宰相のインテリジェンス: 9・11から3・11へ (新潮文庫 て 1-8)
- 新潮社 (2013年8月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101381183
作品紹介・あらすじ
CIAを擁しつつも、本土への同時多発テロを防げなかったアメリカ。その後の熾烈な情報戦と、ビンラディン暗殺作戦を遂行したオバマ大統領と高官の時々刻々。一方、外交での失策を重ね、東日本大震災時にも決断を下せなかったわが国の首相たち――彼らは何を誤ったのか? インテリジェンスに精通する作家が混迷の世界を生き抜くための指針を示す。『ブラック・スワン降臨』改題。
感想・レビュー・書評
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佐藤優さんとの対談が楽しみな、
手嶋龍一さんによる一冊。
“9.11”と“3.11”を題材に、
危機を未然に防げなかったと、述べられています。
結果的には後付けかもしれませんが、
当時から必要な情報は集まっていたのに、
それでも危機は起こってしまった、、
やはりリーダーの資質が大事なのかなと、あらためて。
“眼前の懸案を解決する力を持たないにもかかわらず、
ありもしない選択肢を選ぶ愚者のふるまい”
3.11や外交を含む、日本の民主党の振る舞いを評した言葉、
そしてそれは「悪」であるとも断罪しています。
読んだのは大分前だったはずなのですが、
総選挙を前にして、ふと思いだしてしまいました。
当の民主党の、なんとも恥知らずな“公約”、
それを見てしまったからかもしれませんが、、なんて。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一国の宰相として、オバマ大統領と菅総理大臣が見事に対比されていた。
9.11の首謀者のオサマ・ビンラディンの隠れ家を、諜報活動によってようやくつかんだオバマ大統領。復讐を決断し、攻撃を命じた彼は、ホワイトハウスから進捗状況を俯瞰していた。
東日本大震災による福島第一原発事故の際、菅総理のもとには全く情報が集まらなかった。有事の時の情報収集能力のお粗末さ。情報を手にしようと自ら福島に乗り込み、ますます現場を混乱に陥れた。なおかつ、決断も責任を取ることもしなかった菅総理大臣。
その他に、
9.11も、それ以前に集められていた諜報・情報を正しく精査・分析していたら防げたかもしれない。
サダム・フセインが隠し持っていると言われていた大量破壊兵器の情報。不確かな情報も、「見たい・聞きたい」と思う情報は、妄信してしまう。
インテリジェンス=諜報・情報
アンテナを張り巡らし、コミュニケーションを密にし、集めた情報をどう分析するか。
沢山の石ころからダイヤの原石を探し出すような作業だけれど、そうして得た正しい情報から、リーダーは行動を決定し、その責任を負う。
優れたリーダーと、彼を補佐する情報収集部隊の重要さを感じた。 -
大事故、事件(有事)の際の国家トップレベルの動きの国間の差をまざまざと見せつけられる。震災以後、より重要になった情報戦略(なぜインテリジェンスというのか?)。もう少し母国はましなシステムを構築していたと思っていたがそうでもなかった、というところ。今後どうなるのか?どうするといいのか?そこまでの提案はなかったが、大きい課題。
もっとも、では他の国は素晴らしいかというと一概にそうとも言えないところが難しい。自分なりの意見をもつにも相当の勉強をせねばならないし、やっかいな課題です。 -
「大国が互いにしのぎを削る冷徹な世界にあっては、力を持つ者こそが正義なのである。力を持たないものは自分の存在そのものが悪だと決めつけられないよう振る舞うのが精々のところなのだ。」p211
9.11に端を発する米国のテロとの戦争、筆者がNHKワシントン支局長として遭遇したこと、経験したことが、無駄なくひとつのストーリーになっている。3.11における日本の首相の決断力の欠如を批判している。
政治家の決断について彼我の差を浮き彫りにし、混迷の度を増す我が国の行く末を案じつつ、若者に期待を向けている。
