さびしい女神 僕僕先生 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101374345

作品紹介・あらすじ

苗人の国を襲った大旱魃。その原因は王弁が出会った少女にあった。さびしがり屋で、話し下手で、でも人と触れ合いたい女神「魃」。王弁は枯れゆく国と魃を救うため、神々を探す旅に出る。宇宙に飛び出し、時空をも越え、神仙たちの古代戦争を目撃した王弁を待っていたのは、あまりに残酷な魃と僕僕の過去だった-。救うべきは女の子か、それとも世界か。怒涛のシリーズ第四弾。

感想・レビュー・書評

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  • 魃(ばつ)という、残酷で寂しい女神と、ただの人間に過ぎない王弁(おうべん)この2人のやり取りが愛くるしい物語。
    僕僕先生という人がありながら、精神的な浮気を見ているような、シリーズ第4巻です。

    シリーズものというと、1巻が一番印象深く、2、3と続くにつれて少しずつ頭がなれてしまう(感動が薄れてしまう)ことが多いです。ただ、時たまそういったジンクスを壊して、さらなる楽しみを与えてくれる作品もあります。今回そんな1冊に出会えました。

    王弁の活躍が素晴らしいのです。とはいえ、彼は仙骨がない(仙人になれない)身の上、身の回りには本物の仙人やら、古代の神様達がいる。
    プロフェッショナルに囲まれたアマチュアです。
    そんな中で、なぜ彼が主人公足り得るのか、それは彼にしかできないことがあるから、もっと言葉を選ぶなら「気付くことが出来る」からでした。

    なるほど、ヒーローに必要な素養は、たった1つを見抜く力なのか。そうため息をつくエピソードでした。

    活字の中に、浅学な中国の乾いた空気が感じられる。良い本に出会えました。

  • 旱魃の女神は本当に寂しそうで気の毒。核も扱いの難度はこれに近いと思うが。

  • もーこの巻大好き!魃ちゃんをぎゅっと抱きしめて、代わりにワンワン泣いてあげたい←死ぬけど。
    私でよかったら、仙骨や仙縁があったら、話し相手になってあげたいって思って、泣けてくる。
    だって、彼女、こんなになっても人を恨んでないんですよ。チカラ抑えてるんですよ。細細と続く人の営みを見るのは実に楽しく、飽きぬって。
    あんな事されても…親の都合で生まれて、彼女だって別のチカラの神だったら、どれだけ良かったかって思ってるのに…。
    使い終わったらさっさと捨ててさ。まるで、人でなしに飼われてしまった愛玩動物みたいな仕打ちと思いませんか?
    親の都合で産んどいて、生まれてから捨てる、ふざけた虐待親みたいじゃないですか。好きで生まれたんじゃないんだぞ!
    それでも、彼女自身は当たり前のこととして受け入れてたんですよ。なんて酷い…実は日本の神話でも、ギリシャや北欧の神話でも、そんな話いっぱいあるんですけど、現代の人間の所業でも似たような事してるのが、哀しくてなりません。
    でも、彼女が最後に選んだ結末は…それは読んでのお楽しみですけど、彼女のような人(神だけど)は稀で、似たような人でなしに育つ可能性の方がずっと多いんですよ。
    暴力は、次世代に連鎖するのですから。どうして、こんなことされたら自分ならどう思うか?って視点を、人は忘れてしまうのかなぁ…。
    王弁はこの巻辺りから、どんどん成長していきますなぁ。それがすごく好ましく、楽しいです。星の彼方の天地に向かって、こわーい古の神を叩き起こして、恐ろしい古代の戦の記憶に身を投じる。並大抵のことではありません。たとえ、吉良や童子ちゃんたちがいても、彼らが止めるほど危険なことでも、挑んで行きます。昔の彼とは本当に違う。
    先生がなんとかしてくれるって、いつも先生に寄りかかってばかりで、このヒモ男が!ってたまーに思っててごめんよ…orz←
    それがうまくいくかどうかは別にして、彼が成長したことは確かです。そのご褒美がなんであったのか、それは読んでのお楽しみ。

  • 久しぶりに「僕僕先生」シリーズを読みました。
    今回は長編。
    舞台は前作で助けた蚕嬢の故郷です。

    激しい旱魃に見舞われた苗人の国・峰麓。
    もともとは美しい山の麓にある水や自然に恵まれた国だったのですが、巫女であった蚕嬢が掟を破って逃げ出したために、峰におわす神様の怒りを買ったことが原因のようです。
    この地を訪れた僕僕一行も、この国を助けるために動き始めるのですが…。

