ニッポニアニッポン (新潮文庫 あ 41-4)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101377247

感想・レビュー・書評

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  • 絶滅しそうになったと思えば、保護され政治利用されるトキを人間のエゴから解放すべく、保護施設に乗り込むことを企む主人公。しかし、途中で、トキ救済の目的が、国家へ向けられた憎悪へと変わり、木本桜に対する愛情の反発と共に、トキを抹殺してしまおうとする。結局は「人間の書いたシナリオ」を全部ぶち壊すことで、これまでの人生の大逆転をもくろんでいたが見事に大失敗する。純文学。最高の喜劇。

  • kindleにて10年ぶりくらいに再読。
    くだらない。象徴と象徴を暗にひっかけようとしたってそんなの面白くない。

  • 阿部和重再読第4弾。

    インディビジュアル→ABC→無情の、ときて、ニッポニア。

    はじめの3つは、「無目的な・破綻した人格の主人公」が「周囲の進み行きにまきこまれる」という構造を、阿部氏独特の一見評論調・飛躍した論理調文章でしたためてあるため、全体が軽快な「ぶっとび感」に包まれて、バカバカしくふざけた調子が心地よいのだけれど、

    ニッポニアは、「思いつめた主人公」が「自ら主体的に破滅行動に突き進んでいく」という展開。
    ストーリー展開というか、物語の構造は面白いのだけれど、それに阿部氏の文体がマッチしていない・・・。特に、前半。
    新幹線に乗った後からは、なぜかがらっと文体が変わる。

    発表順に再読してみて、あらためてそう感じた。

    初めて阿部氏を読む人は、違う作品からいったほうがいいかも。

  • 阿部氏の諸作品の中では最も読みやすかった。
    他者への共感が一切欠落し
    自分に都合の良い事象だけを盲信。
    その歪んだ信念を貫徹するためだけに生き、行動する。
    阿部氏の作品の主人公に共通する人物像であるが
    本作の主人公にももちろん当てはまる。
    読みやすいと感じたのは、主人公のその歪な信念に
    比較的共感を覚えやすいからかもしれない。
    他作品の主人公においては、
    どんな過激な行動でさえ常に観念が付きまとっていたが、
    本作ラストの主人公の行動はずっと直情的、破滅的であり、
    それゆえ独特のスピード感とカタルシスを携えている。

  • 読む前ニッポニアニッポンってなんだよ思ってたけど、実はかの有名な"トキ"の学名らしい。大層な名前ですね。

    自分の苗字に"鴇"という字(これも"トキ"のこと)が含まれることから、トキに興味津々なヒッキーな主人公17歳。絶滅危惧種として人工的な繁殖を試みられてるけどそれってホントにトキの為なの?そんな学名ついちゃってるから頑張ってるだけじゃないの?だからトキの国籍とかこだわってるだけでないの?と、『ニッポニアニッポン問題の最終解決』としてトキを密殺しに佐渡に渡るが…。

    ストーリーはそんな感じです。

    トキは確かに日本人にとって不可侵な存在である気がしますね。簡単に触れづらいというか、なんというか。。この小説の面白さはそこに敢えて変態的に触れていくところなんだと思います。

  • 阿部和重って人は、「放送禁止」ってテレビ番組とか好きだったんじゃないかなぁ・・・と勝手に妄想しながら読んでしまった。

  • 中編くらいのボリュームなので、一気に読めた。ひきこもりの少年がトキを殺そうとする計画と実行の話で、その少年のみに絞られて語られているため、最近の阿部さんの作品とは違って話がスピーディに進む。

    今まで読むと、主人公の少年の引きこもり像が安直にも思えるけど、もう引きこもり像が語り尽くされたからだろうなあ。さらに阿部和重は要素をくっつけて人物を造る人だし。

    ヒロインが二人出てくる所が肝なのかな。似た人物を、一部の環境を裏返したことで、分かりやすく主人公に変化は訪れなかったけど、重層的な構造の物語となり、さらに主人公に人間らしさが見えた。

    最後に流れるクイーンの歌は、賛否両論ありそうだけど、おかげで中編にも関わらず大きなカタルシスを与えてくれて、そのシーンが僕はとても好きだった。

  • サブカルへのオマージュあふれる作品。
    ラストシーンはまったく映画のラストシーンの様に美しく脳内で再生されました。

  • 佐渡などを舞台とした作品です。

  • なんというか最後の終わり方以外は凄く面白かった。最後だけよくわからなかった。最後を気にしすぎなのかもしれない。
    あと解説が面白くなかった。

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著者プロフィール

1968年生まれ。1994年「アメリカの夜」で群像新人賞を受賞しデビュー。1997年の『インディビジュアル・プロジェクション』で注目を集める。2004年、大作『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞、第58回毎日出版文化賞、2005年『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞受賞。『シンセミア』を始めとした「神町」を舞台とする諸作品には設定上の繋がりや仕掛けがあり、「神町サーガ」を形成する構想となっている。その他の著書に『ニッポニアニッポン』『プラスティック・ソウル』『ミステリアスセッティング』『ABC 阿部和重初期作品集』など。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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