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全方位に喧嘩を売っていくスタイル。それゆえにインテリジェンスたる内容がただの娯楽としてしか機能していないのが悲しい。面白いが地に足のつかない話がなんの役に立つのか。宗教の話にしろテロの話にしろ、背景と日本への波及はしっかりと書いて欲しかった。
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日本企業によく見られる「結果が出ないなら、もっと頑張れ」という思考法への問題意識がきっかけで、もともとは日本軍の意思決定について興味があった。
「大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇」「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」 「情報と国家―収集・分析・評価の落とし穴」までをAmazonでクリックしたところで、「読みたいリスト」からこの本のタイトルを見つけた。
米国の同時多発テロ、そこへとつながる中東戦争、そして福島原発事故といった近年の大事件を「インテリジェンス」という切り口で改めてなぞる本書、ノンフィクションながら物語の形式をとっているので一気に読めた。
前半は米国ブッシュ政権下のインテリジェンスコミュニティが如何に情報の中立性を失い、恣意的な報告で米国を戦争に駆り立てたか、ということが描かれているが、後半の日本批判では、それ以前の問題として、インテリジェンスの欠如、ひいては「意思決定機能の退行」を徹底的に批判している。さらっと読めば控えめな筆致だが、実名を挙げての淡々とした批判は逆に痛烈。
執筆のタイミング的にオバマ大統領や安倍首相の実務に対する検証が不足なのは致し方ないとして、今時点の手嶋氏の評価はどうなのだろうか? 非常に興味が惹かれる。
私なりにまとめれば、インテリジェンス(意思決定に有用な情報そのものと、それを収集分析する仕組みや人員、さらに不足したピースをどのように補完するかの知恵・・・と理解している)後進国の日本が組織や法整備を進めるのは大事な事だと思うが、本書のメッセージは「意思決定の重要性と責任に対して真摯なリーダーのところにしか情報は集まらない」というものだった。
・情報は組織下位層に「出せ」と命じて出てくるものではない
・リーダーが「胸の内」(欲しい情報)を悟られた時点で、上位には歪曲された情報しか上がってこない
・非公式でダイレクトな現場とのコンタクトが無ければ意思決定者は手持ちのインテリジェンスの精度を担保できない
望ましいインテリジェンスを体現していた人物としてチャーチル元イギリス首相の記述が短いながらも痛快な描写で紹介されていたのがとても印象深かった。 -
アメリカと日本、二つの国家を9.11から3.11まで『インテリジェンス』というキーワードで紡いだ迫力のあるノンフィクション。非常に面白い。
片やエシュロンやCIAを操り、あらゆるインテリジェンスの中から国家の進路を決断する大国アメリカでさえ、同時多発テロでは大統領が失策を演じた。一方のインテリジェンスに関しては竹槍すら無きに等しい日本は、福島原発のメルトダウンで首相は何の決断も出来なかった。こうした二つの対象的な国家で起こった有事の前後を描きつつ、両国の抱える課題を痛烈に批判している。
また、世界に対して正義をアピールし、テロという悪に徹底して対抗したアメリカも、所詮、自国のエゴがテロという形で跳ね返って来ただけのように見える。もしかしたら、我々日本人は、アメリカという大国に真っ黒なカラスを真っ白だと思わされているだけなのかも知れない…
『ブラック・スワン降臨』の改題。ブラック・スワンとは、ありえない事態が現実となることの暗喩とのこと。 -
これは日本政府への警告であり、国民への示唆してます。私的にはこの意見には以前から賛成です。日本は形式的には軍を持てないならせめてインテリジェンシー機関は必要性だと思います。今の日本はまだ平和ボケから抜ききれてない。近所にはC&Kが存在してます。Cは強国になりバカな政治家はCに味方し 今後は二度と辞めて欲しい。Kは完全無視でお願いします!
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現実に起きた出来事でのインテリジェンス世界を著者の実体験から語れている。ノンフィクションたから面白く、ひきこまれる。