    今回は、中盤あたりからストーリーの結末が読めてしまいました。
    それでも読んでいたいと思わせるのは、王弁くんの優しさのせいでしょう。
    王弁くんは、一緒に旅する仲間たちのような特殊な力は何ももっていません。
    それでも、その優しさで神様の心にさえもそっと寄り添うことができます。
    そして自分が「おかしい」と思ったことに対して、立ち向かう芯の強さも見せてくれました。
    そんな王弁くんだからこそ、いろんな神様や仙人たちからも愛され(いじられ?)、読者の心も惹きつけているのでしょう。
    この先もまだまだ見守りたい…という母性本能をくすぐられます。

  • 待ちに待ったシリーズの文庫化。
    面白くて夜通し読んでしまった。今まで、様々なものに出会いながら、ゆったりと旅してきた王弁と僕僕先生一行。今回は壮大な世界だった。
    ストーリーの中の描写が、過去の戦争や現代社会にも当てはまる気がして、改めて深く考えさせられた。

  • 僕僕先生シリーズ史上最高傑作と名高い作品。シリーズの始まり「僕僕先生」を入手する前に読んでしまい、この四作目をきっかけに全シリーズを探し回って入手。圧倒的な世界観の虜になること間違いなしの超大作。旱の神様が居座っているせいで人々が死に絶えそうになっている苗の国にたどり着いた僕僕一行。蚕の正体がわかる作品。王弁の私的な感情から大変な騒動に巻き込まれていくが、旱の神様である跋という醜い少女姿の女神が生まれた経緯、その力を封じる為の悲しい選択、愚かな神々の闘いなど時間も空間も飛び越えた複雑な世界の仕組みが最終的に僕僕の技と黄帝の登場により、なんとか治まる。生まれたくて生まれたわけではない悪神である女神の胸中を王弁だけが救い上げる。切ない一冊。

  • 前の巻が仲間たちにスポットの当たった巻だったが今巻は王弁くんのがんばりが光っている。
    後半をけっこう一気に読んでしまった。
    跋ちゃんが健気でかわいそうなんよ。
    次巻も楽しみ。

  • 僕僕先生シリーズ第4弾。
    これまでと一転して、数千年前の神様同士の戦いの様子を時空を超えて体験するというあまりにも壮大なファンタジーに発展した。
    ストーリーが大きく変化したのにシリーズとして繋がりを少しも失わないのは、王弁君の真っ直ぐさと、優しさや厳しさや愛らしさなど多彩な面を見せる僕僕先生、少しずつ何かが欠けているにもかかわらず何故か好感を持てる脇役たちなど、バラエティ豊かな登場人物たちの魅力のおかげかな。

  • 自分のすべてを受け入れてもらえるというのは嬉しいものです。王弁君はそれができる人。
    だけど、王弁君がそうなれるのは、僕僕先生が王弁君のすべてを受け入れているからなのかもしれません。

  • 僕僕先生シリーズ

    蚕嬢の故郷へ向かった一行
    そこは、旱魃に見舞われ、乾ききっていた

    原因は、最強最悪、だけれど寂しがりやの女神「魃」の
    封印が解けかけていたことだった。

    魃と里を救うため王弁が奔走する

    時空を超え、宇宙へとび
    今回の王弁くんは大活躍!
    その純粋さと、必死さ、そして成長と
    相変わらずの朴念仁ぶりが素晴らしい(笑)

    魃が、可愛くて切なくて・・・

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著者プロフィール

1973年大阪府生まれ。信州大学人文学部に入学後、北京に留学、2年間を海外で過ごす。2006年『夕陽の梨─五代英雄伝』で第12回歴史群像大賞最優秀賞、同年『僕僕先生』で第18回日本ファンタジーノベル大賞を受賞。「僕僕先生」シリーズは読者の圧倒的支持を集め、ベストセラーとなる。著書に「千里伝」シリーズ、「くるすの残光」シリーズ、「黄泉坂案内人」シリーズ、「立川忍びより」シリーズ、『撲撲少年』『真田を云て、毛利を云わず 大坂将星伝』『三舟、奔る!』など多数。

「2022年 『モノノ怪 執』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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