- Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101373300
感想・レビュー・書評
-
直木賞作家のファンタジー短編集。道楽男の新聞募集に参じた十七人の語り女達が自らの不思議な体験を語る。作品カラーは平山夢明の「超怖い話」のようなダークブラックではないし、お色気のピンクでもなく、にぎやかなパステルカラーでもない。誰も傷つくことのない薄気味悪さを感じるので、曇天色ファンタジーといったところか。微妙な非日常性をよく思いつくものだと感心する。おすすめ。しかし女達の口調はみな淡々と詩的な内容を語る点で共通しており、これが飽きてくる。それぞれの女に特徴を持たせれば更におもしろかったと思うが、残念。
収録作)緑の虫/文字/わたしではない/違う話/歩く駱駝/四角い世界/闇缶詰/笑顔/海の上のボサノヴァ/体/眠れる森/夏の日々/ラスク様/手品/Ambarvalia/水虎/梅の木詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
海辺の部屋で潮騒を聞きながら訪れた女たちの語る
不可思議な物語に耳を傾けるー。
なんだか理想の生活かもしれません。
物語も魅力的ですが、挿絵の版画も魅力たっぷり。
『眠りの森』『違う話』『四角い世界』がお気に入り。 -
千夜一夜物語のように、様々な女性たちが少し不思議な話を語っていく小編集。日常の中に開かれたささやかな不思議。幻想の描写は五感で感じられるほど写実的で、だんだん現実と幻想の境が曖昧になっていくような、まさに夢をみたような気持ちになる。全体にしっとりした話が多いが、時に薄ら狂気を感じる話(Ambarvalia)やコミカルな話(水虎)も。
個人的に好きなのは「眠れる森」「梅の木」。
謠口早苗さんの銅版画の挿絵や、ページ番号周りの装飾、文字の色など、細かい装丁も美しい一冊。 -
*2008.9 *2021.9
-
不思議な心地よさを感じる話だった。
-
なんというか、不思議な気分にさせられました。
読んでいるうちに、ぼんやりとしてしまう感じ。
気が抜けていくというか、「捉われる」というか。
決してnegativeな感じではなく、心地よい感じ。
それはまるで、収録されている「眠れる森」というお話のよう。
とても短い、17編のお話。
なんとも幻想的で、不可思議な情景の数々。
日常の端っこに見え隠れしているかのような、「薄い」情景。
視野の端でちらちらと揺れているような情景。
好きだなあ、としみじみ思ったのが、「梅の木」です。
こういう、なんともいえない「おはなし」、素晴らしいと思います。
風景を構成する要素それぞれの境界が、ぼやけていくような錯覚すら覚えます。
最後の1頁、もう何とも言えない完成度です。
こう、カシッと音がするかのような、そんな場面。
あ、いま嵌ったな、という気持ち良さを全身で感じることが出来ます。
「日常的な非日常」。
それは、きっと誰でも心に描いている風景なのだと思います。
その風景を、文章という形で現世に表してみせる。
北村薫氏は、それが出来る数少ない作家さんの一人なのです。
本書は、そのessenceを凝縮した、極めて純度の高い一冊。
白昼夢の中のような、不思議な体験が出来ました。見事。 -
まあ・・・・こんなもんでしょう。
道楽でいろんな女性からいろんなお話を買うって趣向です。トルーマン・カポーティ『夜の樹』の「夢を売る女」って好きですね〜。
「笑顔」のラストがよかったかな。
芸も何もあったもんじゃないけど、まあ、愛嬌だあねえ。
作者も「こうなるしかない結末だろう」と言ってるけど、
まさしくその通り。
苦笑している北村氏の顔が浮かぶよう。
編集者もきっと・・・
読んでるこっちも多分そういう顔してんだろうなあ〜 ^^;;
野谷文昭の「ラテンにキスせよ」まで読んでるなんて
さすが〜。 -
北村薫版、「世にも奇妙な物語」。
主人公?の前に様々な女性が現れては、現実と夢の狭間をさ迷っているかのような、不思議な話を語る短編集です。
物語の構成はシンプルすぎるほどシンプルですが、文章の美しさには定評がある(個人的に断定)北村薫の事、読者をひきつけて止まない小粋な1冊となっています。それぞれの話に噛めば噛むほど染みてくる味がありますが、どれが一番好みかはそれこそ読者1人1人で異ってくるでしょうね。
ちなみに個人的な一押しは「夏の日々」。ホント、この手の話にめっぽう弱いです。 -
大原さやか朗読ラジオ 月の音色~radio for your pleasure tomorrow~
パーソナリティ :
大原さやか
更新日:2014.9.1
配信回数:10回
「わたしではない」
夫が作った自分の等身大フィギュアに夫を奪われた奥さんの話。
う…うん…うん?別れることができて良かったんじゃない。 -
「梅の木」がとても印象に残った。上質で不思議な短編小説。