- Amazon.co.jp ・本 (442ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101381145
作品紹介・あらすじ
それは、大蔵省、外務省の暗闘が招いた結果に他ならなかった-。湾岸戦争終結後、クウェート政府が発表した感謝国リストに"JAPAN"は存在しなかった。130億ドルもの国家予算を投じ多国籍軍を支援しながら、ニッポンを迎えたのは、世界の冷笑だった。戦略なき経済大国の「外交敗戦」を、『ウルトラ・ダラー』の著者が圧倒的な情報力で描ききる。
感想・レビュー・書評
-
大変面白く読ませていただきました。流石元NHKワシントン支局の記者。しかし悲しいかな日本の情け無い姿が露わに。ある程度予想はしてましたが、残念です。今後日本の未来はどうなるのでしょう。正直あの時代の政治家が今の政治家より頼もしく見えましたが?
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
批判を恐れて国の舵取りができない故に足下見られたお話。
-
当時NHKワシントン特派員だった手嶋さんの著書だけに、細かいところまでよく分かる。国益ではなく省益を優先すると国が滅ぶという教訓
-
2023.12.03
この本は1991年のイラクのクウェート侵攻時の日本の外交を振り返っているが30年経ってなお日本は外交だけでなく「負け」続けているのがなんとも切ない。多分、10年後に読み返しても「負け」続けることに驚かなくなるだけのような気がする。日本の「国力」はもうなんともならないのでは? -
NHKの外交ジャーナリストである手嶋さんが湾岸戦争の日米外交の内幕を記した書。
日本は多額の資金を拠出したにも関わらず、そのプロセスに問題があったことから(特に省庁間の権利争い)全くその貢献が世界に認められなかったこと、また日本の対米協力のスタンス、国際的な軍事活動への関与に対するスタンスがいかに曖昧で、かつ意思決定に時間がかかるか、ということなどが湾岸戦争の事例で判った。
後者の部分は、20年ほど経った今でも全く事態は変わっておらず、未だに日本の外交、世界での立ち位置のようなものが非常に曖昧であると認識した。
外務省、当時の大蔵省、政府の3者のやりとりの中で、関係者は第2次世界大戦の決定プロセスと湾岸戦争を重ねている。
ある議論に対して意見を述べたものの、それに対して反論がある訳でもなく、でも最終的にその意見は無視されてしまったことに対して若手外務省の一人の発言。
「全体のムードが国策を決めてしまうこの国にあっては、流れを食い止められなかった者、ちょうど私のような者こそ結果せきにんを問われるべきなのです」
日本の国でどのように物事が決まっていくのか、その一端が理解でき、本書で最も印象に残っている一文。 -
面白い!心が暗くなる!
昭和初期など、どうしようもなく泥沼にはまり込んで行く歴史を読むのが大好きなんですが、90年前後も素晴らしい愚かな歴史であった。何がしたいという原則はなくアメリカに舐め腐られて大金巻き上げられる様子。外交一元化していなかったことが敗戦の一因だというのに同じことが繰り返されているという指摘はまさに。 -
いやぁ〜財政統帥権って恐ろしいね。
大蔵省が予算を握ることでこうも
コントロールができるのか? -
本書の提起する国体としての日本のあり方は、一つにセクショナリズムにより対外に対して弱体化している交渉力を取り戻すべく政治力を行使せよということだと思う。パクスアメリカーナは、既に昔のことになりつつあるが、先進国として世界に負っている義務、ノーブレスオブリジェは内容如何に関わらず存在する。湾岸戦争以前は、開発国に対して悪い言い方をすればカネをばら撒くことで、このノーブレスオブリジェはある面達成できていたが、この湾岸戦争は、明らかに軍備及び兵員の供与をノーブレスオブリジェの基準としてみるアメリカロビーを中心とした国際世論の形成があり、平和憲法により厳しく軍事行為を規制された我が国は、130億ドルの経済支出をしたにも関わらずこの貢献が見向きもされないという厳しい現実に直面した。今日、有事の際の国際貢献にある意味、法整備を飛び越え、汗や血による活動も行う背景にはこの屈辱感がある。
筆者は、この過程を本書の中に再現して鋭くこの問題に迫る。