謎のギャラリー謎の部屋 (新潮文庫 き 17-4)

制作 : 北村 薫 
  • 新潮社
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本棚登録 : 174
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (470ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101373249

感想・レビュー・書評

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  • 北村先生によって選ばれた謎を含んでいる話ばかりの短編集です。
    ミステリアスな話から本格ミステリな話までいろいろとあります。
    怖い話までもありました。
    本格ミステリな話は「指輪」と「黒いハンカチ」が特に気に入りました。
    ニシ・アヅマ女史がかわいらしいです。
    前回に引き続き、宮部先生との対談がおもしろいです。

  • 北村薫がセレクトした「謎」を巡る物語のアンソロジー。これも、先日読んだ、北村薫の『自分だけの一冊、北村薫のアンソロジー教室』(新潮新書、2010年1月)に出ていた自薦の文庫本。日本の小説ばかりでなく、海外の翻訳ものも加えて多様な構成だ。硬軟とりまぜてあり、北村さん曰く順番にも気を遣ったとのこと。確かに、絵入りの童話めいたものが、雰囲気が深刻になり過ぎぬように挿入されていて、ほっとする。

  • 北村薫、編の謎のギャラリーアンソロジー
    国内、海外よりすぐりの短編たち
    どれも読みごたえあります

  • 『謎のギャラリー~謎の部屋~』 北村薫 編 (新潮文庫)        


    これは、ミステリーに限らず不思議で不可解な雰囲気のお話がたくさん入っているアンソロジーである。
    この「謎ギャラ」シリーズには、この「謎の部屋」以外に、「名作博本館」、「こわい部屋」、「愛の部屋」があるそうだ。


    最初っからすごいぞ。
    宇野千代『犯罪』。
    「私」は弟を連れて歩いている。
    すると、道端に置いてあるたらいに付け根から切断された足が4本投げ込まれていた。
    こわ……なによそれ。
    「私」は警官にどこから来たのかと聞かれ、嘘をつく。
    すると警官は「私」の腕をつかみ、「はははははは」と空へ吹き上げるような声で笑った。
    というお話である。
    なんなのだそれはいったい……
    謎である。怖い。
    そこで終わっていて続きがないのも怖い。
    “大人の絵本”と題した宇野千代さんの作品は、あと2作入っているが、どれも謎めいていてすごーく不思議な雰囲気である。

    ほんでもって、次の、阿倍昭『桃』もすごい。
    月夜の晩に、自分と母が桃をいっぱいに積んだ乳母車を押して坂道を登っている、という昔の記憶のことを、とにかくずっとあれこれ考え続ける話である。
    そのことだけをずっとずっと考える。
    あれは確か〇〇だったように思う、いやそれとも〇〇だったかもしれない……。
    すんごい煮詰まってるーっていう感じの変わったお話だ。
    変なんだけど何だか惹きつけられてしまう。
    そしてちょっと怖い。


    名前だけ何となく知っている昔の作家、というのが今回かなりあって面白かった。
    例えば、里見弴とか西條八十とか小沼丹とか。
    他にも、外国の、なんじゃこりゃーな話もいっぱい入っていて、まさに謎の醍醐味を味わえる一冊なのだ。

    宮部みゆきさんと編者の巻末対談も楽しい。
    こういうアンソロジーで、全然知らない人の作品を読むのもたまにはいいな。
    面白かったです。

  • うむ、おもしろい。おもしろいですね。素敵です。こうしたアンソロジーを読むきっかけは、まずはやっぱり、編集する方への信頼感かなあ?という気がします。北村薫さんを信頼しているから、「あの北村薫が選んだ短編小説ならば、こらもう間違いないでしょう。絶対おもろいに決まってるでしょう」という思いがあるから、ちょっとその本、読んでみましょか、という感じになるのが、まあ、やっぱデカいのではないでしょうか?で、その期待に見事応えてくれる作品たちよ、ありがとう。みたいな。

    この本を手に取ることがなければ、一生知ることはなかったであろう作家のかたがたの作品を、北村薫というフィルターを通して、知ることになる、というのは、全く持って読書の醍醐味だなあ、とかね、しみじみ思っちゃいますね。

    例によって、北村薫さんと宮部みゆきさんの対談解説が、すっごく良いです。お二人が、本当に読書と言うものを愛しているんだなあ、ということが、しっかり伝わってくるんですよねえ。自分の好きなものを、正しく的確に、第三者に伝えることのできる能力、というものは、素晴らしいものですよね。

    特に気に入った作品は
    「俄あれ」里見 弴(さとみ とん)
    これ、時代的にはいつの作品なんでしょうね?昭和初期?なんというか、全然古びてない気がします。平成30年のこの現代でも。凄いなあ。日本語ってめちゃくちゃ綺麗な言葉だな、ってことが分かる文章だと思いました。で、内容は、めちゃんこエロいですね。この雰囲気、ホンマにエロいです。妄想。官能。って感じ。想像力はエロの源泉なのだ。凄いなあ。で、終わり方はなんだかホノボノ。うーむ、凄い。

    「遊びの時間は終わらない」都井邦彦
    こりゃ凄い。この発想の素晴らしさ。バカバカしい事を、とことん真面目に書き切る素晴らしさ。「生真面目で融通のきかない」と評される平田刑事のキャラクターが、面白すぎます。きっと本人、マジ中のマジで大真面目なんだろうなあ。いや逆に、全てわかったうえで、そ知らぬふりで、演じているのか?どっちなんだろうなあ。最後に、深川刑事を「帰りに軽く一杯、やってかないか」って飲みに誘う描写とか、もう神がかって面白すぎる。映画版も、是非とも、是非とも観てみたいですね。

