先を読む頭脳 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101374710

感想・レビュー・書評

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  • 将棋やったこともないし、ルールなんてもちろん知らないし、そもそも羽生さんの存在は知ってるけどなぜそんなに凄いと言われているのかすらよくわからない…そんな「3ない」の私でも読み通せるほどには、いろんなことを砕いて説明してあって比較的読みやすかったかなあと思います。
    久しぶりに小説以外の本を読むのも、頭のいい気分転換になる。

    一番興味深かったのは、羽生さんは「メタ認知」の能力に大変優れているのではないか、という考察。
    自分を客観視して、何が足りないのか、それを埋めるためには何が必要か、ということを冷静に考える能力に長けていると。
    これはどの職種にも関係なく、優れた人、成功する人に共通する特徴なんだろうなと思ったりした。

  • 将棋における「先を読む頭脳」を研究している。前半は主に「将棋脳」とでも言うべきか、将棋に長けた人達の思考方法を研究している。後半は主にコンピューター棋士の発達の仕組みの研究だ。

    将棋は他の似たようなゲーム(チェスなど)に比べて「取った駒を使える」のが独特のルールで、それが指し手の複雑さになり、チェスに比べてコンピューター棋士が強くなる速度が遅れた。その性能はソフトよりもハード、計算速度の早さで決まるものらしい。

    羽生氏は「コンピューター棋士は指し手の読み込みは早いが、人間味のある指し方はできない。それができるようになれば面白い」と語っている。コンピューター棋士の研究だけに留まらず、人工知能の研究などにおいても同様だろう。どんなにコンピューターが強くなってもプロ棋士という職業は無くならないことが伺える。「揺さぶりをかける」「戦法を変える」など、相手との心理戦は、人間同士の勝負の大きな魅力だ。

  • 天才であることは言うを待たずだが、言語化能力と言い、自己認識力と言い、神は幾つの才をこのお方にお与えになったのかと思わざるを得ない。
    この本は最終的には脳科学へのフォーカスが目的だったのかもしれないが、結局偉人とはどういう人物を指すのか?をご本人が説明してくれたということかな。いやいや凄い人物と同時代を生きさせてもらえるなと改めて思った次第で。

  • 二人完全情報確定ゼロ和ゲーム。勝敗が明確で、情報が完全公開され、不確定要素を含まぬゲームという事だ。駒の役割が限定的である以上、どんな打ち手にも必ず勝てる道がある。しかし、その解析は天文学的数値の世界に入らざるを得ない。その世界で勝負しているのがプロの棋士たちであるが、そこにコンピューターが挑む。

    複雑な相互作用や役割の無限性を許容するなら、人間社会も同じような解析が成り立ち得るか。いや、無限性といいつつ、個々の反応は、ある常識という想定可能な範囲に留まるのであるから、まるで社会は盤上のように。従い、このことが勝ち組を生み、出来る奴は出来るというカラクリが生まれる。この個々の反応を読む力が感受性であり、感受性と論理性を備えた人間は、多くの課題に王手をかけ、解決する力を持つ。

    将棋という世界の盤上は、それより遥かに限定された中で、お互いの感性と論理を戦わせる場だ。完全論理とは、網羅するシステムだが、コンピューターが勝つためには、その完全な網羅が必要だろう。人間には不可能だ。網羅ではなく、感応力で情報の行間を理解するようにならねば。

    2022年8月に再読。棋士は学校にも通常に通えず、だからと言って必ずプロとして大成するわけでは無い厳しい世界である事を再認識。しかし、どこまでいっても視聴者を必要とする娯楽に過ぎず、かつ、そのゲーム性はコンピュータに打ち破られる。ゲームにAIが参入し、いずれ人間のプレイヤーが居なくなるのだろうか。人間の不完全性を楽しむ所に娯楽性があるのではないのか。

  • 自分の好きな人の一人である、羽生さんの本です。
    少し前にコンピューターとプロ棋士が対局して、プロ棋士が負けたのが話題になったのを思い出しました。
    チェスの世界ではコンピューターが人間と同等以上の戦いができるのに対して、将棋は「取った駒を使える」というルールによってゲームが奥深くなり、コンピューターはトッププロには及ばないと言われていたのも昔の話になりました。
    本書で羽生さんはコンピューターが強くなるのを「楽しみ」と感じている様に思いました。いつも相手の得意戦法を拒まないスタイルもそうですが、男らしい!の一言です。

  • 私の将棋観は3月のライオンぐらいしかないんだけど、この手の知的ゲームをやりたくなった。

  • 羽生さんの語る、
    将棋を知ったきっかけ、
    成長ともに変化していった勉強法と思考法、
    そして勝利を導くための発想法に対して
    人工知能、認知科学の研究結果をもってその意味を説明していく
    というスタイルの本。

     初心者と熟達者の思考法の差、
     コンピュータと人間の思考法の差(全件解析的な結果から導いているのか、直感的に常識的に正しいもの(大局的に正しいもの)を選んでいるのか)、
     成長時期と勉強法の変化の話(子どものころは手を使い数をこなす、思春期からは理由を深く考えるようにする)、
     自分でテーマを見つけてずっと考えつづけていける継続力とか、
     好不調をメタ認知するとか、

    どれもなかなか面白い観点だと思います。
    自分の頭の中でちらかっている情報を整理できるのではないのでしょうか。

    2011/04/30

  • 私にとっては、かなり知っていることが多かった。
    将棋とチェスのルールの違いによる特徴、また勝負に関する考え方の違いは興味深かった。

  • 将棋の羽生さんからヒントをもらおう!
    の本

    とても面白いんだけど、将棋の基礎知識がないのでむずかしくって、
    途中で断念。

    でも確かに、ヒントはもらえる本。

  • 平成18年初出。21年文庫化。

著者プロフィール

1970年9月27日、埼玉県所沢市生まれ。1982年、関東奨励会に6級で入会。1985年12月、プロ四段に。1989年、19歳で竜王獲得。これが初タイトルとなる。以降、数々のタイトルを獲得。1996年には、当時の七大タイトル(竜王・名人・棋聖・王位・王座・棋王・王将)全冠独占の快挙を成し遂げる。2017年に、八大タイトル戦のうち永世称号の制度を設けている7タイトル戦すべてで資格を得る、史上初の「永世七冠」を達成した。タイトル獲得は通算99期、棋戦優勝45 回(ともに2022 年6月時点)。主な表彰として、2007 年特別将棋栄誉賞(通算1000 勝達成)、2018 年国民栄誉賞、同年紫綬褒章。さらに2022年、史上初の通算1500勝を達成し、特別将棋栄誉敢闘賞を受賞。将棋大賞は最優秀棋士賞など多数受賞。

「2022年 『改訂版 羽生善治のこども将棋入門 中盤の戦い方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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