毎日を考えている。
    電気も水道などのインフラは使える前提は都合良過ぎ。スーパーに行けば食料はあるから、生きていける。
    急に人が居なくなっても何故か交通事故は起きていないし、火事も起きない。そう云う処はこの小説に似ている。
    つまりこういう空想をするのは人間嫌いだからなのかな。北村さんも?まさかね。

著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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