    「絶壁」城昌幸
    うーむ、、、好きだなあ、、、これまた、お見事な作品ですねえ、、、深い。哀しい。面白い。うん。凄くこう、好きな人には堪らない、そんな、本当に愛すべき短編だと思う、、、のです。うん。大好きですね。寓話として、完璧な作品ではなかろうか?あの、たった一人の、ひどく絶壁攀ぢ登りに術に長けた奴。あれはいったい、誰だったんだろう?イエス・キリスト?ゴータマ・シッダールタ?アレクサンダー大王?チンギス・ハン?アドルフ・ヒトラー?ビル・ゲイツ?まだ見ぬ未来の誰か?うーむ、、、気になる。気になるなあ、、、

    「定期巡視」ジェイムス・B・ヘンドリクス / 桂英二 訳
    解説で、宮部さんがこの作品をして「一種すごい男臭い小説」と評されてまして、当に言い得て妙!と感動してしまいました。ホンマにこう、男の世界!って感じの小説。「ジョジョの奇妙な冒険」第七部、『Steel Ball Run』でいうならば、リンゴオ・ロードアゲインの「ようこそ男の世界へ」って感じでしょうか。なんじゃそら。自分で何を言っているのかよく分かりませんが、とりあえず、これは素敵な作品です。大好きです。

  • "謎"を含んだ短編小説を集めたアンソロジー。著者と宮部さんの紹介の仕方が超うまい。収録作品はタイトル通りどれも謎に満ちていておもしろい。特に「豚の島の女王」は圧巻。

  • 人生に満ち満ちる、面妖な、ユーモラスな、不可解な、謎、謎、謎。いや、そもそも人生それ自体が“謎”ではないか―名手たちが鮮やかに切りとった人生の断片が、絶妙の配置で一堂に会しました。ミステリアスな異世界へ誘う作品から、「本格ミステリ主義者」の編者がこれぞと太鼓判の「本格物」まで、みごと“謎”の醍醐味を封じこめた一冊。

  • 北村薫のアンソロジー「謎のギャラリー-謎の部屋-」を読みました。
    謎のギャラリー3冊目です。 「指輪/黒いハンカチ」のニシ・アズマが面白かった。 また「俄あれ」が心に引っかかりました。雷が通っていく時間の闇が迫ってくるようでした。

  • ささっと返しちゃったので、収録作品をメモ出来てない…。
    「遊びの時間は終らない」、映画も観よう。

  • 自称《本格原理主義者》、アアルトコーヒーの庄野さんにすすめていただいた一冊。

    北村薫が、《謎》をキーワードに選んだ古今東西の16人の作家による短編を収めたアンソロジー。さまざまなタイプの作品が含まれるが、CDにしても個性的な選曲家の手によるコンピレーションを好む自分としては、そこに「北村薫」というひとの個性も感じつつ最後まで楽しく読書した。

    「謎の部屋」というこの本のタイトルにふさわしく、宇野千代/東郷青児コンビによる超現実的で、しかもどことなく淫微な匂いを放つ物語でいきなり冒頭から読者を煙に巻く。その余韻を引きずりながら読む阿部昭『桃』は、なんというかとても官能的に映る。同じトーンは次の作品『俄あれ』(里見弴)にもつづく。途中で気づく、「にわかあれ」というタイトルのダブルミーニングはなかなかパンチが効いている。終わり方はあまり好みではないとはいえ、吉祥寺が舞台の『遊びの時間は終わらない』は、落語「だくだく」を想起させるストーリーともども親しみをもって読んだ。「昔、私が柘榴の実の中に住んでいた頃……」と始まる『柘榴』を書いたカリール・ジブランというひとは、「あとがき」として収められた宮部みゆきと北村薫との対談によればレバノン出身の作家とのことなのだが、その寓話のような語り口といいアルメニア出身の映像作家パラジャーノフの『ざくろの色』を彷彿とさせる。レバノンとアルメニアがおなじ文化圏といえるかどうかはわからないが、メタファーとしての「ざくろ」はこの一帯においてはなにか特別な意味を持つのだろうか? これはまた、べつの《謎》。グロテスクでありながら、神話のようでもある『豚の島の女王』、星新一のショートショートにも似た『どなた?』もおもしろい。おなじ立場に追い込まれたら、たぶんぼくもこの主人公とおなじ態度をとるだろう。諦観こそ幸福への近道、か? タネあかしの見事さに思わず唸らされるのは、ハードボイルドな『定期巡視』。『猫じゃ猫じゃ』『埃だらけの抽斗』のふたつは、銀行もの。どちらも後味があまりよくないのは「カネ」にまつわる話だからだろうか。最後に収録されたゴフスタインの絵本『私のノアの箱船』は、いってみれば映画のエンドロール。「謎の部屋」を後にして日常へと読者が戻るきっかけ。一服の鎮静剤!?

    なかでも、マージャリー・アランというひとの『エリナーの肖像』は個人的にいちばんおもしく読んだ一編。イングランドのマナーハウスを舞台に、そこで変死した少女の遺志を一枚の肖像画から読み解いてゆくという本格ミステリー。恣意的に感じられた要素のすべてが、彼女を愛していた周囲の人々の記憶の助けを借りつつジワジワと焦点を結び、最後には犯人の姿をくっきりとあぶりだす。探偵の登場しないこの物語では、《謎》は彼女を慕う人々の《愛情》の力があってはじめて解き明かされるのだ。そこに言い得ない感動が生まれている。

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